俵型おにぎりと西瓜
何か声が聞こえる。ヤガラと・・・ああこの前のばあさんの声だ
ヤガラ「・・じゃろ?そこがまた・・でなぁ」
おばあちゃん「ほんに・・・てなぁ・・お頼み申し上げまする」
ええい、小さくてよく聞こえねぇ、てか今何時よ
目覚まし時計の針を見る6時30分、いつもより少し早いぐらいか
膳「なーにこそこそ二人で話してんの?」
少しびっくりさせるために声を掛ける
ヤガラ「ひょわっ!?お、起きたのか膳」
おばあちゃん「あらぁ・・聞かれちゃったわね」
眠い目をこすりよく見てみれば・・ヤガラと・・光る玉?
曾祖母「膳ちゃんや、おはようさん」
は?え?ばあ様の声聞こえんだけどえ?もしかしてこのビー玉みたいなものがばあ様?
ヤガラ「そうじゃ、普段お主に付いてる守護霊というやつじゃ」
膳「え?普段から居たの?じゃあ全部見られてたんかい」
曾祖母「さすがに席外したわいな、膳ちゃんや・・ワシの事忘れたんかえ?」
曾祖母の今の身体、つまり玉から悲しそうな声が聞こえる
ヤガラ「こら膳!アキちゃんを泣かすな!!ワシの旧友じゃぞ!」
あ、アキちゃん~~~???確かに名前は天内アキノだが・・・アキちゃんとは
膳「あのばあ様がアキちゃんだなんて可愛いあだ名があった時も驚きだが・・まさか俺に憑いてたとは」
ヤガラ「今までは存在してたがお前さんには干渉できなんだ、だがワシとお主が・・その・・交わって馴染んだからお前にも干渉できるようになったのよ」
アキちゃん「あらあらぁ~ヤガラ様も随分可愛くなっちゃって・・ウチのひ孫の事、よろしくねぇ」
ヤガラ「アキちゃんに言われたら仕方ない精々面倒見てやろう」
フーーンと偉そうに煙草の煙を鼻から出すヤガラ、こいつ、俺が起きたから吸いやがったな
膳「どっちが面倒みてんだか・・」
ベットから起き上がりハイライトを咥える俺、無意識にヤガラに火を催促する
ヤガラ「ほれ」
ぽっ、といつものように指先に火が灯り、煙草に移る。吸い込む
膳「ふはぁぁあ、あ‘‘~うめ~」
アキちゃん「あらあらまあまあ、一端の喫煙者になっちゃって、膳ちゃんてばもう」
嬉しそうに俺の周りを飛び回る光る玉、ばあ様
膳「しかし、コレがばあ様ねぇ、懐かしい声だから間違いないんだろうけど、どうしたのよ」
アキちゃん「それはねぇ、お別れを言いに来たの、そろそろ膳ちゃんも良い歳だし、ヤガラ様もいるから
大丈夫そうだし、」
いきなり別れ話っすか、
ヤガラ「アキちゃんは転生することを選んだのじゃ」
ヤガラ様が少し悲しそうにする。転生ってあれか、最近流行の
アキちゃん「そうそう転生、今度は何処に生まれましょうかね、なんでも最近異なる世界に転生するのがあの世で流行ってるのよ」
膳「まんま異世界転生じゃねーーか!!」
思わずツッコミを入れてしまった。あとなんか声若返ってね?
アキちゃん「あら、よく知っているわね」
ばあ様が驚いたような声を出す
ヤガラ「偶然こちらの世でも流行ってるのじゃ、ファンタジー?とか言ったか?漫画やテレビで大人気じゃぞ」
アキちゃん「あら、そうなの?ふふ、やっぱり世界はどこかで全部繋がってるのね」
嬉しそうな声で言うばあ様
ヤガラ「アキちゃんの価値観もどうやら一つの真理だったようじゃの」
嬉しそうに煙草の煙を吐くヤガラ
アキちゃん「懐かしい話ね、あの頃はよくお参りに行って話し合ったわ」
なんだよ話し相手いたじゃん、俺の曾祖母だが
ヤガラ「アキちゃんはワシが見えておらんかったぞ、声だけじゃ」
そなの?てっきり俺と同じで見えてるもんだと思ってたわ
ヤガラ「それがアキちゃんの凄いところよ、アキちゃんはな、ワシが祟った時、お百度参りさながら
毎日毎日宥めに来てくれたんじゃ、拝み屋なんぞよりよっぽどありがたかったぞ」
ヤガラが光る玉(ばあ様)をよしよししながら煙草を吹かす
アキちゃん「あの時はとにかく宥めねばなるまいと必死だったからねぇ、結局怒りが収まったのは
数人祟り殺したあとだったわね、ヤガラ様」
ヤガラ「特に許せぬ奴らだけ祟り殺したからな、ま、手打ちじゃ」
だからさらりと言うなよ・・あ、そういえばばあ様が居るなら伝えなきゃじゃん
そう思い俺は死んだらヤガラ様の幽世で煙草を栽培して暮らすこと。だからこの先転生しないことを
ばあ様、アキちゃんに伝えた
アキちゃん「まぁ、、何とも奇妙な事ね」
ヤガラ「うむ、しかも善から言うたことだぞ」
二人してなんか納得して・・あ、ヤガラが笑った。おそらくばあ様も笑ったんだろうな
膳「なんか二人で納得してるが、説明無いと当の本人わかんないですけどーー??」
少し拗ねたように煙草をふかす。時計を見ればもう10時だ、朝飯くいっぱぐれたとりあえず薬飲もう
ヤガラが二ヤリと笑いながら話す
ヤガラ「なぁ膳、お前さん、昔は身体凄く弱かったって言ったら信じるか?」
は?何言ってんの?体弱い奴が親父より体格デカくなるかよ
ヤガラがそれ見たことか!と笑いながらばあ様に笑いながら話しかける
アキちゃん「膳、アナタはね、昔本当に体が弱かったの、それで何回もヤガラ様に頼みに言ったのよ」
うっそぉー、ほんとに弱かったの?この今ヤニカスになってる体が?
ヤガラ「なんなら喘息も患ってたぞお前さん」
は?喘息?煙草吸えないじゃん
アキちゃん「だからね、お願いしたの、ひ孫の身体が強くなりますようにって、」
ヤガラ「その願いを聞いたのがワシじゃ、まあ元の八幡様じゃの」
なーる程ねぇ、てかやっぱり声若返ってるよね、あと話し方も
ヤガラ「おそらくアキちゃん呼びしてるからじゃ、魂は引っ張られやすいからのー」
アキちゃん「アキちゃんでーす♪」
わぁ、なんか女子高生みたいなノリ出てきた
膳「んで、願いを聞いてくれたのはわかったが、どうやって強くなったのよ俺」
一番疑問なところを聞く、だってそうだ、いくら願いを聞いたからってそうそう簡単にいかないだろ
ヤガラ「そこはワシの腕の見せ所よ、赤子のうちから少しずつ時々氣を注いで、あとは近寄ってきた
病魔を片っ端からぶっ飛ばし喰うたのよ」
うわぁ・・なんて物理的作戦、結果成功してるけど、てかあれか、以前歯医者での光景に懐かしさを覚えたのはそれか
時間はもう昼、そろそろ腹が減ってきた
アキちゃん「ねぇ、膳ちゃん、お願いがあるんだけど」
膳「なんじゃらほい、ばあ様」
アキちゃん「おにぎりを二つ作ってほしいの」
膳「ああいいよ、んじゃ30分待ってくれ、炊くから」
アキちゃん「ありがとう」
嬉しそうにお礼を言われた。素直に嬉しい
急いで台所に降り、麦飯をどんぶりに移し白米を炊く
白米だけ炊くなんて久しぶりだ。ついでにあれも仕込んでおこ
それから米が炊けるまで三人でいろんな話をした。曾祖父との馴れ初めの話や昔作ってもらった紙手裏剣の作り方からいろいろだ、
ピー!という音と共に白米が炊ける。水で手を濡らし俵型に握っていく、ちょっと大きい気がするが気にしない、あっという間に俵型おにぎりが出来上がる。そこに味噌を濃い目に塗りたくる。味噌付けおにぎりだ、ばあ様がよく作ってくれたものだ。合間に卵焼きも作った
仕込みの一つである麦茶をコップに並々と注ぐ、ばあ様とヤガラ様を呼ぶ、二人仲良く天井貫通してきた
ホント便利なソレ
アキちゃん「あらぁ・・これは・・」
目の前に三つ並べられた味噌付けおにぎりと卵焼き、麦茶を見て驚くばあ様
ばあ様「懐かしいのぉ・・よくお前さんに作ったものじゃ・・よう覚えとったなぁ」
ばあ様の姿が俺の良く知る姿になる。腰の曲がった細い身体、懐かしい茶色の着物
長い髪を結い時代劇に出てくるような髪型をした、俺の良く知るばあ様だ
ばあ様「嗚呼・・旨い・・旨いのう・・卵焼きもあるとは、膳、お前は本当に優しい子に育ってくれたのう」
自然と涙が出る。ヤガラはただ優しい顔で佇み、見守ってくれている
膳「ばあ様、すまねぇなあ、ろくに恩返し出来なくてよ」
俺が中学の頃に亡くなってしまってから、仏壇に飯と水を供えるぐらいしかできなかったからな
ばあ様「良いんじゃ・・今これを食べられてることで充分じゃよ・・充分じゃ・・」
ばあ様の姿が薄くなっていく・・ヤガラ様が口を開いた
ヤガラ「アキちゃん、安心せい、死後のコイツの面倒も見てやる・・だから・・安心して逝け」
今までで一番優しい顔をするヤガラ様、嗚呼本当に良い関係だったんだな
ばあ様「ありがとう・・ヤガラ様・・・ありがとう・・膳」
ばあ様が見えなくなった・・逝ったのか
ヤガラ「ああ、満足そうに逝ったよ・・これで本当にワシらだけじゃ」
寂しそうに言う、あとに残された空の皿とコップを見つめ続け、なんとなく二人で手を繋ぐ
膳「さて・・・ばあ様も逝ったことだし、アレもそろそろかな!」
わざと大きい声で言う。ヤガラの顔に?が浮かぶ、へっへっへ
膳「じゃーーん!!」
そう言いながら取り出したるは氷水でキンキンに冷やしたスイカ、この前の物産展で結局買わされたやつだ。
ヤガラ「す・・スイカあああああああ!!」
さっきの優しい顔は何処へやら、目をシイタケ柄に光らせつつスイカに飛びつく
ヤガラ「うへへへ・・スイカ・・スイカ・・うへへへ」
威厳0やんけ・・まあこっちの方がヤガラらしいや、
ヤガラ「膳!はよ切ってくれ!!食べたい!!!これ食べたい!!」
はいはいわかったからヤガラそこどいて、スイカ切れない
まずは半分に切って片方をさらに半分、ヤガラの分はこれでOKあとは、まあ食う分だけ切って冷蔵庫行きかな
ヤガラ「え!?これワシの分!?こんなにいいの!?」
めっちゃ目がキラキラしてる、良いよ
ヤガラ「ひゃっほーーーーい!!」
西瓜二つ持って走るな、落とすぞ
二階に上がってソファーに腰掛ける。ヤガラがなんかお座りのポーズでテーブルにスイカを置いて待ってる。
膳「そんじゃいただ・・」
ヤガラ「いただきまーーーす!!がぶがぶがぶがぶ」
オイオイそんな喰い方ありか!?昔見た志村けんさんみたいな喰い方だぞ
ヤガラ「シャグ・・シャグ・・パキ・・ゴクン」
種ごとかみ砕いて飲んだ・・・だと
ヤガラ「ン!!」
ヤガラが柴犬のような笑顔で煙草を咥えて待ってる。ハイハイ
いつも通り愛用のジッポで火を付けてやる。満足そうに笑顔で吸う
ヤガラ「アッハアーーーーーー!!!!クーーーーー!!!!」
すんげぇ声でたな
ヤガラ「たぁまらんのーーー」
ふはぁぁあと煙を吐くヤガラ様、ヤク中かおのれは
ヤガラ「善も風呂あがってサイダーと煙草キメた後の姿、こんなもんじゃぞ」
マジかよ、そんな顔してんの俺
膳「なあ・・・」
なんとなく気になるので聞く
ヤガラ「なんじゃ?」
膳「ばあ様、ちゃんと転生できたかね?」
ヤガラ「あれだけ満足して逝ったんじゃ、無事できたじゃろ」
ヤガラ様がもう一つのスイカを大事そうに齧りながら語る
膳「記憶はなくなるんだよな」
俺もスイカを一口齧りながら煙草を吸う・・不味い
ヤガラ「フツーはきれいさっぱり無くなるの、最近の転生モノのラノベ?とか言うのは極稀じゃ」
膳「そうか」
俺は煙草の煙を吐く・・天井に煙が上り消える
ヤガラ「何じゃい何じゃい!辛気臭いのぅ、お前は立派に送り出したんじゃぞ?誇れ」
皮ごとガシュリと西瓜を食いながら呆れたように語るヤガラ
膳「誇れ・・か」
ヤガラ「ゴクンッ!!・・いいか膳、人はな、死ぬ、じゃが想いは相手側にも残る」
ほう?どういった感じに残るのか気になる
ヤガラ「より良い世界、場所への切符になるのじゃ、故人の行いにもよるが、想い、想われた人や獣は
より良い世界へ行く、逆に恨みや心残りが多いモノはまた似たような世界で彷徨うように生きる。」
膳「なるほどねえ、だから誇れってか・・」
スイカをシャリと食べ飲み込む・・甘い
ヤガラ「お主は死後ワシの幽世に来るんじゃから心配するな、よほど理不尽な悪さでもしない限り幽世から跳ね返されたりせんよ」
なるほどね、じゃあ残りの人生なるべく大人しく暮らさなきゃな・・ん?今と変わってなくね?
ヤガラ「それでいいんじゃよ、あ、煙草を吸う金は稼いでもらわんと困るがな」
ニシシ、と屈託のない笑顔で俺を見るヤガラ、はいはいわかってますって
二人そろって煙草の煙を吐く、今日はなんか色々あったなあ
明日も良いタバコが吸えますように、そう思うながらスイカを・・アレェ!?俺のスイカがなぁい!?
ヤガラ「シャリ・・シャリ・・ゴクン」
喰ったな・・ヤガラ
ヤガラ「ピ~♪ピピ~♪」
膳「くぉんのスイカジャンキーがぁぁぁぁ!!!」
ヤガラ「うわーっ!?膳が怒ったーーー!?・・怖ぁい♪」
大げさに驚いたと思ったら体をくねらせて誘ってきた
膳「そんなことでゆるs」
腹筋チラッ
膳「ゆるす!!」
しっかりしろ・・俺・・




