隣国⑥
今日は観劇で演目は建国の聖女。昨日エミリーが話していた美術館に展示されている絵画も同じ題材だった。
良く上演されやすい演目だが、その分劇団の技量が試される。
あっという間に時は経ち、舞台に幕が降りて、私達は劇場を後にする。しかし、私は後ろから誰かに声を掛けられて引き留められた。
「もしかして、ルファリエラさん? あの、人違いだったらご免なさい!」
振り向いて顔を見るが、先程の舞台にいた役者さんのようだ。衣装を着たままで、走って来たのか、息があがっている。
「はい、そうですが……」
今までどこかで会ったと言う記憶はない。どうして私の名前を知っているのだろう……。
「やっぱり! 僕は、ゲルガー・コールマンと申します。さっきは騎士の役を演じていました。ローガンの友達です」
お兄様のお友達でしたか。でも、良く私がルファリエラだって分かったなぁ。どうしてだろう。
「彼と学園で学んでいた頃、それはそれは君の話を聞いて、前から一度会ってみたかったんです! 姿絵を見せてもらったことがあったから、顔を何となく知ってたんだけど、客席に見つけてつい追いかけてきちゃいました」
「兄が私のことを……」
「うん、一日三回はルファリエラさんのことを語り始めてたから。あれは酷い、重度のシスコンだと思うよ。流石に、妹の誕生日のために卒業を早めるとか言ったときはどうかしてると思ったよ」
「あれは驚きました……」
思い出して苦笑する。
「今でも手紙でやり取りする仲だけど、八割方ルファリエラさんの自慢話だから」
「すみません……」
「いいのいいの。慣れたことだから」
「あ、劇の方はどうだった? 僕のせいでお友達を待たせちゃってるみたいだけど最後に一言だけ」
「最後の場面の迫真の演技、とても良かったです」
「ありがとう、頑張った甲斐があった! 引き留めちゃって、ごめんなさい。それでは、ローガンによろしく伝えておいてください!」
お兄様の他国にいる友達が第二王女殿下と役者さんって凄いと思う。まだまだ他にも友達が居そうな予感がする。




