18 喪失
グロ注意
俺は立ち止まってしまった。
こういうときは、すぐに伏せるか撃つかしたほうがいいのに。くそっ自分の動きに腹が立つ。
俺は頭を切り替えて、奈那が向けている銃を観察する。
見た感じマカロフっぽい拳銃だな、回転式拳銃ではない。
...というかこいつ、なんで銃を持っているんだ?
奈那の服を脱がすとき銃は持っていなかったので、多分入り口のチンピラの死体から回収したんだろう。
奈那と数秒見つめ合っていたので、すぐに発砲してこないのは何か理由があるのだろう。
ひとまず話を聞いてみることにする。
「なぜ店内にいるんだ?俺はお前に車に行けと言ったのだが」
「死んでよ」
奈那は銃を向けながら言った。
答えになっていない。
奈那を見ると、銃を持つ手が震えている。一瞬だけ下に視線をやると、気のせいか足が震えているように見えた。
こいつ、俺を撃ちたくないのか?言葉と行動が噛み合っていない。
はぁ、俺は何でこいつのことを信用したんだろう?
こいつに銃剣を向けられても、心のどこかでは信じていたのか?まぁ、今この状況ではどうでもいいか。
今思い出したが、こいつにお仕置きしていなかったな。いい機会だから前の続きをしようか。
...しかし、こいつ言うこと聞くのか?
改めて前を見ると、奈那は拳銃を俺に向けている。
「死んでよだと、何の冗談だ?」
こいつ、たかが16の小娘が主人であるこの俺に銃を向けてきた。死に値する。
「あんたも私を犯したくせに」
はぁ?俺がお前を助けた時点で、俺の所有物になっているのに、物をどう扱おうが俺の勝手だろ。
「お前、何がしたいんだ?」
この小娘、頭がおかしいんじゃないのか?
銃を向けて、死んでよと言っておきながら撃ってこない。
なぜすぐに撃たないのか、よほどアホなのか。
ん?......もしかして、おれを殺したくても殺せないのか。
そうか、そういうことか。
目の前にいる、このバカ娘も頭では分かっているんだ。
この無法地帯となった場所で、16の小娘がたった一人で生きていくのが、どれほど難しいのかが分かっているんだ。
俺に保護されて、逃げて、感染者とチンピラに襲われて今に至る。
俺を殺してしまえば、奈那も一人で生きていかなければいけないことは理解しているんだな。
俺という保護者がいなくなるのは、奈那にとってもマイナスの要素が大きいから。
なるほどね、そういうことか。
「あ、あんたが、私を襲わなかったら、私はあの家に居続けれたのに」
奈那が泣きそうな声で叫んだ。
知らんよそんなこと。助けてやったんだからセックスしてもいいだろ。
あっ......。
今の状況が良くないことを思い出した。
やばい、感染者が集まってくるから、すぐにこの場を離れなければいけないのに。
早く、こいつとの会話を切り上げなければ。
しかし、銃を突きつけられた状態では出来ることは少ない。何か、何か無いのか?
俺は、ため息をつくふりをして横目で周囲をじろりと見る。
こいつ、駐車場にいる感染者に気づいていないのか?
これはチャンスだ。
「ふざけるな!俺がお前にどれだけ気を配ったとおもっている。俺は家から出て、危険な場所から物資を調達してきたんだぞ。
お前のために食事と安全を提供した!」
俺は、わざと怒っているような雰囲気を出して大声で怒鳴る。そして、感染者を誘き寄せる。
奈那の体がビクッとして、顔が怯えた表情になった。
俺はさらに追撃する
「分かるか!お前のために俺は外に出たんだ」
「うっうるさい!」
奈那は銃を向けて近づいて来たので、俺は一歩後ろにさがる。
馬鹿な奈那、お前は前に家から逃げ出したときもそうだが、深く考えずに行動しすぎだ。
よし、もう一歩だけ下がるか。
これで奈那を通路から入り口に引きずり出す。
「動かないで!」
奈那が銃口を俺の顔に向けている。
くそっあともう一歩なのに。
ん?奈那の顔を見ていると、視界の端で何か動いたような。
視線を奈那の左後ろにずらすと、3体の感染者が走ってきている。
おっ、今の奈那の声で感染者が気づいたか。
3体の感染者は、こちらに向かって全速力で走ってきている。
よしよしいいぞ、そのままこっちこい。
奈那に警告してやるか。
「おい、後ろから感染者が来ているぞ」
奈那は一瞬ビクッとした。
「馬鹿じゃないの。そんな手に乗るわけ無いでしょ」
奈那は、俺を蔑んだ目で見下している。
やばい、俺もこれはピンチなのでは?
感染者が入り口に近づいてきた音で奈那が振り返った。
「きゃっぁあああ」
奈那は驚いたのか、持っていた拳銃を乱射した。
発射された銃弾が、棚やガラスに当たり不快な音がする。
俺は奈那に撃たれないよう、すぐに近くの通路に滑り込み銃を構える。
滑り込んだ瞬間、通路の角から腹から内臓が出ている感染者が来て、俺に喰らいつこうとしてきた。
俺は3点バーストで発砲したが当たらず、感染者に押し倒される。
「ぐはっ」
やばいやばいやばいやばいやばい、何とかしなくては。
感染者の口に、89式のハンドガードを噛ませているがこの力はやばい。
急いで右手で、ベルトに予備として吊るしてある銃剣を引き抜き、感染者の首に突き刺す。
「おらっ死ね」
ゴガッと音がして感染者が俺の上に倒れ込む。
すぐに感染者の死体をどかして立ち上がると、入り口から悲鳴が聞こえた。
俺は急いで入り口に向かうと...。
「いやっぁあああ、死にたくなあい」
奈那は感染者に腕や胸を喰らいつかれていた。
入り口から、また別の感染者が来て奈那の首に喰らいつき、肉をブチッブチッと喰い千切っている。
奈那は俺に気づいたのか、俺のほうに顔を向けて助けを求めてきた。
「だずげっごぶっがっ」
奈那は、口から大量の血を吐き出しながら左手を伸ばしてきた。
もうだめだ。
俺は89式を構えて、周囲にいる感染者に発砲する。
地面に転がる死体の数が増えていく。
入り口にいる感染者の頭に、5.56㎜弾が当たり中身が弾け飛ぶ。
入り口にいる感染者は、倒した終わったので奈那の近くに行く。歩いていくと、足元に奈那が持っていたマカロフが落ちていたので拾う。
奈那の横にきた。
「...なぃ...じに..だぐ...ぃ.」
奈那は目から血の涙を流し、口から大量の血を吐き出しながら死にたくないと言っている。
もう無理だ。
「奈那、今までよくやった」
俺は、震える手を必死に押さえてマカロフを構え、奈那の頭を撃った。




