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ヤガラ様と西瓜

樹木の主 ヤガラ様がまだ八幡様だった頃の友人、よわい300歳ぐらいの大樹


天内 九朗 煙草大好きやさぐれ住職、実力は確かだが、めんどくさがり、未来予知能力を持ち

たまたま、未来で八幡様(今のヤガラ様)と自分の子孫が仲良くしているのが見えてしまい、今回

祟りを鎮める依頼を受けることに。神様と人間が仲良く暮らす可能性に掛けた、膳のご先祖様

これはヤガラ様の夢のお話、ヤガラ様がまだ膳と出会うずっと前の夢


――八幡本殿――

祈祷師「お願いいたします・・どうか雨を・・お恵みの雨を下さいませ」

目の前に大層な焚火をし我の前で人間達が必死に伏して願う

ヤガラ「いや・・ワシ・・勝負の神なんだが・・」

本殿の縁側で胡坐あぐらをかきながらそれを見るヤガラ

願うとこ間違ってない?ワシ、雷ぐらいしか呼べんけど大丈夫そ?

村人「お願いします。お願いします。」

ハァ・・出たよお願いします。人間はなんか自分の手に負えないことがあるとすーーぐこれだ

ひとしきり拝み終わった後、そそくさと帰っていく。全く、珍しく大層に準備しとるから出てみたらこれじゃ、あーーあーーー!!もーーヤダ

?「そういうな、八幡の主」

ヤガラ「あん?」

ヤガラはすぐ左に生えている木を見る

ヤガラ「樹木の主よ、まーたおせっかいか?」

樹木の主「まあ、そんなところよ、いいではないか雨、我らも助かる。最近日照り続きでな、上手く成長出来ん」

ヤガラ「お主ら、本当に人間が好きじゃな、」

ヤガラがお供え物の煙草に火を付ける。

ヤガラ「旨ぁあ~」

樹木の主「その煙草、人間が居なければ作れんぞ、」

痛いところを突いてくる。そりゃそうだ。

ヤガラ「だがなぁ~~~、なーんか気に入らんのよ・・」

願いが叶ったらそそくさ帰って、いずれ忘れる。どんどん形骸化し、形だけになる

それがなんか・・むかつく

樹木の主「仕方無かろう、人間は寿命が短い、おまけに非常に不安定な生き物だ」

主らと比べてもだいぶ弱いものな、共存とはかけ離れた生物、それが人間だとヤガラは感じでいる

ヤガラ「せめて、煙草の他に甘い果物でもあればいいんじゃが・・」

煙を吐く、

樹木の主「なら、まさに今がよかろう、西瓜すいかなるモノはみずみずしく大変美味と聞く」

ヤガラ「スイカぁ?」

気だるそうにヤガラが繰り返す

樹木の主「そうじゃ、スイカじゃ、甘いらしいぞ」

ヤガラ「・・・チッ・・嘘ついたらただではおかぬぞ?」

ヤガラが地面に立ち、ヌン!と力を籠める

瞬間、村の田畑周辺に雨雲が立ち込め、大雨が降る

樹木の主「加減せい、もう少し優しくじゃ」

ヤガラが踏ん張りながら難しいんじゃ!!と反論する

樹木の主「八幡の主よ、お前がワシらにしてくれているような加減の雨でよい」

ヤガラ「ふむ・・・ならば・・こうっ!!」

雨の勢いが弱まる。

樹木の主「そうそう、やればできるではないか、八幡の主」

樹木が褒めたたえるように木々を揺らす。

ヤガラ「これで本当にスイカとやらが食えるんだろうな!?」

ヤガラが雨を操りながら言う

樹木の主「勿論だとも、風の噂で、人間達に八幡の主はスイカが好きと流しておいてやろう」

さわさわと葉っぱが揺れる

時が過ぎ、また人間達がやってきた、大きなスイカを持って

祈禱師「誠に感謝いたします。八幡様、どうかお納めください」

大きなスイカが神前に供えられる。ヤガラは飛び跳ねながら喜んだ

人間達が帰った後、ヤガラは樹木の主にスイカの喰い方を教わり。恐る恐る食べた

シャリ・・

それは樹木の主だ言っていた通り。甘く、みずみずしかった。

ヤガラ「んん!?これは旨い!?それに食感がなんとも言えん!!」

ヤガラは種ごとバリバリ食べた。

樹木の主は、時々種を吐き出さんと食べづらかろうと言ったが、気にしなかった。

それからと言うもの、日照りの度に祈祷が行われ、見返りにスイカと煙草が奉納された

やがて、樹木の主も人間からご神木と称されるほど大きくなり。分木も生まれた

お互い穏やかな時間が続いた。ヤガラも樹木の主もそれがずっと続けばいい、と思っていた。

だがその日、それは起こった。

樹木の主の子供に当たる分木が切り倒されたのだ。どのような理由でかはわからない

樹木の主と分木は子供でもあり、分身でもある。ある程度感覚も共有する。

それが今回災いした。樹木の主は大層苦しみ。人間を憎んでしまった。ヤガラの声も届かず。

瘴気をまき散らし。祟りとなった。ヤガラはひたすら友人が元に戻ってくれるよう願った。何に願ったかは自分でもわからない。だが願った。

樹木の主「オオオ・・憎い・・憎い・・我が子を・・我が分身をよくも・・人間め・・・」

瘴気がどんどん濃くなる。ヤガラ自身も、樹木の主に寄り添い、宥めたせいで祟りに浸食されつつあった。

そんな時、一人の坊主がやってきた。

坊主「なるほど、祟りの原因は八幡様ではなくこちらのご神木か・・やれやれ、難儀よの」

その坊主は煙草をふかし、まるでヤガラが見えているように言った

坊主「八幡様よ、そのご神木とは良い仲だったのだろう。だが、それ以上関わればお主も祟りに飲まれるぞ」

明らかに見えているようだった。

ヤガラ「黙れ、人間、もとはと言えば、お前たちが分木を切り倒さなければ起こらなかったことだ」

祟りに浸食されながらも、目の前の坊主に思いの丈をぶつけるヤガラ

坊主「そー言われると、なーんも言えなくなっちゃうんだよねぇ」

ポリポリと坊主頭を掻きながら困る坊主

ヤガラ「このままこの地に住む人間を皆祟り殺してくれようぞ、樹木の主と共に」

ヤガラは言う、元から人間は好かんかったし、樹木の主も祟りに飲まれた今、人間が何人死のうがどうでもよかった

坊主「ほう、ご神木の元の名は樹木の主か、なるほどねぇ、しかし困ったな、その祟り殺される人間の中に俺の家族も入ってんだよな」

坊主は煙を吐く、煙草を吸いながら坊主が話を続ける

坊主「こうしよう、その分木切った一族は永遠に祟り続けてくれていい、だから無関係な祟りは辞めてもらう」

ヤガラが驚く、祟り続けて良いと言いよったか?この坊主、今まで自己都合だけの塊と思っていた人間が

こちらの意見も聞き入れた・・と?

坊主「おおっと、勘違いしないでくれよ?これだって立派な自己都合だぜ?」

心を読まれた!?何なんじゃこいつは?

坊主「ただの煙草好きの坊主だよ、あ、あと酒」

ヤガラ「お主・・我らと意思疎通出来る者か」

坊主「正解、ついでに言うと村の連中から、何とかしろって言われてる」

ヤガラ「ワシではもう樹木の主を止められん、お主が何とかするのか?」

ヤガラが樹木の主の傍を離れ、坊主に歩み寄る

坊主「なんとかしなきゃあ・・いかんでしょうなあ」

ヤガラに煙草を進めながらそう答える坊主

ヤガラがそれを受け取り、火を付ける

ヤガラ「久方ぶりに煙草を吸うたわ・・嗚呼、旨い」

坊主「ずっとご神木が瘴気垂れ流すの食い止めてたもんねぇ、大変だったでしょ」

こやつ、様子をうかがってたのか、

ヤガラがフーッと煙を吐き出す。坊主もゆっくり煙を吐く

坊主「なぁ、八幡様、」

坊主がポツリと言いだす

ヤガラ「何じゃ、坊主」

坊主が煙草の火先でくるくると輪っかを書きながら言う

坊主「この先、ワシの子孫に必ず八幡様を迎え入れてくれる子孫が出る。ソイツと仲良くしては貰えんか」

ヤガラ「断る」

キッパリ言い切るヤガラ

坊主「つれないねぇ~、これから寿命削ってご神木封印するんだ、そんくらいいいだろうに」

坊主はプカリと煙草を吸い、笑いながら言う

ヤガラ「お前にアレが封印できるとは思えんが・・」

ヤガラは樹木の主を見る。おどろおどろしいまでの瘴気を夜の境内に吐き出し、徐々に周りを浸食しているソレは、もはや以前の樹木の主の面影もなかった。

坊主「やるしかないっしょ、子孫の未来が見えちゃったんだから、あんたと仲良くしてる子孫の姿がな」

よっこいしょ、と気合を入れ直す坊主

ヤガラ「珍しいな、未来予知者か・・・その子孫は何年後か・・」

ヤガラが興味本位で聞く

坊主「わっかんね!!男か女かも!!」

あっけらかんとした顔で答える坊主

やれやれ、そんな不確定な事を信じろというのか、ワシに

ヤガラ「まあ、それはおいおい聞くとするか、して、封印の手段は?」

坊主の方を見る。相変わらずよくわからん顔でとんでもないことを言い放った

坊主「八幡様にアレ、取り込んで欲しいのよ」

は?・・この坊主、気は確かか?一歩間違えば、ワシが祟り神になって被害拡大じゃぞ?

坊主「だーいじょうぶ、大丈夫!だから俺の寿命を使うんだから」

こやつ・・阿呆か?阿呆なのか?

坊主「良いから見てなって」

坊主がご神木に対し経文を唱え始める。汗が滝のように流れ、苦しいのがわかる

しばらく経文が響く、相変わらず凄い汗を流しながら唱え続ける坊主

すると、少しずつだが、瘴気が弱くなる。次第にどろりとした紫色の塊が樹木の主から出てくる

これが祟り、あるいは瘴気だ、随分と恨んだのだろう、かなり濃い

坊主「それを・・取り込んで・・くれ」

坊主が必死に何かを抑えるように言う、息も絶え絶えだ、

ヤガラ「・・・」

無造作にソレを喰らう。瞬間樹木の主の記憶が流れ込む、若い頃からこれまでの懐かしい記憶

嗚呼、樹木の主よ、お前は悲しかったのだな、遠い昔にこの地に生まれ、その時代の人間の子供らと遊び

一緒に育ったお前が、ようやく残した自分の分身、それを切られるのは大きな裏切りだったのだろう

もうお主の意志すら感じられぬほど憎悪にまみれてしまったのだな

ヤガラは悲しくなった。この樹木の主であったモノ、確かに取り込もう。この悲しみを消させはしない

そう誓うヤガラであった

瘴気が収まる。坊主が息も絶え絶えに言う

坊主「と・・取り込めたか・・」

ヤガラが傍に立つ、そして言う

ヤガラ「人間、名を聞こう、」

坊主「俺は・・天内・・九朗」

息を切らしながら伝える

ヤガラ「九朗・・大儀であった。そなたの子孫。会ってみたくなったぞ」

坊主がふぅ・・と息を整え座り煙草を吸い始める

九朗「そりゃぁ・・よかった・・頑張ったかいがあったよ・・」

ヤガラも隣に座り、煙草をふかし始める

九朗「嫁・・怒るだろうなぁ・・」

九朗が独り言ちる

ヤガラ「そりゃこれから貴様は死ぬのだ。怒るし、悲しむだろう」

九朗「いやぁ・・まいったね、どうも」

ポリポリと頭を掻く九朗

九朗「まあ、とりあえず村の偉い奴にはたんまり援助頼んだし、この伽藍洞がらんどうになった

ご神木にもしめ縄付けて、もし外れた時、軽く仕掛けもしてあるから大丈夫だろ」

九朗がふーーっと長い息を吐く

ヤガラ「お前の言う子孫が出るまで、ワシは眠る。その時を楽しみにな、まあ時々スイカと煙草吸いに起きるが」

九朗「ああ、スイカね、噂は本当だったのか・・」

ヤガラ「樹木の主が流した噂じゃ」

九朗「なるほど・・ハハ、スイカと煙草が好きな神様か・・こりゃいいや」

九朗が煙草の煙を吐く、そのまま前のめりになる

ヤガラ「逝くのか・・?」

九朗「・・・」

九朗はこと切れていた。満足そうに、煙草を吸いながら

ヤガラ「天内・・九朗・・頭の片隅に覚えておいてやろう・・見事だ」

ヤガラはその場を後にし、本殿の中に入る

残されたのは満足そうに笑いながらこと切れている九朗

木々がざわめく、まるで悲しんでいるように


―—現代――

膳「お~い、起きろ~?ヤガラ~~?」

珍しいなコイツ、俺より起きるの遅いとか

ヤガラ「・・ん・・ぬ・・」

ヤガラが声を漏らしながら起きる

膳「なんだ~?夢でも見てたか?」

ハッと我に還り自身の身体を確かめるよう動かす

ヤガラ「なあ・・膳」

ヤガラが煙草を咥えながら聞く、それに仕事の支度をしながら膳が答える

膳「なんぞ?」

ヤガラ「天内九朗、という名を知らぬか?」

ヤガラが膳に問う

膳「それ、なんかお寺の住職かなんかだった御先祖の名前じゃん、それが何か?」

膳が思いだすように言う

ヤガラ「いや、なんと無く知ってただけだ、なんでもない」

膳「あ、そ、んじゃ今日も行ってくるから、火の始末だけ頼むな~!」

せわしなくわたわたと家を出る膳

静かな部屋にヤガラの煙を吐く音だけが響く

ヤガラ「九朗・・どうやらお前の未来予知、馬鹿にはできんかったな・・」

そう言いながら今日も煙草をふかすヤガラ様。煙は上に上り、消えていった



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