テーブル
二九話目
誤字・脱字があったら申し訳ありません
恋ばなが終わり、
話の内容は雑談へと変わっていった。
「先輩たちはどうしてここに?」
新崎が飲んでいたコーヒーのカップを
置いて言う。
言われてみればそうである、
買いものをするだけなら、学校の近くですれば
良いだけの話。
それなりの距離があるここにくる必要はない。
「あー、そういえば言ってなかったなぁ」
矢波さんはそう言って自分のカバンを
開いて何かを探し始めた。
「えーっと、どこかなー、…あったあった!」
カバンの中から紙を出して
テーブルの上に置いた、
その紙を新崎は手に持って俺にも見せてくれる。
「えっと…ファッションショー?」
「って書いてあるな」
紙にはファッションショーの文字が大きく
載せられていた。
内容はお店側が用意してくれた服を
お客さんが着る、ということらしい。
その紙の裏側には写真もついており、
それを見る限りは普通の服というより
ドレスっぽい感じの服を着た人が数人
写っていた。
「ここに出ようかなぁって思ってさ、エントリーしてきたんだ、
それで時間を潰している時に君たちを見つけたの」
「わ、私は出ないけどね、ただの付き添い」
桜丘さんがそう言うと、
矢波さんが少し笑った。
「えっと、どうしたの?やーちゃん」
「んーっとねー、春のエントリー、しちゃった」
語尾にハートでも付きそうなぐらいの
可愛らしい声で言う矢波さん、
だがやってることは全然可愛くない。
勝手にエントリーされてたことを知った
桜丘さんはどんどん顔が赤くなり
「え、えぇぇぇぇ!」
そう大声で叫んだ、
カフェの中にいる客だけでなく、
店の外で歩いている他のお客の目線も
全て桜丘のところに向かう。
そのことに気づいたのか桜丘さんはゴンッと
鈍い音をたてて机に突っ伏した。
「私、絶対行かないかなら…」
桜丘さんは突っ伏したまま喋る。
「恥ずかしがりやを直したいって言ったの
春じゃん」
そんなこと言ってたんだ、
でもまぁ、あれじゃない?
直したら直したでキャラ薄くなりそう。
案外ヒロインって大変なんだなぁ。
「…でも先輩のドレス、見てみたいなぁ…」
新崎が小声で言う、
しかし周りは先程の桜丘さんの大声のせいで
なのか先程よりも静かであったために
普通に聞こえてしまった、
また…こいつは…
「ほらぁ、陽斗くんも春のドレス、見てみたいらしいよ?」
「ぅぅ~」
桜丘さんの顔は見えないが
耳は真っ赤になっていた。
「あ、いや、茅野先輩のも」
ちゃっかり名前で呼んでいることにも、
小声で言っていたことが皆に聞こえていたのに
何も言わないのにも俺は触れない。
何も言わない。
見はするがそれ以外は、聞かざる、言わざる、
である。
「僕のも…ふーん…そっかー」
新崎の口説きはどうやら矢波さんには
効かなかった模様。
「にーにゃんは僕のドレス姿、見てみたい?」
「え?ええ」
「ふふーん、そっかぁ」
急に聞かれて少し驚いて雑な返事をしてしまったがまぁ、別にいいでしょ、俺やし。
「ぅぅ…」
桜丘さんはそれなりの時間が過ぎているのに
未だにテーブルに突っ伏し、
うーうー言ってるだけ。
耳の赤さも引いていはいない。
桜丘さんの紅茶は完璧に冷めてしまっている。
「にーにゃん、さっきから春ばっか見てるよねぇ」
「いや、ていうか桜丘先輩無視してゆっくり会話してる二人がどうなんですか…」
矢波さんにとってはいつも通りなのか桜丘さんを気にすることなくゆっくりと二杯めのコーヒーを
飲んだり、雑談をしたりである。
…新崎お前なんでだよ。
「まぁまぁ、もっとにーにゃんもお話しようよー
、ほら僕のことで気になることとかないかな?」
「…身ちょ…ゴフッ」
「乙女のボディについて聞こうだなんて駄目だなぁにーにゃんは」
何か誰も言わなかったから俺も言わなかったけど
矢波さんの身長、ちっこい。
そのことを今、言おうとしたが
蹴られてしまった。
気にしてたんだなぁ…




