神様も煙草も千差万別
こちら膳、こちら膳、ただいまヤニ切れにつき限界間近、ドーゾ―
迂闊だった、まさかこの俺が煙草を切らすなんて、
休みの日起きたら煙草は一本、ヤガラ様も俺も寝起きのヤニは欲しい
そこからは辛い戦いだった、一本をめぐり人生で一番の賭け事、じゃんけん
その死闘を制したのは・・・ヤガラ様だった、俺がチョキでヤガラ様がグー
膳「ちくしょー、なんでチョキ出した俺」
人生最大の敗北を噛みしめながら俺は車を走らせる。煙草屋に行くためだ、
ヤガラ「~♪~♪」
楽しそうに鼻歌歌って助手席に座ってるのはじゃんけんを制したヤガラ様
膳「半分くれたってよかったのに・・」
恨めしそうにヤガラ様を見る。今度は赤信号で止まってる、安全だ
ヤガラ「世の煙草はすべからくワシのじゃ♪」
キーーーー!!!!今すぐ車から降ろしたい
事はさておき煙草屋を目指す。今時珍しい専門店だ。葉巻もある
ヤガラ「のー、その煙草屋スイカ味はあるのか?」
ヤガラ様が両手を頭で組み、景色を見ながら答える
青信号、車を走らせながら答える
膳「逆に言うとそこでしかスイカ味は見かけたことないなぁ」
ホント、あそこは何でもあるからな
ヤガラ「店の名は?」
膳「タバコセンター野口」
ヤガラ「個人店か」
膳「そーそー」
他愛無い会話をしながら車を走らせる、おっと道間違えるとこだった。たまに間違うんだよなぁ
膳「さ、着いたぜ」
車から降り、鍵を閉める。ヤガラ様は・・ぬぅっとドアをすり抜ける。鍵の意味・・
店に入るとヤガラ様がおお!?と声を上げる
膳「さ、お目当てのもん買いますか」
見渡す限り煙草煙草、パイプに煙管、刻みに嗅ぎ煙草葉巻に電子、まさに愛煙家の楽園だ
ヤガラ「凄いのぅ!!凄いのう!!」
あっち行ってはまじまじ、こっち行ってはきょろきょろ、駄菓子屋に来た子供かな?
店長「いらっしゃい」
膳「ども」
お互い笑顔で挨拶する。とても気のいい人だ
膳「Peelのスイカ2つ・・いや3つとハイライトレギュラーカートン2つ、あと中南海1つ」
慣れた様子で注文する。本当は毎回来たいがちょっと遠いからな、仕方ない
店長「はい~」
向こうも慣れた手つきで棚からとり渡してくれる。会計を済ませヤガラ様を探す
さて、どこに・・・居たよ
ヤガラ「・・・(じーーー)」
ひたすら葉巻の棚の前で見つめて動かない
ほらヤガラ様、買うもん買ったから帰りますよ
ヤガラ「じーーー(膳を見る)」
ええ?葉巻吸いたいの?
ヤガラ様がコクリとうなずく、一本2000円
うわぁ、たっか・・
ヤガラ「・・・」
無言で近寄ってきて服をひっぱるな・・ええい引っ張るな
ヤガラ「うるうる」
今度は泣き脅しかよ・・・はぁーーーー
膳「すいませんコレ追加でください」
圧に負け葉巻を一本カウンターに出す俺
店長「はいよ~」
くそぅ、今日は負けてばっかだ
ヤガラ「はっまき♪はっまきー♪」
よかったね、楽しそうで
車に戻る、もう待てないと葉巻の包装紙を力任せにべリベリ剥がし、吸おうとするヤガラ様
待て待て待て
ヤガラ「何じゃ?」
膳「葉巻は吸い口切るんだよ。葉巻カッターあるから待てって」
ヤガラ「むぅ」
駄々っ子しないの、いい歳
ヤガラ「あ?」
なんでもないです葉巻貸して
ヤガラ「ほい」
ヤガラ様から葉巻を受け取り、葉巻カッターで吸い口をカットする・・そんなに見ないで恥ずかしい
膳「ヤガラ様、火」
付け口の方を向ける、ヤガラ様の火で満遍なく葉巻を炙っていく
膳「こんなもんかね」
ヤガラ様に葉巻を渡す。恐る恐る口に咥え吸い込む、葉巻の先が真っ赤になりミリミリと炭に変わって・・オイオイオイオイ吸いすぎ吸いすぎ!?まさか・・肺に入れてんのか!?
膳「ヤガラ様!?葉巻はふかし・・」
直後、ぶはぁ~~~と濃厚な煙が車内に広がる。うわあ、絶対肺に入れてる
ヤガラ「う~~~~む」
珍しく険しい表情になる、口に合わなかったのか?
もう一度加えミリミリと葉巻を消費していくヤガラ様
ヤガラ「う~~~~ん、何とも言えん」
フスーーーーと鼻から煙を出しながら感想を言う、合わなかったかーーー
膳「ま、合わなかったんなら仕方ないよ、人それぞれだ」
安心してハイライトに愛用のジッポで火を付ける。ああ、この味この味
ヤガラ「のう、葉巻の吸殻、灰皿に入らんぞ」
もう吸い終わったの!?うそぉ!?
みれば灰皿の小さい穴に対し、ぎゅむぎゅむと押し込んでるヤガラ様がー待て待て待て壊れる
ヤガラ「むう・・フン!!」
よほど入らなかったのが気に入らなかったのだろう、葉巻を手のひらに置くとギュッ!!っと握り
開いた手のひらには細長いものがコロリ、こっわ、握力なんぼよ、こっわ
ヤガラ「うむ、これなら入る」
満足そうに吸殻入れに細くなった葉巻を入れふたを閉じるヤガラ様
膳「その握力・・俺には使わないでくれよ」
嫌ホントマジで、ぷちっと逝っちゃうから
ヤガラ「善には使わんよ、そんなことしたら死んでしまうだろ」
何を当然な、という顔をされる
ヤガラ「しかし、見事な店だった。あそこで暮らせるなら暮らしたいくらいじゃ」
膳「そーなったら毎日煙草の本数が合わなくて迷惑かかるやんけ」
ホント良い店長さんなんだから勘弁してあげて
ヤガラ「うーん、いや、やはり、暮らせたとしても住みつかんな」
おや?珍しい事を言う、毎日煙草に困らんなら天国だろうに
ヤガラ「何を言う、お前がおらんではないか、ワシにまた友のいない生活に戻れと?」
あ、そーゆー事、確かに一人煙草吸えても今の環境みたいに話し相手が居ないんじゃつまらんよなぁ
ヤガラ「しかり!それにその・・お前からは夜の誘いも受けてるしの!!」
あぶねぇ、危うくハンドル操作ミスるとこだった・・まーだ覚えてやがったのか
ヤガラ「無論だ!ワシをそこらの女と一緒にするでないわ!」
ヤガラ様が珍しく顔真っ赤に震えながら大声で言う、おお茹蛸みたい
膳「てことはコイツに続き二人目かぁ・・」
赤信号、ブレーキを踏んで愛用のジッポを取り出す
ヤガラ「あっ、それは」
そ、長年の嫁TATOOジッポ、二十歳になる前にとある店で惚れて買ったんだよねイイ女だよ
膳「んーチュッ」
唐突にジッポにキスなんかしてみる
ヤガラ「うっ!?」
ん?なんでヤガラ様が胸抑えるんだ?
もう一度チュッ
ヤガラ「ぐはっ!?」
今度は攻撃食らったみたいにのけ反った、どーゆーこったい
プップー
あ、やべ信号青だ、慌てて発信する
膳「ヤガラ様、どーゆーことなん?」
ふーっふーっと荒い息を立ててなんか顔まで火照らせて荒い息を付いている
ヤガラ「いや・・その・・実はな?ひいっ!?」
不意打ちでジッポの背面にキス、ヤガラ様が背中に手を回す。なるほどこっちがやはり裏か
膳「実はふえええええ!?」
蓋の背面に息を優しくふー、おんもしれぇ声あがったわ
俺は車を車庫に入れながらジッポをマジマジと見る。やっぱりいつもの愛用ジッポだ。隣でよろよろと
頼りなく歩いてるヤガラ様意外特に変わりはない
部屋に戻る。ヤガラ様が珍しくベットに横になる・・すかさず息を首筋にふーっ
ヤガラ「んにゃあ‘‘あ‘‘あ‘‘!?!?」
一番すごい悲鳴が上がったHAHAHA面白れぇ、てかまた触れるようになってるのか?
ソファーに座り煙草に火を付ける。嗚呼旨い・・隣でなんか痙攣してるヤガラ様は放っておこう、朝一煙草の恨みじゃ
しばらくゲームのデイリー消化したりして時間が流れる。昼も過ぎた頃だろうか、ヤガラ様がむくりと起き上がり、ベットに胡坐をかいてこちらをにらむ、ああん怖い
ヤガラ「膳よ・・何がああん怖いじゃ、散々好き勝手してくれおって」
ヤガラ様の身体から筋肉が盛り上がる。あ、コレ結構怒ってらっしゃる?
ヤガラ「いいか!!こういうことはもっと正しい順番でだなぁ!?」
クドクドクド
あ、やっべ、説教始まった
ヤガラ「まじめに聞かんか!!大体お前は」
あー、スイッチ入っちゃったよ
まあなんだ、要点まとめると?信仰が薄れてたから、そのままでは顕現出来なくて、丁度俺のジッポライター達が付喪神になりかけだったからその力を取り入れる変わりに物に宿った思いも取り込んで顕現したと、だからライターに特定の良い感情の籠った行動すればそれが自分にも伝わると、あと時々触れるのはヤガラ様の感情がなんらかの理由で高まってるときか自分が許可した時触れると・・なるほどなぁ
ヤガラ「以上!!わかったか!?膳!?」
ズビシィ!!と指を指された。まあ大体
膳「ま、よーくわかったよ、ありがとうな~そんなに想っててくれたなんて」
ジッポライターを優しく撫でる。あ、なんか堪えてる顔になってるヤガラ様
ヤガラ「はぁーーー・・ン」
煙草を咥えて火を付けて軽く吸い、咥えたまま俺にズイと出すヤガラ様
膳「え?」
ヤガラ様「ン‘‘‘‘!!!!」
ハイ、すんごい真っ赤な顔でやれ!!っていう顔してるシガーキスやれってのね
俺は煙草を咥えて近づける
ヤガラ「ンン‘‘‘‘ッ」
こいつめ!!みたいなニュアンスの声を出し、俺の煙草に火のついた煙草をグリグリ押し付けてきた
ちょ、潰れる潰れる
ジジ・・と俺の少しへこんだ煙草に火が付く・・おい?なんで離さん?
途端に頭をガシッと掴まれる。痛い
膳「ンン!?」
めっちゃ至近距離で煙草を吹きかけられた。けっっむ
ヤガラ様が満足そうに隣に異動してくる。またコォォーといつかみたいに煙を吐く、氣でも練ってる?
膳「ふーーーーー・・」
俺も煙を吐く、ああ、やっぱ誰かと吸うたばこは旨いなぁ
何も言わずお互い煙草を吸い終わり新しいのを咥える。互いに火を付け合う。そしてまた吸う
ああ、今日も良い喫煙だった・・




