第69話 総力戦開戦
俺と結夢は女性の司教と戦闘をすることになった…。
真「なんでこんなことをするんですか?」
司教「知らないわ。私もやれって言われてやってるだけ。あなたたちくらいの年齢の子どもがいるんですもの。できることならやりたくはないわ」
真「ならなんで…」
司教「ごちゃごちゃうるさいわ!『フールフール』様!お力を!!」
今悪魔の名前を言ったな。「フールフール」様って。つまりこの女性は界魔将団の司教と思っていいんだろう。どんな能力があるかを俺は知らない。それに悪魔の能力は常識が通用しない可能性すらある。
どんな攻撃が来てもいいように俺は尾を取り出し、「不壊の誓い」を付与した尾をもとの場所にしまう。こうすることで攻撃に対して大きく出れる。そして効果を付与してない尾を手に取る。だが俺は攻めない。あっちからの攻撃を迎撃する。
司教「来ないの?」
真「そっちこそ。こんな少年相手にビビっているわけではないですよね?」
司教「ふふ、言うわね。そんなに攻めてほしいのなら行ってあげるわよ!『電伝雷』!」
空間に雷のように枝分かれをしている電気が見えた。つまり…来る!!
真「ここ!」
彼女の脚が俺の顔に向かってきていた。俺はその脚に尾をぶつけた。脚に反応して止めることが出来た。反応できなくても恐らく問題はなかったが、できることならあまり使いたくはない。対策をされかねないからだ。
司教「やるじゃない」
そのまま彼女と競り合いになった。俺は尾で、彼女は脚で。
司教「やるじゃない!大体の子どもはこれで終わるのだけれど!」
真「鍛錬をやってるんでね!これで終わってたら師匠に面目が立たない!」
司教「『嵐電脚』」
彼女が大振りで構える。これは足技だ。
真{朱雀!雷の尾で守ってくれ!}
朱雀{承知!}
彼女の大振りの足技に対抗するように俺も雷の尾を取り出し、それを彼女の脚に向けた。
彼女の脚と俺の尾がぶつかる。
「バチバチバチ!!」
雷が広範囲に広がる。だが雷は俺には効かないということを証明することが出来た。もちろん専門外ではあるが、今程度の攻撃なら俺は凌ぐことが出来る。
司教「あなた…雷系の能力者?」
真「教えるわけがないでしょうて」
司教「まあそうね。なら今度はこれよ!『嵐玉』!」
嵐を凝縮したかのようなボールを俺に向かって投げてきた。こういうのは直感で動くが吉!
真「『焼弓光光』」
俺は弓を取り出し、矢を玉に向かってぶつけた。すると…
嵐が巻き起こったかのような突風と熱波が同時に周りを襲う。俺は後ろにいる結夢を守るため尾に熱波を守る効果を付与し、それを結夢に渡した。俺自身は朱雀を能力として持っているため熱波は効かない。
だが女性はとても苦しそうな顔をしていた。
司教「あなた…何者?こんなにも熱いの…感じたことないわよ…」
真「これくらいなら自由自在に放てますよ。それに数も増やすことが出来る」
司教「それを何度もやられると厄介ね。ならそれ、打てなくしてあげる」
真「ほう?と言いますと?」
司教「『虚言』」
彼女がそう言ったその瞬間…
結夢「真くん!好き!好き!」
結夢がそう言いながら俺のことを抱きしめてきたのだ…。
真「結夢?どうした?」
結夢「今まで隠してたけど…私!真くんのことが好きなの!」
突然の告白…普段から怪しい言動は多くある。だが結夢が戦闘中にこんなことを言う人間ではないことはわかっている。なるほど…「虚言」を能力の対象に言わせる効果か。本人が言わなさそうな言葉を能力を使って言わせる。不和を引き起こすにはうってつけの効果だな。だが…相手が悪い。
俺は後ろから抱き着く結夢の頭を撫でる。
真「なら結夢、そんなに好きなら俺の役に立つ覚悟はあるか?」
今日の昼休み、俺に頭を撫でてと言う彼女がこれを断るとは思えない。
結夢「もちろん!」
やっぱりな。素直なこの子が断るなんてありえない。やっぱり結夢を信じてよかった。
真「なら…あの人に勝つぞ!結夢!」
結夢「うん!私も頑張る!」
司教の悪魔の能力なんだろうが…俺たちにはそんなもの意味を為さない。逆に利用してやるよ。
司教「嘘でしょ?恋心を抱く人間を前にしたら常人は行動に制限がかかるはずじゃ…」
真「俺と結夢の関係を舐めないでほしいですね」
結夢「もうなにも怖くないもんね~」
結夢が後ろにいるから動きにくいが…桜を出して彼女の動きを止めてくれたりしてくれれば御の字だ。
司教「ふ、そう。ならその状態で戦ってみれば?さぞ戦いにくいことでしょうね!!」
彼女が再びさっきの玉を出してきた。さっきと同じようにやってもいいが…状況も違うからな、やり方を変えよう。
俺は尾を取り出し、熱を帯びる効果を付与し尾を丸めた。そしてそれを玉に向かって放った。
玉同士がぶつかると再び熱波が周りを襲う。結夢に関しては心配いらない。俺のそばにいるんだ。朱雀の効果で意味を為していない。そして司教は再び苦悶の表情を浮かべている。それを確認した俺は突っ込んだ。
真「結夢、桜を出せるか?」
結夢「出せるけど…それだと真くんも…」
真「問題ない。なんとかできる」
結夢「わかった!『満開・サクラサケ』!」
結夢が桜を大量に出す。それを確認した俺は尾に効果を付与できるかを朱雀に確認した。
真{朱雀、この桜を判別して桜だけ焼く効果って付与できる?}
朱雀{そんなのせんでええ。『不壊の誓い』はその身にかかる効果を無効化する効果もある。そしてそうそう壊れぬ防御を誇るのじゃ。わらわ至高の防御じゃよ}
めっちゃ強いじゃないか!さすがは神話能力!
結夢が放つ桜の中を走る。司教は桜をなんとかするので手一杯だ。風を吹かせているがこの状況で桜に当たらないなんて至難の業だ。案の定彼女は桜に触れてしまう。
真「触りましたね?結夢の桜に」
司教「…!!なんでお前は動ける!」
真「才能ですよ」
俺は彼女に向かって尾を突き付ける。
真「降参するというのなら命は奪いません。そして今後界魔将団としての活動を自粛し、民間の人々に迷惑をかけないと約束するのなら見逃しますが…」
司教「…なんで?なんで私に優しくするの?」
真「人殺しなんてメリットは何もない。人を殺せばその人の周りの人が怨嗟を募らせ、報復になる。そしてそれは繰り返す。必要のない殺し合いが。だから俺は人を殺しはしないし、更生の余地があるのなら見逃します」
司教「…ふふ、あなたみたいな若い子がそんなことを言うなんてね」
真「どうしますか?」
司教「…わかったわ。あなたのその人間性に免じてね」
真「それはよかった。ですが約束は守ってくださいね」
司教「もちろんよ。子どもに言われたことは守らないとね」
この人もやりたくてやってないと言っていた。なら…少しは界魔将団のことを聞けるかもしれない。
真「お姉さん、聞きたいことがあるんですがいいですか?」
司教「なに?」
真「なんでこんな組織にいるんです?」
司教「組織がね、子どもたち関連のお金を出してくれることを提示してくれたの」
結夢「界魔将団が…お金を?」
司教「ええ。私は生活資金もままならないまま子どもを産んでしまった。そして夫は能力者との戦闘で死亡。絶望に明け暮れていた時にこの組織が子どもも一緒に面倒を見てくれると言ってくれた。お金はすべて組織からもらってる。私だけじゃないわ。ほかの司教や司教の部下なんかにも優しくしてくれている。世間が言うような悪い集団ではないの」
この人は界魔将団からお金を補助してもらっている…ということか。組織側がソロモン72柱の悪魔の能力を持ってることを買い、補助することを条件にこの人を組織に雇う…この可能性もあり得なくはないのか。
司教「だけど…この組織はいけない。私のような下位の人間は更生の余地があると思っているけど…中位、上位の人間が暴走しているの。団長はいい人。これは間違いない。でもその人たちのせいで組織の評価を下げてしまっているの」
界魔将団の下位の人間はまだ更生の余地がある。こんな人もいるんだ。だが出世のために殺人を犯し、そんな人間がこの組織の評価を下げる…。いい人もいるがそれ以上に悪人の行動が悪目立ちしているということか…。なんとも、複雑な組織だな。
司教「この騒動を起こしてしまったこと、あなたたちを巻き込んでしまったことはごめんなさい。組織から言われた通りに動いただけ。私はあなたたちを殺すつもりなんて毛頭なかった」
真「なら大丈夫そうですね」
結夢「うん。お姉さんは戻っていいんじゃない?」
司教「そうね。でも一つだけ言っておくことがあるの」
真「なんです?」
司教「今回の騒動では上位層、中位層が多く来ている。そしてこの学校は数多くの能力者がいることも組織側は知っている。だから…絶対に界魔将団の司教と王医学校の能力者の『総力戦』になる…。多数の死者が出てもおかしくはないの。その中に…あなたたちが入らないことを祈っているわ」
界魔将団と王医学校の能力者の総力戦…か。死者が多く出ても不思議ではない。こんな組織と相対するわけなんだからな。そんなことはわかっている。
真「ご忠告ありがとうございます。でも僕らは大丈夫ですよ。なんせお姉さんに勝ったんですから」
司教「…ふふ、そうね。なら健闘を…祈らない方がいいかもしれないけど、祈っておくわ」
真「はい、ありがとうございます」
結夢「お姉さんも元気でね」
司教「ええ。2人共…」
「ザシュ…」
司教「ゴホ…」
突然…司教のお姉さんの体を袈裟に切る斬撃が放たれた…。方向は…あっちからか…!俺は斬撃が来た方向に視線を合わせる。そこには…俺たちと変わらないくらいの年齢の女子がいた…。
「なんでそんなにその人たちと仲良くしてるの?」
その顔に見覚えがある…身体検査で9組くらいにいた黒いモヤのようなものを出していた子だ。
真「君は…」
玲音「ちゃんと話すのはじめてだね。私は夜影玲音。それで?君は?」
真「赫星真だ。なんでお姉さんを斬った?」
玲音「組織のことを君に話してるんだもん。組織への恩はないの?」
司教「…」
玲音「ねえ、黙ってないでなんか言ったらどう?」
司教「…」
真「残念ながら君と話す気はないらしいよ」
玲音「あっそ。なら死んで」
直後…
黒い斬撃が俺たち目掛けて飛んできているのがわかった。俺はそれに反応して尾を取り出し、壊れない効果を付与した。そして斬撃を受け止める。
「ガキン!!」
金属音が辺りに響きわたる。
玲音「へ~。止めるんだ。これ結構威力強いのにな。あ、そうそう、この人。君らに渡しておくね」
そういい彼女が投げたのは…見覚えのある男子生徒の姿だった…。それは…
真「烈道!!」
血に塗れた烈道の姿だった…。俺は烈道の腕を肩に回し、彼女から離れた。結夢はすでにお姉さんと一緒に離れてくれている。
真「なんで烈道をこんなにした?なにかをしたのか?」
玲音「別に?上位の人たちが動き始めたから私も動いちゃおうかなって。それで一番近くにいるやつがそいつだったってだけ」
真「つまり流行に乗ったようなもの…ということか?」
玲音「そ。なに?文句でもある?」
はじめてだ。ここまで憤りを感じる人間と出会ったのは。なんというか…怒りすぎて逆に冷静になってきたぜ。
真「ない。そして君に思うものもない」
玲音「へえ。それで?どうするの?」
真「君と戦う。それが俺ができることだ」
玲音「へえ。私に勝つつもりか。全く…」
「自惚れるなよ?小僧」
その声はさっきの彼女の声ではない、重低音のような声だった。その声は俺の内部に響いた。
真「誰だ?お前」
本能なのだろうか。目の前にいる玲音ではない、重低音を発した声の主に向かって声を出したんだろう。
玲音「は?私は私。頭やばいんじゃないの?」
真「そうか。まあいい。始めようか?」
玲音「ふん。後悔させてあげる」
俺は全力で神気を解放した。2000億を一気に。そして玲音に向かって進んだ。これが戦闘ではよくないのは分かってる。だが烈道がやられたことがどうしても許せなかった。
玲音「うそ!?2000億!?」
俺は彼女の顔に向かって拳を握り、そして殴った。
玲音「普通…女の子に手は挙げないでしょ!!『狂響音波』!!」
彼女の手からとてつもない音量が発した…。
真「く…うるせえなあ!!!」
俺は反射的に動いた。俺は彼女の腹に向かって蹴りを入れた。想定外だったのか、彼女は予想以上に吹き飛んだ。
真「ふう…」
あの音を聞いたからだろうか…とてもイライラする…。いや落ち着け俺。こういう時に冷静でないでどうする。深呼吸だ。
真「すー…ふう…」
少しは落ち着いた気がする。俺はその場から動かず彼女の行動を見た。すると彼女は起き上がる。
玲音「お腹蹴るとか…デリカシーをどこに置いてきたの?」
真「お母さんのお腹の中かも」
玲音「え~。なにそれ」
真「さあね。それにしても俺の蹴りでそんなに飛ぶか?栄養あるもの食べてるか?」
玲音「ちゃ~んとご飯に味噌汁、おかずもちゃんとしてるしサラダも食べてるよ~だ」
真「そうか。それにしては軽すぎるが…」
玲音「まあいいよ。前の検査の時に比べて神気量が増えたね。私も手段を選んではいられないね」
彼女がそう言ったと同時、彼女は大きく息を吐いた。
玲音「『ビフロンス』様、力を貸してください」
それと同時…
「ドン!!」
圧倒的な量の神気が辺り一帯を包みこんだ…。それにしてもこれはなんだ…今までに感じたことのないほどの邪悪極まりない神気は…。
真「それが…奥の手ってわけ?」
玲音「そ。今の君では勝てないよ。神気は8兆。それに対して君は2000億。さっきまでの私ならどうにもできなかったけど『ビフロンス』様の力を使えばあら不思議。こうも神気量で逆転できちゃう」
8兆…日菜子さん以上に多い神気量…勝てるか…?
いや、勝つしかない。結夢や烈道、司教のお姉さんだっているんだ。ここで俺が負けたらみんなはどうなる?最悪みんな殺されるかもしれない。こいつならやりかねない。それに俺は…手加減をしているとはいえ嵐紗さんに認められたんだ。100兆を出したと言っていた、虹帝達の一人に選ばれるほどの実力を持つ嵐紗さんに。
俺は負けるわけにはいかない。みんなの命がかかってるんだ。
真「…ふふ」
玲音「どしたの~?神気量がおかしくて笑うしかないよね~わかるよ。私もそんな時期も…」
真「うるさいな。口を閉じることを学んでこなかったのか?」
玲音「…は?」
真「神気量が多くても使えなきゃ意味ねえだろ?もやし」
玲音「もやし?」
真「お前のことだよ。俺の蹴りなんかで吹っ飛ぶような軽いやつが俺とやりあえるのか?」
玲音「へ、へえ。この差がわかってないんだ?神気量の差が!!」
真「俺は100兆の相手に勝ったこともあるんだ。それに比べたらお前は雑魚だ」
玲音「言ってろよ!お前はこの差をどうにかできるわけじゃないんだから!!」
真「命を懸けて戦う。その使命を果たすために俺は…戦う!!」
綺麗事を言っているのはわかってる。それでも俺は戦って勝たなきゃいけない。それが俺のすべきことだから。




