episode5 新たな事実と忘れた記憶
注がれた紅茶を口に一口運ぶルイーヒ。小さな声でうまいと言っているのを、俺は見逃さなかった。
するとカップを置き、話し始めた。
「まずは自己紹介。俺はルイーヒ...ルイーヒ•ベオバハターだ。
この世界の掌握を目論む、”アングストフォアデアヴェルン”の対抗組織、”フォルトエスポワール”の総指揮を執っている...」
バッルの言葉で予想していたのが当たった。ルイーヒ達がフォルトエスポワールだった。
アングストなんたらは、多分ペラメント達のことだろう。
「そして知っての通り、俺がローヴ.....ローヴ•シュライヒェンダーだ。フォルトエスポワールの副司令、及び特別機動捜査隊を率いている。
よろしくな。」
ローヴがただのメンバーだとは思っていなかったが、まさか副司令と機捜のリーダーまでも勤めているのは、予想もつかなかった。
2人の自己紹介が終わったところで、次は俺の番だ。
「改めまして、俺はノーヴィス。これても異世界防衛団として活動している、異世界人だ。」
そのことを知ったローヴは、目を丸くしながら俺を見続けていた。
気になっていると、口を開けて何かをしゃべっていることに気づいた。
俺はどうしたのか質問してみた。
「いやなんでも。ただ、理由があるわけでもないのになぜか気になるんだよな。」
ローヴの謎の言動を、俺は相棒として親近感が湧いているのだろう、そう思いながら流した。
すると、ルイーヒが一回その機械を貸して欲しいと言ってきたので、俺は承諾した。
「.....確かに、この世界では作ることができないな。
多分、高度な技術力を持ち合わせている人が作ったのだろうな。」
ルイーヒは少し興味を示していた。
「これ、”アンデレヴェルト”という名前なんです。
別の世界を移動できたり、謎に発光したりするんですが、全能力は把握できてはいないんですよね。」
ルイーヒにアンデレヴェルトについて簡単に説明した。
だが、ローヴが少し考えこんでいた。俺はどうしたんだと質問してみた。
「いや、今までの話を聞いて思ったんだけど、やっぱりそれ、異世界を移動する能力だけじゃないよな。」
俺は詳しく言ってくれと、さらに追求する。
「だってノーヴィス、普通に会話してるじゃん?
来て2日でこの世界の言語は習得できないだろ?
アンデレヴェルトが居場所を示してくれたのもそうだが、やはり能力は何個かあるよな。」
言われてみれば、俺はローヴと初めて会ったときや、今も普通に話している。
というか、ローヴが俺のことを助けてくれたのか。そのことを知った俺はすぐに頭を下げて、感謝を伝える。
すると、
「アンデレヴェルトについては、現状保留でいく。今の段階では詳しく解明することはできないだろうか らな.....」
と、ルイーヒが話してくる。
確かに、俺だってまだわからないことが多いのに、考えたところで意味はないだろう。
「もしよければ、俺たちの専門部隊に解析させることもできるが、どうする?」
ローヴが提案してきた。
「まだ大丈夫。俺も試してみたいことがあるから、それが終わったら頼もうかな。」
それを伝えると、ローヴはわかったと言いながら頷いた。
アンデレヴェルトの話題が終わり、昨日の誘拐事件についての質問が開始された。
「ローヴからの報告だと、血が川のように流れていたのに...死体が1人も見つからなかったらしいな。
ノーヴィス、何か知ってるか...?」
「いや〜それが....あいつらの死体をどうやって始末したのか、覚えていないんですよね。
まるで、そこの瞬間だけが切り抜かれたように...」
それを言った瞬間、ルイーヒは表情一つ変えず俺に確認してくる。
「”本当”にその瞬間だけ覚えていないんだな?」
俺がはいと言うと、ルイーヒはローヴに”あれ”を取ってきてくれと頼んでいた。
そしてローヴは少し待っててくれと言い残し、一旦席を外した。
「何か心当たりでもあるんですか?」
俺は一応聞いてみたのだが、ルイーヒは待ってろしか言わなかった。
〜15分後〜
ローヴが会議室に帰ってきた。
右手には分厚い本を持っている。
そして、その本のとあるページを机の上に広げ、ルイーヒの隣に戻る。
そのページには、絵と謎の言葉が書いてあった。
この世界の言語らしく、今の俺には読めなかった。
「あの〜、この本は一体?」
俺は2人に質問した。
「これは、この国...ユーバーヴィンデン王国が生誕する以前から存在しているとされる書物だ。」
この国がユーバーヴィンデン王国ということを新しく知った。
そんなことより、この国の歴史的書物を持ち出してきて、本当に大丈夫なのか?
「おい。ここを見てくれ...」
ルイーヒが指を指すところを見ると、オーラを放ちながら攻撃を仕掛けている人が描かれていた。
「『強い怒り覚えるとき、古の力、解放されし』。
この能力を使いこなす者は、光と闇、どちらかに進むと言われている。」
ルイーヒがそのことを話した瞬間、俺は察した。
「..........まさか!?」
「はぁ〜。そのまさかだ。
お前も目覚めた可能性が極めて高い...」
大きなため息をつきながら、ルイーヒは話す。
「ん?お前も?他に俺と同じ人がいるのか?」
もがついていたのが疑問に思ったので、すかさずルイーヒに質問する。
「チッ.........あぁそうだ。この世界には、その力を解放した者がお前を除き2人存在する。」
俺の予想は当たりだったのだが、ルイーヒの表情を見た感じ、あまり嬉しい内容ではないことがわかる。
すると、ローヴが俺に近づいてきて、耳に向かって話し始める。
「おいノーヴィス。2人のうち1人はもう視界に映っているぞ〜。」
え、視界に?
そんなのルイーヒしかいないじゃないか。
「余計なことを.........ローヴの言うとおり、俺は能力を解放した1人だ。
でもあいつは...」
ルイーヒが何かを言いかけようとした瞬間、扉が勢いよく開いた。
「待てーー!泥棒ーー!」
見てみると、息を切らしながら可愛い声を出して走って来る、女性がいた。
そして、すぐに机の上にあった書物を取り上げて、ローヴのことを片手で優しくポンポンと叩き始める。
「もう、ローヴさんのバカ!これで17回目ですよ!
持って行くなら私の許可ぐらい得てくださいって、何回言えばわかってくれるんですか!」
怒っているのだろうが、17回も奪われているからなのか、もう慣れているようだった。
「いや〜すまんすまん。お前の姿が見えなかったからもう諦めてくれたのかと思ったんだよ。」
ローヴは悪びれる様子もなく話し続けるが、彼女は口を膨らませていた。
ずっと叩き続けている彼女だったが、横にいる俺とルイーヒに気がついた。
「あ、ルイーヒさん!元気そうです良かったです!
ん?あなたは、初めて会います...よね?
2人の知り合いさんですか?」
「あぁそうだった。俺はノーヴィスです。
これでも異世界人で、異世界防衛団として活動しています。」
それを聞くと、彼女はローヴを叩くのをやめて、目を丸くした。彼女にとっては、初めての経験なのだろう。
「あ、自己紹介がまだでしたね。
私はフロイン•グレンツェントです。一応、王の娘だったりします。
あと、そこの正義の味方を偽る泥棒から書物を守る役割があります。」
そう言いながらローヴのことを睨んでいた。
ローヴは紅茶を一気飲みして紛らわそうとしていたが、バレバレだ。
というか、さらっと自分が王の娘ということを教えてくれたが、王室の人じゃねーか!
無礼がないようにしないといけないな。
「.......ん?ノーヴィスさん、少し左手を見せてくれませんか?」
俺はすぐに理解した。
さっきの謎の感覚と関係しているのだと。
まぁ、見せて悪いことはないし、昨日の記憶が少しでも思い出せるなら好都合だしな。
すぐに左手を前に出した。
「ノーヴィスさん•••••あなたが何をしたかは存じ上げませんが、まずは先にこれを。」
すると俺の左手が光り始め、何かが浄化されていくのを感じた。
「あの〜、今魔法で何をしたんですか?」
「今のは私が行える、最大限の回復魔法です。
あなたの左手には、あってはならないモノが取り憑いていたので。
今からそのことについて詳しくお話します。」
深刻そうな顔と声で、さっき取り上げた書物のとあるページを開き、俺に向けて話す。
「昔、この国ができる少し前。
この世界には、フェアフルングという魔神が存在していました。
彼は、自分が真の神であることを知らしめるため、数々の村を破壊し尽くしていました。
その中で使用したのが、ここに書かれている技。
名を、《オーバーシュナイデンデスハッセス》と言います。
能力は、”人の憎しみや怨みをそのまま相手に放ち、体が今まで体感したことのない絶望を感じながら死に絶えていく”というものです。
それを使い、彼は99年の間この世界を支配し続けました。」
オーバーシュナイデンデスハッセス•••どこかで聞いたような気がするんだが、気のせいだろうか。
「ですが、その技にはある一つの問題点があります。 それは、放った憎しみや怨みが体に残ることがある点です。
これで先程の回復魔法の意味、わかりましたね?」
もちろんわかった。
俺の左手に取り憑いていた憎しみや怨みを祓ってくれたのだ。
だがそうなると、俺は昨日の夜にオーバーシュナイデンデスハッセスを使ったということになる。
だがなぜ....記...憶にな..い....?
「ノーヴィスさん、どうしたんですか!?
ルイーヒさん、ローヴさん、これは!?」
急な頭痛が俺を襲い、体から力が抜け床に倒れる。
「ルイーヒ様!これはまさか?」
「あぁ。”アレ”だろうな。
まぁ放っておけ。そのうち治る.....」
「あああぁぁぁ...ぐがぁぁぁぁぁ」
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『そのような段階じゃ、俺には追いつけない。』
『メインディッシュ君、また会える時が来たら楽しませてくれよな?』
この言葉は.....あぁ....そうだった。
思い出した、全部!
5話完成です...と言いたいんですが、まさかの肺炎になりまして。
一応治りましたが、頻度が下がったことについて謝罪します。申し訳ありませんでした。
これからも気軽に投稿していくつもりですので、よろしくお願いします!




