3 わたしも幼年学校の友人なの、一緒にお話ししたいわ
こんばんは、お二人で何のお話をされているの? 風が気持ちいいですわね。……あら? あなた、初めてお会いしますわよね? 私たち、同じ幼年学校だったのよ。ご紹介してくださる? やだ……あなたって、本当に美しい殿方がお好きなのね。まあ、お上手ですわ。
まあ! 隣国からいらしているの? 鍛えていらっしゃるわね。戦乱を勝ち抜かれたのも納得の美しさですわ。騎士の方かしら……立派な剣を持っていらっしゃるのね。子供のころはこちらに住んでいらしたの? 政変が落ち着いたから、いらしたのですか? まあ……お上手ですわね。あら、そんなことまでご存じなの? まあまあ、面白い方。
そうそう、彼女のことはみんな、生きているときも死んでからも、ずっとお話ししているわ。ふふ……そうね、彼女、人気者なの。でも、リリーベル様には及ばないわね。あの方のお話なら、いくらでも出てきますもの。学校にいたころのお話も、今でもよく話題になりますわよ。
わたくし、シャルロッテ様とリリーベル様とは別のクラスだったのだけど、リリーベル様と直接お話ししたこともあるのよ。とても優しいお声で、丁寧にお話ししてくださったわ。リリーベル様はシャルロッテ様とは違って、誰にでも分け隔てなく接してくださるの。ああ、そういえば、リリーベル様と同じクラスだった方から聞いたのだけど――まあ、これは今のお話とは関係ないから、また今度にしましょうか。
お二人のお話をしていらしたの? そうねえ、色々あるから、もう聞かれた話も多いと思いますけど……彼女が運動着を間違えて持ち出した子に怒鳴ったお話は聞きましたか? まあ、ちょうど聞いたところだったのね。でしょう? 恐ろしい話でしょう? あのお話、何人もの方から聞いたけれど、皆さん少しずつ違うのよ。面白いでしょう?
そうそう、シャルロッテ様はリリーベル様のことを避けていらしたのよね……。シャルロッテ様はリリーベル様を見かけると、よくその場を離れていらしたわ。あんな態度を取られたら、傷ついてしまいますよね。私は遠くから何度も見たことがありますもの。あれは偶然じゃありませんわ。リリーベル様が来ると、すっといなくなるんですもの。
シャルロッテ様はいつも取り巻きのご友人といらっしゃるか、一人でいることが多い印象がありますわ。ああ、でも一人でいるときのほうが、かえって何をしているのか分からないのよね。……まあ、それも噂の一つですけれど。
そう、その女性よ。お話しされたことがあるのね。彼女は婚約者時代もずっとシャルロッテ様にくっついていらしたわ。家の事情かもしれませんけど、シャルロッテ様の言うことには何でも従う方でしたわ。家格もそれほどではありませんしね。ああ、そういえば、あの方についても面白い話があるのよ。……でも、これは少し長くなるから、また今度にしましょうか。
……そうですわね。ああ、このお話は聞いたことがないと思うわ。だって、私が見た話ですもの。こういうのって、人から聞いた話より自分で見たほうが説得力がありますでしょう?
リリーベル様がシャルロッテ様にいじめられているところを見たことがあるの。
ええ。リリーベル様が何かをお渡しになろうとしていたのよ。お手紙か何かに見えたわ。リリーベル様はお優しいから、学校にもなじめなくて、みんなに嫌われていたシャルロッテ様が困っていないか聞いて差し上げようとしたのだと思うわ。
でも、シャルロッテ様はそれを打ち払ったの。結構大きな音だったわ。離れて見ていた私のところまで、手を払った音がしたんだもの。あれは忘れられませんわ。
シャルロッテ様は侯爵令嬢だし、王子殿下の婚約者になられていたから、プライドが高いのよ。リリーベル様は孤児にも手を差し伸べるような優しい方だから、うまくいかないのも仕方がないのかもしれないけど……でも、ひどいでしょう? あれを見たら、誰だってそう思いますわ。
だから私、思ったの。あの方は、リリーベル様がお嫌いなんだって。
彼女は呪われていると噂されていたし、実際、シャルロッテ様のせいで怪我をされた方も何人もいたわ。もちろん、全部を私が見たわけではありませんけど……ほら、噂って、何度も聞いているうちに本当みたいに思えてくるでしょう?
シャルロッテ様は、過去の聖人様のお名前に由来があるのでしょう? 皮肉よね。あれほど悪女としてふさわしい方もいないと思うわ。
……ああ、そうそう。
シャルロッテ様といえば、もう一つ面白い話があるわ。
彼女と親しかった殿方がいたのよ。
今日いらしていたはずよ。さっき見かけたもの。ほら……あちらの方。
ねえ、ちょっとそこの給仕の方、階下にいる・・・あちらの方を呼んでくださらない?
あの方のお話も、きっと面白いと思いますわ。
ええ、それではわたくしたちはここで。またお会いできるでしょう? 今度は悪女のお話ではなく、わたくしのことをもっと知ってくださいね。




