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19 疲


額に小さな穴が空き、目から血の涙を流している奈那と目が合った。

怨念のこもった眼で俺を見ている気がした。


「お前が悪いんだ、お前が銃を向けたから...」

俺は思わず口に出す。


お前が銃を向けてきたから、俺はやり返しただけで何も間違ったことはしてない。

反抗してきて返り討ちにあったのはお前だ。

感染者に喰われたのもお前の不手際だ。俺もお前と同じように、感染者に襲われたが俺は生きている。

俺は何一つ悪いことはしていない。





.........だが、俺は奈那を死なす気はなかった。

ただ感染者を誘き寄せて、奈那の注意を逸らし、銃口を俺から外して銃を取り上げるだけ。

それだけだったのに、何で死ぬんだよ......。


何で俺が、こんな罪悪感みたいな感情が湧いてくるんだ?社長を殺したときは何も感じなかったのに...。


くそっ、奈那を抱いたから情でも湧いたのか。

 


そんなことを奈那の顔を見ながら考えていたら、



突然外から奇声が聞こえた。


「っ!」

やばっ、こんなところで考え事をしている場合ではない。早くこの場を離れないと。


俺は入り口に行って店内から出ようとしたが、駐車場をうろうろしていた2体の感染者が、俺の姿を見つけると奇声を発してこちらに走ってきた。


「くそがっ」

悪態をついてしまう。


立った状態で89式を構えて、俺に迫りくる感染者に発砲する。

手前にいた感染者は首に命中して倒れたが、もう1体の感染者には命中せず全速力で走ってきた。片目が飛び出ていて、頬の肉が食い千切られている顔が俺に近づく。


3点バーストで4回ほど発砲して、胸や頭に命中し感染者は倒れた。

1体の感染者を倒すのに、10発以上も使ってしまったが生き残るためには仕方ない。


まだ奇声が聞こえるので周囲を見回すと、交差点近くの道路から感染者が10体以上、俺のところに向かって走ってきているのが見えた。


これは...数が多いな。

車に乗って逃げようかと一瞬考えたが、家にまでついてこられたら困るのでここで始末する。


俺は入り口で片膝をついて89式を構える。先頭を走っている感染者を狙い3点バーストで発砲。


発砲した反動が体に伝わる。これ、撃ちすぎたら体に良くない影響がでそう、などと思いながら再度発砲。


先頭の奴に向けて発砲したが、当たっていないのか全力で走ってくる。


俺は銃を構えなおして、よく狙って発砲したら運良く頭に命中し、感染者は勢いよく地面に倒れた。その倒れた感染者に、後ろを走っていた感染者が躓き2体ほど転倒したが、残り10体ほどが俺に向かってきた。


感染者がコンビニの駐車場まで入ってきたので、俺は距離をとるため車のボンネットに足をかけてルーフに上がる。


車の上に立った状態で89式を構えて発砲、距離も近いので胸部に命中し倒れた。しかし、まだ2体しか倒せていないので、このままでは不味いと思い、手榴弾を使用して一気に倒そうかと考えたがやめた。


手榴弾を使用すれば破片が飛んでくるので、姿勢を低くするか伏せなければいけない。しかし、今俺は車の上に乗っている状態なので伏せるのは難しい。

自分にまで破片が飛んできて、怪我をするかもしれないので使わないことにした。

何より俺の車にまで被害が及ぶだろう。


仕方なく89式で感染者を倒していくことにする。


俺に手を伸ばしてきた感染者に狙いをつけて、トリガーを引いたが弾が出ない。


やべっ、感染者を倒すのに夢中でリロードをし忘れた。

だが、今の状況では無理だ。


すぐに腰のベルトに挟んであるマカロフを引き抜き発砲する。


頭部に命中し感染者は倒れたが、マカロフもホールドオープンの状態になっており弾がない。


俺は手を伸ばしてくる感染者達に捕まらないよう、ジャンプしながら89式をリロードする。



ジャンプしている時、ある感情が湧いてきた。


やばい、なんか楽しい。怖いのではなく何かが楽しい。足を捕まれたら、俺は引きずり下ろされて喰われるだろう。言葉では言い表せないが、謎のスリル感があって楽しく感じた。


気のせいか、自分の顔が笑っているような気がした。


89式をリロードし終わったので、車の周りに寄ってきている感染者達に次々に弾をくれてやり、俺を喰おうとした感染者達を処理した。


車の上から周りを見ると、地面には感染者がたくさん転がっていた。


放置しておいたら疫病とか発生しそうだな、と考えながら車の上から降りる。


銃を派手に使ったので、また感染者がここに集まって来るだろうから、さっさと移動したい。

だが、チンピラの持っていた銃を回収したいので、素早く回収してから帰ろうと思う。



俺は急いで入り口に行くと、奈那の死体が視界に入った。

美しい黒髪のポニーテールが地面に着いていて、真っ白な肌が血に染まっていた。



奈那......。




俺は頭を振り、気持ちを切り替えてチンピラの銃を回収する。


入り口のドアの横でくたばっているチンピラから、散弾銃とボディバッグを回収。次は店内に倒れてるチンピラに近づいて、横に落ちている散弾銃を2丁回収。


散弾銃ばかりなのは何か理由があるのか?......後で考えよう。

倒れてるいる人数より銃の数が少ないのは、仲間が回収していったんだろう。


3丁の散弾銃しか回収できなかったが、今は銃が手に入っただけでも良しとしよう。ショットシェルは多分、ボディバッグの中に入っていると思うので後で確認する。


もうここには用はないので、急いで家に帰ることにする。



俺は入り口に行って外に出ようとする。


なぜか、足が奈那の横で止まってしまった。



......奈那。



「じゃあな」

奈那の姿は見ずに挨拶だけはしておく。


俺は早歩きで車に向かい、鍵を開けてすぐに乗り込む。

エンジンを掛けて、ブレーキを踏みシフトレバーを操作する。アクセルを踏んでハンドルを左に切り、家を目指した。




運転中、誰も喋らない車内が気になった。










家に帰ってきた。

家には、チンピラ達は来ていないようで外観はいつもと変わらなかった。多分家の中も大丈夫だろうが、念のため警戒しておく。


帰ってくる道中、チンピラにも感染者にも遭遇せず、一度も戦闘は発生しなかった。



...なんか............運転しているとき、自分でも何を考えていたのか分からない。


多分ぼーっとしていたのだろう。

そのとき襲われなくて良かったと今になって思う。


俺は今、家の車庫でぼーっとしている。何もやる気が起きないし、ただただ無の感情しかない。


今の俺は、何も深く考えられない状態だ。


何だろう、奈那がいなくなって妙にふわふわした感じがする。


俺にとってあいつはただの雑用係だったのに。

 


奈那とセックスして俺は依存していたのか?

その失われた時の反動が今きているのか?


奈那と一緒にいた時間は、1ヶ月もなかったと思うんだがな。


前にも思ったが、抱いたから情でも湧いたか?


かもしれんな。


奈那は俺のことを、ただのレイプ犯程度にしか考えていないのかもしれない。しかし、奈那は挟むだけならいいと同意したのでこれは和姦だと......思う。

 

......はぁ。


まぁそれでも別にいいか、少しだけ寂しく感じるがな。




俺は車の座席にもたれ掛かり、ぼーっとしながら左を見る。


左を見ると助手席には、もう誰も乗る人はいないので、今日回収してきた銃が置いてある。



目を閉じながら考える。


なんか今日は疲れたな。

初めて銃を撃って人を殺して、感染者に押し倒されて、奈那が死んで。


いろんな事ありすぎだろ。

しかし、これからどうするか。まだ市街地の家に帰るのは早いと思うので、もう少しだけどこかで過ごしてから帰ろう。

今いるこの家からは、気持ち的な問題で移動したいと思っている。

では、どこに行こうか?




俺は、これからどうするかを考えていたらいつしか眠っていた。

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