人格操作
主人公の働く喫茶店、最近は人気だが時に厄介な客も‥
新章第二エピソードです
夜も遅くなり、閉店作業を終えた俺は涼花と風香ちゃんを家まで送る。
店が人気なのは良いことだが、たまに涼花達の後をつける様な厄介な客も居るので、用心のためだ。
ちなみに萌は毎日悟さんが家まで送っていた。
様子からして、あの二人は付き合ってるのだろう。
実際の所、涼花も風香ちゃんも相当な腕前なので、俺が居なくても危険と言うことは無いだろう。
とは言え、涼花のナイフや風香ちゃんの式神を使っては大騒ぎになるし、万が一と言うこともある。
そこで、俺の出番というわけだ。
俺なら“見る”事で物陰に隠れた悪漢でも発見できる。
帰り道に2人と細い路地を歩いていると案の定、曲がり角の向こうに潜む気配があった。
だたそこに居るだけではない、暗い感情が見えた。
「二人とも、待って」
身振りで2人を制する。
「どうしたの、譲?」
「どうしますか? 譲さん」
流石に風香ちゃんは事態を察しているようだ。
「俺に任せて‥」
2人を残し、路地の角へと向かってゆく。
角を目前にして、一人の男が飛び出して来た。
手にはナイフを構えている。
店で風香ちゃんに絡んでいた、あの客だった。
「だぁっ!」
男は有無を言わさずに切りつけてきた。
俺は身体を半身捻ってかわす。
空振りした男は一度姿勢を崩すが、踏みとどまってこちらを向いた。
「こ、この野郎っ!」
叫ぶ男。
「ナイフを振り回したら、もう言い逃れできないな‥」
俺は嘆息した。
男を取り押さえるのは容易いが、その後どうするか。
大西刑事に引き渡せば、傷害の未遂にはなるだろうが‥。
「逆恨みされても面倒だな」
「な、何をブツブツとっ」
再び切りかかってくる男。
俺は気を流した手のひらでナイフを掴む。
「な、動かな‥」
男はナイフを引き戻そうとするが、ピタリと張り付いた様に動かない。
「自業自得だからな‥」
言いながら俺は反対の手を男の額に当てる。
「なっ‥」
戸惑う男。
俺はその手に激しく波打つ気を流した。
「あっ、がっがっひっ」
男が奇声を上げた。
俺は更に気を強く流す。
「あひっ、あ‥あ‥」
男の表情が緩んだようになり、四肢の力が抜ける。
俺は手を離した。
男はそのままヘタリと座り込む。
気と言うのは体内のエネルギーであり、感情や体調とも繋がっている。
それを激しく揺らすと‥。
「あ、あれ、ここは?」
暫くして、男は戸惑った様に辺りを見渡した。先ほどまでの表情が嘘のように落ち着いている。
こうなる。
激しく揺れ動いた結果、中央で麻痺してしまうのだ。
「ナイフなんて振り回すと危ないですよ?」
俺は何事も無かったかのように声をかけた。
「あ、あれっ? なんで俺‥す、すいません」
男は慌ててナイフをしまうとペコペコと頭を下げた。
「もう遅いから早く帰った方が良いですね」
「そ、そうします」
男は走って去って行った。
「なんだったの、あれ?」
涼花が呆れ顔で言った。
「譲さん、あの人‥」
風香ちゃんが訊ねる。
「ああ、感情が不自然に歪んでた‥」
俺の“目”には、男が感情を操作された痕跡が見えた。
それは俺達と同様、“気”の操作が出来る人間が背後に居ることになる‥。
それは涼花達を狙ったものだろうか?
それとも‥。
俺はじわりとした不安を感じていた。、
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