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茨木童子の神算鬼謀とヤガラの受難

いやぁ~、今日も暑そ~~

雨季が過ぎ、カンカン照りの太陽光を職場から眺めながら一人思う

ヤガラ達、家に残してきたが大丈夫だろうか

ここで達と言うのには訳がある。離界の一件の後、流石に表の世界から帰らなければ仕事を休んでしまうと

思った俺は、ヤガラを除く3人に事情を説明しさあ帰ろう、となった時、当たり前の展開と言うかなんというか茨木が俺も行く!と言ってついてきたのだ。まあようやく父親になってくれる人間を見つけたんだ

離れたくもないだろうし、おれも茨木を置いていくわけにもいかんしなぁとなった。

結果、茨木童子は俺の汚部屋を目の当たりにし、掃除する!!と宣言した。大丈夫だろうか

膳「一応飯炊いてきたし、おかずも作ったし、風呂も沸かしたし・・大丈夫だよな??」

ああ、不安だ、別に茨木の能力を疑っているわけではない、寂しくないかが不安なのだ

ヤガラ一人の時は飯も風呂も必要ない、と言って俺の部屋で煙草を吸っていたが、茨木は違う

あの子は結局は寂しがりやだと思っている。初めて会った時のあの甘え方、きっとそうに違いない

膳「今日は仕事終わったら即帰宅・・いや、お土産にケーキ買ってくか、甘いモノ好きみたいだし」

淡々と骨壺を磨き床を掃除しながらそう思う。残業なんかやってられん

——膳の自宅――

茨木童子「うむうむ、ほうほう・・今の表世界は随分と変わったなぁ、俺の時とは大違いだ」

茨木童子は掃除の際に引っ張り出した漢字辞典と数学の教科書、化学の教科書をめくりながらテレビをつけ

表世界の勉強をしていた

ヤガラが隣で煙草をふかしながら感心する。

ヤガラ「ものすごい学習速度ですな、茨木様、しかし何故書物から、パソコンという機械を使えばすぐ

済むでしょうに」

茨木童子「アレは最後の手段だ、俺はどうも自分で聞いて見て確かめねばなんか納得いかん」

茨木童子が教科書を閉じる。そしてテレビのチャンネルを変えニュースなど様々な番組を見ていく

茨木童子「ふーむ・・人は平和になったら退化するのか・・なんともやるせない気持ちだな」

茨木童子が少し残念そうにする

ヤガラが煙草の煙を吐き答える

ヤガラ「仕方ありますまい、ただ少しでも楽に、楽に今を生きたい。その為に人は変容し、化学を発展させた。代わりに神秘的な部分、第六感を失ったのですから」

茨木童子が腕を組み難しそうに首をひねる

ならなぜ膳、我がとと様はああまで妖怪や神に寛容なのか、あの時見た瞳、アレは以前の俺の瞳だ

酒吞童子と会う前の俺の瞳だ、深い絶望とあきらめ、そのすべてが詰まった眼だ

ヤガラ「・・・詳しくは知りませぬが・・膳は人に絶望しておるのです。親にも恵まれず、一度は住処を失い、一人の親友にも先に逝かれてしまった・・これは決めつけになってしまいまするが、膳はおそらく人以外にぬくもりを求めているのでしょう。それこそ古い文献や現代の書物を読み漁るくらいには」

茨木童子「・・・とと様にはこの時代は辛すぎるのぅ・・それこそかつて人が人間であり、我ら妖怪や神と共存していた時代なら楽しく暮らしていたかもしれぬ」

ヤガラ「嘆いても仕方ありますまい、奴はこの時代に、この環境に生まれてしまった、なら死ぬまで耐えるしかないのでしょうよ」

ヤガラが俯く、

茨木童子「なに、そう悲観することはない、今は我らが居るではないか、結果的にとと様は八我羅、お前と言うぬくもりを得たではないか、それとも何か、お前では膳にぬくもりを与えられんと?人間に出来て神には出来ぬか?」

ヤガラが少し驚いた顔をする

ヤガラ「いえ・・ただ・・自信が無く・・」

茨木童子が額に手を当てて天を仰ぐ

茨木童子「カァーーーーーッ!?お主!?あれだけ本人にグイグイ迫っておいて自信が無い!?

あれだけ激しく交わっといて不安か!?嘘じゃろ!?」

ヤガラ「・・膳はその・・求めれば答えてくれるのですが・・誘われたことはなく・・その」

ヤガラが膳の前では絶対見せないほどもじもじする

茨木童子「うっそだろお前・・本人の前ではあれだけひょうひょうとした態度なのに・・何なら半ば強引に交わっといて、本性はそれって・・お前・・」

めんどくさぁ、と茨木童子は思った。

ヤガラは恥ずかしそうに顔を伏せる

そこでふと茨木童子はとあることに気が付いた

茨木童子「もしや・・江季公だけ目の敵にしているのは・・とと様の好みと被っておるからか・・?」

ヤガラが沈黙ののち・・コクリとうなずく

茨木童子はまた天を仰ぎ見る

めんどくせーーー!!!この神、めんどくせーーー!!!ようとと様はこやつの嫁になると思った物じゃと独り言ちる

茨木童子「そんな性癖でホイホイついてくタマかよウチのとと様は!!」

茨木童子はテレビを消し胡坐をかきながらヤガラに向き直る

茨木童子「いいか!!とと様はこの俺と親子喧嘩までしてくれるほどの器ぞ、だのにその器のデカさを見ず、自分の気持ちだけ押し付けて勝手に自分の嫁を疑うとは・・流石に無礼じゃぞ!?」

茨木童子が畳をバンバン叩きながらヤガラに説教する。

茨木童子「お前はとと様の夫であり!とと様はお前の自慢の嫁なんじゃろ!?なら夫はどっしり腰を据えて構えておれ!!それが夫というものじゃ!!このたわけ!!」

ヤガラ「面目次第もございませぬ・・」

ヤガラが小さくなる

茨木童子が立ち上がりヤガラを指さす

茨木童子「決めた!!お前がそんなんなら俺もこの争奪戦参加してくれようぞ!!あー!!もう!!江鬼だけならともかく!江季公やお前だけには任せてられん!!俺もとと様の夫になり、お前より立派に支えてくれようぞ!!」

ヤガラが茨木童子の宣言に顔を青くする

ヤガラ「それは!!・・あんまりでございまする!!」

ヤガラが泣きそうな顔で縋る

茨木童子「うるさいうるさい!!元をただせばお前のその変な心配癖と自信の無さが原因だ!!猛省せい!!」

茨木童子が縋るヤガラをべリベリと剥がす

茨木童子「よいか!!一夫一妻なぞ人が決めた自己満足よ!!それに甘えて自身を磨かぬは己の恥!!

お前が自分を磨き、とと様を信頼しておれば!とと様なら大丈夫じゃ!!」

懇々と茨木童子の説教が八我羅に続く。それは膳が帰ってくるまで続いた

——夜――

膳「で?ヤガラがこうなるまで延々と説教してしまった・・と」

ヤガラは今俺の腕の中でずっと泣いてる。取られとうない、取られとうないのうわ言付きだ

俺はヤガラの頭を撫でる。ヤガラがくすぐったそうにしている

茨木童子「あい申し訳ない、つい、説教に力が入ってしまった。」

隣の席に座りしょんぼりとしている茨木童子、まあ、最初はヤガラが泣いててビビったが、話を聞いて見ればこうだ、つまり、俺からのそう言った誘いがなく、一方的な愛情表現ではないかとヤガラが思っていたこと、自分の人型形態とよく似た江季公さんに取られるのではないかと不安で常に止めていたこと

理由を聞いて、そういえば俺から誘ったことはなかったなぁ・・と思った。ふむ

ヤガラを見る。なんとまあしおらしく泣いている。俺はそっと・・口づけしてみた

ヤガラ「うむ‘‘!?」

すぐ離す。ヤガラが放心した様子でこちらを見る

茨木童子「おおっ!?」

ガタッと茨木童子が立ち上がる。気にせず俺はヤガラにあることをお願いする

膳「ヤガラ、蛇の姿になってくれ」

ヤガラ「・・はえ?」

理解できないと言ったような顔をされる

膳「はよ!!」

ヤガラ「は、はい!」

ヤガラが起立し、ぼふんと蛇に戻る、俺はそのヤガラを抱き上げて言う

膳「じゃ、しようか」

俺も立ち上がり、そそくさと二階に向かおうとする

ヤガラ「ま、待て待て!!この姿は!!この姿はダメじゃ!!」

ヤガラが腕の中で暴れる・・が、声を出して固まる

ヤガラ「ぐ!?」

見れば茨木童子が何やら印を結んでブツブツと唱えていた

ヤガラ「い・・茨木様・・何を・・」

固まったままの姿でどうにか抗議の声を上げるヤガラ

茨木童子「神妙にせい、念願の誘われだぞ」

膳「ナーイス我が子、その袋の中にケーキとドーナツっていう甘ーいお菓子入ってるから全部食っていいぞ、あとコーラとサイダーっていう甘い飲み物入ってるから飲んでな」

俺は茨木に袋を指さしながら言う

茨木が子供の様にバリバリと袋をあけ、ドーナツにかぶりつく

茨木童子「あま~い♪」

どうやらうけたようだ、よしよし

ぐるん、と首をヤガラに向きなおす、なんかひっ!とか言われた、失礼な

ヤガラ「た・・たのむ・・この姿では・・な?」

膳「こういう時お前なんて言ってたっけー?・・ああ、そう逃げるな、そそるだわ」

ヤガラ「ひ・・い・・」

膳「そう恥ずかしがんなよ・・古来より日本には異種結婚ってのがあってな?つまりそういうことだ、観念しな」

ヤガラ「い、茨木様、た、たすけ」

茨木童子「俺は夫婦仲を邪魔しないいい子なのだ、だから観念しろ」

お菓子で口周りをべたべたにしながらそっぽを向く茨木童子

ヤガラ「あーーー・・・」

何とも情けない声で二階に連れ込まれるヤガラ、その夜、いつかの正月とは逆にヤガラの情けない声が

闇夜に響いたそうな

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