サプライズ
三十五話目
誤字・脱字があったら申し訳ありません
…ふと思ったことがある。
なぜこの部活、
ていうかここに俺はいるのだろうか。
俺の役割とは本来、背景に徹して主人公たちとはなるべく関わらないこと、あってないような仕事を無意識にしているはずである。
なのに今俺がいる場所は、
その背景とは違う場所。
「……灯、何か考えことか?」
「んー、別に」
「そうか」
今も新崎、主人公から声をかけられてしまった。
…元々の出会いは単なる事故だった。
もしかしたらそれは運命というやつかもしれないが、そんな片方が気絶して始まる男同士の運命なんて俺は求めてない。
…もしかして、もしかしてだが、
俺はここにいてはいけないんじゃないだろうか。
もっと今の俺のポジションを上手く出来るやつがいるのではなかろうか。
ほら、あの山中とかいう一年生とか。
でも活発な主人公には静かな男子の友人が
つくのが基本。
…山中はあれ多分静かじゃない、
絶対うるさいやつ。
他にも、適当に当てはまりそうな人を
考えてみたが、結局は新崎の周りの人が関係すること、俺と新崎の共通の知り合いなんてごくわずかだから考えるだけ無駄だと思う。
…今、思い付く限りでは、
消去法でいくと俺なのかもしれない、
だけども俺は静かというわけではない、
まぁ会話は苦手なんですけどね。
それただのコミュ障じゃね?
……考えてみればだが、こいつとあってまだ
一ヶ月も経っていない、
ていうか全然経ってない。
なのにここまで考えさせられるのは、
やっぱり今の環境と俺の昔の環境の差が
大きいからなのだろうか、今の環境はほぼ毎日新しいことだらけである、目を覚まして学校に行けば昔の俺がしてなかったような青春を毎日送っている自分がいる、だからなのだろうか、
違和感を感じてしまっている。
今ここで友達…部活仲間たちと仲良く会話することなんて昔の俺なら絶対無かった、
むしろそういう人達をみて羨ましく思ってたぐらい。
本当に今の俺はここにいていいのだろうか…
色々と考え込んでしまったが別に今から部活やめます、とかそういうことを言う気は特にないので先程までのことは心のどこかにしまっておくことにする。
いずれ、新崎の昔の友達とかいうやつが現れたりしたら、その時は潔くこの場所を譲ろうと思う。
その後は、新崎達と会う前に戻るだけ、
背景に徹するまでである。
…まぁ、全部もしもの話なんだけど。
「…おーい?にーにゃーん?」
「えっ、あ、はい」
「お、やっと反応してくれた」
「あ、何かすいません、色々と考え事を」
「いや別に問題ないけど、
それよりも、何だけど」
「はい」
「この後のファッショ」
「…!ストップですわ!矢波先輩!」
「そうですよ!サプライズなんですからっ!」
「むぅ…二人とも知ってるのに…」
「…?なんですの?小声でブツブツと」
「なーんでもなーい、ねっ?にーにゃん!」
「は…はぁ」
…こちらを覗き込むように見てくる先輩の可愛さに少しだけドキッとしてしまった、
だけどまぁ冬花ちゃんには敵わないんですけどね!ねっ!冬花ちゃ…あ、新崎と手繋いでるぅ…
「…ねぇ、やーちゃん、この後って私が行きたいって言ったところだよね?でもなんでにーにゃんくん達も一緒なの?」
「…い、今ごろ?…偶然なんじゃないかな~」
「…?…む、もしかして、嘘ついたの?
やーちゃん」
顔をムッとさせ頬を少し膨らませる桜丘先輩。
「うーん、どうかなー?」
「……」
無言で矢波先輩を、見つめる桜丘先輩、
だけども本気で怒っているという様子は見た感じは無い。
その様子を見て先輩は舌を少しだして可愛らしく
「テヘペロッ☆」
そう言った。
…うわぁ
「にーにゃん、露骨に嫌な顔するの、結構こっちとしては辛いんだけど」
そんなこと言われてもね…
「…テヘペロ」
「うわぁ…」
ね?そういう反応になるでしょ?
「ていうか先輩」
「ん?何かな後輩くん?」
「この後行く場所のことってさっき、フードコートで俺達がいないときに話したんですか?」
「うん、そうだけど」
「だったらこの後自分達と行動するとかも先輩…桜丘先輩も知ってるはずじゃ無いんですか?」
そのガールズトークに桜丘先輩も同席していたならその話を聞くことになるはず、だけとも桜丘先輩の反応からして初耳という感じである。
「それはまぁ、春が飲み物とか取りに行ってるときに、さっと決めちゃったよ」
「行動はやいですね…」
「春ったら恥ずかしがりやを直したいって言うのに人前に出るのは嫌がるからねー、こういう風にしないと絶対逃げちゃうし僕が頑張らないとねー」
「じゃあ、まぁ頑張ってください」
「うん、りょーかい」
「…えっと、やーちゃん、にーにゃんくんと楽しく会話してるとこ悪いんだけど…付いたみたいだよ?」
…付いたのは先程俺と新崎で行ったところとまったく同じの場所、だが準備が終わったらしく、本格的なカメラを持った人などがどんどん奥に歩いていっている、そのなかにはもちろん普通なお客さんもいる。
「あ、じゃあ自分観客席に行っときますねー」
「おう、俺も付いてくぞ!」
俺と新崎が歩きだそうとすると何故か誰かから腕を捕まれる、振り返ってみるとそこには満面の笑みの矢波先輩が、そしてそのとなりには新崎の腕を掴む城戸さんが。
…新崎は分かる、でもなんで俺も?
「…陽斗と仁田?ここがどういう場所とかそういうの、聞かないんですの?」
「えっ…」
「陽斗も灯くんもここが何なのか最初っから知ってるみたいな感じだったよねっ」
「…あの、そんなことより先輩…なんで俺の腕を…離してくれません?」
「んー?やだー」
えぇ…
俺が嫌そうな顔をすると先輩は腕に力を込める。
でもそれは貧弱な俺でも痛くないほどの実に優しい攻撃で。
「…もしかしてなんですけど…ここがどんなのか知っているんですの?」
「…うん」
新崎が素直に頷いて返事をする、それを見ると城戸さんの隣にいる笠木さんは少しガッカリした感じで苦笑いをする。新崎の腕を掴んでいる城戸さんは俯いてしまった…
そんなにこのサプライズ本気出してたの?
「そう…ですか」
「あ、いや、たまたまっていうか何とい」
「だったら話は早いですわ!陽斗も一緒にステージに出ていきますわよ!乙女に恥をかかせた罰、償って貰いますわよね!」
「…ん、え?」
どうやらこのサプライズの失敗は城戸さんにとって新崎をステージに立たせる良い言い訳になったらしい。
城戸さんは掴んでいる新崎の腕を引っ張って観客席じゃない何処かに連れていかれた、それに続いて笠木さんと冬花ちゃんも付いていった。
新崎…お前のことは忘れない…
多分、きっと、絶対。
「先輩…新崎達、行っちゃんたんで、俺もそろそろ…」
いつの間にか引っ付いていた先輩を剥がそうとすると、その先輩から衝撃の一言が。
「き、み、も、ステージに立ってもらうけど、いいよね~?あ、後、春、どさくさに紛れて逃げようとしないでね?」
「…い、いや、だだだってこれ、話からして絶対、私も、で、出るんだよね!?」
「うん!さ、行こっか!にーにゃん!春!」
…………………ん?




