26 造次
俺は店内にある椅子に隠れながら、外の様子を観察し始めて1分ほど経った。
双眼鏡を覗いて見ると、造次さんと斧の男はまだ話をしていて、造次さんの後ろには令一郎が散弾銃を持って立っているのが見えた。
なぜ、男達はすぐに襲ってこないのかは分からないが、じわじわと囲んできているので友好的な雰囲気ではなさそうだ。
俺は店内から出て行かないほうがいい気がする。
しかしどうしようか?この椅子に隠れていても、窓ガラスが大きいので外からはまる見えのはずだ。
今は気づかれていないかもしないが、いずれ見つかると思うので、先に殺ってしまおうかと考えていると動きがあった。
民家の敷地から来ている2人が、斧を持っている男と造次さんに近づいてきた。
俺は注意深く見ていると...
「っ!マジか...」
思わず口に出してしまう。
造次さんが、近づいて来ている2人に頭を向けた瞬間、斧を持った男が造次さんの頭を狙って振りかぶってきた。
突然攻撃してきたことに驚いたのか、造次さんはもろに頭に喰らってしまい、頭を手で押さえながら地面に倒れた。
造次さんの後ろにいた令一郎は、何が起きたのか理解できていないようで放心状態になっているように見える。
しかしすぐに立ち直り、叫び声を上げながら、散弾銃をバットのように構えて斧の男に殴りかかった。
次の瞬間、ガソリンスタンドを囲んでいた男達が、一斉に走り出して令一郎に向かってきた。
手に持ってる散弾銃撃てよ、撃って殺せよと俺は内心思い、自分は今からどう動くべきか考える。
俺はどうするべきか...別に造次さんと令一郎を放っておいてもいいんだが、敵の人数が多いのは困るな。
2人が殺されたら、次に殺されるのは俺ではないのか?今襲ってきている男達は、令一郎に攻撃を集中しているので、俺からしたら好機では?
数秒悩んだ結果、男達を処理することにした。
さて、俺も殺るか。
俺は椅子の後ろから、姿勢を低くしたまま窓際のテーブルまで移動する。
本当は、窓際に近づいて撃つなんて危ない真似はしたくない。89式に付いているアイアンサイトでは、狙いづらいので標的に近づいて射撃するしかない。まぁ、ただ俺の射撃が下手なだけなんだがな。
俺はそう考えながら、背負っていたリュックをテーブルの上に置いて、89式をリュックの上に軽く載せる。
セレクターが単発になっているのを確認して、俺は令一郎に斧を振りかぶろうとしている男に引き金を引く。
狭い店内に銃声が響き渡り、音が反響して体に伝わる。
男の左肩に命中し、悲鳴を上げながら地面に倒れた。
俺が撃った銃声を聞いて、男達の動きがピタリと止まった。
おいっ撃ってきたぞ!話が違う!と男達が叫んでいるのが聞こえたが気にせずに撃っていく。
倒れている造次さんの横にいる、角材を持った男を狙い発砲。
くそっ外れた。
角材を持った男は、地面に銃弾が命中したところを凝視して立ち止まっている。
俺は男の上半身を狙い発砲する。
胸部に命中して男は口からゴボッと血を吐き出し、胸に手を押さえながら地面に倒れた。
次はその横にいる奴を撃とうとしたら、突然目の前の窓ガラスが割れた。
俺はすぐに地面に伏せて銃弾から身を守る。
耳を澄まして音を聞いてみると、銃声が89式よりも軽いので、拳銃を持っている奴が撃ってきたみたいだ。音からしてライフルや散弾銃ではないと判断できる。
くそっ、先に銃を持っている奴を倒しておくべきだった。
俺は少し後悔するが、過ぎたことは仕方ないと考えて次の行動に移す。俺は伏せた状態で、窓際の端まで移動して射撃位置を変える。
拳銃ごときにビビりすぎかもしれないが、当たれば死ぬかもしれないので、これくらいのことはしておいたほうがいいだろう。
俺は身を起こして、テーブルから少しだけ体を出し89式を構える。左側の交差点の植え込みから、拳銃を撃ってきている男に発砲。
当たらないな。単発で3回撃ったが1発も命中しなかった。
しかし、拳銃の男は驚いたのかすぐに立ち上がり移動しようとしている。
これは好機だ、そう思い逃げようとしている背中に引き金を引く。
背中に命中して男は仰け反り倒れた。ついでに、近くにいる角材を持った男に狙いをつけて発砲し、腹部に命中して地面に倒れた。
また、窓ガラスが割れたので急いで伏せて、初めの射撃位置に戻る。単発ではなかなか命中しないので、セレクターを操作して3点バーストにする。
伏せた状態から身を起こして、テーブルから少しだけ体を出し、89式を構える。
俺の車の前部分で、ブルブル震えながら隠れている男に引き金を引く。
3点バーストで、撃った反動が肩に伝わり鼓膜を震わせる。
男の頭に5.56㎜弾が命中して頭が弾け飛び、横にあったサイドミラーも吹き飛んだ。
あ、やってしまった。自分の車を壊してしまったが、命が懸かっているので仕方ない、と思っていたら自分の耳の横で何かが掠めた。
「は?」
俺は、一瞬動きを止めてしまうがすぐに伏せて身を守る。
なになになになに、どこから撃ってきた?
音からして拳銃なのは間違いない。
まだ窓ガラスが割れる音がする。伏せている俺に、ガラスの破片が少しだけ降ってきたが怪我はしていない。
そんなことを考えていたら急に静かになった。
頭の中では、弾切れか?リロードか?などと思い浮かんできたので、俺は耳を澄まして状況を把握しようとする。
ん、人が走る音が聞こえる。これは近づいてくるか?
俺は急いで89式のセレクターをレにして身を起こす。
少しだけ、テーブルから顔を出して様子を伺うと、男達がガソリンスタンドから走って逃げようとしていた。
逃がさんよ。
俺はそう思い、こちらに背を向けて逃げようとしている男に引き金を引く。連続で発射された銃弾が上半身に命中し、男はバタリと地面に倒れた。
俺は急いで他の逃げている男達に、89式の照準を合わせようとするが、建物の死角に入られてしまい撃てなかった。
くそっ、数人逃がしてしまった。
これは、あとで良くない結果を生み出すかもしれない。
そう考えながら、俺はまだガソリンスタンド内に残っている奴がいないか銃を向けながら周囲を警戒する。
...姿は見えないが呻き声がするな。
俺は店内から周囲を見回して男を探すが...くそっ店内からは見えない。
ここは、危険を犯してでも止めを刺しに行くべきだろうと思い、俺は立ち上がろうとするがすぐに止めた。
頭の中で急にリロードしたか?という声が聞こえたので、俺は急いで89式を新しいマガジンにリロードする。
ふぅ、危ない危ない。戦闘に夢中でリロードするのをすっかり忘れていた。
俺は気を取り直して、立ち上がろうとした瞬間、銃声が聞こえた。
「うぉ」
俺は驚いてしまい体をビクッとさせてしまった。
くそっ、まだ残っていたのかよ。面倒だなと思ったが突然、令一郎の声が聞こえた。
今の銃声は拳銃より大きい銃声だったから、もしかして令一郎が撃ったのか?
耳を澄まして様子を伺うと、先ほど聞こえた男の呻き声は聞こえず、耳に入ってくるのは令一郎の怒っているような声だけだ。
このままじっとしていても時間が無駄なだけだし、造次さんのことも何となく気になるので2人と合流するか。
もしも男達が残っていれば、令一郎の声に反応するはずだし大丈夫だろう。
俺はそう思い、89式を周囲に向けたまま入り口に向かった。
周囲を警戒しながら、倒れている造次さんとその隣にいる令一郎の近くまで歩いて行く。
2人に声を掛けると、急に令一郎が俺に掴みかかってきた。




