闇の狂騒曲
満月の夜、遂に萌と対峙することになった主人公は‥
頭上には淡く輝く満月。
周囲を闇に円筒状に隔絶された空間。
俺はそこで立ち尽くしていた。
甘く痺れた感覚で身体が動かせない。
目前の萌ほ嬉しそうに微笑みながら俺に囁いた。
「上島さん、沢山***しましょう。萌の✕✕がいっぱいになるくらい〇〇〇〇をして▲▲▲▲下さい‥」
‥萌の言葉の一部が聞き取れない。
いや、認識出来ない。
これは言葉の形をした束縛呪文だ。
萌は言葉に魔力を乗せ、直接俺の意識に概念を送り込んでくる‥。
余りに強力な魔力に言語中枢が飽和して言葉として把握出来ない。
普段の萌からは想像出来ない様な淫猥なイメージに俺は翻弄された。
「萌‥な‥どう‥」
俺の言葉に萌は小悪魔的に微笑んだ。
「だって‥上島さんの事、欲しいだもん‥」
普段とは違う、甘えた様な態度。
これは‥誰だ?
「萌じゃない‥のか」
「萌だよぅ。なんでそんな事‥」
萌が言いかけた時。
「上島君、目を閉じろ!」
その声とともに、俺と萌の目前に銀製の小さな十字架が投じられた。
チャリン、と落ちた十字架はみるみる眩い光を放ち、俺は思わず目を伏せた。
「こっちだ!」
目を閉じたまま、俺は手を引かれ数メートル歩いた。
すると、先程までの硬直が消え、身体が自由になる。
俺の手を引いたのは悟さんだった。
「悟さん?!」
「ああ、無事か?」
「な、何とか‥あれは一体‥」
と、そこへ涼花と風香も合流してくる。
「譲!」
「上島さん、大丈夫ですか?」
「ああ。しかし‥」
「悟さん、これは一体?」
涼花が訊ねる。
どうも二人は悟さんが呼んだようだ。
風香が答えた。
「あれは、夜叉‥でしょうか。凄まじい魔力です‥」
「その程度の物じゃない‥今の萌は‥闇の眷属なんだ」
悟さんは苦々しげに言った。
「今の、と言う事は普段は違う、と?」
「もちろんだ。君だって知っているだろう」
「事情を知っているんですね」
「知っているが、今は時間がない‥簡単に言えば、萌はナイトウォーカーとの二重人格と考えてくれ」
「二重人格‥元の萌には戻せないんですか?」
「朝が来れば戻る‥今まではそうだった。が、それまではもたないだろう‥あれは時間稼ぎにしか成らない」
「それじゃ‥」
「方法はある‥これはもう少し親しく成ってから、上島君にお願いしようと思っていたんだ‥」
そう言って悟さんは懐から一組の指輪を取り出した。
銀色で繊細な装飾が施してある。
更に二つの指輪の間に不思議な気の流れの様な物が‥。
「これは‥不思議な物ですね」
「分かるかい? この指輪同士には気の繋がりが出来る、魔道具なんだ」
「これを‥?」
「ああ、萌と君が着けて、ある儀式をすれば、いい」
「しかし、今の萌がそれを了解しますかね? 」
俺の言葉を聞いた悟さんは、
「あーー、その」
珍しく言葉を濁した。
「?」
「いや、実はこれは萌の希望でもある」
「え~と、どちらの?」
「両方だ」
「え‥?」
裏の人格の萌とは今日が初対面なはずだが‥。
「二重人格と言っても、認識や感情は共有している」
「な、なるほど‥でもそれならもっと早く言ってくれれば‥」
「それは‥」
悟さんは言葉を濁した。
「呪術的契約には何らかのリスク、若しくは束縛がある、のですよね」
ここまで聞いていた風香ちゃんがたずねた。
「そうだ。本来この指輪は夫婦間で使うもので‥親密な男女でないと‥」
「え?」
「ちょっと?」
風香ちゃんと涼花が同時に反論の声をあげた。
「勿論、あくまで魔法契約としての話で、法律的な物では無いが‥」
2人の様子に気圧された悟さんは申し訳なさそうに続けた。
「そういう訳だから、涼花ちゃんや風香ちゃんにも話してからと思っていたんだが‥」
「もう時間は無さそうですね‥」
じわじわと闇の圧力が高まってくるのを俺は感じた。
「私もやる」
涼花は即決だった。
「涼花? 意味分かってるか?」
「萌さんを元に戻すには必要な事なんでしょ? でも‥」
「でも?」
「目前の魚が取られるのを黙って見てるほど、お人好しじゃないの、私」
「しかし、指輪とか‥」
「魔導具じゃないけど‥ペアリングなら持ってる。多分サイズも大丈夫」
最後の方はぼしょぼしょと成りながら涼花は言った。
「え、なんでそんなものを??」
「そ、そんなのどうでもいいでしょっ!? どうするの? やるの? OKなの?」
‥それじゃ一択なんだが。
「涼花が良いのなら‥」
俺は答えた。
「わ、私も‥」
風香ちゃんがおずおずと手を挙げた。
「風香ちゃんまで?」
「は、はい‥少し興味も‥有ります」
「でも、指輪とかは‥?」
「これで」
風香ちゃんは式神の紙で作ったこよりの様な物を出した。
「魔力の暴走を抑える式が込められています。これがあれば万が一‥」
「なるほど、上島君が闇の眷属化するのを防げる、と」
「はい」
‥なるほど、それが魔法契約のリスク、と言うことか。
どしんっ!
物理的な圧力を伴った、闇の障壁が辺りを取り囲んだ。
その重圧に思わずたじろぐ。
「花婿なんだから、気合入れなさいよ!」
涼花に背中を叩かれた。
本当にそれだけで、重圧が軽くなる。
「ふふっ」
その様子を見て風香ちゃんは笑みを浮かべた。
「どうした?」
「いえ、やっぱりお似合いだなって」
「そ、それは‥」
「私もお願いしますね、旦那様」
「え?」
「一度、言ってみたかったんです」
もう一度、風香ちゃんは微笑んだ。
下手をすれば命も危ないと言うのに、俺より女性陣の方がよっぽど余裕ある。
「気合入れていくか!」
俺は向かって来る闇に一歩を踏み出した。
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