第74話 総力戦5 当主の力
バービュラー「さあいくぞ?『吹き飛べ』!」
バービュラーがそう言うと颯治の体は吹き飛ばされる。颯治は冷静に着地をする。
颯治{これなんだよな。彼のおそらく最も厄介な能力。彼が言った言葉が現象として実際に起きてしまうんだ。極論『死ね』なんて言われたら本当に死にかねない。どこまでが上限かは知らないが…それなりにリスクを伴うはず。それを見極めようか}
バービュラー「『弾幕の嵐』」
バービュラーがそう言うと颯治の周辺にバービュラーの神気を纏う大量のエネルギー玉が出現する。
颯治「多いね。これ全部僕に来るのかな?」
バービュラー「当然だろ!」
バービュラーが両手で大きく拍手をする。瞬間…一気に颯治に近づくエネルギー玉たち…
颯治「はは、多いね。少し暴れようか」
そう言い颯治は自身の足を構える。
颯治「『麒麟善閃』」
バービュラーが出した弾幕全てを薙ぐは颯治の足による横なぎ一閃。すべてのエネルギー玉を蹴散らした。それだけにとどまらず…
颯治「『土轟蹴雷』」
まるで爆発したのかと思わせるような強力な蹴りはバービュラーの懐を侵略する。
バービュラー「ち…『ふきと…」
バービュラーが反応し、行動を起こそうとするよりも前に…
颯治「『旧式・【蛇幻滅花】』」
颯治がバービュラーの喉を蹴る…。
バービュラー「カ…ホ…」
颯治「声帯を壊すことはできたかな?」
バービュラー「ク…」
颯治「なんとか言ったらどうだい?」
そう言いながら颯治はバービュラーの胴を蹴る。バービュラーの体は地面に叩きつけられた。
バービュラーは起き上がるが…傷を癒すことはできていない。
バービュラー{くそ…さっきまでは大けがで済んでいたが…声帯を壊されると話が変わる…!もうこれじゃあ言霊は使えない…。…できるか?『未来予知』だけでこいつと戦うのは…いや、無理だ。俺は言霊と神気量でなんとかしてきた…そのうちの片方を削られりゃあ…できることが少ない…}
バービュラーが思考をしていると颯治が地面に足をつける。
颯治「君がどんな能力を持っているか知らないが、治療はできるだろう?」
声帯が潰れているバービュラーは何も答えない。いや、答えれない。
バービュラー{質問を投げんじゃねえよバカタレ…お前が自分でやったことだろうがよ…だが残り一回だ。『魔将降臨』。これとバルバトス様の力で体も神気も全回復だ。それまでは耐えるしかない…}
颯治「無視とはひどいね、君。そんなことをする人間には…お仕置きが必要なようだ」
瞬間、颯治が圧倒的神気量を解放する…その数値…1200兆!
バービュラー「…!!」
颯治「公爵を相手に加減する僕じゃない」
颯治の手に圧倒的な神気を纏わせ、その神気が渦を巻く…!
バービュラー{体が引き寄せられる…どれだけの神気を練っているんだ…!『竜集気』で収まっていい範疇ではない…。いや…当然だ…この国最高の一族のその当主だぞ!常識を疑え!!}
颯治「さあいくぞ?」
バービュラーに向かって颯治が進む。
バービュラー{やるしか…ない!!『魔将降臨』!!}
直後…バービュラーが圧倒的神気を纏い、そしてバービュラーも同様に「竜集気」を発動させる。
颯治「面白いじゃないか!君もそのレベルを扱えるとはね!」
バービュラー「やるしかねえだろうが!」
2人の「竜集気」が衝突する。ぶつかったと同時…竜巻が発生する…!
颯治「はは、君もやるじゃないか!」
バービュラー「できることしなきゃ死ぬのは俺だ!やるしかねえんだよ!」
颯治「そして…君、声も治ってるし、さっき負わせた怪我も治っているね。神気量も突然爆発的に増えたし…『魔将降臨』を使ったんだろう?」
バービュラー「へ、そうだぜ。使わねえと死ぬのは俺だ。それを…」
颯治「君が全力を出したのはもうわかってる。そして『魔将降臨』によって体が全回復するのは知っている。他の司教は全回復をするということを知らない人が多いらしいが、君は知ってる。もしも君が『魔将降臨』によってさっき以上に再生力を得て、もしも不死になっていたとしたら面倒だ。終わらせる」
バービュラー「なに?」
颯治が一息つき、両腕を交差させる。
颯治「『覇天の我界』」
直後…天を貫くような世界が展開される…地面は雲、それ以外はなにもない…。
颯治「『五霊王臨界』」
颯治の体の周辺に魂のようなものが漂う。バービュラーの体にも魂のようなものが漂う。
バービュラー「まさか…『覇天の我界』…!」
颯治「ようこそ、僕の世界へ。ここは何にも縛られない自由な世界だ」
バービュラー「なら…!」
颯治「あ、ちなみに自由の対象は…僕だけだ」
颯治が地面に伏せろというジェスチャーをとる。すると…バービュラーの体が地面に叩きつけられた…。
バービュラー「なにが…起き…」
颯治「君は何も気にする必要はない。僕の思うままにされればいい。怖いものなんてなにもない」
バービュラー「なんだ…と?」
颯治「そうだね、君の攻撃を3回まで許可しよう。その間に僕を殺してごらんよ」
バービュラー「舐めるなよ…小僧!!」
バービュラーが竜集気を両手で構える…
バービュラー「『爆霊双竜言』!!」
構える竜集気が颯治のもとへ猛スピードで向かう…!竜集気が颯治の周りを囲むように動く…。
バービュラー「『爆ぜろ』!!」
バービュラーの言葉に反応して竜集気が爆ぜる…。
それは颯治の体を削る…。
颯治「…」
バービュラー「もっとやってやる!『五爪霊斬』!!」
バービュラーの爪が颯治の体を引き裂く…。それは完全に颯治の体を裂いた…。だがそれを確認したバービュラーが腕を頭よりも上に掲げ、大きな神気の塊を颯治がいたところに向けて放つ…。
バービュラー「さあ…死ね!源颯治!!『神絶爆霊言』!!!」
圧倒的神気を湛えるバービュラーのエネルギー玉は並大抵の爆弾を凌駕するほどの威力だった…。煙は高く上り、地面である雲の色は濁っていた…。
上る煙は薄くなり、どんどん消えていく。そして…何も残っていなかった…。
バービュラー「はあ…はあ…やってやったぞ。殺した!あいつを!ふははは!余裕をぶっこいてるからだ!悪魔様の裁きがお前に!」
「下った。そう思っているのかい?」
バービュラー「…は?」
本来聞こえるはずのない颯治の声が聞こえる…。バービュラーはその事実に驚愕した表情を隠せない…。
バービュラー「どこだ!?なぜ…お前は生きている…!?」
バービュラーは辺り一帯を見回すが…どこにも颯治の姿はない…。
「僕は生きているよ。こっちでね」
バービュラー「こっち…?」
「ああ。逆に問うよ。君はどうしてまだそんなところにいるんだい?」
バービュラー「は?」
「僕はもういるよ」
「現実世界にね」
そう、颯治はすでに「覇天の我界」から脱していた。颯治の目の前には自身が作り出した「覇天の我界」の外部、球状になっているものを見ている。
バービュラーは取り残された颯治の世界で膝から崩れ落ちる…。
バービュラー「そ…そんな…馬鹿な…手ごたえもあった、ちゃんと殺したはずだ…なのになぜ…」
「まあ気にする必要はないよ。こうなる運命だったんだ。そう、今から君が死ぬという…」
颯治「運命もね」
颯治は握っている拳から人差し指と中指を立て、胸の前に置く。
颯治「『覇王流印世』…」
そして手首を前に捻る。
颯治「『暁』」
直後…バービュラーがいる世界が急速に縮まる…!颯治の目の前にある球体もどんどん小さくなっていく…!
バービュラー「な…なんだこりゃあ!!」
バービュラーがいる世界ではバービュラーが少しでも動けば壁に触れかねないほどまでに小さくなり、現実世界での球体はサッカーボールくらいの大きさになって止まった。
颯治「さらばだ。『宵』」
颯治が立てた人差し指と中指をしまい、拳を握ると同時…球体は大きな爆発をして完全に消滅をした…。
颯治「相手が悪かったね。僕は強い。自惚れをすることも全く恥とは思わない。なぜなら僕は強いから。ガールゴス・バービュラー。君は僕よりも弱かった。それだけだ」
ヒーディキュア王医学校グラウンド、源颯治対ガールゴス・バービュラーの戦闘は球状を包む煙が完全になくなったことで終止符を打った。
校長室へと続く廊下をゆっくりと歩く男の姿があった。
「遠いな。全く。こんな構造では生徒も来ないだろ」
そう言う男の床には…多くの教師陣の倒れている姿があった…。そこで一組の男女が男と対峙する…。
燕「あなた…先生方になにを…」
翔「おい、止まれよ…」
2人の顔には汗が垂れる…。男は翔の言葉に足を止める。
「お前たちは誰だ?俺の行く手を阻もうとするということはそれなりに実力があると思っていいんだな?」
燕「あなたの実力によるわよ…」
「当り前だろ。お前らは俺の力を知らねえんだからよ」
距離をとる燕と翔。翔が燕に耳打ちをする。
翔「燕さん、戦いますか?」
燕「危険だけど…この先に翠帝様がいる…戦わないと…」
「そうか。翠帝はこの先にいるのか」
燕「な!?」
そう言った男が2人に急接近する…2人が反応をするよりも先に…
燕「が…」
翔「ぐ…」
強力な「業波」によって2人の意識を完全に断ち切った…。
「殺しはしない。この学校には才能あふれる人間が多い。お前ら教師陣はそいつらを育てることに尽力しておけばいい。もうすでに種はまいた。いい花を咲かせることを期待してるぞ」
男はそう言い、校長室に向けて足を進めた。
長い廊下の最奥に校長室はあった。その部屋のドアをまるで自分の部屋のように開ける。
「ここにいたか。翠帝、橘仁」
大きな椅子に鎮座するは翠帝、橘仁。入室した男が来てもなお、動こうとする気はなかった。
仁「ここに辿り着く前に教師陣がいたはずだが?その中には実力者もいるが…」
「気絶で済ませておいた。こちらとしてもこの学校の教師陣は貴重な存在だ。意味もなく殺しはしない」
仁「そうか。それで?俺に何の用だ?この学校に界魔将団の司教が数多く乱入し、戦闘をしていることも知っているぞ?」
「それは俺も知っている。好きに暴れろという指示はしている。それなりにやってくれているようだ」
仁「その中には死傷者も出ている。それも容認しているのか?」
「殺すなら殺される覚悟をしろとは言っている。戦闘するのなら万が一もあるだろう。だが今回の首謀者は俺じゃない」
仁「なに?」
「俺の派閥ではあるがな。俺の派閥内No.3である源一族の忌み嫌われ者、源羅弾からヒーディキュアの人間を多く殺してほしいと言われた。だから司教を多く送り込み、このように被害を出した。実際は強者たちによって司教は負けている。一般人の被害もそこまで多くない」
仁「この学校の生徒は強い。そして我が国に属していない、予期せぬ協力者もいる。お前たちが負けるとは思うがな」
「ああ。そうだろうな。だがこっちもただやられて帰るわけにはいかない。強者を殺しておかなければ今後そいつによって司教が殺されるかもしれない。俺も動かさせてもらう」
仁「それを容認する俺だと思うか?」
そう言い仁は立ち上がる。手にはすでに異常なまでの大きさを誇る刀を持っていた。
「まあ落ち着け。動くと言っても司教に指示を煽るだけだ。この学校内で最も成長し、今後我らにとって最も大きな障害となるであろう少年の所に司教を向かわせる。その司教も負け、今戦っている司教すべてが敗北したのなら…その時は俺も前線に出てお前たちと戦おうじゃないか」
仁「この学校の生徒は強い。お前もただでは済まないぞ」
「それは百も承知だ。一体どうなるか…楽しみだ」
そう言い、男は校長室を出た。校長室で仁は考える…。
仁「今後界魔将団にとって最も大きな障害となる少年…。…可能性は大いにあり得るな…」
思考する仁は少しの間目をつむる。仁は考えた末、現状の戦闘の状況を神気で感じ取っていた。
仁「颯治と蓮乃が終わったのか。蓮乃は神気の消耗があるな…颯治はそこまでか。颯治の所へ行くか。その司教がどれほどの強さを持つかわからんが…颯治なら大丈夫だ」
仁は刀を持ちながら校長室を出た。颯治がいるグラウンドへ向かうために。
小学校の校舎、高学年が多くいる教室の理科室…そこでも界魔将団の司教と戦う青髪の少女がいた。
花音「ねえ、あなた達、中学生でしょ?なんで私を攻撃するの?」
そう言う花音の目の前にいるのは…体力テストで真や翠花と一緒に受けた真が警戒していた3人組のうちの2人だった。
暖「お前と戦うことが俺たちにできることですのでね」
陸「そうですよ。蜂明君や他の司教が勝手に動いたんでね。我々にもできることがある。それがお前と戦うことだ」
それを聞いた花音は深いため息をつく。
花音「そんなんで私に来るのか。めんどくさ」
暖「なんとでも言いなよ。僕らに勝つことは不可能なんだから」
陸「そうそう。抵抗なんてやめて…」
「ゴン!!」
花音が持っている槍で地面を強く叩く。
花音「自惚れるカスほど惨めなものはない」
花音が槍を2人に向ける…。
花音「いいよやってあげる。私に勝つことなんて不可能ということを教えてあげる。来なよ、雑魚ども」
それを聞いた暖が首を横に振り、ため息をつく。
暖「自惚れているのはどちらなのだか。ねえ…り…く…」
暖の視線に移るのは…首がない陸の体だった…。
暖「…な…なにが…おきて…」
暖のりかいが追い付かない。だがその時…
「おーい…暖…」
喋るはずのない頭無き胴から陸の声が聞こえた…。そして暖にゆっくりと近づく…。
暖は近づく陸を押し返し、花音の方を睨みつける。
暖「お前…陸に何をした!!」
それを見た花音は何事もないかのように平然とした顔をした。
花音「何を言ってるの?私は何もしてないよ?」
暖「うそを…つくな!」
重力によって歪むエネルギー玉を暖は花音に向けて放つ。それを花音ははじく。それと同時に暖が花音に近づき、花音と近接戦闘を始める。
暖「お前が!陸を!」
殴りまくる暖の攻撃を花音は顔色一つ変えずにすべてを捌く。その競り合いの最中に花音の背後をとる影があった…。それは陸の姿だった…。
花音「まあ動くよね。私本当に何もやってないもん。それに…多分お互いに見えてないよ。頭がないように見えているの」
陸の攻撃を喋りながらノールックで受け止める花音。
陸「ち…行けると思ったんですがね…」
花音「あなたは今どうなってるかわかってるの?彼が見てる状況」
陸「ええ。私も暖の頭がないように見えている。そして押されたことで確信をしましたよ。暖も同じ状況だと」
花音「そう。まあ別にこのままでもいいけど…盛り上がりに欠ける。『破幻輪』」
花音がそう言い、指を鳴らす。瞬間サークル状に広がる花音の神気。それを受けた2人はお互いを見つめる。
暖「陸…頭がある…!」
陸「ああ…!親友の顔だ…!」
花音「やっぱり幻惑にかかってたか。そんな状態では戦おうにも戦えないでしょ。私を殺すという慢心もこれで遠慮なく折ることが出来る」
花音が持っている槍を右手で構え、左手は2人に向けて伸ばす。
花音「さあ行こうか」
花音の構えに2人が身構える…。
暖「もう恐れなくていい」
陸「我らはもう負けない」
2人が神気を解放し、花音と向き合う。この戦闘も想像を絶する決着となる__




