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鬼が肉持ってきた

因果 妖怪、神がそれぞれ持つ願いによる縛り、これを叶えると縛りは解け、格段に強くなる

他にも昔、因果を解く方法として人を喰らうという手段があったが、邪に傾く恐れがあり、妖怪からも人間からも嫌われる可能性が強く、人肉依存があるため、現在この方法を取る妖怪は稀である

ドンドンドン!!

相変わらず玄関が猛烈に叩かれている。誰だろう?せっかくチルい気分になってたのに・・

そう思って慌てて玄関を開ける。

ぼよん

俺の顔を包んだのは柔らかいが筋肉質な何か

江季公こうきこう「おう!!おはようさん!遊びに来たぞ嫁殿!!」

昨日の鬼がニカッと笑いながら何かの肉?を見せる

江鬼えき「ごめんね、止めたんだけど江季公が行くってきかなくて」

ひょっこりと申し訳なさそうに別の鬼が顔を出す

江季公「いいではないか!!善は急げだ!!」

ムフン!と鼻息荒く言う

ヤガラ「なんじゃ!?まさか来たのか!?」

ヤガラが予想外と言った顔で二階から降りてくる

江季公「おお!!八幡の!!邪魔するぞ」

ヤガラが頭を抱える。どうしたんだ?せっかくの友人なのに

ヤガラ「お主ら・・人に化けもせんで・・」

ああ、そういう事

膳「どうぞどうぞ上がって下さいな」

俺は構わず二人に上がってくれと催促する

江季公「わっはは!!嫁の方が肝が据わっとるわ!邪魔するぞ~」

江鬼「お邪魔しまーす」

カランコロンと下駄の心地よい音が鳴る

茶の間に通してお茶とお酒を出す。あとあり合わせのお菓子だ

江季公「おお!?見ろ江鬼!菓子だ!菓子」

江季公さんが甘いお菓子を指さしながら喜ぶ。特売のお菓子だがどうやらうけたようだ

江鬼「ああ、甘いお菓子なんていつ以来だろうね、煙草に合う」

む?煙草と甘いお菓子の組み合わせの良さがわかるとは・・出来るッ!!

ヤガラ「はぁ~~~~、これだから鬼は・・思ったらすぐ行動だ・・」

ヤガラがテーブルに肘をつきながら煙草をふかす。ついでにワシにも茶と言われた。はいはい

それぞれにお茶を出しデカい灰皿も置く、江鬼さんが軽くお礼を言う

所で江鬼さんの煙草の銘柄が凄く気になる・・吸ってる割には煙草が短くならない

ヤガラ「江鬼の煙草はそれ自体が宝具と言ってな、延々と吸い続けられるシロモノよ」

俺の思考を読んだヤガラが説明してくれる

膳「え、なにそれ喫煙者にとって夢みたいな煙草じゃん」

ヤガラ「人が吸うと妖に近くなるからやめとけ」

ええ~~~~~~

ヤガラ「このヤニカスめ・・・」

膳「お前に言われとうないわ」

江鬼「一口くらいなら大丈夫だよ?吸ってみる?」

スッ、と吸い口を出される。迷いなく咥えた

ヤガラ「あっ」

息を吸いこむ・・・吐く、ふむ・・美味い、美味いけどなんか体が警告してるな

江鬼「へぇ・・今の、耐えるんだ」

?どういうこっちゃ

江季公「江鬼の煙草はな、陶酔効果があるのよ、並の人間ならひと吸いで江鬼の虜だ」

膳「はへ?そうなの?少しふわふわするぐらいだけど」

あと・・なんか無性にヤガラに触れたい

俺はその衝動に逆らわずヤガラに抱き着く

ヤガラ「おうっ!?」

いきなり抱き着かれたやヤガラが困惑するが気にしない

嗚呼、なんか落ち着く

江鬼「へぇ・・偽りなし、文句なし・・か」

なんかヤガラが江鬼さんに怒っているがいいや・・嗚呼、落ち着く

ヤガラが怒りながらも俺の頭を撫でる。気持ちいい

ヤガラ「ええい江鬼、貴様、膳を試したな!?」

江鬼「ははは、まあちょっとした悪戯だよ、許してくれ」

ヤガラと江鬼さんの声がなんか遠くに感じる・・・ハッ!?

膳「俺は・・何を・・?」

ゆっくりヤガラから離れる。

江季公「お?もう正気に戻ったぞ、なかなかだな」

江季公さんが豪快に菓子をもぐもぐ喰い茶を啜る

膳「江季公さん、俺は何を?」

江季公「江鬼の煙草を吸って素直になってただけだよ、いやあ・・いいの~~う」

羨ましそうに江季公さんがニコニコと笑う

吸ったら素直になる煙草とか、自白剤やんけ、おおコワ

江鬼「あっ、ほら、正気に戻ったよ?ヤガラ様、よかったね」

ニコニコしながら例の煙草をふかす江鬼さん、意外といたずらっ子気質?

ヤガラ「まったく・・膳もホイホイ吸うでないわ、もう」

怒ってるけどなんか嬉しそう

膳「では・・今度はこちらから」

俺は江鬼さんの前に愛煙たばこのハイライトを置く

江鬼「え?・・・くれるの?」

勿論である

江鬼「・・・」

大事そうに一本取り出し、愛おしそうに火を付ける

その場に煙を吸い込み吐く音だけが響く

江鬼「嗚呼・・旨いなぁ・・美味いよ・・」

本当に旨そうに煙草を大事に吸う、目からは一筋の涙が・・って

膳「泣くほど!?」

俺が慌てる。

江鬼さんがそのまま話す

江鬼「僕たち鬼はね、それぞれ人からされた良い行いに弱いんだ、だから泣くほど嬉しいんだよ」

なるほど?・・ん、良いこと思いついた

膳「ちょっと待ってて」

俺はそういって二階に上がり煙草を3箱持ってくる

膳「少ないけど、どうぞ」

俺は江鬼さんに煙草を3箱渡す

江鬼「・・・」

驚いた顔をする江鬼さん

江鬼「(ほろほろ)」

驚いた顔のまま・・ギャーーー!?!?泣き出した!!??

大事そうにその3箱を抱きしめ江鬼がいう

江鬼「ヤガラ様・・本当に良い嫁さんだね・・この煙草大事にするよ」

優しい笑顔で江鬼さんが泣きながらいう

ヤガラ「・・・たらしめ」

少し拗ねたようにヤガラが言う。たらしとは失礼な、親切だ

江季公「よかったなぁ・・江鬼、お前の因果は煙草に限定されてるから今のご時世難しいからのぉ」

優しく江鬼さんの背中を撫でる。うむ、良い夫婦だ

ヤガラ「江鬼と江季公は姉弟ぞ」

やっぱわかんねぇ・・わかんねぇよ妖怪

江季公「俺が姉だ、弟の願い、叶えてくれて感謝する」

江季公さんが深くお辞儀する。

膳「喫煙者皆仲間ですからね」

俺はグッと親指を立てる江季公さんも合わせてくれた

膳「ちなみに江季公さんは?」

ふと気になって聞いてみる

江季公「俺?俺は共にいてくれる人間の嫁よ」

聞いてからあっ、と思ってヤガラを見る・・ギャー!?筋肉モリモリになって青筋立ててるぅぅぅ!?

ヤガラ「膳は・・ワシの!!嫁じゃ!!」

あああああ!?そんな殺気満載で宣言しないで嬉しいけども!!

江季公「ははは!!取らん取らん!取らんが・・・」

スッと江季公さんの姿が消えて・・耳近くから声が聞こえる

江季公「のぅ膳、共有嫁になる気はないか?」

ヤガラ「ヌガーーーーー!!!!!!」

ヤガラが江季公に飛び掛かる。それをひらりとかわし、ヤガラと追いかけっこをする

なんかサ〇ヤ人の戦闘みたいに消えては現れを繰りし返鬼ごっこしてる

それをよそに江鬼さんが泣きながら俺に言ってくる

江鬼「ねぇ、君が死んでヤガラ様の嫁になったら煙草葉育てるんでしょ?僕、たまに貰いに行っていいかな」

膳「ぜひ」

間髪入れずに了承する

今までで一番良い江鬼さんの笑顔が見れた。うん、良い笑顔だ

ヤガラ「あっこら!!勝手にそうホイホイ許可するでないわ!!」

江季公さんと鬼ごっこしながらヤガラが怒る。いいじゃん賑やかだし

江季公「なら俺は通い妻ならぬ通い夫するかー!平安の世ではよくあったし」

ヤガラ「キーーーーーーーーーーーッ!!!!!!」

あ、ヤガラが切れた。

その様子を江鬼さんと煙草をふかしながらしばらく笑い見ていた

――夕方――

江季公「いやぁ~~楽しかった!また来る!」

ケラケラと笑いながら帰る江季公さん、その後ろをお辞儀してそそくさとついていく江鬼さん

ヤガラ「ぜぇぇぇったいやらんからなーーー!!ぜぇ・・ぜぇ・・」

その姿を珍しく息を切らしたヤガラと見送る

膳「いい友達じゃないか」

ヤガラ「どこがじゃ!?」

ガオッと吠えながら反論するヤガラと家に戻る

茶の間にでーーんと置かれた肉を思い出す

膳「そういやこれ・・何の肉?」

ヤガラ「多分猪か鹿じゃ、食おうぞ」

肉をまじまじと見る。触ると冷たい、台所に移り包丁を入れてみる。綺麗に脂ののった桜色の断面

ヤガラ「おお~、美味そうじゃ、今夜はごちそうじゃの」

さっきまでの怒りは何処へやら、よだれを垂らすヤガラ

半分焼いて半分煮てみるか

念のため焼肉のたれと煮込み用に野菜をたっぷり切る

料理はほどなくして出来上がった。どれも湯気を立て、良い匂いが鼻孔を刺激する

二人「いただきまーす!」

思い切り肉にかぶり付く、旨い!?これは上質も上質な肉!!

膳「ヤガラこれ美味い!!こんな肉はじめ・・」

ヤガラ「ガツガツモグモグがぐぐ・・(ブチィ)モグモグ・・んお?」

めっちゃ食ってた・・・

食器を洗い、体も洗い、二階に上がり食後の一服を共に楽しむ

いやぁ、食った喰った、あれだけ食ったのに胃もたれすらしないとは・・どんだけ良い肉だったんだ

ヤガラ「さすがはマタギ?とかいう仕事してるだけあるわい・・ああ、腹いっぱいじゃ」

マタギ、猟師か、そりゃ良い肉なはずだ、今度お菓子もっと良いの出そう

ヤガラ「して、膳」

ヤガラが急にまじめなトーンの声になる

ヤガラ「お主・・よもや江季公の嫁にならんよな?ならんよな!?」

コケそうになった。急にまじめになるから何かと思ったら

ヤガラ「じゅーよーなんじゃ!!一大事なんじゃ!!」

ヤガラが食い入るように詰めてくる。大丈夫だよ。俺はお前の嫁だ

ヤガラ「はぁ・・それをきいて安心したわい」

そんなに江季公さんの嫁になるの困るのか

ヤガラ「困る!!あ奴は昔、その・・まぐわい過ぎて相手を昇天させてたからな!!」

は??

ヤガラ「何度ワシが神隠しの手伝いしたことか・・」

いや問題そこ?そこなの?

ヤガラ「あ奴に絞り切られてカラカラになってそのまま成仏したお前とか見たくないからの」

ひえ~、そんなん都市伝説かと思ってたわ、実際にあったのか

ヤガラ「そうじゃぞ、その度に江季公に喰われたと当時の人間は騒いだもんじゃ」

ある意味江季公さんに喰われてるがな

ヤガラ「妖怪や神はそれぞれ叶えるに難しい願いに縛られておる。その大概が人間に起因する。

だからワシといる人間なぞ喉から手が出るほどの的じゃ」

江鬼さんの願いなんか割と叶いそうだが・・

ヤガラ「そりゃお前だからじゃ、考えてもみぃ、誰が恐れの対象である鬼と煙草を吸うと思うか」

あー、確かに怖いって頭に在ったら無理だな

ヤガラ「じゃろ?だから江鬼はあの時泣いたのじゃ、1000年は叶わなかった願いが叶ったからの」

なんとまあ、聞いてみれば1000年、そりゃあ泣くわ

俺は煙草をふかしながら天井を見る

膳「ヤガラ、あの人達と仲良くしちゃダメか?」

煙を吐きながら、今度は俺が真面目な声で言う

ヤガラ「同情か?」

そんな馬鹿馬鹿しいもんじゃない、ただ、そう思っただけだ。あの人と仲良くしたいと

ヤガラ「ならよかろ・・そうなると江鬼の責任取らねばな」

膳「責任?」

ヤガラの方を見る

ヤガラ「1000年物の願いを叶えたお前は、江鬼にとって神か何かぞ、ワシの友人を裏切ってくれるなよ」

そういう事ね

膳「裏切らないよ・・あの二人もヤガラも」

ヤガラ「そうか・・」

お互いに煙を吐く

ヤガラ「そうなると江鬼を嫁にもらわなければな」

ソファーから転げ落ちそうになった。おい、まじめな話で良い空気で終わるところだったろ今の

ヤガラ「それも責任じゃ、我らの言う嫁はそいういうもんなんじゃ」

ええ~~~、俺、江鬼さんを嫁として見れるかなぁ・・

ヤガラ「千虎口、猫又の時は反応してたではないか」

うわぁ、しっかり覚えられてる。

ヤガラ「なに、別に抱いてやれとは言わん、傍にいてやれ、という意味よ」

さいですか・・てか俺が嫁を貰うのはいいのね

ヤガラ「?お前はワシの嫁だろ?なら良いんじゃ」

膳「?」

ヤガラ「?」

お互いに違う意味で?を作った。俺は考えるのを辞めた

――とある山小屋――

江鬼は膳からもらった煙草を大切に撫でている

江季公「良かったな、あの人間」

びくっと江鬼がなる

江鬼「うん・・あの人間、心から僕の事しんぱいしてくれてた。それに同じ喫煙者だって・・」

江鬼が頬を赤らめる

江季公「やはり俺も狙ってみるか」

酒をがぶがぶと飲みにたりと笑う

江鬼「ねぇさんもきっと受け入れてくれると思う」

煙草を撫でたまま焚火を見つめ弟は言う

江季公「はっはっは、ほんに・・八幡は良い嫁を見つけたもんだ」

江鬼「ヤガラ様を怒らせない手段で叶えないとね」

江鬼が姉の方を見て優しく微笑む

江季公「八幡と一戦交えるのも面白いが、それでは膳に嫌われてしまうからなぁ」

肉をガブリと食いちぎりながら姉が笑う

江鬼「ヤガラ様、友達だから喧嘩はヤだなぁ」

弟が少し悲しそうに言う

江季公「なに、上手くやるさ、それに」

江季公がまた酒をグビリと飲む

江季公「あの嫁は狭い器ではない、きっといけるさ・・ま、気長にやろう」

江鬼「そうだね、せっかくの好機、逃したくないなぁ」

焚火が音を立てる。二人の鬼が静かに笑顔を浮かべながらそれぞれ膳に思いを馳せる

当の本人は仕事に向けて眠りこけていた

江季公こうきこう江鬼えきの姉、豪快な性格で酒、肉、女、男を好む

自分とは正反対な江鬼の大人しい性格を心配している。因果は自分と一生添い遂げてくれる人間の嫁を手に入れること、腕力がヤガラと互角密かに膳を狙っている

江鬼えき江季公の弟、大人しいが意外といたずらっ子なところがある。

因果は人間と煙草を分かち合う事。禁煙が進む現代、恐れられた過去から、因果の達成をほぼ諦めていた

ひょんなことから達成してしまい、思わず泣いてしまった。因果が達成されたので妖怪の格があがり

実は強くなっている。

ヤガラ(八我羅)因果は共に煙草をたしなみ自分の事を心から慕ってくれる人間の嫁を手に入れ、幽世で暮らすこと

ゆえに物怖じせず自分の嫁宣言を受け入れてくれた膳を大切にする

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