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22 住人


この家に来て数日経った。

俺はその間、銃器の簡易的なクリーニングをしたり、車に載せたままの物資の整理などをした。


その他、じいさんに頼まれて畑で野菜の収穫作業や草むしり、除草剤を撒くなどの畑作業を手伝った。


何で俺がしなきゃいけないんだ?と初めは思っていたが、よく考えてみたらこれは農業のスキルを習得できる、いい機会なのではと思い指示に従うことにした。


素人が少し齧っただけだが、無知で何も知らないよりはいいだろう。

政府が機能していないのであれば、自分の力だけで生きていかなければいけない。少しでも役立つ知識や技能を身につけるために俺は働いた。


そんな俺の態度を見て、じいさんの態度がだんだん柔らかくなってきた......ような気がする。



今いる家は、市街地から数㎞程離れたところにあると造次さんから聞いた。

俺はこの辺りの地形についてそこまで詳しくはないので、もう少しどこに何があるのかを把握してからこの家を掌握する予定。


運がいいのか、この家に来てから一度も感染者や人間は襲ってきていない。

しかし、俺がこの家に来る前に2.3体ほど家の周辺をうろついてたらしく、じいさんが撃ち殺したらしい。


じいさん、モラルとか無いのかよ。


この辺りは危険性が低いかもしれないが、最低限の武装はして過ごすようにしている。

腰のベルトの左側に、銃剣を吊り下げて右側にマカロフを挟んである。


まだ家の住人を完全に信用したわけではないし、誰がいつ襲ってくるか分からんからな。


それと、この家の奴らは危機感があるのかないのか分からん。じいさんは実際に感染者を倒しているが、他の奴らはちょっと...。

造次さんと悠馬君は感染者に襲われたことがあるが、他の住人は実際に見たことや襲われたことはないらしい。


だから俺に対して、そこまで警戒心みたいなものは無いのか?

嫌な顔をしてきたのは、自分の家に他人が住み着いているからとかそういう理由か?


悠馬君の姉や兄はずっと家の中にいて動かない。それで今まで生き残ることができたんだろう。

やはり、家の中に籠るのは最強なのか?


飯を食べるときに気がついたんだが、この家で食事を用意したり家事をしたりするのは、80代のばあさんだけという。造次さんもたまに手伝うそうだが詳しくは知らない。

まぁ、他人の事はどうでもいいか。






「これくらいか」

今日も俺は、家の左側にある畑で支柱を立てていた。


前を見ると右側にある畑道から、スリングでライフルを肩から吊り下げているじいさんが歩いてきた。


昨日近くでライフルをチラッと見てみたが、ライフルかハーフライフルなのかは素人の俺には分からない。

ただ、ボルトアクションなのは確実だ。



「おい、お前」

作業着姿のじいさんが、そら豆みたいな野菜が入ったザルを俺の前に突き出してきた。


くれるってことだよな?


「あ、どうも。ありがたく頂きます」

そら豆を貰ったがどうすればいいんだよ、茹でて食えばいいのか。

他にもカボチャ3つ貰ったが、これも茹でて食えばいいのか。

料理するの面倒だから、誰か俺の専属料理人になってほしい。



俺の目の前にいるじいさんが、支柱に紐を結びつけながら突然話しかけてきた。

「お前、悠馬を送ってくれたことは感謝しとる」


?...お礼言うの遅くない?俺がこの家に来てすぐ言うべきだろ。


頭でそう思うが表情や口には出さない。


「ああ、私にもメリットがあったのでそうしただけですよ」

俺はそう言葉を返したが、じいさんは特に何も言わずに作業している。


無視なのか、言う必要がないのか。


何となく気まずい。


あまり居心地のいい雰囲気ではないので、素早く作業を終わらせる。






今日の畑作業は終わったので、家の中に入って俺は借りた部屋に行こうと階段を上っていると...


「...じゃま......」


JC令花と遭遇した。


「あっすまん」


俺は、すぐに上ってきた階段を下り道を空ける。


令花はずっと自分の部屋にいるので会う機会があまりない。食事のときだけ下にくるが特に俺とは何も話さない。


しかしこの娘、会ったときからずっと態度が悪いな。別に良くしろとは言わないが、毎回廊下ですれ違う度にじゃまっと言われたら不快に思うわ。


お前の父親と弟の命を助けた、命の大恩人に向けていい言葉ではない。


令花は早歩きで階段を下りてきて、

「...ちっ......」


俺の横を通りすぎた。


おいっ、今なんか聞こえたぞ。


......はぁ、なんかこの家の住人とのコミュニケーションが面倒になってきたな。


そろそろ潰すか?...いや、まだ早い。もう少し家の周辺を把握しておきたい。


俺はそう考えながら階段を上り、借りた部屋に入る。


引き戸を閉めて畳に座り胡座をかく。


気持ちを落ち着かせて、先ほど俺を不快にさせた元凶を思い出す。


JC令花はヒッキーであり、家族との中もあまり良好ではないみたいだ。

......そんなことはどうでもいいか。


重要なことは容姿だ。

さっきのあいつ、令花は正直に言うとそこまで可愛くない。

可愛さで言えば、奈那が100点だとすると令花は...30...いや、27点だな。


俺は他人の容姿に点数を付けるクズ野郎だったとはな。


なんかね、令花は抱く気が起きないっていうか、失礼なことを言うけど、魅力的な何かが足りない。

品性?とかそういうものも無いので襲う気にならないんだわ。髪の毛ボサボサだしケアしてないのでは。


あいつを見ると、奈那がどれだけ可愛かったのかが分かるわ。

今でも奈那を失ったことを後悔しているし、いい女ですごく中身も優秀だったのかが分かる。......ん?優秀?...まぁ、いいか。


奈那みたいな美少女は、なかなかいないんだなってよく分かったわ。


今俺は、かなり最低で失礼なことを考えているが、人間であるならばあいつブスだな、とか絶対考えるでしょ。

思っていても口に出さないだけでみんな考えているはず。


だから俺は悪くない。



などと考えながら俺は畳に寝っ転がる。

少し昼寝しようかと目を閉じると、1階から何か大きな声が聞こえた。


俺は飛び起きて周囲を警戒し、腰にあるマカロフに手を伸ばす。


感染者か?それとも人間か?


俺は耳を澄ませて様子を探る。


「だか...も......いの」


「え...も...な......」


...ん?この声は造次さんとばあさんの声だ。なんか言い争っているのか?


俺は気が抜けて畳に座り直す。


立ち上がるのに無駄なエネルギーを使用してしまった。

はぁ、紛らわしいことしやがって。


再び畳に寝っ転がり、今起きたことを思考する。


この俺がわざわざ、1階に下りて事情を聴きに行くなんて真似はしない。

これは家族内の問題であり、赤の他人であり、命の大恩人であるこの俺に、問題を持ってくるなんてあってはならないことだからな。


そんなことを考えながら俺は目を閉じる。











なぜこうなる。


「準備できたかい?」

造次さんは腰のベルトを外して、鉈の鞘をベルトに通しながら話かけてきた。


「ええ、準備バッチリです」

俺はそう言いながら89式に異常がないか確認する。


なぜこんなことをしているのかというと、食料や物資が不足しているから、近くの町?まで調達しに行くことになった。

この家には7人もいるので、物資が減るスピードはものすごく速い。


どうやら、造次さんと悠馬君が家に帰ってくるまで、家にいた住人は畑と家の中だけで過ごしていたそうだ。つまり、一度も外に物資を調達しに外に出ていない。


行けよ、動けよ、働けよ。


あまり俺は行きたくなかったが、この辺りの地形を知るいい機会だと思い最終的に行くことにした。


何を調達しに行くのかというと、調味料や医薬品、衛生用品などを主な目的として調達するらしい。


あとは車の燃料も必要。


俺の車の燃料も、もう半分以下なのでガソリンスタンドに行って入れておきたい。


ガソスタは停電していると思うので、ポンプは動かないだろうが手動でなら給油できるはず。

やったこと無いから分からないが、行けばなんとかなると思う。最悪、放置車両から燃料抜き取って給油すればいいと思う。


誰の車で移動するのかは、俺の車に俺が乗って、令一郎の車に造次さんと令一郎が乗るそうだ。

なぜ令一郎が同行するのかは知らない。


令一郎も同行するのは、人手が増えていいかもしれないが、俺を襲ってこないよな?

さすがに、父親の前では俺を襲わないと思いたい。


今から向かう町?については、この家から車で15分くらいのところにあるそうだ。

市街地よりは遥かに小規模な町らしいが、もしかしたら生存者がいるかもしれない......いや、絶対いるだろう。ここ田舎だし、この家の住人でも家に籠って生きていたんだから。


襲われるかもしれないので、気は抜かずに油断せず行動する。


造次さんは、人間に襲われたことが無いので、言葉で気をつけてくれと言っても分かってないと思う。


俺は、車庫の前に停めてある車に行こうとしたら、玄関の扉が開いて令一郎が銃を持って出てきた。



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