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神様でも腹は減る

あれから10年たった夏、俺ももう48歳、本格的なおっさんだ、だというのに

店員「おまたせしました~!」

目の前に置かれたのは800グラムのどでかい牛ステーキ、見てるだけで胃もたれしそう

ヤガラ「キタァァァァァァ!!!さあ!食おうぞ!!!」

俺に同化してるヤガラ様のテンションが上がる

あれから俺は正社員になり、稼ぎ、懐にも余裕が出た。だからこうして今、贅沢な肉の塊にかぶり付いてる

ヤガラ「うまーい♪あ~、なんという、なんというハーモニーか・・肉の油、そしてタレ、甘み、何より

この米に合う!」

頭の中でそう言いながら俺の身体はガツガツと肉と米と味噌汁を飲んでいる。

その割にはテンション低いって?だってヤガラが俺の身体操って喰ってんだもん。そりゃテンション低いままよ。俺は寿司が食いたいんだ

ヤガラ「安心せい、ワシが憑依を解けばこの場合腹は空いたままじゃ」

ホントかよ、この10年で初めての出来事だから不安もある。だって普段麦飯に缶詰めだぞ

ヤガラ「おお~!!この部位もなんと旨い!牛のヒレとはこんなにうまいのか!!」

げ、パネルで追加注文しやがったな、ん?・・ご飯・・大盛追加・・だと!?

読者に想像しやすくすると、なんか真っ暗な場所に連れてこられて延々と目の前で映画みたいに自分が

ガツガツと喰いもん食わされてんのを見せられてるってわけだ、不思議な事に満腹感も味もない

ヤガラ「便利じゃろー、膳は金の心配だけしておれ」

そーだよ、そーだよ!?こんだけ食って金ヤバいんじゃ・・

ヤガラ「食べ放題得コース?というのにしたぞ」

さらりと言われる。ちょっと、その食べ放題見して

ヤガラ「ほい」

目に映ったのは食べ放題「特」コース、

ギャーー!!?一番高いコース!?お得の方じゃねーのかよ!?

目に映ったのは17000円コースの文字、おおう・・

ヤガラ「いやー旨い!旨い!」

ガツガツモリモリ食ってゴクゴクと昼間からノンアルビールを飲む俺(ヤガラ様)

周りからなんかコイツいつまで食うんだ?みたいな目を向けられてるっぽいがヤガラ様は全く気にしてない、ま、俺もそんなことよりたばこ吸いたい

ヤガラ「ふはー!!!食った喰った、ご馳走様!!」

満足そうにするヤガラ様が席を立つ、おっと、交代交代と

膳「あ‘‘~~~、煙草すいてぇ」

ヤガラ「いの一番にその言葉か変わらんのう」

座席番号のレシートを持ち会計に行く、今の世の中無人レジだから便利だね

会計を済まし、店を出て軽く伸びをする。ふと腹具合を確認してみる。確かに腹がいっぱいになってないし、何より胃もたれも胸やけもない

膳「おお・・・こいつはスゴイや」

これなら今日はいくら食ってもらってもいいな、無論予算の範囲内で

ヤガラ「じゃ~ろ~?さ、次はラーメンじゃ」

まだ入るの!?良いけどさ、言い出しっぺ俺だし

ヤガラ様「そうじゃぞ~?お主が迂闊にも10年目の節目だ、だからなんかしたい、なぁ~んて言ったからじゃ」

俺の真似すんじゃねぇ、恥ずかしいだろ

ヤガラ「アレよりは恥ずかしくないじゃろ」

ニシシと笑いながら体を抱き寄せられる。出会った頃とは違い随分筋肉質な腕になったな、腹筋も割れてるし

ヤガラ「筋肉だらけの女は嫌いかえ?」

腰をくねらせて脇見せしてくるヤガラ様、うん、最高

10年前の元旦以来堰を切ったように誘われ続けている。なんのご利益か体は老いてるはずなのに疲れにくく、髪の毛もフサフサだ、感謝しかない

ヤガラ「まあ、それだけ膳がこちら側に寄ってきている証だがの」

あ、そうなの?そりゃ良いことだ

車を運転しラーメン屋に向かう

ヤガラが隣で煙草をキメてク~~~~!!とか言ってるほっとこ

運転しながら街並みを見る。随分変わってしまった。車は通るのに店がほとんどシャッター下りている

馴染みの店も幾つも閉店してしまった。おかげで今はよくわからん店が代わりに立ってる

人口も減った。少子高齢化の波にもれなく我が県も飲まれつつある

膳「ふーーーーー」

タバコの煙を吐く、長く長く、変わらないものと言えばこのたばこ、ハイライトくらいか

上がり続ける物価の中で未だに520円なのはありがたい。企業様様だ

ヤガラ「ふっふふーん♪」

鼻歌歌いながらPeelのスイカ味の煙草を吸うヤガラ、本当にそれ好きね

ヤガラ「うむ、やはりスイカは良い、何個食っても飽きぬ」

スイカより赤い瞳がパッケージを優しく見つめる相変わらず綺麗な目しやがって

ヤガラ「そう褒めるな」

膳「たまにゃ良いだろ」

ヤガラ「やっぱもっと日ごろから褒めろ」

ヤガラがムスッとする。ヤダピー

膳「ホラ、着いたぞラーメン屋」

ヤガラ「おう」

わざわざ運転席を通って降りる。以前みたいに通り抜けなくなったが変な癖がついた

ヤガラ「さーて、味噌に醤油に塩、どれから食らうか♪」

全部食う前提かよ・・まあ金あるからいいか

ヤガラ「さーすがお前さん!気前良いのう♪」

たらふく食ってくれ、だが残すなよ

ヤガラ「あいよ♪」

そういうと同化する。俺はまた映画館みたいな空間に移動する

店員「いらっしゃいませー!!!」

暖簾をくぐると元気な声で出迎えられる。カウンター席に迷いなく座る

ヤガラ(膳)「この特大チャーシュー麵大盛でお願いします」

迷いなくチャーシュー麺から行きやがった、あんだけ肉食ったのに

ヤガラ「肉は薬ぞ」

ほんとかよ、食いたいだけだろ。胡坐をかき耳をほじりながら言う

まもなくして山盛りのラーメンとその上に一本のチャーシューが乗せられたナニカが席に運ばれてくる

割りばしを綺麗に割り、頂きますと小声で言って麺をずぞぞぞぞぞぞっともはや吸い上げる

よく噛んで食えよ?

ヤガラ「ゴクン」

は????飲んだ???飲んだの???

ヤガラ「ずぞぞぞぞぞっ・・ゴクン」

飲んだぁぁぁぁ!!

お、おいよく噛んで

ヤガラ「待て、今喉越しを全集中で感じておる」

あ~、そーいや蛇だったわ

続いて半熟卵をパクリ

ヤガラ「ゴクン」

あ、今のはなんか蛇っぽい

ヤガラ「ムシィッ・・モグモグ」

あ、チャーシューは噛むのね

ヤガラ「む・・ングッ・・ングッ・・ぷはぁー!!」

片手でどんぶりもって汁一気飲みしやがった、塩分過多

ヤガラ「ごちそうさまでした」

お?お腹いっぱいになったんか?

ヤガラ「膳・・アイス喰いたい」

恐らく頭の中?で盛大にずっこけた。甘味食いたくなっただけかよ!!!

ヤガラと交代して会計を済ます。1600円物価高恐るべし

ヤガラ「な~~~あ~~~?ぜ~~ん~~~???」

抱き寄せてくねくねして甘えてくる。分かった、わかったよ

膳「ちょっと時間かかるがいいか?」

エンジンを掛けながらヤガラに確認する。煙草に火をつけた姿勢でこくりとうなずく

膳「よし」

車を走らせる。山形市からだと寒河江は遠いんだよなぁ

車の窓を開けると熱っぽい風が吹き抜ける。咥えた煙草の煙が流れていく

ヤガラ「あ‘‘~~アイス食べたい~~ひゃっこい(冷たい)氷~~」

膳「ラーメン一気食いなんかするからだ」

赤信号の時、四谷サイダーを開けてヤガラに手渡す。それを一気飲みするヤガラ

ヤガラ「あ‘‘~、ちょっと生き返った」

ちょっとかよ、返せ俺の水分

青信号、車を走らせる。この車も良く持ってくれてる。相棒か兄妹みたいなモンだ

車が答えるように音を立てる。もしかしたらこいつも付喪神になりかけなのかもしれん

しばらくして、お目当ての場所に着いた、ヤガラを見ると暑いのか若干うなだれてる

ヤガラ「ついたのか~~~?」

元気のない声で俺に語り掛けるヤガラ、着いたぞ、アイスあるぞ

ヤガラ「アイス!!」

飛び起きていそいそと車から降りるヤガラ

膳「で?また俺に憑依して喰うか?」

ヤガラ「うむ、借りるぞ」

ルンルン笑顔で同化するヤガラ、おい走るな

目の前にソフトクリームの看板が映る。そして見えてしまった・・スイカ味

ヤガラ「スイカ!!??」

あー、ダメだこりゃ、目をらんらんと輝かせ一目散、だーかーらー走るなっての

店員「いらっしゃい~」

優しそうなおばあさんが出迎える

ヤガラ(膳)「おばちゃん!スイカソフトクリーム3・・2つ!!」

店員「あいよ~!」

無理やり意識を俺に戻して3つ購入は回避した。どうやったかはわからん

店員「あい!おまたせ~!お腹冷やさんようにね」

ヤガラ(膳)「ありがとう!」

あーあーもー、さっそく座って食べ始めちゃったよ・・ホント、スイカに目がないんだから

ヤガラ「あむ・・あむ・・ん~~~♪」

堪らんという顔をするヤガラ、てか俺、いい歳なんだから・・いや、いいか

あっという間に一つ平らげコーンをバキバキと食べるヤガラ、俺で想像すると・・いや俺も昔よくやってたわ、人の事いえんわ

二つ目を軽くパクリ、そのあとはひたすら舐めながら食う、そんなに名残惜しいか

ヤガラ「食べ物とは・・切ないの・・」

もっとゆっくり食えばいいのに・・いや、この猛暑じゃ溶けるか

2つ目も平らげ、ゴミをゴミ箱にポイする。えらい

ヤガラが俺の身体から分離する

ヤガラ「いやー!!満足満足」

お腹をポンポンするヤガラ、あんだけ食ったのにちっとも膨れてない

ヤガラ「腹筋の賜物よ」

自慢するように着物をめくる、バキバキの腹筋だ

膳「さすがですなー」

適当に褒めながら喫煙所をさがしキョロキョロ・・ん?

膳「スイ・・カ・・大特価?」

どうにか読める文字をうっかり口に出してしまう俺

ヤガラ「スイカ!?何処じゃ!?」

しまった・・うっかり読み上げちまった物産展だからスイカくらいあるかぁ

膳「ホレ、なんか向こうにある」

諦めて指をさす。ヤガラがスイカーー!!と叫びながらドドドドと走って行ってしまった

おばあちゃん「随分元気な嫁っ子さんだねぇ・・お前さんイイ子見つけたの」

膳「ああ、ほんとイイ女だよ」

苦笑しながら答える・・・ん?ばあさん?

声のした方を見る。誰もいなかった

ヤガラ「ぜーーーん!!はよこい!!」

ヤガラがぴょんぴょん跳ねながら呼ぶ声が聞こえる

なんか・・・懐かしい声だったな

ヤガラが居るスイカ売り場に急ぐ、今日も暑い、しばらく雨はきそうになかった




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