↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの夏、僕は病室を抜け出した君と歩いた  作者: よっぴぃ
第1章 行橋の夏

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/15

2.行橋へ

行橋(ゆくはし)市。

福岡県の東部に位置するその街は、穏やかな海からの風と緩やかな山からの空気が通りを抜ける、自然の豊かさと生活に必要な都会の便利さが調和した、静かで落ちついた街だった。


昨日、母のもとに一本の電話がかかってきた。


祖母が体調を崩し、念のため入院することになったという知らせだった。


命に関わるようなものではないらしい。


けれど、しばらく家を空けることになるため、祖父の身の回りの手伝いが必要だった。


母は行橋へ行くことにした。


湊はその母についてきただけだった。


新幹線で小倉駅まで行き、そこから在来線に乗り換えた。


「湊、行橋は覚えてる?」


窓の外を眺めながら母が聞いてきた。


「いや……」


スマートフォンの画面を見つめたまま、湊は小さく首を横に振った。


行橋へ向かうのは、これが初めてではない。


まだ湊が小さかった頃に、何度か来たことがあるらしい。


けれど、ほとんど覚えてはいなかった。


電車を降り、改札を抜ける。


駅の外へ出た瞬間、強い夏の日差しが湊の顔を照りつけた。


「まぶし……」


湊は反射的に手を額に当て、目を細めながら駅を見上げた。


高架になった駅の上には、線路とホームを包むように大きなガラス張りの構造が伸びている。


その前には、銀色の金属で組まれた骨組みが幾重にも重なり、空に向かって何本もの柱が伸びていた。


入口には大きなアーチ状の屋根がせり出している。


駅の名前が掲げられている。


『行橋駅』


視線を下ろすと、駅前には大きなモニュメントが立っていた。


不思議な形をしていて、太陽の光を受けながら静かに立っている。


茶色と白の曲線が重なったような、不思議な形をしている。


大きく開いた穴がいくつかあり、その中央には小さな花が描かれていた。


「……コスモスの花?」


湊は首を傾げた。


夏の日差しを受けたそのモニュメントは、駅前で妙に目を引いていた。


足元にはレンガのような色合いの舗装が広がり、植え込みや街路樹の向こうに広がる駅前の通りでは、道路の拡幅工事が進められていた。


道路を挟んだ両側には、さまざまな店や建物が並んでいる。


湊はしばらく、その景色を眺めていた。


「湊!」


後ろから聞き覚えのある声がした。


振り返ると、祖父が立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。