三十七話目
三十七話目です
誤字・脱字があったら申し訳ありません
考えないようにと何回も思っても一つ一つの行動がそれをやめさせる。
もっとバカになってただ目の前の楽しみを全力で楽しめばそれでいいんだろう。
周りを心配させずに真っ当に青春を送れるだろう。
本来なら。
「あぁ、そうだこれ矢波先輩が渡しといてって」
「…その話なら俺も聞いた」
「そっか、じゃあこれな」
新崎は二本の缶ジュースを渡してくる。
ていうか桜丘先輩固まってるんだけどあれ何なの。
「あのね!灯くんっ!」
「え…あ、何でしょうか…」
新崎のななめ後ろ辺りにいた笠木さんが少し前にでて話しかけてくる。
その頬はほんのすこしだが赤く、また新崎が何かしたんだろうなぁ…と思わせる。
「陽斗ったら私たちが着替えてるときに急に入ってくるんだよっ!まったくもう…」
「へぇ…ふーん…」
しらっとした目を新崎に向ける。
「いや違うんだって灯ぃ!」
いやまぁ別にそうなればと思って俺はそこに向かわせたわけだし特に何か謝ることも無いんだけど。
「スタッフの人に押されて、それで扉に…!」
「素直に見たいならそう言えば良かったですのに」
「いや、だから、本当に違うんだって!」
いつもの俺ならこんな話を聞いてもHAHAHAぐらいな感じだったが、今の俺には結構色々グサグサくるところがある。
こんなときは何か一言でも言えればいいのだろうが、
昔っから話に割り込むのは得意ではない。
いつもは大体相手から話しかけられないと俺は何も言えないのである。
…現実って辛いなぁ。
……ん?
「な、なぁ…それって…」
ちらりと覗いた天使の姿。
新崎のほぼ真後ろと俺の中学生が陥ったりする自分何してんだろ…の二つの出来事によって全く視界に入ることが無かった冬花ちゃん。
だがひょこっと新崎の後ろから覗いたその天使は頭に少し大きいがティアラをつけており、ドレスやら化粧やらで着飾るのではなくそのままの良さに少しだけ加えることの良さを体現しており、視界に入ることがなかったのではなく、入れることが俺には尊すぎて出来なかったと錯覚させるぐらいの美しさをもった女の子がそこにいた。
「これ…座って…たら、スタッフの人が乗っけてくれた…ん…」
俺の視線に気づいたのか冬花ちゃんはこちらに近寄ってきて親切に教えてくれた。
そして歩いた際にずり落ちてきたティアラを戻そうと冬花ちゃんは両手で優しくティアラを触る。
…何かもうこれからさっきみたいな状態になったらとりあえず、冬花ちゃんがいるから、ってことで言い訳になるんじゃないだろうか…
実際もう一瞬にしてこの立場から離れたくなくなったわけだし。
いや、そんなことどうでもいい…、まずは写真だ、次に握手だ、その次が地下アイドル脱却とかそんな感じだ。
ス、スマホくん…
「急に携帯なんて取り出してどうしたんですの?仁田…?」
「…えっ、いやまぁ…き、記念にとぉ?」
アカン、声が裏返った
「あ、それいいねっ!みんなで写真撮ろうよ!…って私、着替えの時に置いてきちゃったなぁ」
笠木さんは顎に人差し指を置いて、少し上を見上げる。
まぁドレスには収納ないイメージだし、ていうかこういうイベント自体多分スマホは没収されるもんだと思う。
新崎も着替えてる時に、ロッカーに入れてた気がする。
ちゃっちゃかと着替えさせられてた時に、片付けられそうになってたのを回収しといて案外良かったのかもしれない。
「まぁ、それもいいですわね…ですけども」
「…あぁ、そろそろ時間っぼいな、スタッフさんもだいぶ少なくなったし、な」
言われて気づいた。
確かに露骨に少なくなっているし、ここに最初来たときは聞こえてすらいなかった、観客の声がザワザワとした声が聞こえるようになってきている。
こいつかなりの時間無言だったのに気付いてなかったですよ。
難聴系主人公なら結構です。
…違う、そういうことじゃなくて、俺が撮りたいのは冬花ちゃんなだけであって皆で青春の一コマを撮りたい訳ではない。
…いやでも待ってほしい。
俺がこれまで撮ってきたのは日常の瞬間の写真だ、
つまり写真を撮られると分かって撮られた写真はない。
「おーい、灯?行かないのか~?…ていうか桜丘先輩もいい加減動いて下さいって!」
それはつまりここでグッと堪えてステージに立ち、我慢をすることによっていつもとは違う一瞬の写真をを手にいれることが出来るということ。
「…ぁ…あぅ…」
「ショートしてますわね…」
ならば耐えようではないか!
神の与えし試練を!
…思い返すと俺のしてることただの盗撮してる犯罪者…
後で写真消しておこうかな…
まぁ…それは後で手に入るであろう物の質によるところではある。
いや、冬花ちゃんが写ってる時点で………………
「……………り!…灯!」
「うおっ!ぉぅ…何だよ…」
「いや……灯…」
周りを見ろと言わんばかりに視線を俺から反らす。
その通りに周りを見渡すと、
まず最初に強い光のある方向に目が向く。その光の先では知らない人がドレスで着飾ってステージの上を歩いている。
ただその歩き方はおぼついている。
そして耳に大音量で流れる何かよく分からない曲が入ってくる。
あ、ここ舞台袖的なとこか。
「何?もう俺達終わったの?」
めんどくさい部分の記憶がはじけ飛ぶのはこちらとしてはかなり嬉しい。ついでに過去のめんどくさい所の記憶も無くしてくれないだろうか。
そうすればこの青春物語を全力で楽しめるような気がする、多分。
「いえ、ここからですのだけど…」
そう言って舞台袖の先のステージに城戸さんは目を向ける。
現実からは逃げられないんですね…
「灯をここまで引っ張ってくるの大変だったんだからな!」
「服も借り物だからねっ、汚したりしたら大変だよ!」
「……まぁ、あんがと」
「おぅ!」
……くっそ考え込んでる間にイベント終了とかそういう展開は起きなかったか。
まぁいいさ、今の俺はこれをさっさと終わるせことに決めた。
「で、そんなことより俺はどういう感じで動けばいいの?出番は最初?どこらへん?」
「おぉ、まるでさっきのため息ばっかだったのが嘘のようだ…!」
「えっと、灯くんは矢波先輩がまだ時間かかるみたいで…最後だね」
トリ…ほぉーう…結構辛い試練じゃないですかぁ…………
えっマジで?
「ていうか俺矢波先輩と一緒になの?」
「桜丘先輩と矢波先輩、二人と一緒ですわね、…………最後、羨ましい…」
つまり桜丘先輩がさっきから微動だにしないのはそういうことも関係してるってことなんだろうか、まぁ最後だろうがなかろうが、あれでしょ?歩けば終わるんでしょ?
「…ちなみに陽斗は?」
「俺は秋葉と夏とで、今出てる人の次の次だな」
「ほーん」
「まぁなんだ灯、最後って言ってもこれ自体大勢が出てるって訳でもないしそんなに終わるのに大きな差が出るわけじゃないだろ」
「ステージに出るっていったってほんの数分ぐらいだしね」
それドレスを見せるイベントとしてどうなの…
「ま、だったら陽斗達もそろそろ準備しといた方がいいんじゃないか?」
近くにいるスタッフさんを見てみると声をかけづらそうにこちらを見て苦笑いをしている。
何かすいませんね…
「えっと…その、そろそろ来ていただけると…」
俺の視線に気づいて好機とみたのか、そのスタッフさんは話しかけてくる。
「それじゃ行ってくるな!灯っ!」
「おーう」
「頑張ってくるねっ!」
新崎と笠木さんは一言言うと
スタッフさんと一緒に歩いていった。
「あの…城戸さん?」
だが城戸さんだけは動かずこ俺の全身をみると微笑んだ。
「仁田…案外その服、似合ってますわよ」
「な、何ですか急に…」
「ふふっ…」
城戸さんは言ってすぐに振り替えって新崎の後を追いかけていった。
「…………」
…昔の俺なら多分この言葉で
惚れていたであろう。
だけどね、ほらあの人新崎大好きだから、今のは主人公に言う似合ってるねとは
かなり違う純粋な誉め言葉であろう。
それでも男の子には効果抜群なんだよなぁ…




