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ヴァンゲンハイム家の魔術師  作者:
第13章 贄の魔女 【3】
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13ー2 二代目『贄の魔女』ローザ 2

 


「前世?あの夢は私の前世なの?」


 ノエルに助け出されたあと、傷を癒しながら二人で村から離れた森の小さな小屋で過ごしていた。


 ノエルはひとつひとつ、私の疑問に答えてくれた。私がかつて『贄の魔女』と呼ばれ、ノエルと共に暮らしていたこと。無くなる前に、後悔を抱えたこと。


 確かに何度も夢を見た。もっと人間に関わるべきだと泣いた夢を。


 心と体が少し落ち着くと、ノエルは私を抱えて王都といわれる大都市に連れていってくれた。


「王城って王様がいるんでしょ?ドキドキするよ」

「関わるんでしょ?人間と」

「······うん。頑張ってみる。ノエル、一緒に居てよね!面接官の見えないところで!」

「ニャア」


 白猫になったノエルを抱え、私は王城に向かった。王城といっても、先の大戦で城自体は既に無い。今は大きな屋敷を城代わりにしているそうだ。


 私が王都に来た理由は、魔法使い不足による王城付き魔法使いになるためだった。王城ならば、衣食住の心配もないし、給金だって貰える。確かに人間社会を学びにはもってこいだ。


「でも、 村みたく魔物が攻めてきたらどうするの?また追い出されるよ?」

「それを対策しようとしてるやつがいる。話を聞いてみればいい。ローザの周りには、勿論魔物は寄せ付けないけど。僕がいるから」


 ノエルと森の小屋にいる間に、アルであった頃の魔法は既に使えるように練習した。妖精達から教えてもらった映像を思い出せれば、あとは自然と魔法は使えた。


 採用面接官は、とても美しい男性だった。ついてこいと言われ長い廊下を歩いていると耳元にリンと鈴の音がきこえた。


 姿は見えずとも、ノエルはそばにいてくれてるようだ。私は囁くように小さく言った。


「見てノエル。世の中にはあんなに綺麗な男性がいるんだね。羨ましいなあ。恋なんてしたこと無いけど、恋人にするならこんなカッコいい人がいいなあ」


 美しい面接官は魔法使いだった。顔は綺麗だけど眉間の皺が怖い。話す度に皺が深くなるので、酷く気難しそうに見えた。アルだった頃から田舎暮らししかしたことの無い私に教養なんか微塵もない。受け答えをしながら何だか睨まれている気がした。


「最後に実技のテストをする」


 何でもいいから魔法を使ってみろと言われ、火、水、土、雷、風、闇、光魔法を使い、最後に飛翔魔法で軽く飛び回った。


「どう?」

 面接官に聞くと、彼は絶句していた。


「お前、その年で全部使えるのか。まさか、他にも知っている魔法あるのか······?」

「知ってるよ?森には妖精いっぱいいるもの。沢山教えて貰ったよ」


 森は森でも、アルだったころにいた森だ。あの時はノエルが魔物を寄せ付けなかったし、暇潰しは魔法を覚えるか本を読むくらいだった。


「お前、もしかして魔女か?」

「魔女だよ」

「本当に······?初めて見たな。······わかった。お前を採用する」

「ほ·····本当に?!」

「ああ。今時これだけの魔法をこの年で使いこなせるやつは少ない。だけど」

「だけど?」

「お前はまず敬語を覚えろ!さっきからやたら言い回しが失礼だぞ」


 成る程。だからさっきから眉間に皺が寄っていたのか。


「ごめんなさい。田舎育ちで勉強も満足に出来てなくて」

「フン、これから叩きこんでやるよ。俺はニクラス。ニクラス・ヴァンゲンハイムだ」

「私、ローザ。宜しく、ニクラス」

「ニクラス様と呼べ!これからお前の上司になるんだぞ」

「ごめんなさい。ごめんなさい。ニクラス様」

「フン。頭悪そうだなお前。謝る以外に特技は無いのかよ」

「タヌキを手懐けるのが得意です」

「それ、何の役に立つんだよ······」


 こうして私は王城付き魔法使いになった。



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