7.みのしま商店
家々が密集する町並みは、迷路のようだった。
それでも、少し歩くと小さな商店が見えてきた。
外壁の波トタンや入口から突き出た雨避けの庇は、錆や雨風により、ところどころ傷んでいる。
庇の上には看板が取り付けられているが、塗装が剥がれて色褪せている。
かすれて薄くなった字は、かろうじて読むことができた。
『みのしま商店』
かなり年季の入った店だった。
店の外には、最近では見ないような古いガチャガチャが二台置かれている。
入口はアルミサッシのガラス引き戸で、奥は暗くて店内がよく見えない。
(開いてるのかな……?)
湊は少しためらいながら、引き戸をスライドさせた。
カラカラ……。
店内に入ると、駄菓子やジュースがずらりと並んでいる。
調味料や洗剤、ノートや鉛筆といった文房具など、ちょっとした生活用品も置いてある。
壁には昭和の看板がいくつか貼られていて、大きな厚紙におもちゃの付いた当たりくじも何枚か吊るされている。
店の奥から、腰の曲がった小さな店主らしき老婆が出てきて、レジの丸椅子に腰を下ろした。
「いらっしゃい」
白い割烹着に青いもんぺ姿で、灰色の髪は後頭部で丸くまとめられており、顔には深いシワが幾重にも刻まれている。
店主は目を細めて微笑みながら、湊の姿を見つめていた。
湊が店内を見回していると、店主が穏やかな声で話しかけた。
「夏は、ラムネがおいしいよ」
レジの横にあるガラスの冷蔵ショーケースには、ラムネが冷やされている。
喉が乾いていた湊にとって、ラムネは魅力的だった。
いくつかの駄菓子とラムネを一本、レジへ持っていく。
「浜辺で海を見ながら飲むと、一層おいしく感じるよ」
店主はそろばんで会計をしながら、にこやかに言った。
店を出ると、家へと続く道の向こうに海と砂浜が見えた。
家に帰ろうと思った湊だったが、せっかくだから店主の言っていた通りに海を見ながら飲むことにした。
こじんまりとした浜辺には、人は誰もいなかった。
ただ、海の静かな波の音と風が木々を揺らす音だけが、ゆっくりと流れている。
湊は世界にひとり取り残されたような、そんな感覚になった。
目の前の砂浜には、鳥居がぽつんと立っている。
(なんで、あんな所に鳥居が?)
湊は妙に気になり、鳥居へ近づいていった。
「ここに居たんだね……」
じっと鳥居を眺めていると、後ろから声がした。
何を言っているのか聞き取れないまま、湊は振り向いた。
そこには、見知らぬ少女が立っていた。




