13ー1 二代目『贄の魔女』ローザ 1
片田舎に生まれた私は、11才を過ぎるまで、親と普通に暮らしていた。たまに村の教会で神父様に他の子供たちと一緒に勉強を教えてもらいながら、父母と一緒に農地を耕す生活を送っていた。
12才を過ぎたところで、私の体に少しずつおかしなことが起き始めていた。
毎夜毎夜、見たことの無い村で、別の女の子として生きている夢を見る。石を投げられ、頬を殴られ、体を蹴られる辛い夢。夢の中で、私の魔力のせいで魔物が押し寄せ、私は村の生け贄となり、死に際になろうかという時、美しい白い髪と赤い目の悪魔と出会った。
只の夢であって欲しい。
だってこの夢を見るようになってから、本来生まれながらに持つはずの魔力がぐんぐんと溢れ始めた。魔獣が私の元に来るようになり、今まで見えるだけだった妖精と呼ばれる者の言葉がわかるようになった。
村にはたまに魔物が入り込むようになり、その度に私が狙われ、村の魔法使いが駆り出された。両親はその度に頭を下げていた。
魔法使いは私を魔女だと言った。側に寄ってきた妖精も私を魔女と呼んだ。
あの夢と同じ。私のことを皆、魔女と呼んだ。
不安な日々が続く中、悪夢は再び繰り返された。
13才の誕生日、体が熱くてどうしようもなく、私は教会に向かう途中で道端にへたり込んでいた時だった。普段は現れないような強い魔物がどっと村に押し寄せた。
村の魔法使いが総出で対応するが数が多く倒しきれない。何故か魔物達は皆私を狙って走り出す。そのうち一人が私を指差す。
「魔物は、みんなお前を狙っているんだ、ローザ。お前がアイツらのもとに行けば村は助かるんじゃないのか?!」
誰も私を庇おうとはしなかった。
魔物から逃れる人があちこちに入り乱れる中、私の両親が、ちらりとこちらを一瞥した後走り去るのが見えた。
「ごめんなさい、父さん、母さん·····」
両親が私のことで頭を下げる度に夜に喧嘩をしているは知っていた。私を村外に売りに行こうと話していたことも。
「ローザ!早く村から出ていけ!」
ガツンと頭に当たったのは石だった。
一つ投げられると、次々と礫が私を襲う。
あの夢と同じ。
ポタポタと顔から垂れたのが、血なのか涙なのかわからない。
気がつくと大きな魔物の前で私は転んでいた。見上げると、生臭い息と獰猛な牙が真上にある。
これが私の最後。ごめんなさい。みんな。ごめんなさい。父さん、母さん。
目を瞑って死を待つと、声が聞こえた。
「迎えにきたよ、アル」
魔物は綺麗さっぱり居なくなっていた。
代わりに、何度も夢に見た、白い髪に赤い目の美しい男の子が立っていた。
涙が溢れ、声は意図せず喉の奥底にから勝手に出ていた。
「······ノエル······っ!助けてぇ····!」
這いつくばったまま差し出した手は、体ごと受け止められた。
「いいよ。僕の魔女。また会えたね」




