獣狩り×闇に埋もれし者×命の価値……3
夜空から照らされていた星を飲み込むように暗黒とも言える黒い霧が全てを包み込む。
闇は光を奪い、囚人達が闇雲に撃ち放つ放出系の魔石の輝きが暗闇に光輝く。
「ボク達に居場所を教えてる。的にしかならない……本当に馬鹿」
光が撃ち出される一瞬を即座に見極めアルガノと獣人達は背後に回り込み、全てを刈り取っていく。
「う……あ……!」
「ううぅッッ!」
囚人達の胴体が本人すら気づかぬ内に切り裂かれ、意識が現状に追い付いた瞬間には絶命している。
容赦ない一撃を軽々と打ち出していくアルガノと部下である獣人達。
グラウド=アバリシアは、そうなる事で全てを理解した。
黒猫の団は本気なのだと……
「あり得ぬ……【シスイ】は私が管理しているんだぞ、絶対的な力で……なのに、たった十人で本気で【シスイ】を崩落させようと言うのか!」
黒い霧がグラウドの立つ建物まで迫った瞬間、霧の中に翠色のように輝く瞳が直視する。
霧の中を移動し、巨体ながら、足音すら聞こえぬ事実と突如出現した巨大な瞳はグラウドの背筋を凍りつかせた。
大きく開かれた魔獣の口に光が生まれ、次第に巨大な球体となっていく。
その光景に、アルガノ達も急ぎ退避する。
グラウドは大声で叫ぶ!
「やれるものなら、やってみるがいい! 貴様も貴様の部下も領主殺しで縛り首になるだろう、あはは!」
死を覚悟したのであろう、グラウドは狂ったように大声で叫び、嘲笑うように天に向かい頭をあげた。
全てが終わる、そう思われた瞬間、魔獣化したキャトルフの背中に突風が走り、真っ赤な竜巻が巻き上がる。
「団長、悪いが獣のまま、それ撃たれると、かなりヤバイんだわ」
モディカ、グリム、他の団員、敵であるグラウド=アバリシアと囚人、全ての者達が驚き、声を失う。
黒い霧が突風で消え去る。それと同時に黒い獣毛に覆われた巨大な魔獣が天に向かって、巨大な光を撃ち放つ。
真夜中を照す眩い光、あっては為らぬ真夜中に訪れた太陽の如き輝きは温もりとはほど遠い、不気味な光景を作り出した。
誰も動けぬ中、キャトルフに予備の服を手渡す風薙の姿が存在する。
魔獣から人の姿に戻ったキャトルフは下半身を隠すようにズボンを着る。
体の痛みや、傷が無いかを確かめると、両手の指を交互に動かし、動きを確める。
「いてぇ……本当に背中が痛いんだが……やり過ぎだろ?」
意識を取り戻したキャトルフがそう口にすると、風薙は軽く嫌み混じりに笑って見せる。
「寧ろ、感謝しろよ? 団長があのまま、ブッ放してたら、シスイが沈んでたんだからさ、あと、背中……確り隠せよ」
そんな会話をしている最中、キャトルフの背中から剥ぎ取られた魔石が、地面から姿を消したのだ。
それはまさに、一瞬の出来事であった。
「な!」
「あ!」
その瞬間、二人が同時に驚きの声をあげる。
そして、キャトルフの魔石は【盗みの魔石】を使う囚人の手により、グラウド=アバリシアの元に届けられる。
「これが、古代種の魔石か……あはは、全ては私の者だ! 王国も大陸も全てが私にひれ伏す世界が手に入る!」
グラウド=アバリシアは魔石を装備すると、キャトルフ同様に発動条件と考える言葉を口にする。
「私は私自身を否定する! さあ! 力を我に、全てを焼き尽くす力を!」
眩い紫の光が広がり、グラウド=アバリシアの立っていた建物が突如崩壊する。
土煙と共に止まぬ紫の光、その中心に巨大な醜い液状の体に変化したグラウド=アバリシアの姿があった。
液状の肉体は三つの頭を持ち、一つの頭は豚、二つ目は蝙蝠、三つ目は蜘蛛、更に体は蛙を思わせる形状になっており、見るものに不快感と不気味さを与える。
「な、なんだ、この姿は! 私の頭が、体が! 何故、こんな醜い姿に!」
自身の姿を互いの首を動かし確認するとグラウド=アバリシアは底知れぬ怒りを口にする。
その姿を確認したキャトルフと風薙は、即座に動き出すと、二人に合わせるように黒猫の団が集まり、十人が一斉に化物となったグラウド=アバリシアへと向かっていく。
「マスター、あれは悩まず刈っていい?」
アルガノの言葉にキャトルフは軽くうなづく。
「敵意ある敵に対して、手加減はいらない。まして、相手は俺の魔石を盗んだんだ。確実に殺す……」
涼やかに笑みを浮かべながら、殺気を剣に流し込む。
キャトルフの怒りを感じながら黒猫の団は更に加速していく。




