四十六話目
四十六話目です
誤字・脱字があったら申し訳ありません
自動ドアを通り抜けると…そこは…本屋だった。
…雪国テイストで言ってみたが特に何か変わるような事はなくいつも通りの本屋である。
入り口すぐのスタッフイチオシの棚は、堅苦しい評論本だったのから、どこかのアイドルの写真集に変わっていた。
最近の本屋は少しずつ本を売ることを諦めている節があり、家電やら文房具やらの、実用性のある物も売り始めている。
それがより、若者の活字離れというのを実感させ、読書家見習い(見習い)の俺としては、寂しかったりもする。
クラスの周りを見てみても、本を読んでいるような奴らは少なく、図書館だって、大体来るやつ全員が顔見知りになってきた。
そしてそれはこの本屋にも適用されていて、店員さんとも何か仲良くなってきた。
ここから始まるラブコメは無いんですかね…。
「んじゃ、先輩どうします?」
「んー?」
「帰ります?」
近くにあった雑誌をペラペラと捲る先輩に話しかける。
元々、ここに来たのは先輩が俺のよく寄る場所を知りたいだけの理由。
ならそれが分かった今、長居する必要はない。
というか、本屋で二人って何するの?一緒に本読んで面白いね~って言い合うの?
絶対違うよ、本屋は一人で来るもんだよ。
誰にも迷惑をかけず、大声を出さず、密かに、自分の求める物語を手に入れる。
それが本屋さんでしょ。
「着いて早々それかい?」
「いや、ここで二人ですることなんて無いですもん」
「僕と始めての共同作業がしたいなんて、大胆だねぇ」
「はぁ…ていうか、先輩真剣読んでますけど何ですかそれ?」
近づいて見てみると、真ん中に大きく「気になる異性を必ず堕とせる!」と書いてある。
…うわぁバカっぽーい。
「先輩…そういうの読むんですね」
「別に真に受けてる訳じゃないよ、何か面白そうじゃないかな?」
「なにがですか」
「いや、こーいうのを見た子が実践してるなんてさ、可愛いじゃん。ほらここ、ボディタッチで素肌触れだって」
見せてきたページには確かに素肌を触らせている写真があるが、明らかに男側薄着過ぎませんかねこれ。
Tシャツ一枚とかこの時期震えるぞ。
他の項目にも、やれ声は高くしろだの、距離は近くにだの、必ず堕とすの意味はこれもしかして高いところから声で油断させて近くに寄って落とすサスペンスの方なのか。
「…まぁ、男の中にはこれで堕ちるやついますよ」
「へぇ…君も?」
「いや、特には…」
あまり手を繋がれる事がないのと、今日含めされたとしても新崎が近くにいる以上、ときめきメモリアルは起こらない。
「そっか」
「えぇ」
先輩は雑誌を閉じて、元の位置に戻すとこちらに向き直った。
「…じゃあさ、君の好きなタイプっている?」
「…冬…」
「冬?」
「ふゆ、服…が、似合う…人、ですかね」
ポロっと捕まりそうな発言をしかけたが上手いこと別のにすり替えられた。
まぁ、冬の暖かそうな服に包まれてる人が好きなのも事実なんだけども。
妹がこんもりとした服装してるの見ると、ほっこりするし。
でもそんな妹からの対応は冬よりも冷たいです。
「冬服…そう…しばらく先だね」
「ですね」
そんな単調な会話をして、その後、特に何事もなく本屋徘徊は終わった。
間違えていつものようにラノベコーナーに行っちゃった~!どうしよ~!みたいなことも勿論無かった。
新崎に遭遇もしなければ、奴、山中と鉢合わせるようなことすらも無い。
だから…だからこそ怖い。
部活の方だって昨日も普通に活動していて、風紀委員が活動停止を求めて乗り込んでくる様子もなかった。
…これは嵐の前の静けさ、なんだろうか。
もしそうならば、風紀委員以外にももう一つ新しい問題がくるか、もしくは風紀委員さんがとんでもない事を仕出かしてしまう恐れがある。
問題起きろ…問題起きろ…。
そう不謹慎な事を念じながら本屋を出て街道を歩くが残念、誰かに遭遇なんてしなかった。
まるで世界がそれをさせないように。
「で、どうしますか?」
まだ時刻は2時。
いつも買うものを決めてから出掛けている俺からしたら長時間の外出になる。
「君って、いつも人任せだね」
隣でトテトテ歩く先輩は、自分で決めろという言葉を濁して優しく言われる。
「じゃ、帰って良いです?」
「いいよ」
「えっ」
冗談のつもりがすんなりと受け入れられ、呆気にとられる。
「知りたいことも知れたしね、僕はもう満足だよ!」
「そ、そうですか…」
「ん~♪何~?僕ともっといたいの?ねぇ?」
「違いますよ…ほらじゃあ、帰りましょ」
「はーい」
いつもより遅く、先輩に歩幅を合わせてゆっくりと歩くと、指に突然暖かさが伝う。
手を見てみれば先輩は当たり前のように手を繋ごうとしてきて…かわそうとしたら足を踏まれた。
諦めて手を放り出すと、エサに飛び付く魚のように手がくっついてくる。
この光景は端から見たら、兄弟として見られるだろう。
だけど本当はそれ以下で、それ以上になれるかもしれない関係。
だから…この手を繋いだ兄の姿を見て、妹が実は血が繋がってなくてお兄ちゃん大好きっ子な報告を…いつまでも待ってます。
お兄ちゃん信じてるから!
ついでにお兄ちゃんから報告を一つ。
毎日のように使っている帰路を使って歩いていくと見慣れた自分の家に着いた。
隣には変わらず先輩がいる。
「先輩の家って、もう少し先なんですか?」
「ん?もう過ぎたよ?」
「ん?」
「いやぁ、君のお家知らないから、知っておこうかなぁって」
「え、でも」
「あれはもちろん嘘だよ~。
君って素直に答えても教えてくれなさそうだったしさ」
「…………」
「これからも仲良くね?」
お兄ちゃんお家を知ってる人がもう一人増えました。




