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事例01-5 被告:春野 雲雀

―――――――――――――――――――――――――――――


冒険者紛争調停 申立受理通知


ダンジョン管理庁 東京都北区ダンジョン管理局 地方調停所


相手方(被告)

氏名:春野 雲雀 様


【件名】冒険者紛争調停 申立受理および出頭要請のお知らせ


このたび、

あなたを相手方(被告)とする冒険者紛争調停の申立て が、

申立人(原告)より提出され、

本日付で正式に 受理 されました。


本件は、

 冒険者契約法

 ダンジョン探索規律法

 能力者管理法

に基づき、地方調停官が調停手続を行います。


事件番号:R20-131172-03号

担当調停官:一ノ瀬 理人(0384号)


―――――――――――――――――――――――――――――


「まずは基本的な確認から始めます。あなたの氏名、帰属する管理局、所属パーティ、冒険者のランク、登録能力を教えて下さい」

春野 雲雀(はるのひばり)、北区ダンジョン管理局、パーティは『鳳』、ランクD、能力はⅡ-D-01、元素魔法の火です」


 一見すると少女と見紛う小柄な女性が口数少なく、されどはっきりとした口調で答えを返す。その首元には包帯が覗き見え、動きにもどこかぎこちなさが伺える。


「ありがとうございます。では今回の申立内容について書面でも通知いたしましたが、改めてご説明いたします」


 理人(りひと)隼人(はやと)に対して行った説明と同じく、本件が協力義務不履行というパーティ解消理由に対して、継続的に支援魔法をかけていたと主張、不当として申し立てが行われた旨を説明する。


「この主張に対する春野さん、あなたの主張をお聞かせください」

「私としては翔真(しょうま)……ううん、井上の主張は全く持って論外。私はさっき言ったように元素魔法の使い手、完全な後衛。だから私はいつも後ろから全体を見てました。当然、井上の様子も」

「なるほど。探索中、原告を含む各メンバーの様子を常に把握されていたということですね」

「はい。初めてパーティを組んで探索に行ったとき以外に支援魔法を使っている様子はなかった。魔法の発動に伴う魔力の揺らぎとかもまったくです。だから井上の主張は全くの嘘です」


 雲雀(ひばり)が淡々と答える。そこにはただ事実を述べる響きがあった。


「初回の探索では支援魔法を使っていたが、以降では使っていなかったということですね。あなたの主観で構いません。初回の探索で魔法をかけられた際のことをお聞かせください」


 記憶を辿るようにしばし黙考した後、雲雀(ひばり)が口を開く。


「パーティを組んで最初だったから、お互いの能力を把握するために比較的安全な場所で能力を使いあった。そのときは井上が呪文を唱えて私達の能力が強化された。それは確かです」

「具体的にどのような強化でしたか」

「筋力や敏捷性が上がって、私の魔法も強化されてました」

「なるほど。高揚感などはありましたか」

「ん……。まったくなかったとは言えない。でも魔法の効果だからというより初めての探索とか強くなったことによるところが大きいと思います」

「ありがとうございます。参考にいたします」


 理人(りひと)雲雀(ひばり)の言葉をメモに書き記す。


「2回目以降の探索ではいかがでしたか」

「使っている様子はありませんでした。ただの一度も」

「ただの一度も、ですか。それを指摘したことはございますか」

「ん……。3回目の探索のときに隼人(はやと)が指摘した。そのときは『ずっとかけてる』ってはぐらかしてた。その後も隼人(はやと)が何度か文句を言っていたけど井上は毎回同じ、『ずっとかけてる』ってはぐらかすだけだった」


 雲雀(ひばり)もまた同様の答えを返す。彼女の証言も一致しており矛盾はなかった。雲雀(ひばり)が机の上に置かれた湯呑みに手を伸ばす。


「あっ……」


 雲雀(ひばり)の手から湯呑みがこぼれ落ち、机の上にその中身が広がる。理人(りひと)が立ち上がり、取り出したハンカチで零れた中身を拭き取る。


「す、すいません」

「いえ、お気になさらず。……傷は重いのですか?」


 その言葉に雲雀(ひばり)はかすかに驚きの表情を浮かべ、負傷しているのであろう右腕を庇うように左手を右腕に添え、理人(りひと)の瞳から逃れるように俯く。しばしの沈黙の後、雲雀(ひばり)は再び口を開く。


「……はい」

「差し支えなければ、詳しくお話を伺っても?」

「はい」

「その傷はいつ負われたものでしょうか」

「……パーティ契約を解消した、その日です」

「怪我をした際の経緯をお聞かせ願えますか」

「……3人で探索に行って、調子に乗って無理をした。それだけです」


 雲雀(ひばり)は顔を挙げず、理人(りひと)と目を合わせることなく答えた。

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