第66話 嵐紗との日常
「ジュウ…」
いい匂いだ。俺の鼻は焼き肉の匂いと音を聞きとった。その匂いにつられ俺は目を覚ました。
真「いい匂い…」
嵐紗「あ、起きたね。真くん。今日はハンバーグだよ~」
真「お~!おいしそう!」
嵐紗「じゃあ先に座っててね~」
真「はーい!」
俺は椅子に座った。すでに味噌汁とご飯、お茶も注がれていた。
嵐紗さんが皿にハンバーグを乗せた。
真「おいしそ~」
嵐紗「じゃあ食べよっか」
真・嵐紗「いただきます」
とても柔らかい。めっちゃ肉って感じがする。おいしい。
真「ん~美味しい!」
嵐紗「よかった~。今日の鍛錬での疲れもこれでとれるかな?」
それは知りません。肉で疲れ取れるって聞いたことないけどな。
というか鍛錬中に気になることがいくつかある。聞いてみるか。
真「今日の鍛錬で嵐紗さん神話能力の…る、『ルー』?を使ったじゃないですか。あとは音とその神様。あともう一つってなんですか?」
嵐紗「もう一個は『ガリレオ・ガリレイ』っていう偉人だね。偉人能力も私はあるよ」
ガリレオ・ガリレイって…結構有名な学者だ。俺でも聞いたことがある。
真「使ってるんですか?その偉人」
嵐紗「いやゴリゴリ使ってたよ。真くんはさっきあの空間をどう思った?」
真「めっちゃ宇宙だなって」
嵐紗「でしょ?その宇宙空間を作り出したのは紛れもない『ガリレオ』の力だよ」
ガリレオって宇宙…いや、天文学で何かしたんだっけ?そこは知識が浅いからわからないな…。
嵐紗「ガリレオは木星の衛星や天の川の発見をした人。ガリレオとも仲いいからね。めっちゃ教えてもらって、あの空間を作り出せるようになったんだ」
真「ほえ~」
嵐紗「まああれは滅多に使わないかな。格上には普通に使うけどね」
真「そうなんですね。あ、あともう一個いいですか?」
嵐紗「なに?」
真「あの空間にいて、途中で体が熱くなったんです。自分の能力とかではなくて、です」
嵐紗「…えっとね、私がやった空間を作るやつってね、私たちができる奥義に近いんだ」
真「奥義?」
嵐紗「そ。名を『覇天の我界』っていうの。自分の能力を最大限まで活かして、神気を大量に使うとできる、自分の世界を展開するの。『こころの世界』とは別物だよ」
「覇天の我界」…「こころの世界」とはどう違うんだろうか。
真「その違いってなんでしょう?」
嵐紗「『こころの世界』はいわば私たちの精神世界。そしてそこには偉人能力や神話能力に該当する者が私たちと一緒にいるの。まあその子たちと私たちの空間と思って」
真「はい」
嵐紗「『覇天の我界』は本当に私だけの空間。それは自分が持つ能力全部が組み合わさった世界。私なら音と『ガリレオ』と『ルー』全部を合わせて使う私だけの空間。わかるかな?」
真「まあ…だい…たい?」
嵐紗「まあわからなかったら言ってね。えっと…それでなんだっけ」
忘れちゃったよ。まあしょうがないか。
真「あの世界に入ってから体が熱いっていうか。今は少し収まってるんですけど…」
嵐紗「それだ。あの世界はね、私が展開した世界じゃん?」
真「はい」
嵐紗「私と3人とでは結構差があるじゃん?」
真「そうですね。神気量なら圧倒的に負けてます」
嵐紗「そうだね。んで、世界を展開するうえで…何て言うんだろ、少しでも平等にするために神気による影響を受けるんだよね。その世界で一時的にだけどね」
そんなのがあるのか。まあ差がありすぎるってのが大きいし、多少はあってもいいんじゃないか?
嵐紗「んで、多分真くんはあの空間にある神気の影響を受けてる。それも結構な量を」
真「そうなんですか?」
嵐紗「うん。真くんは自覚ないだろうけど、今の君の神気量は昨日と、なんなら鍛錬前とは比べないものになってる」
真「そ、そうなんですか?」
嵐紗「さっき私を追い詰めた時の神気量は…300億あった」
真「え?」
嵐紗「しかもそれが今も続いてる。私が展開した世界の神気を真くんは完全に我が物にした。こうとしか考えられないね」
真「…」
嵐紗「一個質問だけど、潜在神気量はいくつ?」
真「…1000万です」
嵐紗「納得。潜在神気量がそこまで多いなら可能だわ」
真「え?」
嵐紗「潜在神気量が多いと神気関係の環境に適応しやすい。そしてそれを自分のものにできる。碧もそうだったからね。間違いないよ」
碧帝もそうなのか…。経験談だろうし、なにより虹帝達である嵐紗さんが言うんだ。間違いないんだろう。
真「嵐紗さんと碧さんが戦うって…どんな状況ですか…」
嵐紗「これは虹帝達内の序列を決めるためにやったんだ。戦闘面で強いのはだれかってのをね。そこで碧と私がやったときに世界を展開したの。決着前と後では神気量が違った。そしてそれは碧も気づいていなかったし、可能性があるとすればそれだね」
真「そんなに差があったんですか?虹帝達に入る時点で凄いと思うんですけど…」
嵐紗「碧は神気量はそこまでなんだ。けど潜在神気量が多い。っていっても真くんほどじゃない。だから彼女は神気の精度を高めて実質的に私たちと同じくらいの量を扱えるようになったって感じ。神気をおなじ量にして戦えってなったら彼女が一番だね。間違いない」
神気の精度で他の虹帝達と対等になる…か。努力なんて言葉で片付けていいものじゃないんだろうな、きっと。
嵐紗「世界を展開したことで彼女も世界の神気に適応した。おかげで彼女は私に少し少ないくらいの量になった。精度も相まって負けてるのは私だね。戦闘技術もすごいし、あの子に勝つならそれなりに頑張らないとね」
嵐紗さんにそこまで言わせるのか…すごいな。やっぱり虹帝達にはすごい人しかいないんだな。
嵐紗「碧も同じ現象が起きているし、真くんがどこまで適応できるかわからないけど、あの世界で私と実戦訓練をしたら神気も増えるのが速くなるんじゃない?」
真「そういう神気の増やし方も?」
嵐紗「例外すぎるけどね。でも成り立ってるしな~。ありだね」
真「あの空間で実戦練習も?」
嵐紗「まああり。世界の効果は私が消せる。でも絶対にランニングはしてほしいから、ランニング終わった後しか開かないからね。一番効果はあるけど、楽してほしいわけじゃないからね。速く強くなれる分、実戦練習もするよ。戦闘経験も積んでほしいからね」
真「それはもちろんです」
嵐紗「なら明日から訓練所まで走って、その後に実践訓練をしようか」
真「はい!」
明日からの鍛錬の内容も決まった。強くなるために…頑張るぞ!
夕飯であるハンバーグを食べ終えた。
真・嵐紗「ごちそうさまでした」
嵐紗「お風呂入っておいで」
真「はい」
俺は服を脱いでお風呂に入った。浴槽に浸かってる間朱雀と話していた。
朱雀「お主、神気が増えたのう」
真「嵐紗さんが我が物にしたって言ってたけど、あれってどうなんだ?]
朱雀「どうとは?」
真「あの神気の増やし方」
朱雀「ありじゃの。あれならスサノオの開放にも近づくことじゃろう」
真「スサノオは神気を一定量まで増やせって言ってた。どれくらいいるんだろ?」
朱雀「それはわからん。じゃがその鍛練をこなせば確実に開放には近づく。嵐紗はもちろん強い。実践稽古ならこれ以上にいい相手はおらんぞ」
それはそうだろう。彼女は虹帝達に属しているんだからな。
朱雀「最も警戒すべきはやはり『ルー』じゃのう。わらわ最硬の防御である『不壊の誓い』を貫通してきよった。嵐紗との神気量の差もあるじゃろうがな」
真「神気量の差ならしょうがないか」
朱雀「じゃな。それにお主が神気を増やせれば防御力も上がる。いずれは耐えることも可能じゃろう」
真「頑張る。それに早くスサノオにも会いたい。神気を増やせるように頑張るよ」
朱雀「その意気じゃ」
朱雀とそんな会話をして、頭や体を洗った俺は風呂を出た。リビングで待っている嵐紗さんにお風呂を出たことを伝え、翠花姉の部屋に戻った。
真「翠花姉がいない部屋は…部屋の主がいないとやっぱり寂しいな」
翠花姉がいないことにも少しは慣れたが…やっぱり寂しい。いや、翠花姉も頑張っているんだ。俺も頑張らなきゃな。
真「宿題だけやるか」
俺は翠花姉の椅子に座り、宿題に取り組んだ。そこまで宿題は難しくなかった。
宿題を終わらせた俺は翠花姉の机にある本棚の中にあった気になる内容の本を見つけた。
真「神話図鑑…」
どんな本なんだろう。俺が知っている神話の内容なのだろうか。それとも神についてをまとめた本なのか。俺は本を取りだし、目次を見た。
真「ゼウス、ヘラ、ポセイドン、アポロン、アルテミス、アテナ、ヘルメス、アレス、ヘパイストス、ディオニュソス、アフロディーテ、デメテル…これは…『オリュンポス12柱』の神か。ハデスにペルセポネ、クロノス、ガイア…この本は『ギリシャ神話』の神々の紹介っぽいな」
ギリシャ神話か。よくわかってはいないが、神話に関しては興味がある。俺はその本を読んだ。
本を一周読み終えた。俺の知らない内容も含めびっしりと書かれていた。そしてわかったことは…
前の世界とほぼ内容が一緒ということだ。
アポロンとアルテミスが双子なこと、ゼウスが天空神であること、ゼウス、ポセイドン、ハデスが3兄弟であることなども共通していた。
真「翠花姉はこんなのも読むのか。意外かも」
翠花姉がこれをどう読んでいるのかは知らない。戦闘で神話能力を持つ相手と戦うときかもしれないし、ただ単に趣味である可能性もある。
この本も十分に分厚く、本を読み終えることにはすでに10時を回っていた。すると部屋の扉が開いた。
嵐紗「おーい真くん。10時を回ったし寝よっか」
嵐紗さんだった。まあそりゃそうか。小1が10時まで起きてること自体よくないもんな。
真「あ、はーい」
俺は部屋を出て歯磨きをし、翠花姉の部屋のベッドで寝ようとしたのだが…
真「嵐紗さんは寝ないの?」
嵐紗さんが俺をベッドに入れると彼女も入ると思っていたが入らなかったんだ。
嵐紗「うん。ちょっとやることがあってさ。今日は寝れないかも。ごめんね」
真「…」
俺は頬を膨らませた。一緒に寝てくれるのに今日だけはってのがな。その顔を見た嵐紗さんが俺に近づく。
嵐紗「しょうがないなぁ。真くんが寝るまで一緒にいてあげるよ」
真「本当ですか!?やった!」
嵐紗「はいはい、いい子は寝ようね~」
嵐紗さんもベッドに入ってきてくれた。やったね。
そこから俺は結構早く寝た。意識が速攻でなくなった。それを確認した嵐紗さんがベッドを出る。
嵐紗「…」
嵐紗が窓の外を見つめ、そして…口を開く。
嵐紗「やろうか?界魔将団」
「真よ~起きよ~朝じゃぞ~」
俺はその声に起きた。カーテンの隙間から差し込む朝日が俺の顔を照らす。
真「朝か」
朱雀「今日は寝覚めがいいのう。なにかいいことでもあったか?」
真「いや?とくにはないと思うけど…」
朱雀「そうか」
真「うん。んじゃリビングに向かうか」
朱雀「うむ」
俺はリビングに向かった。リビングはすでに明かりがついていた。俺はドアを開けた。
嵐紗「あ、おはよ~真くん。よく寝れた?」
嵐紗さんだ。やっぱり起きてるよな。朝ごはんの準備をしてくれている。
真「はい。ばっちりです」
嵐紗「それはよかった。朝ごはんすぐできるから待っててね」
真「はい」
俺は椅子に座り、嵐紗さんが作る朝ごはんを待った。
嵐紗さんがお皿にパンを乗せてくれ、一緒にヨーグルトも置いてくれた。
真・嵐紗「いただきます」
俺と嵐紗さんは朝ごはんを食べた。やっぱり美味しいな。この味。
嵐紗さんが作る美味しい朝ごはんを食べ終え、俺は学校に行く準備を整えた。だが…不可解なことがあった。
嵐紗さんも準備をしているんだ。嵐紗さんも何か予定があるのかな?まあ俺は気にしないことにした。
準備を残りは着替えるだけだ。その時…
「ピンポーン」
玄関のチャイムが鳴ったのだ。おそらく結夢と日菜子さんだろう。確証はないけど昨日も来てくれたしな。少し自信がある。
俺は玄関に向かい、ドアを開けた。そこには…
結夢「おはよ、真くん」
日菜子「やあ」
やっぱり2人だった。
真「少しだけ待ってて!後は着替えるだけだから!」
結夢「大丈夫!」
日菜子「落ちついて準備しな~」
俺は服を着替え、リュックを持って玄関に向かった。その時…
嵐紗「真くん少し待って」
嵐紗さんが話しかけてきたんだ。
真「え?」
嵐紗「今日一緒に行ってもいい?」
真「はい!もちろんです!」
嵐紗「よかった。すぐに終わらせるから」
嵐紗さんが準備を再開している。俺は玄関で待つ2人に嵐紗さんも一緒に行くことを伝えた。2人共驚いていたが快く了承してくれた。
準備を終えた嵐紗さんがリビングから出てきた。
嵐紗「ごめんごめん~。やっぱり女の子は準備に時間かかるよね~」
日菜子「わかります!」
嵐紗「ふふ、んじゃ行こっか」
俺たちは玄関のドアを開け嵐紗さん、結夢、日菜子さんと一緒に登校をした。
日菜子「なんか緊張しますね…」
嵐紗「ん?どうして?」
日菜子「黄帝様と一緒に登校なんて…」
嵐紗「あはは。まあそうだろうね。私もそっちの立場だと緊張すると思うもん」
真「それにしても…なんで今日は一緒に登校を?」
嵐紗「ん~最近私真くんと一緒にいるから登校というものを忘れつつあったからさ。まあリハビリみたいに思って?」
リハビリ…夏休みとかでもそれいるんじゃないか?まあ知らんけども。
そんな会話をしていると学校に着いた。
嵐紗「へ~こんな校門なんだ。仁君が校長してて…なるほど、王医学校か。いいじゃんいいじゃん」
真「あれ、来たことないでしたっけ?」
嵐紗「聞いたことはあるけど来たことはないね。それに…」
「え?嵐紗?」
嵐紗さんを…呼び捨てした?恐れ多くてできる自信がない…嵐紗さんがその声の主の方を向く。
嵐紗「お、碧じゃん!おひさ~」
碧「なんでここにいるの?あんた学校は?」
碧帝…水神碧さんだった。そういえばこの人も王医学校の生徒だったな。前にも会った。
嵐紗「さぼってる」
碧「えー…許してるの?学校側は」
嵐紗「多分?優人が何も言ってこないし大丈夫っしょ」
碧「多分カンカンだよそれ。まあ私には関係ないけどさ。んで?なんでここに来たの?」
嵐紗「それはね~…あ、3人共教室に向かってていいよ。ここで碧と話してるからさ」
真「は、はい」
俺たちは各自教室に向かった。校門では嵐紗さんと碧さんが話している。
嵐紗「界魔将団が私が今いる翠花ちゃんの屋敷を狙ってきた。狙いはわからないけど、私か真くんだと思う」
碧「その司教の番号は?あと悪魔の名前も」
嵐紗「37番。輪電くんに連絡とったんだけど、『フェネクス』っていう悪魔らしいよ」
碧「そいつをどうしたの?」
嵐紗「輪電くんが情報を吐かせて、聞けること全部聞いたうえで仁君に解剖をさせてるらしいよ。多分今日か明日にも私らに回ると思う」
碧「なるほどね。にしても界魔将団がこうも動くとはね。前にも虹帝会議で動きがあると言ってたし、この大陸が狙われてるのかな?」
嵐紗「わかんない。でも戦闘になれば戦うだけ。ヒーディキュアが今一番界魔将団がいると睨んでる。ヒーディキュアと界魔将団が総力戦になれば…やばいかもね」
碧「この国は界魔将団から見てもメリットがあると思うよ。仁さんは患者なら善悪関係なく治してるからね。総力戦となっても界魔将団の大物は出てこないと思う」
嵐紗「だといいね。大司教とかが来ると…やばいことになるもんね…」
碧「虹帝達でも勝てる人は…輪電さんと光さん、海治さんくらいだよね」
嵐紗「うん。私らでも大司教相手には戦うなって言われてる。まあ大丈夫でしょ」
碧「そう考えるのが自然かな。さてと、そろそろ時間だから行くね」
嵐紗「うん。頑張ってね」
碧「うん。そっちもね」
碧は校門を進み、嵐紗は翠花の屋敷に戻る。そして真たちの教室ではHRが開かれるのであった。




