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身辺整理

いやぁ、ヒドイ目に合った、俺は今、4人からの猛攻を凌ぎ大の字で横になっている

膳「あ・・危なかった・・もう少しで本当に逝くとこだった」

ヤガラや江鬼はともかく、全盛期?に戻った茨木童子と江季公がまさに鬼門だった。二人の性欲の強い事

強い事、茨木童子がへばったら江季公の相手をし、江季公がへばったら茨木童子が復活してくる

そんな無限ループの相手を延々とさせられ、息も絶え絶えになりながらこなした。天国だが地獄だった

ちなみに茨木童子の性別は無かった。無い状態に胸が付いた状態だった。だが良い腹筋と綺麗な鎖骨だった

後悔はしてない。横を見る。ヤガラ、江鬼、江季公、茨木童子が同じく大の字になって眠っている。いい気なものだ。服も汚れたので茨木が用意してくれた着物をゆるっと着ている。部屋の向こうからは相変わらず百鬼夜行のお囃子の音が聞こえてくる。

膳「妖怪たちも体力あるなぁ」

煙草をふかしながら離界の景色を眺める。良い月だ、常夜の都という場所が現世ではない場所にいると実感させてくれる。俺は静かに煙を吐く、その匂いが届いたのか茨木童子が眠そうに眼をこすりながら起き上がる。

茨木童子「父上、もう起きたのか?」

俺は声を潜めて起きたと言う。茨木童子がこちらにずりずりとにじり寄ってくる。そうして胡坐の上にちょこんと座る。俺の前に座る茨木の背が大きく見える。実際大きいのだが

茨木童子「こっちの方がいいか」

しゅぽん、と音もなく縮む茨木、便利な身体してるな

茨木童子「なぁ父上、長かった・・長かったぞこの年月」

突然茨木童子が語りだす。母に嘘をつかれ、絶望し、酒吞と出会い、世の中に八つ当たりし、毒を盛られたりと散々だったが・・ようやく手に入れた。と話す

茨木童子「なあ父上、俺は手に入れたものは離さんぞ、それでもいいのか?」

こちらを見ずに空に語るように言う茨木童子

膳「やれやれ、ヤガラもお前も、俺をこんな体にしといて今更だ」

ゆっくりと煙を吐き答える

茨木童子「それでもだ・・まだ戻れる」

茨木がこちらを見る。真剣な眼差しだ。俺はいつものように煙草を咥えながら見つめ返す

膳「俺もな、人に絶望し自分に絶望した身だ、今更戻ろうとは思わんよ」

俺と茨木童子の間で煙草の煙が揺れる。

茨木童子「良いのか?友も親戚も捨てて」

茨木童子が試すように俺に聞いてくる。ははっ、友は死に、親戚付き合いも拒んでないがしろにした俺にはどうでもいい質問だった

茨木童子「煙草のコレクションとかもいいのか?ヤガラから大事な物と聞いているぞ」

それもこの前ヤガラと吸った。この前部屋が異様に煙たかったのはそのせいだ

茨木童子「そうか・・」

茨木童子が安堵のような、本当にそれでいいのか?といった目をする

膳「なあ我が子よ」

俺はそっと片手を茨木童子の頭に乗せる。長い角の生えた可愛い頭に、そして優しく撫でる

膳「心配してくれるのはありがたいが、子供は自分の心配を第一にするもんだ」

優しく言い聞かせるように言う。それに、ただ死ぬために生きていた自分が今は誰かといる為に生きる

こんな素敵なことはないだろう?たとえそれが人以外の為でも、だ、

茨木童子「父上・・」

茨木童子が着物の裾を掴んでくる

茨木童子「おれは・・おれは・・幸せを求めてもいいのか・・?わがままを言ってもいいのか・・?」

膳「良い・・」

俺はただ一言いう、それだけで充分だ

今まで我慢していた分を取り戻すように茨木童子が泣き始めた。やれやれヤガラに聞かれたら叱られる

俺は頭を掻きながらもう一方の手で茨木童子を抱きしめる。大妖怪もこれだけ泣くんだなぁ

俺は新しい煙草に火を付ける。ああ旨い、煙草がうまいのはいいことだ

それから一晩離界で過ごし、表の世界に帰ってきた、それから大忙しだった。幽世に持っていける物と持っていけないものを選別し、まとめる、愛用のジッポ達もポケットの中だ、

ヤガラ「さて、膳よ、お前はこれから神隠しに合う、心の準備は良いか?」

ヤガラは俺に聞いてくる。俺は車のエンジンを掛ける

膳「いつでも」

助手席にはヤガラ、後部座席には茨木童子が座っている。

ヤガラ「では・・」

突然目の前の景色が歪む、俺は躊躇わずアクセルを踏む、車が鏡に溶け込むように景色に入っていく

目の前に広がったのは稲穂の群れと異様なまでに赤い夕焼け、それを眺めてついに幽世に足を踏み入れたことに実感を得る

ヤガラ「ようこそ、ワシの幽世へ、さあ家にいくぞ」

ヤガラに言われるまま車を走らせる。ひたすら夕焼けと稲穂の草原、と思われたが古びた屋敷が夕焼けの中に現れる。おお、アレがヤガラのねぐらか

ヤガラ「そうじゃ、ワシとお前の家じゃ」

ふむ、これから3人であそこでこの世の終わりまで暮らすのか、楽しみだな

ヤガラ「この世の終わりどころではないわ、この世が終わってもじゃ」

茨木童子「甘い菓子はあるか?」

これまで大人しく座っていた茨木童子が身を乗り出す。危ないぞ我が子よ

ヤガラ「スイカや果物ならありまする」

ヤガラが答える。そうこうしているうちに屋敷に着いた・・ん?

膳「遠くからは屋敷に見えてたはずだが・・俺の家やん」

もう瓜二つ、間違いなく俺の家だ

茨木童子「どうやらヤガラは父上と過ごした日々がよほど大切らしい」

茨木の話では、幽世の主の住処は心の変化で変わるらしい、嬉しいことだ

俺は車を家の傍で止める。愛車が勝手に家の周りを走り出す。そうか、お前も恋しかったのか

玄関をヤガラが開けてくれる

ヤガラ「おい、自分の家に帰ってきたんだ、なんか言う事あるじゃろ?」

ヤガラが笑いながら言う、俺たち三人は顔を見合わせ微笑みながらせーので言う

「ただいま」

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