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28 返却


気のせいか、銃の撃ちすぎで肩が少し痛い気がする。

俺の構え方がおかしかったからか?それとも、銃を射撃する人はみんなこうなるのか?


そんなことを考えながら運転していると、家の影が見えてきた。


あと少しで家に着くが、油断しないほうがいいだろう。しかし、家に着いたら住人はどうしようか、と思い悩んでいると...


急に、前の車が止まった。


「うぉ」


俺は慌ててブレーキを踏んで止まる。



令一郎、急に止まるなんて何のつもりだ?

...まさか俺をやるつもりじゃ......。


俺はすぐに、腰にあるマカロフを引き抜き右手で持つ。


来るならこい。

もう家が近いし、この距離なら俺一人でも物資を運べる。だからお前はもう用済みだ。


そんなことを考えていると、令一郎が散弾銃を持って車から降りてきた。


そして、手に持っていた散弾銃を肩にスリングで吊り下げこちらに歩いてきた。



...あれ、撃ってこない。撃つ気はないのか?

銃を構えてすらいないので、これは何か話をしに来たのか?


だが俺は念のため、右手で構えずにマカロフを持ったまま、令一郎が来るのを待つ。


令一郎は窓越しに、運転席に座っている俺に話しかけてきた。


声が聞こえづらいので、窓を半分開けて話を聞く。


「おい、気づいたか?」


あれ、普通に話しかけてきた。てっきり俺に怒りを抱いているかと思ったんだが。


「気づくって何に?」


「家の前に車が停まってる」


令一郎は、ポケットから単眼鏡を取り出して家のある方向を見た。


車?誰か来たのか...もしかして襲撃か?


というかお前、単眼鏡持ってたのか。ポケットに入れてたらレンズ割れないか?


俺はそんなことを思いながら、リュックから双眼鏡を取り出して覗き見る。


この距離からでは、ゴマ粒を少し大きくしたようにしか見えないが、車が3台止まってるのが確認できた。


3台はちょっと戦闘になればやばくないか?


車内からは少し見えづらいので、一度車から降りて再び双眼鏡を覗き込む。


あれは、じいさんの軽トラではないな。1台だけどう見ても、自衛隊の小型トラックっぽい車両が見えるんだが。

あとの2台はミニバンと軽自動車で、車内には多分誰も乗ってない。


令一郎のほうが先に気づくなんて俺はボケていたのか?

はぁ、俺もまだまだだな。

しかし、目の前の問題をどうにかしないといけない。



「どうする?」


俺は、令一郎がどう考えているのか知りたいので聞いてみる。


「どうするって帰るしかないだろ」


令一郎は吐き捨てるように言った。


「そうだな...何かあったら殺るか」


俺は適当に返答する。


令一郎は小さく頷き、車に戻っていった。


俺も車内に戻り、運転席に深く腰掛け、これからどう動くべきか考える。



どうするかね。...このまま逃げて戦闘を回避してもいいんだけど、時間がもう夕方なので、辺りが少しずつ暗くなってきている。


それに、もしかしたら停まっている車の人達は、友好的な人達かもしれない。


個人的に、今夜の寝所を他の場所で確保するのが面倒なので家に帰りたい。

もし、襲ってくるような奴だったら撃ち殺せばいいだろう。令一郎もその気だったし、何か問題があればあいつを囮にすればいい。


俺は、前の車が進み始めたので、アクセルを踏み前進する。






2分ほど、車を走らせたらすぐに家に着いた。


俺は最悪の事態に備えて、家の敷地の入り口に車を停めておく。

車庫の前に車を停めたくても、もう停まってて停めれないんだよ。などと悪態をつきながら車から降りる。


手に持っている89式のセレクターが、レになっているのを確認して令一郎と合流する。


令一郎は、玄関の目の前に車を停めて、ちょうど今運転席から降りてきた。


次の瞬間、勢い良く玄関の扉が開いて、中から人が出てきた。


俺と令一郎は思わず銃を向けたが、知っている人だったのですぐに下ろした。


しかし、銃こそ向けないが俺と令一郎は警戒したまま立っている。


じいさんがライフルを持って出てきて、じいさんの後ろからは、迷彩服を着て小銃を持った男性が出てきた。


「おお、帰ってきたか」


じいさんは、すぐにライフルを肩にスリングで担いで令一郎に近寄る。 


俺のほうには顔を一瞥するだけ。まぁ、家族の安否を優先するよな...などと考えていたら、じいさんの後ろにいた迷彩服の男性と目があった。


「君、その銃はどこで」


やばっ、どう答えようか。

...しかしこの人は自衛官か?それとも偽物?


「その前に少しいいですか、あなたは自衛隊所属の人なんですか?」


俺は自分の中に湧いた疑念を晴らすため、目の前の30代後半ほどの男性に質問する。


「私は...」


男性は、自衛官の身分証明書を見せながら答えた。


この人は、ある避難所に派遣されて任務についていたそうだが、感染者と銃を持った暴徒に襲われて、部隊と避難所は壊滅。

目の前にいる自衛官は、生き残ってこった2人の自衛官と共に脱出したそう。


無線機から、別の部隊との合流指示が出たようなので今移動中。

どうやら、俺が行く予定の市街地にいる部隊と合流する途中らしい。


是非とも俺もご一緒させていただけたら嬉しいです。



しかし困ったことに、目の前の自衛官は自衛隊所属の武器を返却してほしいと言っている。


「すまないが返してもらえないか」


銃こそ向けていないが、何となく無言の圧力を感じさせるような言い方で言ってきた。


鋭い眼光が俺を睨んできているような気が...。



ここは、素直に従っておいたほうがいいだろう。拒否しても面倒なことになりそうだし。

もともと自衛隊という組織が所有する武器だから、元の所有者に返すのは正しい行為だろう。

少しだけ、返すのは惜しい気もするがな。


俺は持っていた89式やマガジン、銃剣を渡す。


「ありがとう」


どうも、どうも。


しかし、ポケットの中の手榴弾や車の中に入っている89式については渡していない。

なぜか?聞いてこないから。あと、まだ完全に信用したわけではない。


聞いてきたらもちろん返却しますよ。



ん?なんか声が聞こえる。


俺と自衛官の人が振り返って、音の発生場所に目を向ける。どうやら、令一郎の車の中から聞こえるがここからは見えない。

耳を澄ますと、悠馬君の泣き声が聞こえたがどうでもいいや。


俺は目の前の自衛官の人に頭を戻すが、また声が聞こえたので横に向いた。



「母さん!」


令一郎が中年の女性と抱き合っているのが見えた。


へぇ、お母さんと再会できて良かったじゃん。



...他人の事なんてどうでもいいな。



自衛官の人に聞きたいことがたくさんあるが、今日はもう体の疲労がヤバイので明日聞くことにする。

自衛官の人達は、数日だけここに滞在するそうだし。



俺は、自衛官の人と話を終わらせて家の中に入ろうとするが...


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