煙草の煙に包まれて
ふはああああああ
俺は久しぶりにヤガラと二人っきりで煙草をふかしている
ヤガラ「ぶは~~~」
おーおー、盛大に煙吐いちゃってまぁ、なんかこうやって過ごすのも懐かしいなぁ
ヤガラ「ここのとこ忙しかったしのー、まあ・・退屈せんかったわい」
ヤガラが俺を抱きかかえるように胡坐の中心に座らせ、煙草をふかしながらニシシと笑う、楽しかったならいいんだ。俺はハイライトをふかしながら酒を注ぐ、そう、なんと久しぶりに酒を飲むことにしたのだ
ラム酒の芳醇な香りが鼻に来る、懐かしい、
膳「しかし、こんなことでよかったのか?埋め合わせ」
俺は改めて今回の提案者であるヤガラに確認を取る、そうヤガラに対し江鬼達を抱いた代償を恐る恐る聞いたら、ほんなら酒に付き合ってくれ、と言われたのだ。もっと凄い代償を覚悟してた俺は拍子抜けして聞き返してしまったほどだ。
ヤガラ「なんじゃい、もっと凄いのがよかったか?幽世に2年監禁とか」
想像してみた、いや?最終的にヤガラの住む幽世に行くんだから2年くらいホームステイみたいなもんじゃないか、と思った。ヤガラが俺の思考を読んだんだろう、ポカンとしている。そのあと少し頬を染めてこう言った
ヤガラ「お前は本当に・・良い嫁じゃ」
褒めてもスイカしか出ませんよ全く、俺は煙草を深く吸い込み吐き出す、煙の良い匂いが鼻を抜ける
ああ~煙草うめぇ
ヤガラがホレ、酒も飲め、と進めてくる。待て、コップは一つだぞ?
ヤガラ「それがどうかしたか?今更じゃろ」
そう言いながらグビリとラム酒を飲むヤガラ、ええい、ままよ
おれはヤガラが使ったコップで残りのラム酒を飲む、ヤガラがなんか飲んだー!飲んだー♪とか言ってるが、そんなに嬉しいか?
ヤガラ「嬉しいとも、こうして一緒の器で酒を飲む、つまり婚姻じゃ」
膳「えふっ・・えっつふっ!!」
思わずむせてしまった。婚姻!?そんな意味きいてねーぞ!?
ヤガラ「だってきかれなかったもーん」
ヤガラが口笛を吹いてごまかす。コノヤロー
ヤガラ「これで人神共煙・人神共食・人神共飲・三種の儀は揃った。お前をいつでも幽世へ連れていけるぞ♪」
嬉しそうに俺に頬ずりするヤガラ、こんなキャラだったか??俺も悪ふざけですり寄ってみる
ヤガラ「!!膳!!しよう!!」
途端に俺の服をはぎ取りにかかるヤガラ、ヤメテ!?今本当に腰がヤバいの!?
そう、最近ヤガラが変わった、前より積極的になったというか、オープンだったのがフルオープンになったというか、茨木曰く、とと様の気がどうやっても変わらんことに安心したんだ、とのコト
女心ってわかんねぇ、まあその本人も外に遊びに行ってるんですけど
ヤガラ「ぜ~ん~♪ホレ飲めさあ飲め」
俺にグイグイラム酒の入ったコップを勧めてくる。ええい、わかったからもうちょい落ち着け
俺はヤガラからチビチビラム酒を飲み、煙草をふかす。ああ~うめぇ
ヤガラ「随分チビチビ飲むのう、男ならこう、グイッといかんか」
やめんか!酒数十年ぶりの人間にほぼ一気みたいなことすな!
俺は煙草を盛大にふかし、酒で乱れた呼吸を整える。ヤガラも煙草に火を付け俺の頭の上で盛大に煙を吐く、煙い
ヤガラ「いやぁ愉快愉快、やはりこの空間よな!お前の家に来た当初は、やれ限定品だの廃盤だの泣かれて苦労したわい」
懐かしいことを言う、あの時はさめざめと泣いたもんだ、何とかラキストの銀紙バージョンだけは死守したが・・・あれももういらないかもな
膳「なぁ・・ヤガラ、そこのラッキーストライク取ってくんね?」
俺はヤガラに最後のコレクションであるラキストを取ってくれるように言う
ああ・・ちきしょう、きっとこれは酔ってるからだ、絶対後から後悔する。でも吸うなら絶対今だ
ヤガラ「これは・・良いのか?コレクションという奴だろう?」
ヤガラも気が付いたようにラキストを取る。今のラキストとは違う、銀紙で包装された奴だ
膳「いーから寄越せ」
俺は若干乱暴にヤガラからラキストを奪い取り銀紙の包装紙を破る
ヤガラ「お、おい、いいのか?それ後生大事に持ってたもんじゃろ」
酔ったヤガラも血相を変えてあたふたする。俺は自分とヤガラの煙草をもみ消し、ラッキーストライクから新しい2本を取り出し、ヤガラに火をねだる
ヤガラ「むぅ・・」
若干驚きながらいつかの様に、いつものように火を灯してくれるヤガラ、俺は軽く吸い込み煙を吐く
もう一本をヤガラの口に咥えさせる。戸惑った顔が実に滑稽だ
俺からヤガラの煙草に自分の煙草をくっつけて息を吸う、ヤガラも戸惑いながら息を吸い、火がヤガラの煙草に移る。俺はラキストってこんな味だっけ?と思いながらヤガラの顔に優しく煙を吐く、
顔に煙を吹きかけられたヤガラはポカンとした顔の後、頬を赤く染める。そして恥ずかしそうに煙を顔に吹きかけてくる
嗚呼・・もうヤガラは俺のだ・・俺だけのものだ、もう逃がしはしない、そう思う
俺は嬉しくなり立ち上がって振り向き抱きしめる。出来るだけ優しく、壊れないように
互いの心臓の音と煙草をふかす息使いだけが部屋を支配する。
膳「これで俺の何もかもくれてやる。だから、なるべく飽きないで傍にいてくれよ」
ヤガラに抱きしめ返される。小さくああ、と了承を得る。そこからは二人とも喋らず残り18本のラキストを一本ずつ分け合う、部屋は閉め切っているので部屋に煙が充満する。酒と煙草の煙と後ろから抱きしめられるヤガラのぬくもり、これだ、俺が欲しくて堪らなかったのは、渇望したのは、俺はついに手に入れた。もう離さない
どちらからともなくラキストに手が伸びる、一本、また一本と減っていく。あんなに固執したコレクションが、今はもう満足感しかない、煙草の煙に包まれた宴は茨木童子が帰ってきて
茨木童子「うお!?この部屋煙っ!?とと様もヤガラも煙!?」
と言われ怒られながら窓を開けられるまで続いた。




