第71話 総力戦2 剣神 スサノオノミコト
俺は赤い世界にいる。そして…大きな剣を持つ男の目の前にいる。
真「この世界は…」
「君の『こころの世界』だ。赫星真」
真「もしかして…」
スサノオ「いかにも我だ」
真「スサノオ…!!」
スサノオ「神気の鍛錬頑張ったものだ。あの金色の髪をした少女には感謝をしなければな」
真「嵐紗さんが稽古をつけてくれたんだ。神気も頑張って増やしたし、実践練習も何回もしてもらって…それから!」
スサノオ「まあ落ち着け。今はすべきことがあるだろう?」
真「あ、うん。そうだ。なんでこの世界に…スサノオもなんで?」
スサノオ「我を解放するに足る神気を君自身が得たからだ」
真「神気量…でもあの状況で増えるとは…」
スサノオ「命を懸けてでも守る。その思いと覚悟によって神気は増える。君はあの2人を守るために限界を超えた量の神気を吸った。その結果、我を解放するに足る神気量に達したということだ」
限界を超えて…でもそれだと…
真「えっと…それってもしかしてやばかったり?」
スサノオ「我がこの世界に連れてこなかったら君は神気暴走になり命を落としかねなかった。だが命を懸けてした結果覚醒に繋がったのだ。危ない橋であることに変わりはない。もうするなよ?」
真「あ…はい。でもよかったよ」
スサノオ「安心するのはまだ早い。その状況に追い込んだ敵は未だ攻撃の最中だ」
真「そうだったね」
スサノオ「これからは君は能力として我を使うことが出来る。そして我を解放したことによって神気量も以前とは比べ物にならないほどに増えている。それはあっちの世界に戻ってのお楽しみということでな」
真「わかった!じゃあ…スサノオ、君の力を借りてあいつに勝ってくる!」
スサノオ「ああ!行ってこい!!」
ありがとうスサノオ。俺のことを認めてくれて。俺のことを捨てることなく見守ってくれて。君がいなければ死んでたかもなんだ。
さあ…勝つぞ!!
真「さあ…いくぞ」
俺の視界は「こころの世界」ではなく、すでに現実世界に戻ってきた。水銀が2人を襲おうとしている状況は変わっていない。
俺はスサノオに関する情報は前の世界でたくさん調べている。だから…能力の予測もおおよそついている。三種の神器だ。天叢雲、八咫鏡、八尺瓊勾玉を使えるはずだ。そしてスサノオを象徴とする剣、十拳剣、天羽斬も使える。こっちの世界でどんな効果を持つかなんて知らない。
だがわかる。この力なら2人を守ることが出来る。俺は水銀の流れこちらから近づいた。
そして…俺の左手に盾があるようなイメージをとった。すると予想通り…俺の左手に「八咫鏡」が出てきた。俺はそれを確認しあの流れに正面からぶつかった。水銀の流れを完全に止め、それどころか押し返した。
真「やっぱりいけるよな!」
結夢「し、真くん!?」
烈道「まじか!すげえな!」
突然後ろから水銀の流れに耐え押し返すやつがいたらさすがに困惑する…と思ったけど、烈道は相変わらずで安心だ。そのまま俺はそれを完全に突破した。水銀の流れが来ることはもうなかった。
それを見た玲音は驚きの顔を隠せていない。
玲音「な…なんで立ってる…!!」
真「まあ…才能かな!さてと…行くぞ!結夢!烈道!」
結夢「う、うん!」
烈道「行ったるぜ!!」
俺と烈道が突っ込む。玲音が緑色の宝石を二つ、俺たちに向かって投げるが…
真「食らうわけ!」
烈道「ねえだろ!」
もってる得物で弾き返した。俺は剣で、烈道は棍棒で。そのまま俺たちは突っ込むが…
玲音「ならここまで来てみろ!『宝山針界』!!」
廊下の至る所からたくさんの色の針が突き出る。そして…俺は見えたぞ?玲音が宝石をいくつも投げているのを。
真「烈道!全部当たるな!」
烈道「よっしゃやってやる!」
普段の俺なら絶対に躱せないが…今の俺ならできる!そして烈道も調子がいいのか乗り気だし!これはいける!
俺たちは針山全部を避け、来ている宝石をものともせずに玲音のもとにたどり着いた。
玲音「く…」
真「いくぞ?」
俺は剣を玲音に向かって振り下ろす。だが玲音は避けた…かのように見えた。だが…
「ザシュ」
玲音「なんで…避けた…のに…!回復、回復だ…!」
玲音が緑色の宝石を投げていた。振り下ろす前だったのもあって俺は反応できていなかった…。だが…玲音の傷がふさがることはなかった。
玲音「なんで…回復しないの…?」
スサノオ{我が剣、天叢雲剣は剣に霊気を帯びている。その霊気の斬撃を食らえば…出血はそうそう止まらんぞ?}
なんでかは知らないけど…これはチャンスだ。俺は再び剣を振り下ろそうとした…だが…
玲音「調子に乗るな!!」
玲音がハンマーを出して俺の剣を弾いた…。そして距離をとる玲音。傷口にハンマーの光る部分を当てている…。
玲音「こんな血…吸って…勝っちゃえば何も問題はない!!」
あのハンマーは血を吸うのか…本当だ。さっきのような輝く赤色ではなく、血のような少し黒い赤色に染まっていってる。
玲音「これに耐えてみせろよ…はあ…はあ…」
さっきまであんなに息を切らしてなかったのにな。今じゃ息切れが激しい。そりゃそうだろうな出血が多いんだから。
真「君もきついだろ?」
玲音「うるさい…」
烈道「あ?」
玲音「まだ…閃邪様に恩返しができていないんだ!こんなところで負けるわけにはいかないんだ!!」
恩返し…そうか。その人のために動いているのか。玲音を拾い、そして面倒を見た人なんだろう。その人のための恩返しか。
真「恩返しは素敵なことだと思う。だがそれが人を傷つけていい免罪符になるわけじゃない」
玲音「うるさい!もうお前らなんて…死んじゃえ!!」
その瞬間…玲音が糸が切れた人形のように倒れた。だが…それと同時…黒いモヤが出てきて…それは実体となった…!
「お前じゃどうにもならん。ここは俺に任せろォ」
禍々しい空気を出す謎の…人間ではない…これはもしや…
真「悪魔…」
烈道「やべえだろ…こりゃあ」
そう思ったその瞬間…!
奴の拳が烈道の目の前に来ていた…。
真「烈道!!」
俺は左手で奴の拳を寸前で止めることに成功はしたが…俺は吹き飛ばされてしまった…。
烈道も俺が吹き飛ばされたのを見てバックステップを踏んだ。
真「さて…どうする?」
烈道「まったくだ…。どうすりゃいい?」
そう考えていた時…
スサノオ{真、代われ}
スサノオが俺の頭の中で話しかけてきた…。
真{代われって…あいつをどうにかできるのか…?}
スサノオ{我を舐めるな。君の能力である我が見本を見せよう。それにあれはまだ君には戦ってほしくない。未熟な君では厳しいだろう」
真{…わかった。頼むよ。けど…一個お願いがあるんだ}
スサノオ{なんだ?}
真{あの子を…玲音を傷つけるのはやめてくれ。スサノオがやっていいのはあの悪魔だけだ}
スサノオ{承知}
その会話をし終えたと同時、俺の主導権はスサノオに移っていた。
スサノオ「酒吞童子。起きろ。その少年にあいつは厳しいはずだ。それはお前も分かっているはずだ」
そうスサノオが言うと烈道の体は…まさに鬼の姿になっていた。それに烈道は…酒吞童子を能力として持っていたのか…。烈道も神話能力持ち…ということか?酒吞童子は鬼だから…どれに属するんだろうか…。
酒吞童子「へ、お前に言われなくてもそうしてたぜ。烈道と話してたんだ。邪魔すんな」
スサノオ「そうか。まあいい。我らの主はお互いに才能に溢れているようだな?」
酒吞童子「ああ。こいつの体はすげえぞ?ここまで俺の力に肉体が順応するとは思ってなかった」
スサノオ「ふ、そうか。さて…あいつをやるぞ。この状態は少年たちにはきついだろうしな」
酒吞童子「とっとと済ませて俺は寝る。やるぞ?スサノオ」
スサノオ「ああ」
スサノオと酒吞童子が悪魔に向かって歩き出す。
スサノオ「お前を斬る。抵抗するな」
「断るゥ。お前みたいな神が口答えをするなァ」
スサノオ「そうか」
スサノオがそう言い刀を抜いた。そしてスサノオが王羅の構えを取る…。
スサノオ「『天帝覇王流、覇王戴斬』」
構えから大きく踏み込み、構えている刀を大きく横なぎ一閃…それは…廊下の壁すべてに痕が残る斬撃だった…。
その攻撃によって…
「あ?」
悪魔の体は…下半身と上半身で完全に分かれた…。
「ああ!!ああああ!!!!神ごときに…神ごときにイイイイ!!!」
上半身だけで悪魔がのたうち回る。
酒吞童子「俺いらねえじゃねえか」
スサノオ「もしもを考えていた。無論お前がとどめを刺してくれてもいいぞ?」
酒吞童子「ならそうさせてもらうわ」
そう言い酒吞童子が悪魔に近づく。
酒吞童子「おい悪魔野郎、お前よくも俺の主人やスサノオのガキに怪我させたな?…それにお前、やってんな。あの女の子の体を乗っ取ってよ。なにがしてえんだ?」
「俺は…生きるために…あのガキを使った…!!それまでだ!」
酒吞童子「そうか。悪いな烈道。もうちょいお前の体借りるわ」
その瞬間…酒吞童子が悪魔の頭を掴んだ。それと同時悪魔の体が再生した…。
酒吞童子「てめえは一生死んどけ。あいつが斬った体もいつでも再生できるんだろ?なら俺が食ってやるよ。なあに、ちょっと痛えだけだ。そんくらい…女の子の痛みに比べりゃ軽いもんだろ?」
「ひ…ヒイイイ…」
そこから酒吞童子は再生した悪魔の体を…血の一滴も残さずに食べた…。
食べ終えた酒吞童子がため息を吐きながら体の主導権を烈道に渡した。それを確認したスサノオもまた俺に主導権を渡した。
真「酒吞童子が…食べちゃったね」
烈道「ああ。けど…酒吞童子の判断は俺は正しいと思ったぜ」
真「玲音はどうなったんだろう。意識を取り出してたらいいな」
烈道「…」
烈道は…何も言わない。どうして何も言わないんだろう。
真「行くぞ?烈道」
烈道「…ああ」
俺たちが玲音がさっきいたところに向かう。だが…
真「え…」
玲音の体にひびが入っていた…。俺は玲音の体に近づく…。
結夢「真くん…」
真「結夢…玲音の…これ…どうなって…」
俺が近づいたのを確認したのか…玲音が声を出す…。
玲音「ありがとう…しんくん…れっどくん」
体にひびがゆっくりと、だがどんどん広がっていく…。
真「俺は…なにも…」
玲音「ううん、君は解放してくれたの…。あの悪魔から…ね…」
真「かい…ほう…?」
玲音「私…元々病弱だったんだ。それを治すためって…病院の先生が私の体に…悪魔を宿させた…」
なんだ…それ…。患者を治すための病院が…患者の体に悪魔を宿させる…?
真「…」
玲音「私は悪魔の意思で動いてた。いっぱい人を殺して…だからもう嫌だった。そんな時にみんなが止めてくれた…それが…嬉しかった…。だから…ありがとう…」
どんどん崩れる彼女の体…。ひびはとうとう彼女の顔に渡ってしまった…。
真「再生を…」
俺が神気を集め、それをひびに向かって近づけようとした…だがそれを烈道が止めた。
烈道「俺にも兄貴がいたが…こうやって死んだ…。この状態で生かされる方がきついんだ。だから…もうやめてあげよう…」
真「そう…だな…」
玲音「ありがとう…烈道くん…」
そして…どんどん玲音の足が崩れ始めた…。まだ…言えることがある…。
真「玲音さん…あっちでは…自由に生きてくださいね…」
烈道「きっと…楽しいぜ」
結夢「大丈夫だよ…玲音ちゃん…」
俺たちがそう言うと…腰、胸と割れて…そして…
玲音「ありがとう」
その言葉を最後に玲音の体は完全にひび割れ、塵となって消えた…。
結夢は涙を流し…烈道も大きな涙を流していた…。これが玲音さんが望む最後だったのか。これは俺にもわからない。だが…涙を流している顔で見送ることが彼女の求めるものなのか?俺は…違うと思う。
だから俺は立ち上がり…笑顔でこう言った。
真「玲音さん…幸せに」




