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しかし、こいつ怪しくないか?

さっき見た感じ、この辺は畑や田んぼばかりなのに、いきなり出てくるのは怪しすぎる。

 

だが、俺の目の前で頼み込んでいる男は、そこまで脅威にはならない気がする。

車内からこの男を見ると、男の子を抱き抱えて装備している以外には特に武器は持ってなさそう。


見た目だけ見ればいい人そうな雰囲気なんだが、裏で悪いことをやってそうなイメージがある。


俺を車の外に引きずり出して、殺すつもりなのかもしれない。

しかし俺を襲うなら、窓越しで石でも投げつけてくるだろう。すぐに攻撃してこないのは油断させるためか?


...うーんどうしよう。


このまま無視して走り去ってもいいんだが、これは俺にとってのチャンスなのでは?


奈那という使用人が消えた今、こいつが次の使用人なんじゃないのか。

もし俺に仕える意志があるのであれば使用人の地位を授けよう。



数秒ほど思考した結果、窓越しに乗車目的を聞いてみることにする。先ずは友好的に接して、牙を剥いてきたら処理する。


俺は右手でマカロフを向けながら、左手で持っているライトで男を照らして問いかける。

「何かご用ですか?」


男はマカロフを見て、一瞬驚いたような表情をしたが、すぐに俺の問いに答えてきた。

「お願いです、私の家の近くまで乗せて頂けませんか?」


先ほどの言葉遣いより、丁寧な感じで頼み込んできた。


こいつの家が近くにあるのか?


声が聞こえづらいので窓を数cmだけ開ける。


「その前に、なぜこんな場所にいるんですか?」


男は焦ったような表情で答えた。

「感染者に追われて、走って家まで帰るつもりだったんです。でも、もう悠馬の体力が限界なので、どうかお願いします、乗せてください」 


男は土下座しそうな勢いで頭を下げてきた。


抱き抱えられている子供は、悠馬というのか...どうでもいいな。

目を向けると、疲れているのか元気が無さそうだ。


...正直に言うと超怪しい、何なのこいつらって感じ。


「走って、ですか。車はどこに?家は近くにあるんですか?それと...」

俺は湧き出た疑問を質問する。


男は丁寧に俺の疑問に答えてくれた。

「小学校に避難していて...」



俺は、時折周囲を警戒しながら男の話を聞いた。


小学校?...ここからだと結構遠くないか?

あ、もしかして俺の知ってる市街地の小学校じゃなくてこの辺のやつか。


それから、この男は造次と名乗り、会社員をしていると言った。


今まで、どう過ごしていたのかを聞いたら、造次さんは会社帰りに小学校まで悠馬君を迎えに行ったそうだ。

その小学校では偶然、避難所が設置されていたので、後で家族と合流する予定で小学校に留まっていたらしい。


小学校には少数の自衛官や警察官がいて、今は外に行くのは危険だからと言われ、自宅に帰るのを引き止められたのも留まる理由になったそう。


で、つい先ほど小学校の内部から感染した人が出て、車で逃げようとしたが駐車場には大量の感染者がいたので乗れなかったらしい。


そこで、しかたなく悠馬君を担いで走って家を目指すことにした。途中、感染者に追われながらも、何とか振り切って今俺と出会った。


なんか、内部から感染者が出たのって奈那の境遇と似ているような気がする。


家がある場所は、ここからあと2㎞ちょっとの場所にあるらしい。

造次さん、よくここまで走ってこれたな。俺より体力あるのか?



家の住人は、ジジババと悠馬君の姉と兄がいるんだって。造次さんの奥さんは、県外で仕事をしているので、もしかしたら帰ってきていないかもと言っている。

全員揃っていたら7人なので結構多いな。



ここから大事な話なんだが、俺が車に乗せて何のメリットがあるのかを聞いたら、家にソーラーパネルがあり、ある程度は文明的な生活ができることと、俺に数ヶ月くらいはいてもいいとか言っている。


あと、家は農家なので周りに畑があって、そこで取れる野菜などをそこそこ分けてやってもいいと。


個人的に野菜はすごく食べたい。今まで味の濃い保存食生活だったから、野菜を食べて体をリフレッシュさせたい。

あと、家にいる造次さんのお父さん?お爺さん?が猟銃のライフルを持っているそうだ。


造次さんが言っていることがすべて本当なら、これはすごく美味しい獲物だと思う。


どうしようか。


造次さんと子供を車に乗せれば、インフラが整った家で短期間過ごすことができ、野菜を食べることができる。


それとも、この話は無視して走り去るか。


10秒ほど悩んだ結果、俺にとってメリットがあるので行くことにする。



造次さんは自分のことを話し終わった後、俺の名前を聞いてきたが適当に偽名を答えておいた。

その他、持っている銃は本物なのかとか聞いてきたが、落ちていたものを拾ったと言った。嘘ではないからな。



しかしこの造次さんとやら、初対面の俺に個人情報をベラベラ喋ってもいいのかと聞いてみた。


「私は、人を見る目があるので大丈夫です。あなたは、銃を撃ってきたり脅してきたりはしていません。

だから信用することにしたんです」


この人、見る目ないな。

俺の本性に気づかないとはな。


...もしかして、造次さん達は暴徒に襲われたことがないのか?だから俺を信用してるのか?

それとも、俺の言葉遣いや態度が丁寧だったからいい人に見えたのか?もしそうなら、俺の演技スキルが向上しているな。



俺は銃を持ったまま車から降りて、造次さんと悠馬君が怪我をしていないか、武器を持っていたりしないか、確認して車に乗せることにした。

あと、車内の荷物に触らないよう警告しておいた。



「では、造次さん、悠馬君よろしくお願いします」

信頼を築くためには、握手はしておいたほうがいいだろう。例え偽りの信頼であったとしても。


俺は手袋を外して右手を差し出す。


「こちらこそ、よろしくお願いします」

造次さんは、俺の差し出した右手を握り返し握手した。


「ほら悠馬、ちゃんと挨拶するんだ」

「...よろしくおねがいします」

悠馬君は頭を下げてお辞儀した。


まぁなんだ、純粋でいい子なんだろう。


車内は狭いので、悠馬君は造次さんの膝の上に座ることになるが我慢してくれ。


俺は二人をいつでも撃てるように、膝にマカロフを置いたままハンドルを握る。





家がどこにあるのか把握してから、こいつらを消すか?それとも内部を乗っ取って使役するか?


......こいつらの話が本当ならいいな。


もし、嘘をついていたら拷問して消してやる。

感染者の集団に遭遇したときは、囮にして有効活用するか。


俺はそう考えながらアクセルを踏んだ。









「あぁぁぁあったかいぃ」

俺は湯船につかり体をリラックスさせる。

久しぶりに風呂に入ったので、体の汚れが落ちて精神力が回復した。

風呂は回復スポットだわ。


周りを見回して風呂場を見る。


風呂の棚には、ビニール袋に入ったマカロフが置いてある。念のために警戒はしておくべきだからな。


棚から視線を横にずらして壁を見る。

この風呂場、結構新しいように見えるんだがリフォームしたのか?などと考えながら先ほど起きたことを思い出す。


この家に来るまで、感染者や人間には遭遇しなかった。途中、猫か狸?か何か轢いてしまったが、車が汚れたくらいで特に問題は起きなかった。


しかし、俺の車がこの家の車庫の前に停めた時に問題が起こった。

玄関から、いきなりライフル持ったお爺さんが出てきたので、撃ち合いになるかと思ったが造次さんが止めた。


そのあとは、彼らの家族内のお話でお涙頂戴の展開よ。



さくっと、互いに自己紹介して皆さんご一緒に飯食って、俺は今風呂入ってる。


飯のときに自己紹介したけどさ、俺歓迎されてなくね。


今この家にいるのが、30代男性の造次さん、小学生の悠馬君。 

話が通じなさそうでライフルを持った、80代の徳蔵じいさん。

ボケているがいい人そうな、80代のばあさん。

20代男性、ニート令一郎

10代、引きこもりJC令花


この家やばくね。



特に、じいさんと令一郎は態度がヤバイ。嫌がらせはしてこないけど、めっちゃ嫌な顔をされる。

俺は何も悪いことをしてないのに、家族の命を助けてやった恩人に向ける態度ではない。


俺はため息をつく。

そろそろのぼせそうになってきたので風呂から移動する。


2階に貸してもらった部屋に移動するとき、ばあさんとすれ違った。


ばあさんはしわしわの顔で俺に話しかけてきた。

「風呂どうだっか」


「とても良かったです。貸してくださり感謝しています」

俺は笑顔で、如何にも感謝してますといった感じで答える。


「おお、そうかよかよか。困ったときは助け合いだよぉ」

へぇ俺が嫌いな言葉だな。

ん?...俺困ってなくね。このばあさんボケてんのか話が通じていない。


話し合いが面倒なので、適当に終わらせて部屋に入る。






「あぁぁ疲れたぁ」

俺は畳に敷かれている布団に倒れ込む。

布団から、他人の臭いが少しするがこんなもんだろう。


俺は布団で転がりながら手元にあるマカロフを見る。


家の中に持ち込んだ武器は、リュックの中に入っている手榴弾1個と銃剣1本だけ。それと今持ってるマカロフ1丁のみ。


変に警戒されないように、目立つ武器はすべて車に入っている。俺は楽をしたいので、まだこの家では何もしないつもりだ。



今日は真っ暗な中運転したので精神的に疲労している。

体も、もうくたくたなので早く寝たい。


布団から立ち上がり電気を消す。



久々にぐっすり眠れそうだな。

俺は目を閉じるとすぐに眠りについた。

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