47話―― 地上への『帰還』と『幕引き』。
もうちょっと続きます。
最後のエピローグで語られる心休まる『ザマァ』をお楽しみください。( *´艸`)ワクワク
そうしてダンジョンから生還し、王城から解放されることしばらく。
『ダンジョン第10層』の攻略。その噂は瞬く間に王国へと広がっていた。
どうやら俺たちが邪竜の魂を解放したタイミングで『世界の声』が全世界に轟いたらしく。
俺たちが邪竜の魂を解放したことによって正規ルートが開拓されたのだ。
ダンジョン『バベル』で新階層が見つかるのは実に25年ぶりの出来事。
ギルドが騒ぎ出すのも無理はない。
初めは「夢物語だ」と疑っていた冒険者も、今では真相を確かめるためにいそいそと装備を整えてダンジョンに潜っていた。
まぁダンジョンボスの一部が王国に献上されたのだ。信じるなという方が無理だ。
といっても――
「ぜーんぶ勇者くんの手柄にされちゃったけどねー」
「相手が王国だからしょうがないさ。国としては英雄である勇者に花を持たせたいんだろうしな」
俺達のようなE級ギルドが王城に招待されたのも、邪竜の素材の一部を献上したからだけではなく、その事実確認と口止めをしたかったからだろう。
まぁ俺たちは他人の手柄でのし上がるほど恥知らずじゃないし、実質『邪竜』を討伐したのは勇者だ。
フィーネ達も『今度は一からダンジョン攻略を目指す』と息巻いていたし、それはそれでよかったのだが――
「まったく、あんな目に遭ったってのに懲りない奴らだよ。
人が大人しく王族の皆皆様に事情を説明している隙にさっさと新階層に探索に出かけちまうなんて」
「ふふっ、君が作った攻略武器を試したくて仕方がなかったんでしょ。
まったく自分の義足より優先して彼女たちの専用武器を作っちゃうなんてなかなか隅に置けない真似するねぇ君も」
「そうしないとギルドの依頼を受けられないって泣きついてきたのはどこの誰だよ」
まったく『武器』が完成したと聞くや否やダンジョンに飛び込むとか、あいつ等には製作者の思いやりというものはないのか。
まぁあいつ等の実力なら無事なのはわかり切っているし、大した心配はしていないが、それにしたって1週間、仲間の俺を放置とかいささか薄情すぎやしないだろうか。
しかし――
「まさかお前と王家にそんなつながりがあったと聞かされた時には正直驚いたよ。
今回の竜玉献上の依頼相手がまさか王家とはな。
退院早々いきなり拉致されてなにごとかと驚いたけど、ちゃんと勝算があったんだな」
「ふっふっふーだから一発逆転を狙える依頼だって言ったでしょ?。
わたしだってただ漠然とギャンブルしてるわけじゃないのだよ少年」
ギャンブルだったってのは自覚してたのかよ。
無い胸張ってふふんと自慢げな顔を浮かべるシャロンを尻目に、堪らず苦笑が漏れる。
まったく――うちのギルドにいる女性はなんでこう普段はいい加減なくせに、こういう重要な所だけは強かなのだ。
尊敬すればいいのか呆れればいいのか正直分からない。
まぁどう逆立ちしても彼女たちの尻に敷かれる運命は明白なのだが――
「いやーまさかシャロンが例の王族を助けた一族の末裔とは人は見かけによらないもんだな」
「もー人を珍獣扱いするのはやめてって言ってるでしょ!! ご先祖様の恩なんてわたし知らないしどうでもいいの!!」
そう言ってプンスカ頬を膨らませてご機嫌斜めなギルドマスター。
彼女のなかでは一族の恩儀とか名誉とかはどうでもいいらしい。
ただ自分自身を見てほしいというのは純粋な思春期の少女らしい考えかtだが
「まったく。君がその話題を持ち出すなら驚かされたのはわたしだって同じだよ。
君たちが1か月もダンジョンから帰ってこなかったこともそうだったけど、竜の巣まで言って本当に足一本落としてくるんだから。あの時は本当に心配したんだからね?」
「俺だって好きで落っことしてきたわけじゃないだって何度も言ってるだろ?
あいつ等と冒険するためだからしょうがないかったんだって」
まったく。人を命知らず死に急ぎ野郎みたいに言うのはやめてもらいたいものだ。
あの時は勝算があれしかなかったから飛び出しただけで、他にやりようがあったらもっと別な行動をとっていたに決まっている。
そもそも――
「俺の事よりまずあいつ等のことだろ。仲間一人の為に無茶するわ、面白そうだからって一人で魔物の群れに突っ込んでいくわでハラハラが止まらなかったんだからな!!」
「えー、あの娘たちの話を聞く限り君も彼女たちと同じようなことしてる気がするんだけど? ……まったく君も無茶するねぇ」
「裏ギルドに金を借りまくったお前には言われたくないと俺の魂が叫んでるのは何故だろうな」
そうしてチラリと『右脚』に視線を落とすシャロンの目線を盗み見れば、ヤレヤレと大きく肩をすくめてみせる。
結局、ブラックドラゴンの牙で食いちぎられた足は、最高峰と名高い治療院の技術をもってしてもくっつくことはなかった。
どうやら『呪い』のようなもので形が固定されているらしく
純度の濃いポーションがなければ歩くどころか、指一本動かすのもままならない状態だった。
それでもこうして日常生活を送れているのはこの特別製の『義足』のおかげだ。
フィーネ達の協力がなければそれこそ俺はずっと治療院で寝たきりの生活だっただろう。
それに――
「最悪、全員一生車いす生活なんて可能性もあったわけだし、財宝よければ全てよし。結果オーライなんじゃねぇの?」
「その点に関しては同意かな」
まぁお互い言いたいことはそれこそたくさんあるだろう。
そう言う不満や改善点はこれからおいおい修正していけばいい。
それよりも―
「借金と言えば、ガンテツの借金催促の方はどうなったよ。
まさか俺たちがいない間に無茶なギャンブルに手を出してまた借金が増えましたとか言わねぇよな?」
「いやいや、君たちが命懸けで持ってきてくれた『成果』だよ? もちろん色を付けて返してやったとも。いやーあの驚いた顔、君にも見せたかったよ」
いや実にいい気味だとは言うが――
「邪竜の竜玉を持ってこられたらそりゃ驚くだろうよ。しっかし話には聞いてたけどよくあいつ等が素材の提供を許したな。てっきり手つかずの竜の素材はみんな独占するとか言い出すと思ったのに」
「まぁ彼女らもわたしと同じく貧民街出身だからね。なにかと思いれがあるのさ」
なるほど、それで頑なにシャロンのギルドを有名にすることにこだわっていたのか。
あの心優しい彼女たちのことだ。
シャロンの人柄に惚れたという理由もあるだろうが――やっぱり貧民街で生きる子供たちのためにあんな無茶を繰り返していたということだろう。
まぁそれもあくまで俺の予想でしかないが結構わかりやすい彼女たちのことだ。
間違ってはいないだろう。
「それにただアイツらを見返すためだけに竜玉を渡したんじゃないんだろ?」
「もちろんさ、竜玉を提供する代わりにこの街の治安維持と孤児の保護を約束させたんだ。
彼らにしてみれば自分たちのシマを守る口実ができたし、わたしたち『夜明けの日差し』も今後の活動で太いパイプができたからウィンウィン? な関係なんじゃないかな」
まぁギルドマスターとフィーネ達が決めたのなら俺は口出しする気はないし、落としどころとしてはその辺が妥当か。
「いやーそれにしてもこの貧民街もずいぶんな賑わいを見せてるねぇ。
ダンジョン探索の依頼もウチのギルドに入る人たちも増えて、ギルドマスターとして鼻が高いよ」
「そりゃまぁ新階層を発見した実績があれば当然か。
これからたくさん新素材が発見されるだろうし、俺も気を引き締めて雑用の仕事を頑張らなきゃな」
「おっ、珍しくやる気だねぇ。でも彼女たちと冒険に行かなくてもいいのかい? あんなに冒険者になりたがってたのにまた雑用係に逆戻りでいいの? 君がサブマスターでも誰も文句は言わないよ?」
「あー、その辺の区切りは着いたからもういいんだ。まずは雑用から始めさせてくれ」
「うーん。わたしとしてはサブマスターとして働いてもらうつもりだったんだけど、一応理由を聞いてもいいかな? どういう心変わり?」
「うん? そんな大した理由じゃねぇよ。今はやれることを全部やっておくって決めただけだ」
正直、俺がお前らに貢献できるのはこの素材の知識と管理技術くらいなもんだからな。
これを蔑ろにしたら俺はこのギルドにいる資格がなくなってしまう。
それに――
「王国一のギルドを目指すならまずはあいつ等が自由に暴れまわれる環境を作ってやらなくちゃとだからな。あいつ等の実力を世の中に知らしめるためにはそれなりの下準備がいるんだよ」
「へーずいぶんとあの子たちに惚れ込んでるじゃん。もしかして好きになっちゃった?」
「ふん、それこそ当たり前だろうが。なんたってこんな俺を必要としてくれた奴らだぞ?
あんな器量よしの性格美人。惚れない方がおかしいだろう」
やけにはっきりと肯定して見せたのが意外だったのか、一瞬目を丸くして見せるシャロン。
だけどこんなもの意外でも何でもない。
俺はあのダンジョンの深層で本当の魂の輝きを見たのだ。
「英雄に憧れるのはなにもおかしな話じゃないだろ? 俺はあいつ等が不遇に扱われるのが我慢ならないだけだよ」
少なくとも俺が冒険者として彼女たちと活動するのはその後でもいい。
それにこれから入ってくる新人の育成なんかもあるし、サブマスターなんてなったらそれこそ彼女たちと冒険に出れなくなるという事情もある。
そういうのは人をまとめるのが上手い奴がやればいい。少なくとも俺は御免だ。
「なるほど。そういうことか、それじゃあこれ以上聞くのは無粋と言うものだね」
「もう十分、聞きだされて赤面モノの黒歴史だけどな」
あぁちくしょう。今になって死にたくなってきた。
なんで道の往来でこんな熱く愛を語ってんだ俺は。これじゃあ俺が馬鹿みたいじゃねぇか。
「いやいや恥ずかしがる必要はないさ。
ずいぶんと女心に響くいい告白だったよ?」
おいやめろ。本当に俺を殺す気か。今すぐ舌を噛み千切ってやろうか?
「それじゃあ君が愛に殉死する前にこの場を借りて、ギルドマスターのわたしが君を『雑用係』に任命しよう。わたしの口が堅いことに喜び咽び泣いて感謝するといいよ」
そう言ってシャロンが茶化したような笑い声をあげ、踊るように一歩足を踏みしめた時――。
俺の頭の中で久しぶりにあの不快な警告音が鳴り響くのであった。




