百鬼夜行と人妖共食
茨木童子 離界と百鬼夜行の現主、3つの角を持つ神算鬼謀、神出鬼没の大妖怪、
煙草をくゆらせ数多の妖怪を実力で従える鬼神
離界 この世の裏側の世界、時は法則がこの世と違うが流れている
魑魅魍魎、古いモノ、あるいは忘れられたモノ、この世では絶滅したものが流れ着く異界の一つ
あ‘‘あ‘‘~~も~~~お囃子がうるさい、こっちは静かに煙草を吸いたいと思ってんのに
放送まで使って花笠音頭流すことないだろうに
ヤガラ「なんか今日は妙に賑やかじゃの、参加せんのか?」
スイカを齧りながらヤガラが言う
膳「今日は盆祭りだからな、毎年近くでやるからうるさいんだよ」
だら~っとソファーに溶けながら煙草をふかす俺
ヤガラ「ふむ、人間の祭りか、毎年何をしてるかと思えば・・」
も~~少し静かな場所にいきたい・・
ヤガラ「あるぞ」
え?今なんて?
ヤガラ「だからあるぞと言ったんじゃ、静かな場所」
膳「そこ、行こ」
思わず飛び上がりながら言う俺
ヤガラ「ふむ、まあそろそろあそこも知って良い頃合いか、行くぞ」
そういって俺を覆ったヤガラ、おいおい、今はそんな気分じゃないって・・
ふと気づく、さきほどまでのうるさいお囃子が聞こえなくなったことに
膳「な、なんだ?」
ヤガラが抱擁を解く
ヤガラ「ようこそ、裏の世界へ」
俺はあたりを見る。なんら変わらない部屋だ、だが電気ではなく部屋には鬼火が灯っている
膳「これが幽世ってやつ?」
以前話した幽世の事が真っ先に頭に思い浮かぶ
ヤガラが少し笑いながら言う
ヤガラ「違う違う、ここは妖と忘れられたモノの住む場所、離界という」
ヤガラが煙草に火を付ける。よくよく見てみれば外の景色がまるで違う。まるで何年も前にタイムスリップしたようなそんな景色だ。そして気づく、俺の家の外装が焼ける前の家に戻っていることに
膳「なにこれすげぇ!?確かに今の二階はあるのに窓開けると一階の昔の部屋だ!?」
ヤガラ「どうじゃ、すごいじゃろ~?」
ニヤァと得意げに笑うヤガラ
凄い凄い!!こりゃワクワクしてきたぞ!?
遠くからお囃子が聞こえてくる。現代の物より古く、俺の知らない曲だ
膳「ヤガラ、このお囃子は?」
ヤガラ「お主も夢物語にくらいには聞いた事あるじゃろ?噂の百鬼夜行じゃ」
百鬼夜行!?あの妖怪やらなんやらがわんさかいて列を為しながら練り歩くアレか!?
ヤガラ「なんだなんだ子供みたいにはしゃぎおって、お前の裏の姿はそんなに幼いのか」
いやだってあの百鬼夜行だぞ!?見たいに決まってる!!
ヤガラ「その前にお前のその姿をみてみぃ」
そういわれ、ふと俺の姿を見ている。
膳「うぉ!?なんじゃこりゃ!!」
慌てて自分の姿を見る。なんか10代~30代を行き来するように体が変化している
ヤガラ「心をありのままさらけ出してみよ、そうすればその陽炎のような状態も収まる」
さらけ出すって・・どうやって
ヤガラ「自分を確立させるのだ、自分はこういう生き物だと、楽しかった思い出を連想するのも良い」
よくわからんがやってみる。ひたすら楽しかった思い出を連想する。すると陽炎の様に変化していた自分の姿が30代前半で止まる
膳「おお、出来た」
両手を握ったり開いたりして確認する。なんだか懐かしい
ヤガラ「ワシと会った頃より少し若いかの、ほう・・これはこれで」
品定めするようにヤガラが俺を見つめる。なんか恥ずかしい
遠くにまたお囃子が聞こえる。そうだ百鬼夜行!!
膳「ヤガラ!あれ!見に行こう!!」
俺はもう興奮が収まらないといったように言う
ヤガラ「やれやれ・・仕方ないのぉ」
ひょいと俺を抱え上げ、窓に足を掛ける
飛んだ、文字通り。下に草原が見え、月が近くに見える
うひょー!?なにこれすげぇ!?飛んでる!!
ヤガラ「ええい、はしゃぐではないわ!落とすぞ!?」
ピタリと動きを止める。落とされたら死ぬ高さやんけ
ぐんぐんと草原を飛ぶ、お囃子の音がどんどん近くなる、と同時に何やら大きな屋敷が見えてきた
出店らしきものもある
ヤガラ「降りるぞ~」
突然ヤガラが着地宣言をする。と同時に巨大な蛇になった。ヤガラの正体だ
着地してあたりを見てみればまあ漫画やイラストで見た妖怪が居ること居ること。まさに百鬼夜行だ
それが皆、動きを止めてこちらを見ては驚く
妖怪「人じゃ!?それに・・八幡の分け御霊ではないか!?」
妖怪「そのようじゃ・・本当に人じゃ」
ざわざわと周りがざわめき始める。
ヤガラ「騒ぐでない!!こやつはワシの嫁じゃ!!主らに危害は加えん!!」
騒ぎを鎮めるように大きな声で場を制する。
妖怪「嫁御とな・・しかし・・人じゃぞ・・」
まだ騒ぐ妖怪をにらみ黙らせるヤガラ
膳「人ってこんなに嫌われてんの?ヤガラ?」
俺は服を整えながら質問する
ヤガラ「嫌いというより恐れじゃ・・・人間は何度も妖怪を根絶、拒否してきたからの」
ヤガラが少し寂しそうに言う。俺は大声で言う
膳「俺は!!ヤガラの嫁になる予定の膳という人間です!!何もしないので安心してください!!」
周りがしん・・と静まりかえる。その中から妖怪が何かを持って現れる
妖怪「人よ・・我らに危害を加えぬならコレを食してみよ」
ズイ、と何かの丸焼きが出される。俺は手に取る
妖怪がひそひそと話す。食えるものか・・絶対拒否するはずじゃ・・と
その出された物はトカゲ?とカエル?みたいな丸焼きと白い盃に注がれた赤い液体
膳「なんじゃこりゃ」
俺は思わず口にする
ヤガラ「イモリの黒焼きとカエルの唐揚げ、それから何かの血じゃな」
膳「なんじゃい、全部ただの肉と血じゃねぇか」
ゲテモノとは言われてるが肉に変わりはない、血もすっぽんの血があるしな
膳「頂きます」
俺はガブリと喰らいグイと血を飲む・・お?旨いやん
膳「ヤガラ、なかなかイケるぞコレ」
もぐもぐと肉を咀嚼しながらちびちび血を飲む、塩っ気があってちょうどいい
周りがどよめく、皆口々に喰ろうた・・喰ろうた!?と驚いている
最後の肉を飲み込み言う
膳「ご馳走様でした」
途端に妖怪たちが歓喜の声を上げる。人が我らの物を喰ろうた!!人間が還ってきたぞ!!と喜んでいる
当の俺は盛大に?を浮かべる。ようわからん
ヤガラ「ぷっ・・・ハハハ・・ハハハハハ!!流石はワシの嫁じゃ!!」
ヤガラが堪えきれんというように笑いだす
妖怪たちが次々と寄ってくる。先ほどの態度とは大違いだ
妖怪「試す真似をして悪かった・・人間、いや、ヤガラ様の嫁殿」
深々と先ほどの事を詫びるように頭を下げられる。え?なんかの試験だったの?
ひたすら?を浮かべる俺をよそに、妖怪たちが笛と太鼓を鳴らす。さっきまで聞いていたお囃子だ
違うのは妖怪がめでたやめでたやめでたやなぁ、人間が還ってきた。と歌っていることだ
ヤガラ「はぁ・・はぁ・・ククク、ほんに良い嫁じゃ」
わーけわかんね、肉食って血のんだだけじゃねぇか
俺は煙草に火を・・ヤガラが鬼火を出して付けてくれた
妖怪たちが良いのぉ・・とかうらやましいとか言ってる
?「おーい!!八幡の!!」
少し遠くから下駄の音と共に聞き覚えのある声と影が2つ
江季公「人が現れたと聞いて駆けつけたらお前らか!」
瞬間、全力で抱擁される。ああ、この逞しい腕に力は
膳「江季公さん!それに江鬼さんも!」
見知った姿を見て安心した
江鬼「膳!この前はありがとうね」
なんかもじもじしながらお礼を言われた
膳「あ、ちょうどよかった。実は江鬼さんにお話しというか・・なんというか」
言い出しづらい。凄く言い出しづらい
ヤガラ「江鬼、膳の嫁になれ、なに、話はついておる」
ヤガラアアアアアアアア!?
江鬼「えっ・・」
ほらぁぁぁぁ!?江鬼さん困惑してんじゃん!!!あと江季公さんがめっちゃ固まってる!!!
膳「おまっ・・話飛びすぎ!?」
江鬼「えと・・・あの・・お願いします」
ですよねーーーー!!!!ホレ見ろ断られて・・ない・・だと!?
江季公「江鬼が・・嫁に・・・なら・・・俺も膳の夫になれるのかぁぁぁぁ!?」
江季公さんが口にハートまで作って俺に飛び掛かってくる・・が
ヤガラ「それはダメじゃ」
がしぃっ!!と、いつの間にか人型になってたヤガラに顔面を掴まれる江季公さん、やっぱそこはダメなのね
江季公「な・・・ん・・・で・・だ・・よッ!!」
ヤガラの腕を掴みべリベリと引きはがす江季公さん、力つえー
ヤガラ「な・・・ん・・・で・・も・・じゃッ!!」
うわぁ、取っ組み合いの拮抗状態・・こっわ
江鬼「膳、改めてありがとう、これで僕の願い叶っちゃったよ」
ススッと隣に寄ってきて耳打ちする江鬼さん、俺も声を潜めて言う
膳「あの・・やっぱするからには式とかしたらいいんすか?」
大事だよね、やっぱ
江鬼「してくれるの?僕はありがたいけど・・その・・恥ずかしくない?」
ああもう声が綺麗だからなんか耳がくすぐったい
膳「気合で乗り越えるっス」
俺はくすぐったさに耐えながら答える
江鬼「じゃあ落ち着いたらしよ?」
膳「はーい」
俺たちはお互いに煙草をふかしながら目の前の喧騒と百鬼夜行を見る。うん、いいね
「そこの・・人間」
と、和んでいた場にひどく重い威圧のある声が通る
百鬼夜行がピタリと止まる。ヤガラと江季公さんも喧嘩を辞める
「聞こえているだろう・・人間」
その声は妖怪たちの奥、屋敷から聞こえてきた
膳「誰ですかい?」
俺は答える
「来い・・」
そう聞こえると同時に何かに猛烈に引っ張られる
膳「うぇ!?!?」
ヤガラ、江季公、江鬼「膳!!」
三人の声が瞬時に遠くなる。思わず瞑った目を慌てて開ける
大きな部屋、長くそびえる三つの角、長い鈍色の髪、そこには一人の小柄な鬼が居て、煙草をふかしていた
「お前か・・八幡の嫁となり、江鬼を嫁にする変わった人間は」
俺は思わず正座する。
膳「はい、俺です。そう決めました」
鬼が笑う、そしてまた変な力で目の前まで引っ張られる
紅い目と紫の眼が俺を見る
「名は・・・」
膳「天内 膳と申します」
その二色の大きな目に魅入られ名を言う
「我は茨木・・古くは茨木童子と呼ばれたモノよ」
茨木童子ィ!?!?あのよくボスとかで出てくる鬼ィ!?
茨木童子「そうさ・・お前たちが恐れ、畏怖した鬼の大頭よ」
どーーーみても子供にしか見えん、て!!か!!
膳「子供がカッコつけて煙草吸っちゃいけません!!飴かガムにしなさい!!」
俺が自称茨木童子から煙管を奪い取る
茨木童子「何を!?かえ・・むぐっ!?」
すかさず開いた口にいつもヤガラ用に持ち歩いているスイカ飴を放り込む
茨木童子「・・・」
動きが・・止まった
茨木童子「もごもご」
カラコロと茨木童子?の口から飴を転がす音が聞こえる
茨木童子「甘い」
声が少年少女のような声になる。ほーらやっぱり嘘じゃん
茨木童子「ガリッ!!・・バキ、パキ」
ごめんやっぱり本物かもしんない、舐め始めの丸い飴かみ砕くとかどんな顎と歯よ
茨木童子「もっとくれ」
膳「ん?」
茨木童子「だから、もっとくれ」
俺の上にのしかかり、飴をくれとせがむ茨木童子
膳「ああ、ほいよ」
ポケットから無数の飴を取り出す。
茨木童子「あー」
あらま口開けちゃって、かわいいね
ぽいぽいと今度は二個入れてやる
茨木童子「もぐっ・・コロコロ」
旨そうに飴を転がす茨木童子、子供じゃねぇか
ヤガラ「膳!!無事・・・カッ!?」
そこへ息を切らしてヤガラが到着して・・俺たちを見て固まった
膳「お?おー!なんか無事だぞ・・・どしたの?固まって」
ヤガラ「お、おま・・おま・・」
?と首をかしげて理解した。俺は茨木童子に今のしかかられているわけで、ちょうど覆いかぶさるような体制で茨木童子が俺を見ながら飴舐めてるわけで
膳「あ、あー、大丈夫、そういう事にはなってないから、この子も飴舐めてるだけだから、ほら、スイカの」
ヤガラがそれを聞いてほっとする。しかしまた次の瞬間固まる
ヤガラ「お前・・茨木様をこの子と言うたか?」
あ、やっぱり本物の茨木童子なの?てか様て、ヤガラより格上?
ヤガラ「当たり前じゃ!!何年前からこのお方が居ると思うておる!!ワシの倍じゃぞ倍!!」
茨木童子「八幡・・いや、いまは八我羅だったか」
ヤガラ「はっ!!」
茨木童子が一声上げると途端に平伏するヤガラ、ええ・・そこまで力の差があるの
茨木童子「この人間、お前の嫁だそうだの」
ヤガラ「はい!ですから・・ご無礼を働いたことはご容赦を・・」
いつになく真剣な声でヤガラが言う。あれ?俺もしかしてまずい状況
茨木童子「しかられたのなぞ酒吞童子以来じゃ、なあ八我羅、この人間・・くれぬか?」
突拍子もなく茨木童子が言う
ヤガラ「そればかりは・・・いくら茨木童子様の願いでも・・聞けませぬ!!」
立ち上がり戦闘態勢になる。白目も黒くなり、瞳孔が縦に細長くなる。本気だ
茨木童子が小さく溜息をつき、俺から降りる
茨木童子「膳、胡坐をかいて座ってくれ」
俺?別に良いが
膳「こうか?」
茨木童子「そうそう♪」
胡坐をかいた俺にちょこんと座る茨木童子
茨木童子「なら、コイツを俺の父として扱わせてくれ、それで此度の無礼、なかったことにする」
これまたとんでもないことを笑顔で言う
ヤガラ「・・・は?」
ヤガラからなんとも間の抜けた声が聞こえる
茨木童子「だーかーらー!お前の嫁を俺の父親にするのだ、嫌なら・・力で話し合うか?」
うっお、なんつう殺気出すんだこの子、いや茨木童子・・こりゃ鬼の総大将な訳だ
ヤガラ「いえ!こちらとしては不服はなく・・ただこやつ、膳は変わっておりまして・・茨木童子様のご機嫌を損ね兼ねないかと・・」
茨木童子「?膳は俺のことちゃんとしかってくれたし、飴もくれた、特に気分は害されてないが??」
ヤガラ「左様ならよかった・・です」
その場に全身の力が抜けたようにへたり込む
遅れて江季公さん江鬼さんも来てことの顛末を俺が説明するハメになった
――屋敷の縁側――
茨木童子「~♪」
鼻歌歌いながらご機嫌で俺の股の間に陣取る茨木童子・・様
その隣でヘタレこむヤガラ、反対側には江季公さんと江鬼さん
ヤガラ「膳ヨ・・・タノム・・モウスコシ・・ワシノ心臓をイタワッテクレ・・」
抜け殻の様にへたり込むヤガラを慰めながら茨木童子様が用意してくれたお茶を飲む
江季公「それにしても恐れ多いことよ・・茨木童子様を叱るとは・・」
江鬼「生きた心地がしないねぇ」
二人とも話を聞いたら冷や汗ダラダラだったもんな、江鬼さんなんか咥えてる煙草がまだ震えてる
膳「いやぁ・・子供だと思ってたからつい・・」
ヤガラ「つい・・じゃないわぁぁぁぁ!!!お前・・何しでかしとんじゃおおん!?」
あ、ヤガラが元気になった
茨木童子「今は実際膳の子供だぞ?」
まあ確かにそうなんだけどもね
膳「しっかし・・言い伝えも当てにならんなぁ、こんな小柄な子とは・・てか童子ってついてるから名前だけ当たってるのか?」
俺の知る茨木童子はそりゃ怪力で、デカくて恐ろしい存在って感じだもんなぁ
ヤガラ「姿以外はおおむね合っとるぞ、それ」
マジですか
茨木童子「マジなのだ」
楽しそうに言う茨木童子、この子も心が読めるのか
ひょいと茨木童子が庭に降り、大きな岩の前で止まる
茨木童子「膳、よう見ておれ」
俺にそういうと何かの構えを取る
茨木童子「・・・せいっ!!」
茨木童子が声を出したかと思うと岩が聞いたこともない音を立てて破裂した
え・・・俺こんな子の親になるの?大丈夫そ?
茨木童子「あーとーはー、これだ」
さらさらと指で地面に数漢字を掘っていく・・数学??
ヤガラ「和算という、日本古来の計算方法だ」
和算!?あのほぼ失われた技術の!?
江鬼「当時は茨木童子様の策略で、それはそれは見事な戦術を立てて暴れていらっしゃった、と聞いてるよ」
江鬼がフーッと煙を吐きながら楽しそうに言う
まさに神算鬼謀ってか・・・文武両道以上の話だぞコレ
膳「ん?まった、そんなに強くて頭良かったなら人間に討たれたりしなかったはずだろ」
めっちゃ気になる
茨木童子「?そんなもの、人間が都合よく負け惜しみで書いたものだ、真相はこうだ」
そこから淡々と茨木童子がこれまであったことを話してくれた
曰く、討たれた話は真っ赤な嘘で、何度も返り討ちにし、それでも来たので嫌になって拠点を捨て
酒吞童子と別れたこと
曰く、鬼子だった自分は母に父親の事を聞くといつも算術や鍛錬を頑張れば戻ってくると言い聞かせられていたこと
曰く、全てを知り、悟り、絶望し母親のもとを離れ、酒吞童子と出会い、意気投合し、これまでの憂さ晴らしの為暴れまわり、気づいたら鬼神になっていたこと。それでもいつか父親に会いたくて様々な事を学び、鍛錬し続けていること
膳「なんつーか・・人間もその親もつくづく残酷だねぇ」
俺は煙草をふかす
ヤガラは気づく、膳の眼がいつか見た絶望に染まっていることに
茨木童子も気づく、その場にいる誰もが膳の底知れない虚無の瞳に
膳「なあ・・茨木童子様・・いや?・・・茨木」
膳が茨木童子を呼び捨てにする
茨木童子「・・なんだ・・」
膳「俺と喧嘩しよう・・なに、あんたに勝てるなんて思っちゃいない」
茨木童子「喧・・嘩?」
あっけにとられる茨木童子
膳が煙草を咥えたまま縁側から立ち上がり歩み寄る
膳「そう・・親子喧嘩ってやつだ・・」
膳が距離を取り、初めて構える
膳「さあ・・来いよ・・大真面目で愚直な・・ク・ソ・ガ・キ」
瞬間、茨木童子の姿が消える
風圧が膳の身体を襲う、しかし、
茨木童子「なっ!?」
当たらない、茨木童子の固く握り締められた拳が当たっていない
膳「ほぉら、どしたァ!!!」
膳の蹴りがまともに茨木童子に当たる
固っ!?岩か!?
しかし効かない
茨木童子の繰り出す次の攻撃が来る
しかし避ける膳、とっさに地面の砂利を茨木童子に投げる膳
茨木童子の眼に当たる
茨木童子「このっ!!」
ひるまず攻撃を当てにいく茨木童子
膳「おうっ!?」
攻撃がかすめる、防御に出した腕から鮮血が出る
ヤガラ「膳!!!」
止めに入ろうとするヤガラ
膳「邪魔すんなァ!!!」
これまでに聞いたこともない大声を出す膳
思わず固まるヤガラ
膳「イイとこなんだから・・な?」
攻撃を避け、距離を取り笑顔で諭す膳
また避けた隙に砂利を拾う膳、それを見逃さない茨木童子
茨木童子「同じ手は効かぬぞ!!」
石礫が来ると思って目を庇う茨木童子
瞬間、茨木童子の眼に向けて膳が煙草の煙を吐く
茨木童子「ぐっ!?」
煙が目に染みて思わず目を閉じる茨木童子
少しの間
膳が茨木童子を抱き寄せる。突然の抱擁に固まる茨木童子
膳が息を切らしながら言う
膳「人間の大人はずるいぞぉ・・こんな・・卑怯な手を当たり前みたいな・・顔して使う・・」
さっきまでの風を切る音が止む
膳「それでも・・俺を・・親と呼ぶかい?」
茨木童子が驚いて膳を見る
膳のかすり傷だらけの笑顔が映る
茨木童子「・・・呼ぶ」
茨木童子が静かに告げる
膳が抱擁を強める
膳「じゃあ父親なるよ、茨木童子」
その言葉に堰を切ったように茨木童子が泣く
膳「おーおー、泣け泣け、辛かったろ、絶望したろ」
ヤガラ含め、その光景を見ていた3人の安堵の溜息が聞こえる
膳は子供をあやすように優しく撫でる。茨木童子は泣き疲れて眠るまでひたすら膳の胸で泣いた。
茨木童子の鳴き声が木霊し、それを慰めるように百鬼夜行のお囃子が響いた
茨木童子(新情報) 身長154cm角は両脇が約30cm真ん中が15cm性別無
甘いモノと甘い飲み物が大好き、酒も飲める。煙草は苦くて実は嫌い、眺めるのは好き
膳の時、火はつけていたが実は一度も吸っていない
めっちゃ素直な子、時々わがまま




