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episode4 2人の怪物

 ペラメントはバッルとの会話を終え、次は俺に顔を真っ直ぐと向けて話しかける。


「お前の技、凄い威力だったな。もしかしたら俺が生きてきた中では()()()と同じ…いや、それ以上かもな。」

 

 褒められているのだろうが、彼の目を見ればわかる。絶対本気で思っていない。

 そう思いながら、血に染まった長い爪を彼に向け、いつ攻撃されてもいいように備える。

 それを見たのか、ペラメントは口をにやりとした。


「おぉ。そんなにピリピリしなくても戦いたい気持ちはよくわかる。

 だが見た感じ、お前はもう限界に近いだろ?」


 何を言っているかよくわからなかった。俺は立っているし、まだ戦え.…..え?

 その瞬間、俺は倒れた。

 数秒前まではあんなに殺る気しかなかったのに、急に体が動かなくなって立つことさえ難しくなったのだ。

 辛うじて目と耳は機能していたのが救いだった。


「ほら言ったろ。お前は力を使いこなせていない。

 そのような段階じゃ、俺には追いつけない。」


本当にその通りだ。

 俺はただ力に身を任せ、隊員達を切り裂いただけだ。

 今みたいに未熟なままじゃ、勝てるわけない.....


「トドメを刺したいところだが、今回はやめておくとしよう。

 どうやらお友達が来ているようだしな。

 メインディッシュ君、また会える時がきたら楽しませてくれよな?」


 そう言って、彼らは転送されたように消えていった。

 そして絞り出していた力は全部使ってしまい、俺は気を失ってしまうのだった。


—————————————————————————


「到着したが、なんだこれは.....?」


 ずっと走りっぱなしだったローヴ達は、ようやく戦場に着いた。

 だがそこには、倒れている1人の男と、崩壊しかけている木造の建物、沢山の血が流れているだけだった。

 ローヴはとりあえず、倒れている男に駆け寄った。 予想通り、アンデレヴェルトの光はこの男を指していた。

確認すると、昼間に会ったノーヴィスという男と顔が一致した。


「息はしているな。危険を伝えていなくて、すまなかった....」


 そう言って、彼の意識が戻ったらもう一回謝罪しようと誓ったのだった。

 すると、ローヴの部下が報告にやって来る。


「報告します!周辺に隊員の姿はありませんでした!この男が倒したと思われる隊員の死体は1つも見当たりません!」


 ローヴはなぜ周りに死体が無いのかが謎に思っていた。

 ノーヴィスが食べた可能性も考えたが、流石にそれは無いだろう。

 もう一つ謎があるとすれば、来る途中に赤いオーラと一緒に黒のオーラも存在していたことだ。

 あの黒いオーラはあのペラメントが相手を威圧する時に使うものだ。

 まさか、彼はあの怪物と戦ったのか?

 そんなことも予想したが、ここで考えても時間の無駄であると判断し、一旦ノーヴィスを副本部がある国に運ぶことにした。


 隊員の1人が装置を起動する。

 その国の町に設置した召喚ポイントまで移動できる優れ物だ。

 それを使い、すぐに森を離れた。

やっと休むことができると、安堵するローヴ達一行であった。


—————————————————————————


『やめてください!どうか、どうかこの子だけでも、逃がしてあげてください!!』

 

 どこだ、ここは?

森で気を失ったのに、気がつくと焼け野原になった村が視界に広がっていた。

 そして目の前には、さっきのペラメントらしき姿があった。

 

『俺がそのガキを生かして何になる?ただの他人だろ?なら殺してもいいだろ!?』


 あいつ、一般市民を次々と殺していやがる。よく見ると、周りには人々が地面に倒れていた。


『俺はお前らの話を聞く暇なんてない。もういいだろ?さっさと死ね!”ブレンネンダーシュメルツ”!!』


 その直後に魔法を唱え、母と子供を焼き払った。

 なんて酷いんだ...そう思っていると、ペラメントがこっちに気づいた。


『まだ生き残りがいたのか。大丈夫、今殺してやるからよ〜!!』


 やめ....やめろ〜!!!


「っは!!!!」

目が覚めると、焼け野原の村ではなく、見知らぬ天井が視界に入った。

 どうやら悪夢だったらしい。

 寝ていたベッドは結構な高級品質で、昨日の疲れが一瞬にして吹き飛んだような気分だった。


 リラックスしていると、部屋に男が入室してきた。

 どこかで会ったことがあるような気がしたのでなんとか思い出そうとすると、相手から話しかけてくれた。


「昨日ぶりだな、ずぶ濡れ男。いや、ノーヴィス。

 疲れているところ悪いのだが、まずはこれを返却しようと思ってな。」


 そう言うと、服の中からアンデレヴェルトを取り出し俺に渡してきた。

 そうだ、思い出した。彼の名はローヴ、ルイーヒという人に仕えている1人だったな。

 俺が焚き火の近くに隠しておいたのに気づいてくれたのか。

 災厄の日で唯一運が良かったことはローヴという存在に出会えたことだろう。

 俺は感謝を伝えようとしたのだが、ローヴの方が先に口を動かした。


「すまなかった!俺が忠告しておけば、あんな事件に巻き込まれることはなかった!

 この通りだ!どうか許してほしい!いや、許さなくてもいい!」


 そう言って、ローヴは頭を深く下げる。

 俺は困惑していた。

 最初からローヴが悪いなんて思ってもいなかったからだ。


「頭を上げてくれ!ローヴは悪くない!

 敵に近づいていったのは俺の判断なんだ!

 だから悪いのは全部俺だ!」


 俺も深く頭を下げて、迷惑をかけて申し訳ないと謝罪する。

 2人が頭を下げるという謎の光景が広がってた。

十分下げたので、頭を上げ前を向くとちょうど顔を見るタイミングが重なった。

 そして、この世界に来て初めての笑いに包まれた。


「俺とお前、良い相棒になれるかもな!」


ローヴは顔を満面の笑みにして言った。

 正直、嬉しかった。

 俺はその言葉にあぁ!と強く返事した。

 すると、また扉が開いた。


「楽しい雰囲気をぶち壊して申し訳ないのですが、ご報告します!

 ルイーヒ様がご到着されました。

 落ち着いてからでいいですので、1階の会議室にお越しください。」


 隊員が伝えに来てくれた。

 そして扉を閉めて部屋を離れて行った。


 白のローブを脱ぎ、ローヴに予備の軍服を貸してもらった。

 俺がずっと着ていた高校の制服は、洗濯して保管されているらしい。

 部屋を出て会議室に向かう道中、ローヴが話しかけてきた。


「あのさ、1つ質問したいんだけどいいか?」


 俺は、いいぞと言って彼の質問に耳を傾ける。


「お前、人食べた?」


「は????」


 思わず声が出ていた。

 俺のことを喰○とでも思っているのか?

 意味がわからずにいると、ローヴが付け加える。


「あ、いや、勘違いするなよ?

 俺はお前が人を食べる異常者だとは思っていない。ただ、あの現場に隊員の死体がなかったから、倒したであろうお前が何か知ってるかもと思っただけだ。」


 熟睡して忘れていたが、俺はあの150人以上の隊員を倒したんだったな。

 確か鎖に繋がれて、尋問されて、彼女の声がどこからか聞こえて、隊員達を切り刻んで、ペラメントがどこからともなくやって来て、気を失った。

 ん?死体、どうしたんだっけ?

 まあいいや。一応、そのことをローヴに伝える。


「確かに隊員達を倒したのは俺だ。

 だが、その死体をどうしたのかは覚えていない。

 だが、これだけは言える。

 隊員は絶っっっっっ隊食べてない!!!!」


 大きな声で主張すると、ローヴは悪かったなと言いながら笑っていた。

 食べてないことを確認したローヴの顔は安心しているようだった。


 と、俺はここで1つ気づいたことがあった。

 俺の左手に謎の感覚があったのだ。

 なんか、深い憎しみというか、怨みというか、それを手に溜め込めたような感じだった。

 だが、歩いている間に少しずつ消えていってしまった。

 それが昨夜と関係しているのか、今の俺にはわからなかった。

 あの悪夢のことは、一旦忘れることにした。


 階段を降りて、ルイーヒがいる1階の会議室の前に来た。

 隊員が1人待っており、どうぞと言いながら会議室の扉を開ける。

 目の前に広がったのは、大きなシャンデリアの光に包まれた、大きな部屋だった。


 その中で一番目立っていたのは、やはりルイーヒだ。

 強いオーラを放ちながら、椅子に腰掛けている。

 右目には黒の眼帯をしている。(なび)かせる(あかね)色と黒が混じった髪色は、まるで希望の夕日のようだ。


「お前がノーヴィスか。ローヴから話は聞いた。

 どうやら隊員を食べた疑いがあるらしいな……….」


 落ち着いた声と、その裏に感じる強者の雰囲気は、この軍団のトップに相応しい存在、いや、怪物、そう思えた。

 そんなことより、おいローヴ。

 なぜトップにも偽情報教えてるんだ。

 俺はローヴを睨みつけようとしたのだが、彼はいつのまにか部屋をコソコソ退出しようとしていた。


「待て。」

 低いトーンで、ローヴに声を掛けるルイーヒ。

 すみませんでしたと言わんばかりに、元いた場所に戻る。

 そして、お前も話を聞いていろと言って、隣にローヴを移動させた。


「俺の部下がすまなかった。

 お前があいつらを食べるなんて最初から信じていないから、安心しろ...」


 そう言って、ルイーヒは立ち上がり頭を下げながら、ローヴの頭も手で力強くグイッと下げる。

 あまり気にしていなかったので、俺は大丈夫ですよと言いながら2人に頭を上げるよう促す。


 それから10秒後、ルイーヒはローヴの頭から手を離し、また椅子に座る。


「話を戻そう。まずは座れ...」


 俺はそう言われて、ルイーヒが座る高価な椅子と向かい合わせになっている、もう一つの椅子に座る。


 それと同じタイミングで、女性隊員の1人が紅茶を運んできた。

 この世界にも慣れ親しんだ飲み物があることには、安心感を覚えた。


「後は俺がやるので大丈夫だぞ。」


 立ちっぱなしのローヴが女性隊員の後を引き継ぐことになった。

 手でカップとソーサーを持ちながら、まるで某刑事ドラマの()()()のような高さで注いでいく。

 注ぎ終わり机の上に置かれた紅茶には、ゴールデンリングができていた。品質の高い紅茶の証拠だ。


 こうして、俺とルイーヒ、ローヴによる三者面談が開始されたのだった。




4話です!

白のローブを脱ぎ、ローヴに予備の軍服を貸してもらう。

なんつって....すみませんでした•••

ローヴが紅茶を淹れるところは、名前を出さなくても誰がモチーフかわかりますよね?

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