一段落
-第三装甲大隊司令部-
「ようやく到着だ」
俺と中島は原の誘導で目的地に燃料切れ寸前で到着した。
「遅かったな、こっちはここを占領したぞ」
到着するなり、大和さんが待っていた。俺はハッチから顔を出す。
「へえ、早いですね」
「それもそうだがな。連中、ここを捨てたようだ。工場なり何なり、施設を残して他は全て無くなっている」
まあ、当然だろう。防衛線は凄いと言えるが、あの程度で守りきれるとも考えていなかったのだろう。つまりは、時間稼ぎに使われたんだな、原は。
「それで、そっちは仕留めたんだな?」
「殺しちゃいないがな」
そう言って車内に入り、9mm拳銃を原に向けて車外に出るように言う。
「すまんな、一応は捕虜として扱わしてもらう。ただ、悪いようにはしないからな」
「こっちとしては、殺して欲しかったのだがな」
「ならどうして、彼の手を取ったのよ?。死にたいんなら、あのまま車内に残ればよかったんじゃないの?」
俺は原を大和さんに引渡し、佐橋大尉の場所を聞いてそこに向かった。
「おう、どうやらそっちの決着の方は着いたんだな」
一際大きな建物の前に佐橋大尉は居た。恐らく、これが大和さんの言っていた工場だろう。
「一応は」
俺は頷きながら答える。とりあえず、原を拘束できた。後は彼の行動の根底を知りたい。
「そっちは任せるが、その前にこれを見てくれ」
そう言って、佐橋大尉は工場らしき建物の扉を開ける。中は、最新式。とまではいかないが、今の現状から考えると十分すぎるほど整備された生産ラインだった。
「こんな物を自前で持っているなんて」
俺は工場の中の様子に驚く。生産ラインには多数の戦車が製造工程途中で放棄されていた。
「T34にT44、IS2とこりゃまたソ連戦車が中心だな。でも、あれはお前さんの乗車にピッタリだろう?」
佐橋大尉の指差した先には、
「き、キングタイガー」
片方の履帯が未装備のキングタイガーがそこにあった。
「王虎号だっけか?今の愛車は。あれで本当に王虎になれるな」
俺は車体によじ登ってエンジンルームを開ける。そこにはM-50Tエンジンが積まれていた。
「魚雷艇に使用されていた1050馬力エンジン。これなら50km/hは出せる」
使用しているエンジンはIS-7に採用された魚雷艇用ディーゼルエンジンであった。
「砲塔はヘンシェル砲塔でエンジンは高出力ディーゼルエンジン。夢のような車両だな」
「後で履帯作って走行試験と行くか?」
製造途中である為、まずは完成させなくてはならない。中島もこれを見たら早く乗りたいと感じるだろうし、履帯を急いで製造しないとな。
「他の車両を生産ラインから全て降ろして、最優先でこれを完成させよう。どうせ他の車両は製造が容易だからな」
ソ連戦車一番の特徴は、その生産性の良さである。簡単に製造できるソ連戦車は数の戦争では有利に進められた。
履帯製造は佐橋大尉達に任せて、大和さんに身柄を預けた原の元に向かう。
「5分ほど話したいのですが」
扉を開けて出て来た大和さんが
「別に構わないよ。一通り、聞きたいことは聞けたし」
と、快諾してくれる。俺は扉を開け、中に入った。
「前にも言ったよな?。力による統一は、更に強大な力による反発を招くだけだって」
「これが、その反発か」
原は机に突っ伏しながら言う。俺は机の上に置かれているコップにペットボトルから水を注いで呑む。
「貴重な水だというのに」
「俺達の集落では、水が生産できてんだよ。十分すぎる量をな」
その為の犠牲も多かったが。
「行き倒れの気持ちも分からんか」
「それは分からんが、あの攻撃以降の大体の行動は分かってる。あの攻撃に辛うじて生き残ったが、食料も水も十分得られず、行き倒れた所を連中に助けられ、従っていた。って所だろう」
「さっきの男、大和だっけか?その男に聞いたんだろう」
「聞かなくても大体予想がつく。何だかんだで義理堅いからな。お前さんは」
「それはどうも。でも、今は義理も人情も全てが無意味だ。この世界では手段を選ばずに生き残った人間が意見を主張できる」
合理的ではあるが、それでも身も蓋も無いと感じる。やはり、あの戦争で多くの人間が壊れてしまったのだろう。
「だがまあ、生き残ったんだ。今はそれで良いじゃないか。折角掴んだ命、みすみす捨てるのも勿体無いだろう。衛兵付きだが自由に行動できるよう言って見るよ」
昔のよしみだ。それに、彼も戦車乗り。善意の道を歩めば、BDとして活躍できるだろう。そう考えながら俺は扉を開け、外に出た




