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獣狩り×闇に埋もれし者×命の価値……2

 グラウド=アバリシアの声に囚人達は魔獣と戦う他無いことを理解する。


「くそ、やるしかないのかよ!」

「なんでもいい、大型の魔獣だろ! 人数がいりゃあもんだいねぇ!」

「そうだな、此方には魔石(アーティファクト)持ちが数百人いるんだ。負ける訳ねぇ!」


 囚人達は“魔獣を狩れば終わる”と、考えていた……しかし、現実は魔獣となったキャトルフ、更に黒猫の団が誇る精鋭十人を相手にせねばならない。その事実は直ぐに囚人達を苦しめる事となる。


 黒い霧が広範囲に広がると風薙の元に黒猫の団員達は集合する。


「風薙副団長、アルガノ特攻隊長、どうするのかしら? 団長があの姿で戦うのをみたことあるの、二人だけでしょ?」


 情報収集部隊、隊長ワーリス=モディカは理解しがたい現状に対し、質問を口にする。


「簡単だ。よく聞け、団長は仲間を攻撃しな~い。つまり、団長の攻撃の邪魔になる位置にいなければいい、以上だ」


 気楽そうな口調でそう語ると風薙がもう一言、付け足した。


「あ、アルガノも、他の皆も、今回は敵の頭を討つことは忘れろよ、巻き込まれたら、死ぬし、キャトルフは仲間を殺したとなれば、凄く悲しむからなぁ、頼むよ」


 軽く語られたその言葉は風薙からの遠回しの命令であり、警告であった。


 団員は理解した“敵大将に手を出すな”と、言われたのだと。


「ああ、たく、わかったわよ! グリム! いくわよ」

「え、隊長? あ、すみません副団長、行ってくるっす。皆さんも気をつけて」


 モディカとグリムが戦場に戻るとアルガノも同様に四人の獣人と戦場に駆け出していく。


 風薙ともう一人残された団員は、そんな面々を見て、仕方ないと言わんばかりに動き出す。


「なぁ、ジイ様。あんたの意見を聞きたいんだが、どうかな?」


 「なぁに、時の流れは止められん、今の流れに乗るまでよ。ただ、あんな姿になっても団長は団長なのかねぇ?」


 そう言うと、ジイ様と呼ばれた団員は速度を上げ、囚人達に向かっていく。


 夜の闇に紛れた黒猫の団員達は、囚人達を発見すると戦闘が各自で開始される。


 五名の囚人達が魔石(アーティファクト)を装備し陣形を組みながら、魔獣となったキャトルフの元を目指す。


 そんな五名の囚人と鉢合わせたのは、ワーリス=モディカとグリムの二人であった。


 囚人から見る二人の姿は、美しい美女と小さな少年といった具合であり、警戒する事無く二人の前に姿を現す。


「なんだ、逃げ遅れた住民か? しかも、上玉だな……」


「だな、せっかく外に出たのに、大切な事を忘れてたな……」


 下卑た笑みと醜い欲望が囚人の瞳を輝かせる。

 逃げ遅れた住民であろうが敵であろうが、囚人達には関係など無かったのだ。


「ガキの方も、顔はいいなぁ? コイツは当たりだぜ……」


 五人の囚人を前に普通な住民ならば、怯えながら、命乞いをするだろう……しかし、実際は違っていた。


「グリム、手を出すんじゃないよ。あんた達もそれ以上近づかないでくれる!」


 囚人達はその言葉に再度、笑みを浮かべた。


「いいねぇ、気が強くてお姉ちゃんは賢いらしい……だが、生憎と、ガキの方も使()()()()()()つもりなんだよ!」


 囚人の一人がゆっくりと歩み寄ると、モディカは楽しそうに笑った。


「あら……残念ね。団長命令だから、止まってくれたら、生かしてあげようと思ったのに?」


「へ? ぎゃあぁぁッ!」


 モディカに向かって行った囚人の一人が突如、悲鳴をあげ、股を押さえながら倒れ込み悶絶する。


 何が起きたのか、理解できない囚人達は、悶絶する囚人に視線を向けると、股から腹部までが鋭い刃で削ぎ取られたように消え去っている事に気づく。


「な、コイツら! 住民なんかじゃねぇ!」


 四人の内の一人がそう叫んだ瞬間、口から首に見たことも拘束具が現れ、頭部が口から上下に割れる、そのまま頭部(口から上)が千切れ、地面に落下する。


 モディカは笑っていた。


「さて、残り三人ね……でも、時間が無いの……だから、さようなら……」


 囚人達は一瞬で拘束されると、木の枠に首を挟まれ身動きが一切取れない状態にされる。


 互いが向き合う形となり、互いの頭上に視線が向けられる。


 分厚く鋭い刃がロープにより、吊り下げられている。


首狩り処刑(ギロチン)って言うのよ……素敵でしょ? 私が貴方達の罪に対して刑を決めてあげるわ……ただし一人だけ助けてあげてもいいわよ……誰が生き残るか決めなさい……」


 囚人達の死への恐怖を(もてあそ)ぶように言葉にする。


 醜い口論が始まると、モディカは二人の囚人のロープを切断する。


 囚人の首から上がボールのように転がると最後に残された囚人は恐怖から失禁する。


「飽きたわ、時間もないし、さよなら……」


「ま、待って待ってくれ! 死にたくない! 死にたくな……」


 無惨に転がった囚人の頭部を見つめるモディカ。


「醜い表情ね……罪を償う覚悟がないなら、大人しく生活していればいいのに……いくわよ。グリム!」


「本当に勝手っすね。でも、嫌いじゃないっすよ。そんな隊長の性格」


「うるさい! 胸糞悪い……こんな偽善の街なんて、直ぐにでも吹き飛ばしてやりたいわ!」


 モディカとグリムが囚人を玩具にしている間に戦況は大きく動いていた。


 アルガノと部下である四人の獣人達は、囚人に対して慈悲(じひ)(なさ)けを掛けることなく粉砕し、風薙とジイ様と呼ばれていた団員も同様に敵の囚人を蹴散らしていく。


 圧倒的な戦力差が徐々に失われていく。


 グラウド=アバリシアは予期せぬ、黒猫の団の強さに身を震わせた。


「バカな……奴等は、永久投獄首の犯罪者なんだぞ! 囚人として、生かして来たが……奴等の強さは本物なのに、何故だ……何故、一人も敵を討ち取れないんだ!」

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