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核戦争後の生業  作者: 橘花
包囲網
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協力者 後編

「さて、包囲網に加わるか否かだ。この包囲網に加わった時に発生するメリットとデメリットを考えねばならん」


包囲網に加わるどうかを決めるために、集落の代表者等が集まって話し合っている。俺も、一応はこの集落に籍を置いている為、参加している。


「メリットとしては、一番に思いつくのが協力による対抗だな。現状、我々の兵器といえば3台の戦闘車と数門の火砲や銃火器のみ。これでは、集落を襲った連中の戦力が彼らの話を信用した通りの兵力を有しているとなると、とても対抗できない」


「デメリットは、今まで以上の犠牲が出る可能性があると言う事が第一だな。参加した以上、戦わねばならない。そうなれば、犠牲は出る」


各々が思いつく限りのメリット、デメリットを言い合う。俺はずっと無言のまま聞いていると


「高富はどう思う?さっきから発言せずに考え込んでいるようだが」


大和さんに言われた。俺は聞くのをやめて、今現在の考えをまとめる。


「犠牲は既に出ているのが現状です。2度の攻撃を凌ぎきれたのも、ギリギリの判断が功を奏したに過ぎません。敵は強大な兵力を持ち、周辺集落を恫喝によって支配して勢力を伸ばしていると聞きます。ここで、屈したら一生奴隷扱いでしょう」


人権なんて存在しない世界である。奴隷など、世界中の至る所に存在している。


「それを望むなら、同盟に参加しない。それを望まず、戦ってでも自治を守るなら参加して戦う。二択です」


俺は選択肢を全員に突きつける。答えは二つに一つ。奴隷を望むか、望まないかの二つに一つしか選択肢は存在しない。


「そんなのは決まっている。望まずに自治を貫く。それだけだ」


全員が同意する。全員が犠牲を払い、血を流してでも自治独立の道を選んだ。その為に全員が覚悟を決めた。


「決まったか?」


そう言って、佐橋大尉が入ってきた。隣のテントに待機させていた。


「ええ。同盟に入る事が決定しました」


大和さんが答える。それを聞いて、佐橋大尉は頷いた。


「これで、形成は完了したか。だが、急がねばな。敵は兵力を補充できる工場を既に持っているんだよ。大量生産って訳にはいかんが、それでも貴重な戦力供給である事に変わりは無い」


連中は既に、そんな物まで持っているのか。なら、こっちの部品供給に役立てられる。


「なら、奪いますか?」


俺はそう提案する。そんな便利な工場、破壊するなんて勿体無い。奪って利用するしか無いだろう。


「そう考えている。ここからが一番近いな。工場は全部で5つある。その内の一つが前線基地の少し北に行った所にある」


地図を出して、説明する。


「第一攻勢として、南はこの工場の確保まで進んで貰う予定になっている。ちなみに、南の兵力はここ最近増強されているらしく、君達が追い払って減っているとはいえ、最大規模だ。俺たちもここに兵力を集中するよう考え、偵察の為に俺が派遣されたって訳だ」




夜間、俺と中島は王虎号の整備を行っている。今まで共に戦ったこの戦車にはやはり思い入れがある。


「高富だっけか?ちょっと良いか?」


エンジンの油を換えていると、佐橋大尉が来ていた。俺はエンジンルームのハッチを閉じて、王虎号から降りた。


「何ですか?」


「整備中にすまんね。ちょっと、話をしたいんだ」


俺は転輪の傷の有無を確認していた中島に目をやる。


「別にいいわよ。転輪の取り替え位、私だけで出来るから」


っと言った。鋼鉄製の転輪は、結構重いんですけど。



「あの戦いは見事だった。まさか、映画顔負けのアクションをやったのが、少女だという事にも驚いたが、人力によるほぼ百発百中の射撃精度は電子制御射撃を取り入れている90式戦車と比べて絶賛に値する」


90式戦車の命中精度は、海外でも高い評価を成されていた事は知っている。3km先のの目標に百発百中はそうそう出来るものでもない。


「いえ、弾道データを頭に叩き込めば、誰でも出来ます。目標までの正確な距離、敵の速度とこちらの速度、進路に砲身の射撃命数に対する射撃回数などを瞬時に計算できれば、最大射程でも命中させられます」


現在装備している王虎号の最大射程は5km。それを正確に計算されたデータを使えば、命中させられると言った。


「ははは、そうか。なら一つ聞かせてくれ」


急に佐橋大尉は真面目な顔になった。


「どうして、指揮戦車を狙わなかった?そこまでの計算できるなら、視力だって良い筈だ。なら、指揮戦車くらい見つけられただろう。なのに、狙わなかった。何故だ?」


彼の言うとおり、俺は戦いの中でも指揮戦車の位置を明確に見抜いた。しかし、そこに乗っているのが誰なのか分かっていた。


「大方、指揮していた人間が友人かなんかだろう」


「・・・・・はい。昔の同級生です」


しかし、撃てない理由はそれでは無かった。今までも、私的な理由で砲撃を躊躇った事など無かった。


「しかし、だからと言って撃てない訳ではありません。敵ならば、撃ちます。敵対するならば、撃ちます」


今までだってそうだった。どんな状況でも依頼の完遂だけを目的としてきた。


「だから、次に来たら撃ちます。私的な理由で、周りを危険に晒す訳にはいきませんから」


俺はそう言った。もう迷っている時間は無い。


「・・・彼にも理由があるのだろう。君と敵対せねばならない理由が。そうでなければ、幾らこんな世界とはいえ、かつての同級生を攻撃できる筈が無い。君も攻撃を躊躇っているしな」


「いえ。同級生と理由で攻撃を躊躇っている訳ではありません。でも、理由が分からないんです。どうして、撃てないのか。一度、追い詰めた事があります。でも、その時も撃てなかった。引き金に、指を掛ける事ができなかった」


何故撃てないのか。その理由は知りたい。


「まあ、そう深く考える事でも無いと思う。君が思うとおり行動すればいい。別に彼を見逃しても、我々は咎めない。時間を取ってしまってすまなかったな」


佐橋大尉は90式戦車が置かれているガレージに歩いていく。

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