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あの夏、僕は病室を抜け出した君と歩いた  作者: よっぴぃ
第2章 鈴

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1.出会い

小麦色に日焼けした肌に、肩まで届かない黒髪。

前髪は眉のあたりで、きれいに切りそろえられている。


白い半袖のブラウスに、赤いジャンパースカート。

白い靴下を履いた、十歳くらいの少女だった。


そして、片手には湊と同じラムネを持っていた。


湊は、少女の格好に少し違和感を覚えた。

まるで、昔の映像からそのまま飛び出してきたような格好だった。


とまどっている湊をよそに、少女は鳥居を指差して言った。


「菅原神社」


少女は鳥居を見上げながら続けた。


「学問の神様で、みのしま天神とも呼ばれとるんよ」


そう言って、少女は湊に笑いかけた。


「すず!わたし、鈴!十歳!」


元気よく名乗ると、あなたは?と言いたげな目を湊に向けた。


「……湊、十歳」


湊は、少し視線を逸らして答えた。


「湊と鈴、今日から友達!」


鈴は満面の笑みを浮かべた。


「ラムネ飲もうや!おいしいよ!」


鈴は勢いよくラムネのビー玉を押し込んだ。


湊も慣れない手つきでビー玉を押し込もうとするが、うまくいかない。


「貸して!」


鈴はラムネを取り上げると、ビー玉を押し込み、湊に渡した。


「競争ね!」


そう言うと、鈴は片手を腰にあて、ラムネを一気に飲み始めた。


「えっ……」


湊は一瞬とまどったが、なぜが鈴と同じポーズをして飲み始めた。


しかし、ビー玉が邪魔をしてなかなか口に入ってこない。


そうしている間にも、鈴のラムネはどんどん減っていく。


「わたしの勝ち!湊、遅い」


鈴は空になった瓶を天に突き上げ、勝ち誇った顔をした。


「そんなに早く飲めないよ……」


湊は眉を八の字にしながら、中身が半分も減っていない瓶を口から離した。


いきなりの競争に驚きはしたが、なぜか今まで何度か飲んできたラムネよりも、おいしく感じていた。


湊を見て笑っていた鈴は、何かを思いついたように砂浜を走り出した。


少し離れたところでしゃがみこむと、夢中になって何かを拾い始めた。


やがて湊のもとへ戻ってくる。


「見て!きれいな貝殻。湊にあげる」


鈴の両手には、さまざまな貝殻がいっぱいのっていた。


スマートフォンの画面を見ていた湊は、鈴の声にちらりと顔を上げる。


「いや、いらないよ……」


湊は再びスマートフォンの画面に視線を戻した。


きれいだとは思ったけれど、特に欲しいとは思わなかった。


そんな湊を見て、鈴は口を尖らせた。


「湊!見て見てー!」


顔を上げると、寄り目をして頬を膨らませた鈴の顔があった。


「……えっ、なに?」


湊には、鈴が何をしているのか分からない。


「にらめっこ!笑うと負けよ!」


鈴は次々と表情を変える。


それだけではない。


体までくねくねと動かしながら、おかしな顔をする。


「……ぷっ」


湊は思わず吹き出してしまった。


「アハハハ、変な顔」


「笑った!湊の負け!」


鈴は嬉しそうに笑った。


湊は、久しぶりに笑った気がした。


「行こう!」


鈴は湊に、片手を差し出して言った。


「……どこに?」


「いいから!」


そう答えると、鈴は湊の手を握り、歩き出した。


手を引きながら振り向いて笑う鈴の顔を見て、湊は不思議な気持ちになった。


(何なんだろう?この子……)


疑問に思う気持ちと、もう少し一緒にいたいという気持ち。


謎の少女の事が、なぜか気になった。

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