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ヴァンゲンハイム家の魔術師  作者:
第14章 魔女の断罪
120/139

14-2

 


「ほら、もう一口食べれるか?」

「今はもう、十分です········」



 自室の椅子に運び込まれると、ベルで呼ばれた家人達が次々に入れ替わり立ち替わりであっと言うまにベッドメイクがされ、ベッドテーブルが運び込まれ、水とミルク粥が運び込まれた。


 屋敷の主人たるハインリヒ様が手ずから粥をスプーンで運び、私は雛鳥の如く口を開けているだけだったが、ハインリヒ様は酷く心配そうに何度も容態を尋ねてきた。


「ベッドメイクぐらいあとで自分でやりますよ。いつもやってるんですから······」

「ダメだ。しばらくは魔術庁も休ませるからな。ほら、水を飲め」

「もうお腹がタプタプです。水分は、充分取りましたよ」


「そうか······寝ている間に誕生日が過ぎてしまったな。せっかく18才になったのに······あとでちゃんとお祝いしてやるからな。先に今何か他に欲しいものは無いか?」


「·······私、何で寝てたんでしょうか」


 ハインリヒ様は一瞬目を泳がせてから、手で口元を覆いじっと私の様子を伺った。



「······ラルヴァの対処中に咬まれたんだ。憶えているか?」

「ラルヴァ······あ、はい。墓地に2人で行って······そうだ、ノエルに怒られて······」

「屋敷に転移した後のことは?」

「·······転移した後········」


 記憶をゆっくりと遡る。確か、上着を脱いでいたら眩暈がして、ハインリヒ様がベッドに運んでくれて······。


「··········あ」


 ────そうだ。ハインリヒ様を見ていたら、もう彼しか見えなくなって、それでこの人がとても·······



 恋しくて、愛しいと────······


 ドカンと頭の中が噴火した。

 なななな何?!恋しいって何?!愛しいってどういうこと?!何それ、何それ!!


「ティアナ?」

「あああああああああ!!」


 恥ずかしさの余り両手で顔を覆い、叫んで突っ伏した。


「······憶えているのか?」

「ぁぁあぁあぁ~········おぼえてマス。ごめんなさい!ごめんなさい!!」


 今までだってギリギリの変態ラインを歩んできたのに、あれは確実に痴女認定される!


「そうか。憶えているんだな······」

「ごめんなさいごめんなさい!!」

「覚えているなら話は早い」

「すみませんすみません!!警察に突き出さないで!痴女じゃないんです!」

「じゃあ、俺達はもう両想いの正式な恋人だな」

「変態は認めるけど痴女は········え?」


 にこりと微笑みながら、ハインリヒ様は私の手を握った。


「嬉しかった。お前も俺をあんなに好いていてくれだんだな」

「好·······?」

「今日は取り敢えずよく休め。それともまたキスして欲しいのか?」

「ひぇ?!」

「お前が望むなら何度でもしてやる。泣きながらキスをねだるティアナをまだ憶えてる······本当に可愛いなお前」


 そういうと私のおでこにちゅ······とキスを落とし、ハインリヒ様は微笑んだ。


「あとでたくさん唇にしてやるから、今は少し休息しないとな。誕生日プレゼント、何がいいか考えておけ。何でも叶えてやる」


「··············!!」


 ハインリヒ様は食器を片付け、そのまま部屋を出ていった。


 私は呆然と、扉を見つめていた。


 誰が、誰を好いてるって?

 私?私がハインリヒ様を?


 いや、違う。だって私達はだだの────······


『大好きです、ハインリヒ様』


 いや、言った!すみません!言いました!


 あの時、頭がぼーとして、ハインリヒ様のことしか考えられなくて、彼に触れて欲しくて、胸が苦しくなって。


「········嘘でしょう?」


 憶えてる。唇を自分から重ねたことも。

 嬉しくて、ハインリヒ様に触れたことも。


 何度も何度も交わした口づけと、抱き締められた熱と強さ。


 全部憶えている。


 私、私········


「ハインリヒ様が好きなの·········?」



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