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核戦争後の生業  作者: 橘花
包囲網
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核戦争の発端

-集落-


集落では戦う準備が進められている。進出してきた包囲網を形成する他の集落の人間。そして、元自衛隊員。


「第三装甲大隊の主力戦車はソ連製T34だが、他にもスターリン2なども確認されている」


「俺はT10も見ました」


俺は最初の襲撃で王虎号を走行不能に追い込んだT10の事を話す。遠方から正確に初撃で命中させたT10重戦車


「スーパー・スターリンまで保有しているのか。そいつは厳しいかもしれんな。何せ、あれは実戦経験が皆無。未知の戦車だ。しかも、同シリーズで今まで問題にされていた車内容積を改善している」


佐橋さんは簡単に説明する。しかし、俺が何よりも恐れているのは3kmの距離を電子制御されていないT10で、それも初撃で命中させた技量の方だった。


「1500まで近づかれたら、ティーガーでも即昇天だな。3000でも走行不能じゃあ、ティーガーでも対抗できない。だから、出てきたら俺が引き受ける」


確かに、90式戦車なら十分過ぎるほどだ。俺は任せる事しか出来ない。挑んだところで、分が悪い。見栄張ったって、この世界では意味がない。


「お願いします」


「話し中失礼。準備が整ったのでな」


そこに、テントの外で出撃準備の為の指示を出していた大和さんがテントの中に入ってくる。いつもの格好だが、帽子とゴーグルはまるでロンメル将軍だった。


「そのマニアックな装備、さては秋山陸将補の店のですね。あの爺さん、結構なマニアでもって、痛い!!」


最後まで言い終える前にダッチじいさんに頭を叩かれる。


「俺はまだ50代だ。それに、秋山って名前もとっくに捨てたと言ったろ」


「しかし、この集落の人たちはじいさんって」


「ここの人間は特別だよ。もう半年ほど一緒に居るんだ。嫌でも慣れるよ」




「ひでえな、あの爺さん」


集落から少し離れた、他の所よりも高くなっている砂の所に俺と佐橋大尉は居た。


「でも、あの人は昔と同じだよ。民間人には優しく、俺達軍人には厳しい」


俺はそれに苦笑いするしかない。確かに、接し方が少し違う。


「そうだ、軍人ならこうなった原因、何処が最初に核ミサイルを発射したか分かりますよね?」


俺は知りたかった。一年前の核戦争。世界が一瞬でこうなった原因を。


「いきなり何を言うかと思えば。・・・まあ、良い。いつかは分かる事だから話そう」


そう言って、佐橋大尉は一年前の核戦争の原因を話し始めた。


「事の発端は、5年前にある。突然、アメリカのGOES17一般的には気象観測衛星と呼ばれているが、それが突然コースを変え、太平洋の落下した。事故と思われたが、運用していたアメリカ海洋大気庁のコンピューターにウイルスが侵入していたんだ」


「それが原因で、墜落を?」


「そうだ。そして、それが他の衛星でも発生した。終いには、宇宙ステーションまで落ち始めた。そして、最後の衛星が落下したんだが、これが不味くてな。今までは大洋にだから良かったんだが、大陸に落ちたために問題が発生した」


「問題、ですか?でも、衛星が落ちる時点で問題じゃあ」


「確かにそうだが、自動報復システムがその国で作動してしまってな。落ちたのが首都だけに、外部からのアクセスを全拒否され、最初のミサイルがアメリカを西海岸を襲った。衛星が無い為に対処できないアメリカは、この攻撃で自動報復システムを誘発。それが、連鎖していった。で、行き着いた世界がこの世界って訳」


俺は驚く。つまり、核戦争自体誰かが意図的に起こした事になる。計算高い人間なら、こうなる事ぐらい容易に想像ができたはずだ。それとも、個人ではなく組織が行ったのか。


「規模的にも、そして実際問題でも組織だろうな。ウイルス侵入経路を辿っても、離れた箇所に行き着いたらしい。組織の全容を掴む前にこうなったから、そいつ等もどうなったか知らないけど」


佐橋さんは俺の考えを読んだ様に的確に回答した。俺は何で分かったかと聞くと、『顔に書いてある』と答えられた。


「まあ、何にせよだ。世界はこうなった。日本も、国民保護サイレンの意味を成さずに9割は亡くなったからね」


俺は一番鳴って欲しくなかった音楽を思い出す。一年前のミサイルが直撃する直前の僅か数十秒だけ流れた印象的な音楽。


「意識すれば何度でも頭に流れるからね。またそんな音楽じゃないと意味をなさないからね」


「はい。それにしても、聞く限りだと核戦争がまるで仕組まれた計画戦争な気がしてきました」


「起こった以上は今を生きるしかないさ。折角生き残ったんだ。今の人生をもう少し楽しむのもいいかもしれんな。この戦いが終ったら、少しは他の集落とも交流するんだな。そうすりゃ、違う人生が見えてくるかも知れんぞ」


「そうします」


戦いが終れば・・・・か。明日の命を保障されないこの世界で、真の戦いの終わりはいつになるのだろうか。


「明日は出撃だ。日はまだ落ちていないが、今夜はゆっくり寝て、明日に備えるか」


そう言って佐橋大尉は集落に向かって歩き始める。世界が変わっても、何処までも呑気に考えられる人だなっと思いながら、俺も集落の方に向かって歩き始めた。

国民保護サイレンはhttp://www.kokuminhogo.go.jp/arekore/shudan.html#sirenで視聴できますが、視聴の下の所に書いてある通り、むやみやたら鳴らすのは禁止されています。厳しく罰せられます。


第一部もいよいよ終わりが見え始めました。その為、今後重要になって来る事をさらっと書きました。まだまだ設定を出し切っていませんが。

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