連絡は唐突に
暑い夏の夜、俺とヤガラはいつもどおり、仕事を終え、飯を食い、風呂に入り、部屋で煙草を吸う
なんてことない、今日も平和に終わりそうだ。と思っていた。
そんな時、普段は鳴らない電話が鳴る
膳「あ?誰だよこんな遅くに」
ヤガラ「電話のようじゃの」
渋々着信を見る。友人からだった。また仕事遅くなって電車でも逃したんだろうか
俺の友人は自動車免許を持っていない、本人曰く、向いてないんだそうだ
膳「あい、こちら膳、どしたー?まーた電車でも」
?「すいませんご家族の方ですか?一番上に表示されていたもので」
友人とは違う声に一気に警戒する俺、誰だてめぇ
膳「あんた誰」
?「すいません、カズキさんが仕事先で倒れてしまいまして。誰かに連絡をと」
膳「何ッ!?何処の病院だ!?」
一気に煙草を吸ってリラックスしていた俺の血が冷める。
同僚「山形市の○○病院です」
膳「すぐ行きます!!」
電話を切りすぐに着替える俺、ただならぬ雰囲気にヤガラも黙ってついてくる
車にエンジンを掛け、可能な限り早く走らせる
ヤガラ「すまぬが話は聞いていたぞ、カズキというと、お主がよく遊んでいるカズキで間違いないのか?」
ヤガラが心配そうに聞いてくる
膳「ああそうだよチクショウ、あの野郎、最近体調悪いって言ってたからな・・まさかとは思ったが」
あいつは今離れたところに姉がいるらしいが何年も音信不通で仲も相当悪かった。当てにはできねぇ
そうこうしてる間に病院が見えてくる。尚更アクセルを踏み、飛ばす。警察も今だけは勘弁してくれよ
病院に着き急いで言われた病室にヤガラと向かう
目の前には呼吸器に繋がれ眠っているカズキがいた
膳「ヤガラ様、あんただけわかる状態とかあるか」
にじみ出てくる焦りを抑え、ヤガラの返答を待つ
ヤガラ「癌じゃ・・それも重度のな」
ヤガラが申し訳なさそうにいう、そうか、癌か
膳「癌の元は肺か」
なんとなく確信があって言う、ヤガラが頷いた、どうやら当たりらしい
ヤガラ「持って3日じゃ」
淡々と言うヤガラ、なるほど、神様お墨付きの3日ね、
膳「ならまだやれることあるな」
俺は踵を返し病室を後にする
ヤガラ「良いのか?」
ああ、やれること実行しなきゃな、
俺は次の日職場に有給を3日願い出た。
それからはヤガラと一緒に煙草を手土産に見舞いに行った
医者もわかっているんだろう、特に止められなかった
院内では吸えないので外の喫煙所で俺はブラックコーヒ、カズキはカフェラテ、ヤガラはナタデココの飲料をそれぞれ持ち煙草を吸う
カズキ「いやー、気づいたら病院のベットで焦ったぜ、流石に、あ、これ死んだ、と思ったわ」
カズキがケラケラ笑い、時々激しい席をしながら車いすに繋がれた呼吸器で荒い息をし、ふざけるように言う
膳「だーかーらー、煙草はふかし(肺に入れない事)が正解だって言ったろーが」
呆れたように言う俺、ヤガラはどうやらナタデココの食感に夢中らしい
カズキ「ゲホッゲホッ!!でもよ・・これでようやく死ねるんだ・・」
カズキがむせながら満足そうに煙草を吸う
膳「若い頃から言ってるよな、ソレ」
煙がカズキに行かないよう俺も煙を吐き出しながら言う
カズキ「そうだよ、こんな人生とっととくたばりたい・・ゲホッゲホッ!!・・ケフッ・・と思いながらここま来ちまった、あ~やだやだ」
膳「案外長い付き合いになったな、俺たち」
ふーーーーーっとカズキが煙を吐く
カズキ「腐れ縁ってやつだな、ホント」
ぜぇぜぇと息を切らしながら心底嫌そうにいうカズキ
膳「そんなに邪険にすんなよ~、誰のおかげて煙草吸えてっと思ってんだこの」
カズキを軽くこづく、イテ!と小さく聞こえた
カズキ「まあ何にせよ・・・バイバイだ、膳、俺はとっととくたばる」
俺の顔を見てニヤッと笑うカズキ
膳「ああそうかい、精々棺桶には入れられるだけ煙草入れてやる」
煙草を咥えたままカズキではなくまっすぐ見ながら言う、なんか金と火種もよろしくな!って聞こえるが
ホントにこいつは・・・
お互いまっすぐ見たまま煙草を吸う、ああ、本当に逝っちまうんだな・・
ヤガラ「おい膳・・膳!」
ここでヤガラ様から声がかかる。なんだよもう、しんみりしてんのに
ヤガラ「友人殿・・逝ってしもうたぞ」
は?だってあと2日あるはずだろ?
俺は慌てて隣のカズキを見る煙草を抑えた指はそのままに、虚ろな目をしたまま・・死んでいた
ヤガラ「お主と話せて心残りが無くなったんじゃ・・」
辛そうにヤガラがいう。なんだよそれ・・
俺はカズキの瞼を下ろしてやる。お疲れ様。そう心の中で言い看護師を呼びに行く
ヤガラ「のう、友人殿、この岡八幡八我羅ノ神の名に誓う、お主はもっといい世界に行くだろうよ
膳の良き友人になってくれて・・感謝する」
すう、と幽体になったカズキが出てきて煙草を吸いながら去っていく、右手をひらひらさせながら
カズキの葬式は簡単に終わった。姉と連絡が取れないのもあり、簡易方式で済まされたのだ
ちゃんと印刷した一万円の束と煙草3箱、それからマッチを入れてやった
膳「あっけねぇなぁ・・」
ヤガラ「そう思えるだけ幸せじゃ」
お互い煙草に火を付け合いながらそう言う
あいつ、ちゃんと逝けたかなぁ・・
ヤガラ「ワシが道案内したから大丈夫じゃ、今頃幽世でぱちんこ?スロットなるものを金が尽きるまでやってるだろうよ」
膳「あの世にもあるのかよパチ屋」
うわぁ、なんか聞きたくなかったかも
ヤガラ「人それぞれの幽世があるからの、、まあ、それが俗に言う天国と地獄じゃ」
なーるほどねぇ、んじゃ今カズキはそこで趣味のスロットを大いに楽しんでるわけだ
ヤガラ「そーなるのー、まあ飽きたらどっかに転生するじゃろし、そんなもんよ」
思ったより楽しく過ごせてそうで安心した
ヤガラ「なんじゃ~?お前さん、ワシの幽世に来るのが嫌になったか?」
膳「いや全然?だって俺パチ屋より煙草だもん」
ヤガラ「脅かしがいの無い奴じゃのーつまらん」
膳「そーですかい、そりゃ残念でしたね」
ふーーーーーっと煙を吐く俺、なんか今日は煙草の味が薄い
ヤガラ「お前さん、一切泣かなかったの、普通なら大なり小なり少しは泣くもんじゃと思っておったが」
ヤガラが不思議そうに言う、正しくは泣けなかったが正しい、確かにカズキが死んだのは悲しい、だって
俺のこの世での楽しみが1つ減ったのだから、けど、ヤガラからそんな死後の話を聞いて安心したんだと思う。だから泣けなかった。泣いたら心残りが出来るだろう
ヤガラのスイカ味の煙草を咥え火を付ける。甘い
膳「よーくこんな甘いタバコ年中吸ってられるねぇヤガラ」
脳死で言葉が出る
ヤガラ「勿論よ!スイカ味は我にとって正義!!」
ムフー!と鼻から煙を出すヤガラ
膳「俺が死んだらこの煙草、吸えなくなるけど?」
箱を掴み、ヤガラの前で振る俺
ヤガラ「悲しいが、お前が死んだらワシの幽世に来るわけじゃし、それならまあ泣くことはないの」
膳「それだよソレ」
俺がヤガラを指さす
ヤガラ「それ??どういう意味じゃ」
膳「カズキは俺の友達だ、確かにこの世にはもういないだろうよ。けどヤガラ様お墨付きのパチ屋で豪遊してるだろうって情報が入った。じゃあ別にあいつは元気なわけだ。じゃあそれでいい、だから俺は泣かない」
あいつなら泣くよりたばこ寄越せボケ、くらい言いそうだ
ヤガラ「なるほどのぅ、これが絆か」
なんか納得したような顔でうんうん頷いてる
そうだよ、向こうはどう思ってたか知ったこっちゃねぇ、だが俺にとっては腐れ縁、いい腐れ縁だ、それでいい
ヤガラ「変わっとるのー、お前さんと友人殿は」
新しく煙草に火を付けふはーー、と煙草を吸うヤガラ、よく言われる
膳「それを言ったらヤガラとの関係だって、なかなか変わってんだろ?」
俺も煙を吐きながらヤガラを見つめる。最近また綺麗になったな
ヤガラ「なんじゃい藪から棒に、膳こそ年々渋いイイ男になりおって、どの姿で幽世に招くか悩むわ」
あ、耳赤くなってる。分かりやす
膳「俺たち人神共煙の仲だもんな」
ヤガラ「ふっふ、言うようになったわい」
照れくさそうに頭をガシガシ撫でられる。伊達に歳はくっちゃいないからな
二人で同時に吐いた煙が天井に消えていく、ああ、これからいつ死ねるのかねぇ俺も
いやぁ、シリアス書くのって難しいですね、どうもドミンゲスです
カズキの人物像はそのままリア友を参考にしました。なぜか中学から続いてる腐れ縁です
どっちが先に死ぬか勝負しながら一緒に煙草吸ってる仲です。腐れ縁ですね
皆さんはイイ腐れ縁話、ありますか?




