決着
登りきった王虎号と後続の8台に、原と僚車が驚く。
「こちら隊長車。上がって来た戦車を優先して撃破しろ」
『了解』
僚車からの返事を受け、原は主砲を登ってきた王虎号に向ける。
「アニマルハンターの力、見せてやる」
「登ったのは良いけど、これまた不味い状況だな」
周囲を取り囲まれている。T44も数台がこちらを主砲で捉えた。
「無線は、まだ発信になってる?」
中島が言ってくる。俺は『ああ』と答えて車内に入った。
「なら、殺れる」
「は?」
「各車、散開して。2、3、4号車は扇状に移動。5、6、7、8号車は縦列で敵の後方へ突入」
「ちょっと待て、どういう事だ?」
「撹乱する。こっちは少数しか居ないから、指揮は楽よ」
そう言って急発進する。後続車も、中島の指示通りに動いた。そして、攻撃も始まった。
「スターリン2、こちらを指向中」
俺はスコープに映るスターリン2を見る。アニマルキラーの異名を持つスターリン戦車がこちらを見ているのだ、恐怖も涌き上がって来る。
「発射!!」
俺は攻撃をするが、発射した徹甲弾は弾かれてしまう。
「120mm装甲、伊達じゃないってか。硬すぎる」
弱点はある。車体前面にあるバイザーブロックが戦車共通の弱点である。幾ら固定式にしたとは言え、ティーガーの主砲なら十分である。
「他の車両は僚車に任せて、こいつは遠くに連れて行こう」
そう中島に言い、無線のスイッチを入れる。
「このスターリン戦車を遠くに連れて行きます。暫く戦線復帰できませんが、宜しくお願いします。佐橋大尉」
『了解、気をつけろよ』
「それじゃあ、行くわよ」
エンジンからの音がより一層大きくなり、加速していく。チューンされたエンジンにより、ティーガーは不整地でも時速50kmでの走行が可能となっている。
「ティーガーを追え」
「し、しかしここの防衛は?」
「あいつを倒せば、ここの防衛などいつでも出来る」
砲手の進言を無視して、原は追うように操縦手に指示を出す。操縦手は車体の向きを変え、全速力で追い始めた。
「こちらの速度は時速53km。全速力なら負けんぞ」
「追ってきてるな」
主砲を後ろに向け、照準スコープに映るスターリン戦車を捉えた。
「後方のカメラも、ばっちり捉えてる」
運転席には画面が3つあり、それぞれが周囲に設置された広角レンズ付きカメラと繋がっている。それで四方を見ることが可能となっている。
「くそ、撃っても撃っても当たらん。流石に小さな的でしかないバイザーブロックを800mの距離から狙うのは無理か」
何度撃っても車体正面で弾かれる。
「ショトトラップを狙う車体上面は薄いからな」
その瞬間、近くに砲弾が命中した。それによって、左側の広角レンズにひび割れが起こり、見えにくくなる。
「左側の視界不慮。でも後方は無事だから問題ない」
「前方は坂になっている。アクセルを踏み込んで登りきれ」
「分かってるわよ」
「逃げてばかりでは勝てんぞ、昴」
「千葉県に入りました」
増設された無線手席から無線手が地図を見ながら言う。
「そんな事は関係ない。首都圏じゃなければ、建物は殆ど残っていない」
「ここら辺も建物は残っていますが」
「場所から考えて、匝瑳市か旭市だろう」
「なら、さっきの坂は九十九里浜の一部?」
「だろうな」
その時、側面に装備していた増加タンクが落とされた。燃料が空になったのだろう。
「あと、どの位走れる?」
「帰りを考えると、1時間程度しか走れないわ」
時計を見る。逃げて2時間。確かに1時間が良いところだろう。顔を少しだし、双眼鏡で周囲を見る。敵も弾薬温存の為に攻撃を控えていた。
「正面に学校?。まだ、残っている建物もあるんだな」
そう言って車内に入る。
「正面に学校がある。何処の学校かは分からんが、そこで決着をつけよう」
「まさか、ここで決着とは」
向かっている先が、学校と分かった原は目を細めた。
「気付いているのか、奴は?ここは、俺達の通っていた高校だと言う事を」
財布から学生証を出す。その後ろには、今昴たちが向かっている学校が映っていた。
「急げ、奴を早く仕留める」
「まさか、残っていたとは」
昴は校門を越えて運動場を走っている最中に気付いた。
「やっぱ、ここで決着を付けろって事なのか」
車内から身を出した。王虎号も向かってくるスターリン戦車と相対するために超信地旋回で正面に向けた。
「やっぱし、ここが決着を着ける場所になろうとはな、原」
原も身を出した。
「お前がここに連れこんだんだろう?」
「偶然だよ。だけど、決着の場はここが良い。俺も心置きなく、ここでなら戦える。もう仕留める事を迷っていない」
「なら、前回みたいな情けはやめろよ。こっちも、本気でお前達を仕留めるからな」
「左の道から中庭に入ってくれ」
俺は始まってからも逃げている。正面から撃ち合っても勝ち目が無い為、何とか側面を取れるチャンスをうかがった。
「中庭から北校舎と南校舎を繋いでいるコンクリートの道がある。そこからまたグラウンドに戻る」
「了解」
王虎号には無茶をさせている。ドリフトをしながら曲がり、現れたスターリン戦車に向けて撃つを繰り返した。
「煙幕を張る。南校舎の右に昇降口がある。ギリギリだけど、ティーガー戦車が入れる大きさだ。急いでそこに入れてくれ」
「本当に、無茶な機動よ」
煙幕を出しながら、コンクリートの道を走る。そして、グラウンドに出た
「クソ、煙幕とは。さっきから逃げ回ってばかりで、何が仕留めるだ」
前回と同じようにまたグラウンドを走り抜けて左の道からまた中庭に入ったと判断し、操縦手は同じように走ろうとグラウンドに出た
「発射!!」
だが、グラウンドに出た瞬間。昇降口に下駄箱を壊して入っていた王虎号に車体側面前方を撃ち抜かれて停車した。
「止め!!」
続けて同じ場所を狙い撃った。止まっているスターリン戦車を撃ち抜き、破壊した
「後を頼む」
俺はそう言って砲塔から出て、炎上するスターリン戦車へと走った。
「動けんか」
無線手と操縦手は死亡し、遺体は炎に包まれている。砲塔に居た者も、俺は砲弾か車内を跳ねた破片で足を負傷して動けない。砲手と装填手は死亡している。
「だが、これで延びた寿命も終わりか」
そう諦めた時、砲塔の車長用ハッチが開いた。
「何をやっている!!早く手を掴め、脱出する!!」
その言葉に、原は驚いた。上を見ると、手を伸ばす昴が居た。
「そう、か。まだ俺に生きろと言うのだな」
遠のく意識の中、最後に見た光景は炎上する車内に昴が入ってきて、自分の手を肩に回して立った光景だった。
ガルパン見てて、やっぱ決着は学校でつけようと考えて学校での決戦を選びました




