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拝啓 死んでしまった悪役令嬢様  作者: 七月なのか


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8 婚約者だった王子と新しい婚約者

やあ、隣国の方。君の話は聞いているよ。先日のパーティーでも、右に左にと女性を侍らせていたんだって? 美しい顔の使い方をよく心得ているようだね。


ああ、書状は確かに受け取っているよ。そちらが我が国からの返書だ。帰国して、よくよく吟味してもらえればと思うよ。


まったく、話が早くて助かるね。前の婚約者であったシャルロッテはいったい何に手間取っていたんだ。確認したけど、簡単な話じゃないか。そちらの国の鉱山開発に我が国の資金を出すだの、隣国の技術者をこちらで教育するだの、そちらの借金返済を十年猶予するだの。どれもばかげているとしか思えない。そんな余裕は我が国にはないし、利益が出ない取引をして何になるんだというんだ。今さら善行を積んで、悪女と呼ばれるのをやめたかったのかもしれないが……まったく、考えなしの能無しには困るというものだ。


今回出した港の優先使用だけで十分じゃないか。別に我々が戦争に勝ったわけじゃないんだ。ただの隣国への支援策なんだから。欲を出した女ほど醜悪で厄介なものはないと思うけどね。馬鹿な女だよ全く。


そちらの王にも、こんなに待たせてすまなかったと伝えてもらえると助かるよ……。もう彼女との婚約は解消されたんだ。そちらの国にも迷惑をかけないさ。


ああ、そうだね。その悪女が僕の婚約者だったんだよ。まったく、悪女が婚約者というだけで社交界では噂されるし、ろくなことがなかったね。それに、とても口うるさいし、仕事も遅い。とにかく、彼女は最低だったね。


それでも最初のころは、せっかく婚約者になったんだ。僕も仲良くしてやろうと思ったけど、婚約者にもかかわらず、キスもだめ、腰を抱くのもだめって、ありえるかい? エスコートのための手しか触らせないんだ。しかも手袋をしている。最悪だ。ありえない。君も男ならわかるだろう?


それに、いつもごちゃごちゃ言ってきて。まったく、うるさい女だった。


まあ、残念ながら僕の婚約者は死んでしまったからね。過去の話だ。今は新しくリリーベルと婚約したわけだが……まったく、残念だよ。


君にもいい人はいるかい? 君の隣に立つには、普通の人物じゃ難しいだろうね。見劣りが凄そうだ。


……なんだって? それはもったいないのでは? 子供のころから慕っているのか。純愛というやつだね。


しかし、いろいろな女の人と知り合うのも、また人生の楽しみでは? 見解の相違というやつか。まったく、宝の持ち腐れだな。


ああ、私の新しい婚約者は素敵だよ。とても優しい。シャルロッテとは大違いさ。


ああ、ちょうど来た。紹介しよう。


聖女リリーベルだよ。最高の神聖力を持っているんだ。聖女にふさわしい銀糸の髪と月色の瞳も美しいんだ。


は、はじめまして。リリーベルです。シャルロッテ様……について、お話をされていたのですか?


…………シャルロッテ様は……。いえ、私から言えることは何も。何もございません。


あの……葬式が決まったと聞いたのですが、本当ですか? その……手紙を入れさせてほしいのです。


いえ、優しいなんて、そんな。王子様。


ご、ごめんなさい。親族の方でもないのに。あの、でも……日取りが決まったら、私も……お願いします。

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