第70話 総力戦1 VS玲音
俺は悪魔の力を使い、神気を解放した玲音と対峙している。
真「さてと…悪魔の力がどんなものか。わからないなりに頑張るとしますかね」
俺は朱雀の尾を取り出し、帯電を付与した。すでに「不壊の誓い」は発動済みだ。初見の攻撃でも大体はなんとかできるはずだ。
玲音「電気か。めんどくさいけどなんとかなりそう」
真「やってみろよ」
玲音「そんな無策で突っ込むわけないでしょ。まずは水害でも起こそうかな?『蒼石濁流』」
彼女の右目が青色に輝いたと同時、校舎の廊下の床を埋め尽くすほどの濁流がこちらに押し寄せる。
真「川か…でも…」
俺は見ていた。彼女の足元にも水が触れていることを。水と電気…やることは一つだ!
いや、ちょっと待て…この川は結夢たちも触っている可能性があるな…。
真「結夢!烈道!これに触れ!」
俺は「絶縁体の効果を触れた者に付与する」という効果を付与した尾を結夢たちの方向に向かって投げた。それを結夢が受け取ったことを確認した俺は一気に突っ込んだ。
さらに俺は尾を取り出して効果を付与した。効果は「水歩き」だ!それを足に結び、そして水を蹴る。すると…
真「やっぱりできるよな!」
流れる濁流をものともせず俺は玲音に向かって進むことが出来た。そして…結夢たちは俺が渡したやつを持っていることも確認済み。俺は電気を纏う尾を水につけた。すると…
玲音「ぐぐぐぐぐ!」
電気で痺れてるねえ!俺は水の上を駆け抜け玲音の元に到着した。俺が尾を構えると…
玲音「なら…これはやめ!」
玲音が反応、水が流れなくなった。能力の解除をして水の流れを発生させなくしたんだな。
真「近接は俺の得手だぞ!」
玲音「ち…」
俺は効果を付与した尾を取り出した。効果は「お互いに神気関係なくさせて近接武器になれ」だ。つまり相手の神気量に関係なく近接をすることが出来る!
彼女の腕はとてつもないほどの神気を纏っているが…これなら問題ない!
玲音「馬鹿!勝てるわけがない!」
そのまま俺は玲音と近接にもつれこんだ。彼女は素手、俺は朱雀の尾を棒のように扱う。
競り合いの最中彼女はとても苦しそうな顔をしている。
真「どうした?勝てるんだろ?」
玲音「なんで…なんで!」
動揺したその一瞬を俺は棒を使って彼女のみぞおちを叩いた。
玲音「カハ…」
彼女が腹を抑えるように倒れる。きついだろうな。みぞおちは人体の急所で呼吸ができなくなる。
だが戦場でその状態の彼女を見逃すほど俺は甘くはない。俺は距離をとって彼女に向かって弓矢を構える。
真「恨むなよ?お前が散々やってきたことだ。『焼弓…」
だがその時…
「ゴクン」
なにかを飲み込んだ…。何を飲みこんだ?
そう俺が疑問に思ったその瞬間…
玲音「『翠色吸復』」
彼女が放つ緑色のなにかを俺は弓を構えていたせいで反応が遅れた…。緑色の…これは宝石か?が太ももに突き刺さっている…。それを察知したその瞬間…
真「ぐ…!」
俺のお腹に…この位置…みぞおちか…?とんでもない激痛が走る…。その痛みで悶えていると…
玲音「はあ…めんどくさいね…。君から回復したからいいけどさ」
まさかあの痛みは…俺が玲音にやった攻撃を回復するために俺に痛みを肩代わりさせ、それと同時に回復もしやがったのか…。
落ちつけ…朱雀の力で再生だ。痛みをどんどん小さくしていけ…。
玲音「回復手段あるね?させるわけないでしょ」
玲音が足を振り上げている。それはちょうど頭の位置だ…。俺はさっきの棒で防ぎながらもバックステップで距離をとりつつ、朱雀の再生で調子を取り戻した。太ももに刺さっている宝石も抜き、その傷も治した。
真「ふう…めんどくさいのはどっちだって話だけどな」
玲音「やっぱり回復できるんだ。まあ私もできなくないからね」
お互いに回復手段を持ち合わせているということは…決定打がないと回復されてしまうのか…。玲音の回復の方法はあの緑色の宝石が対象の体のどこかに触れることだろう。そして痛みを触れた相手に肩代わりさせ、同時に回復もするという攻撃と回復を同時に行える結構やばい技を持ってる。つまり…
玲音{呼吸することで負傷を回復してるのか…。多分それだけじゃないから…気を付けないと…それにあのしっぽもやばいね…。推測だけどどんな効果も付与できる。しかも私の神気量でも対等に近接をしてきた。まさか…神気量に関係なく突破できる効果を付与できるのか?だとしたら…私がヘマをして追い詰められる可能性もある…}
真・玲音{早期決着をしないと負ける可能性がある…}
そんな風に思っていると…
朱雀{真、神気を無視しての攻撃はやめておけ}
朱雀が声をかけてきた。
真{朱雀。どうして?}
朱雀{あれだけはメリット以上にデメリットがある可能性が高い。今回のあの女も素手じゃったから通用しただけ。今後は通用すると思うな}
真{というと?}
朱雀{確かにさっきの効果は相手の神気を無視して攻撃できる。じゃがこれを発動させている時の真は神気を纏っていない状態なんじゃ}
真{神気を…纏っていない?}
どういうことだ?
朱雀{奴に攻撃をする際お主は神気を纏っておらん。つまり生身の状態でお主はあの女と近接をしていたのじゃ}
真{え?じゃ、じゃあやばくなってた可能性は…}
朱雀{大いにあり得る。そしてこちらが生身の状態に対して相手はわらわの尾が触れている部分のみ神気を無視する。今回が例外なだけじゃ。奴が素手で対応してきたからこそ通用した。じゃが対策してくる可能性もある。多用は控えるようにじゃ}
真{…わかった。朱雀がそう言うならそうする}
朱雀{他の効果は大丈夫じゃ。奴の濁流を水歩きを使っての攻略、見事じゃった}
真{ああ。ありがとう}
神気の無効化はなるべく使わないようにしないとな。さてと…戦闘に戻ろうか。と言っても…効果を考えるのに脳をめっちゃ使う。…やってみるか。
真「ふう…なあ、休憩がてらちょっとだけでも話すことは可能か?」
玲音「なに?私が言うのもあれだけど戦場にいるんだよ?」
真「ああ。わかってるって」
玲音「それでなに?」
真「なんで界魔将団に所属してるんだ?」
玲音「さあね。私も知らない。物心がついた時には私は界魔将団にいた。どうせ親とかが捨ててそれを組織が拾ったんだよ。けど私は組織に育ててもらった。だから私は組織に貢献する。それだけ」
真「そうか。まあいい休憩になった。まあ内容は重たかったけど」
玲音「そう?まあ私も言うつもりはなかったしね~」
ならなんで言った?それに関しては敵味方問わずなんで?純粋に気になるんですが。
真「そ、そっか。まあ…やろうか」
玲音「私は元々そのつもりだったけどね?」
真「まあいいじゃん」
玲音「変な人」
さてと…玲音のことを整理しよう。能力の特徴や彼女自身の特徴をな。
まずは…圧倒的な神気量だ。これが最も面倒と言っても過言ではない。そして宝石だ。青色の宝石と緑色の宝石を扱ってた。緑色の宝石に関してはやばい。回復と攻撃を兼ねるようなことをしてくる。それにまだ種類がありそうだ。赤や紫、黄色とかもありそうだ。あとは…緑色の宝石を投げる前に飲み込んでいたなにかだ。これに関しては全く情報がない。それだけに危険だ。警戒を怠るな。
俺は深呼吸をし尾を取り出した。俺はすぐに効果を付与していたが…別にこれに関しては効果はいつでも付与できる。だから俺は何も効果を付与しなかった。
そして…玲音が行動を起こした。
玲音「『赤石砕槌』」
玲音がそう言うと赤色に輝くハンマーを取り出した。赤色…そして宝石の名前…色に共通性があるんじゃないか?青色は水…緑色は回復…よくあるRPGとかの属性に似ているような気がする。だとすると赤でハンマーなら…攻撃に特化した武器なんじゃ?もしくは火属性の可能性もある。気を付けないとな。
俺はさっき取り出した尾に火属性の効果を…付与する意味はあるのか?朱雀は不死鳥だ。炎を使って再生している。黄国の訓練所のお兄さんが使った火の技を朱雀は素通りした。そして火の竹も体を貫通したが…それも怪我をすることなく突破できた。よっぽどの火力じゃなければ貫通をすることが出来る。火に関しては…怖いものがない。つまり物理特化ではなく火属性の方なら…あのハンマーを無効化できる…!
真「やばそうなハンマーだな」
玲音「これは全部ぶっ壊す。あなたの自信も校舎も全部」
真「やってみてほしいものだ」
玲音「なら…お望み通り!」
玲音がハンマーを持ちながらこちらに接近してきた。俺は迎撃の構えをとった。
全部ぶっ壊す…その自信があるということはそれだけ威力があるということだ。例え朱雀の尾に壊れない効果を付与したとして…その攻撃を受け止める俺の身がどうなるかわからない。
玲音「さあ終わりにしよう」
あのスピードに加えて破壊力もあるはずだ。受け止めるのは無理だ。なら…一発賭けてみようか。まずはその準備だ。
真「一旦離れろ。『金紅羽・積善』」
俺は翼から大量の羽を出した。これであいつは離れて…
玲音「こんなもの!意味ないよ!」
なんと玲音は…俺が出す羽全部をハンマーで壊したり振り払ったりしている…。まじかこいつ…。俺の賭けすらさせない気かよ…。
そして全部突破してきてすでに俺の近くに来ている…。俺は持っている尾に効果を付与した。
真「『帯電しろ』」
玲音「さっき見たやつはもう対策してるに決まってるでしょ!」
まあそうだろうな。くそ…思いつかない…どれが最適解なのか。どんな効果を付与すればあれを防げる…?
…今の神気量は…全開だ。そして…俺はまだ「不壊の誓い」を発動させていない。なら…今がその時だ。俺は玲音の攻撃を全て見た。玲音はすでにハンマーを振りかぶっている。
玲音「これで…終わり!」
玲音は俺の体にハンマーをぶつけてきた…。…だがそれも…今の俺を前には意味を為さない!!
「ガキン!!」
玲音「え…」
そりゃあ驚くだろうな。なんせ自分が誇れるレベルの攻撃力を相手は防御も一切せずに受け止めたんだからな。だがハンマーは重いだろう?弾かれればそれは…大きな隙になる!
真「やっと隙を見出すことが出来た」
玲音「く…!」
俺は持っている帯電効果を付与した尾を玲音の右の腹に向かって突き刺した…。
玲音「ぐ…ご…」
真「これを耐えられはしないだろう!」
突き刺したんだ。体の内側を電気で攻撃してるんだ。想像もつかないほどの痛みのはずだ。
玲音「…」
玲音の動きが完全に止まった。それを確認した俺は帯電の尾を玲音の体から抜いた。
真「ふう…強かったな…」
俺は…人殺しをしてしまったんだろうか…。さっき殺人をしないって言ったばっかりなのに…
俺が安堵の息を漏らしたその時…
「ガン!!」
重たい何かが俺の頭を殴った…。
真「ぐ…。は…?」
俺は目の前に広がる光景に理解が出来なかった…。なんで…
真「なんで…立って…る…」
それは…
玲音「やっぱりどんな不測の事態にも対応できてこそだよね」
まるで何もありませんでしたと言ってるような、当然のように立つ玲音の姿だった…。
玲音が俺の顔目掛けて蹴りを放つ…。俺は腕でガードをしたが…神気量の差によって俺は結夢たちがいるところまで吹き飛ばされた…。
真「く…」
結夢「真くん…」
真「ごめん…油断…を…」
俺は結夢たちの光景に目を疑った…いや、司教のお姉さんに起きている異変に俺は目を疑った…。それは…さっき受けた斬撃は黒いモヤが掛かっていて…その傷口の一部に緑色の宝石があったからだ…。
真「…!!今すぐこれを外して!」
結夢「でも…」
真「いいから早く…!!」
そんな会話をしている最中にも玲音は近づいている…結夢は少し強引だが…宝石を外してくれた。
司教「く…ごめんなさい…」
真「いえ…ですがこの緑色の宝石は厄介なんです…気をつけてください…」
司教「ええ…」
俺は朱雀の力で呼吸をして再生を行おうとしたが…
真「あれ…なんで…」
再生が…できない…!?
玲音「ぜーんぶ私の思い通りだね」
真「なにを…した?」
玲音「これだよ」
そういい玲音が取り出したのは…水色、紫色に輝く宝石だった…。
真「ほう…せき…」
玲音「君が後ろの3人の異変に気付けなかったのは水色の効果。周辺の音を遮る効果。だから君は後ろの子たちがどんなに叫んでても聞こえなかった。そして再生ができないのは紫の方。治癒や再生を阻害する効果。正確にはそれらの発動を遅らせる効果。普段の再生力の1000分の1にした。だからもう再生はあきらめなよ」
初見殺しもいいところだ…。そんな効果を付与されていては…朱雀の強みを出すこともできないじゃないか…!
玲音「その傷じゃあもう何もできないね。再生もない。君にできることは…」
結夢「まだ…私がいる!真くんに手を出すなら…」
真「結夢…」
無理だ…今の結夢の神気量じゃ…
玲音「わからない?この差。それにここで一番戦えるあの子でさえ勝てなかったんだから諦めなよ」
結夢「それでも私は…!」
烈道「一人じゃねえぞ?」
烈道…!烈道は治癒能力を持ってた…のか?さっきのような血まみれではない…。烈道が俺と玲音の間に立ちふさがる。
烈道「お前をぶっ殺す。真がだめでも俺ならいけるかもしれねえだろ?」
玲音「は、さっきやって負けたのがわかってないの?本物の馬鹿じゃん」
烈道「ああ、俺は馬鹿だ。だがそれでも戦ってくれる奴がいるんだ。そんなやつがやべえ時に寝てられっかよ」
真「烈道…」
神気量の差は歴然だが…それでもこの2人なら…
烈道「ふしゅう…」
烈道が息を吐いたその瞬間…
真「なんだ…あれ…」
烈道の頭から…角らしき何かが…見えた…。
玲音「は?なに…それ…」
烈道「あ?何言ってやがる?」
玲音「それ…角…さっきまでなかったのに…」
烈道「角?知らねえな。だがなんか不思議とやる気が出てきたわ!!」
そう言い烈道が取り出したのは…棍棒…?それに右の腰にかけているのは…『酒』と書かれた瓶か?烈道はこの状況で…何かしらの覚醒が起きたということか?
玲音「そんなものになったからってどうにかなるわけじゃ…」
烈道「やってみなきゃわからねえだろ?」
その瞬間…烈道は玲音に向かって飛び出した。振り下ろす棍棒は玲音が持つハンマーとぶつかった。
玲音「なんて…パワー…」
烈道「まだいけるぜ?」
ハンマーで耐えている玲音はどんどん押されている。
玲音「く…」
烈道「吹き飛べ…やあ!!『酒天・覇轟』!!!」
まさに力技…だがそれが功を奏し、玲音を吹き飛ばすことに成功した。
だが吹き飛ばしたのと同時…銀色の液体が烈道の体に触れる…。
その瞬間…
烈道「ぐ…!!」
棍棒は溶け…烈道の体から焼けたようなにおいがした…。
烈道「んだこれ…」
玲音「『水銀溶鉄』」
銀色の液体…棍棒が溶けている…まさかあれは…。
真「すい…ぎん…?」
玲音「ご明察。これで棍棒はもう使えないね」
玲音の体の至る所から水銀が流れている…。水銀だと…明らかに鉄でできている烈道の棍棒は意味を為さない…。それに烈道の手から焼けるようなにおいもしたし…おそらくあれは鉄も溶かす、強力な酸も含んでいるぞ…。
玲音「さてと、桜もこれなら溶かせる。あの子の尾なら耐えれるだろうけど、君らじゃ何もできないね。終わらせよう。『蒼銀・溶鉄』!!」
玲音から大量の水銀が烈道と結夢に押し寄せる…俺が…俺が守る…!!
俺は今までにないほどの空気を吸った。肺がはちきれてもいい。限界を超えるほどの大量の空気を…!!
俺はもう死んでもいい覚悟で息を吸った。息を吸い、瞬きをした。
だがその瞬間…
俺の視界は…赤い世界を映していた。
「よくぞこの領域までたどり着いた」
大きな剣を持ち、そう言う男が目の前にいた。なにが…なにが起きた…!?




