第64話 久しぶりの学校
朱雀「くあー!くあゴホゴホ」
聞き慣れた声がむせた声で俺は起きた。
真「あ…寝ちゃってたのか」
朱雀「うむ。そして真よ。学校じゃからな。準備せえよ」
真「あ、うん」
俺は部屋を出てリビングに向かった。すでに電気がついていた。俺はドアを開けた。
嵐紗「真くんおはよ~」
嵐紗さんがすでに起きていて、朝ごはんを作っていた。トースターのタイマーが動いている音が聞こえる。
真「おはようございます」
嵐紗「久々の学校だよね。授業置いてかれちゃだめだぞ~」
真「わかってますよ。頑張ります」
嵐紗「その意気だ。そろそろご飯できるからちょっと待ってね~」
「チン!!」
大きな音と共にパンが飛びあがった。…ってかこれこの屋敷のトースターじゃない…?いつも蓮乃さんは開いていたから…もしかして…
真「嵐紗さん、このトースターってもしかして持参だったりします…?」
嵐紗「そうだね。やっぱり食べ慣れた焦げ具合がいいんだよね。真くんがどれくらい焦げてるのがいいかわからないけど…まあいいよね」
真「はい。大丈夫です。僕は焼かない派なので」
嵐紗「ふぁ!?」
ん?ふぁ?って言った?この人。こんなこと言うんだ。意外かも。けど焼かないのは事実なんだよな…。
真「た、多分もう1枚あったような…」
嵐紗「どどど、どうしよう…真くんの分がないよぉ…」
めっちゃ困らせちゃった…。頭抱えてるし…
真「だ、大丈夫ですよ、僕どっちもいけるので!」
嵐紗「ほ、ほんとぉ?よかった~」
真「焼いてくれたパンをいただいてもいいですか?」
嵐紗「うん。いいよ~」
よかった。持ち直してくれたようで。にしても嵐紗さんにもこんな面があるとは…
そこから俺と嵐紗さんは朝ごはんを食べた。ちなみに翠花姉と蓮乃さんがいるときはいつも焼かれている。理由は単純で蓮乃さんが食えと言ってくるから。ご飯に関しては食べさせてもらってるしなにも文句は言えない。それに食べれないわけでもないしな。
俺たちは朝ごはんを食べ終わり、準備をした。翠花姉がいない朝の準備は…どこか寂しかった。でも翠花姉は今頑張っているんだ。これくらい我慢しないとな。それに翠花姉だけじゃない。俺だって頑張らないといけないんだ。
そんな気持ちで準備をしていると…
「ピンポーン」
玄関のチャイムが鳴った。俺は着替えていたので服を着てから玄関に向かった。ドアを開けるとそこには…
結夢「真くんおはよ~」
日菜子「元気そうじゃん。よかったよかった」
結夢と日菜子さんだった。今までこんなことなかったのに…どうしたんだろう。
真「2人共…なんで屋敷に?」
日菜子「結夢がね~真くんと~一緒に~学校に行きたいんだって~」
結夢「お、お姉ちゃん!」
日菜子「でも間違ってないっしょ~?」
結夢「うう…」
そうか。結夢はおそらく俺の心配をして来てくれたんだろう。
真「結夢、嬉しいよ。ちょっとだけ待ってて。まだ準備が終わってないんだ」
結夢「うん!待ってる!ゆっくり準備してくれていいからね」
真「うん。わかった」
俺は2人に玄関に入ってもらい、急いで準備をした。
真「着替えた、寝ぐせもよし、時間割も間違えてない。教科書は入れた。…よし、行くか!」
俺は準備を終わらせ、玄関で待っている2人のもとへ向かった。
真「お待たせ!」
日菜子「よし、じゃあ行こうか」
結夢「うん!」
俺が靴を履き替えていると、リビングのドアが開いた。
嵐紗「行ってらっしゃい。3人とも」
嵐紗さんだ。俺たちに挨拶をしたんだな。
真「はい!行ってきます!」
嵐紗「今日も帰ってきたら鍛錬~走るぞ~」
真「はい!頑張ります!」
そんな会話を嵐紗さんとしたのだが…それを見た日菜子さんは固まっていた…。
日菜子「な…なんで黄帝が…」
嵐紗さんがいることに驚いていた。まあそうだよな。虹帝達の一人がこんなところにいるとは思わないよな。俺からしたら結構日常になりつつあるんだが…。
嵐紗「真くんのお世話をしてるんだ。よかったら今日の鍛錬2人もやる?」
日菜子「!!はい!やりたいです!」
嵐紗「よろしい~。なら真くん、今日は走るのはやめて実戦向けの鍛錬ね。いい?」
真「はい!大丈夫です!」
嵐紗「んじゃみんな気を付けてね。帰ってからのお楽しみがあると学校も楽しくなるぞ~」
真「行ってきます!」
俺は玄関の扉を開け、結夢と日菜子さんと一緒に学校に向かった。
翠花姉がいない登校も…やっぱりどこか寂しい。結夢や日菜子さんはいるが…やはり翠花姉との登校が安心感がある。言葉に言い表せない安心感が。
結夢「どうしたの?真くん」
真「え?あ、いや、なんでもないよ」
日菜子「やっぱり翠花がいないことが大きんだ~?」
真「……はい。いつもいる翠花姉がいないのがちょっと…」
日菜子「大丈夫だって。あの子はあの子で頑張ってる。もしかしたら真くんの想像以上に強くなって帰ってくるかもね」
真「そうですね、翠花姉ならできると思います」
日菜子「そうそ、あの子は期待を裏切るような子じゃないんだからどっしりと待ってればいいんだよ」
真「わかりました」
翠花姉は実家に帰り、鍛える…か。俺の家は…大厄災で…どうなったんだろうか。母さんが生きていることはあのビラのおかげでほぼ確実だが…父さんはどうなったんだろう。すでに仕事に出ていた。もしかしたらどこかで…いや、そんなことを考えていてもしょうがない。それに父さんだって「絶眼」、つまり神話能力を持っていたし、「アーサー」を能力として扱っていた。おそらくあの人なら大丈夫だ。家族のことも心配だが…俺も頑張らなきゃいけない。そのために翠花姉や蓮乃さんの屋敷にいて、鍛錬をつけてもらってるんだ。そして今は嵐紗さんが鍛錬をつけてくれている。願ってもいないのに、これほどいい環境なんだ。頑張る以外の選択肢はないよな。
2人と一緒に学校へ向かった。校門で日菜子さんと分かれた。
日菜子「じゃあね~」
結夢「うん。またあとで~」
俺たちは昇降口に向かった。久しぶりの校舎だ。そして教室に入り、自分の席に座ると…なにやらみんなが騒ぎ始めた。
真「ん?なにかあったのかな?」
結夢「久しぶりに真くんが来たんだよ?突然1週間も休むんだもん」
1週間休んだだけでこんなになるのか。まあ知らんけども。あ、そうだ。結夢に聞くことがあった。
真「そういえば宿題って…」
結夢「ないよ。真くんはね」
真「俺は…ってことは?」
結夢「うん!ばっちし出てる!」
そんな笑顔でグッドサイン出されても…なあ。
真「そ、そっか」
結夢「難しかったし…はあ…嫌になっちゃう」
真「ま、まあまあ」
そんな会話をしていると先生が教室に入ってきた。
燕「どうしたの?騒がしいようだけど」
それを見たクラスメイトが先生に話しかけた。
「先生!真くんが久々に来たんだよ!」
それを聞いた先生が俺の席の方を見た。すると目を見開いていた。
燕「真くん…久しぶりね。大丈夫…ではないでしょうけれど…」
真「いえ、もう大丈夫です。ご心配をおかけしました」
燕「そう?翠帝様からは聞いたけれど重傷だったんでしょう?無理はしちゃだめよ」
真「もちろんです。ありがとうございます」
燕「その顔を見れて安心したわ。あ、宿題今日提出だから真くんも提出してね?」
真「…え?」
俺は結夢の方を見た。めっちゃ窓の方を見ていた。…やりやがったな、結夢。
燕「もちろん真くん…やってるわよね?」
俺の背中は…汗か何かでびっしょりだ…。今まで一度も宿題を忘れたことがなかったのに…。
真「や…やれて…ないです…」
燕「じゃあ…居残り授業を…」
真「ああ…それだけは…」
燕「勘弁してあげるわ。というかやってなくてもいいわよ。あんな大けがをした人に宿題をさせるほど私も鬼じゃないわ。授業内容でわからないところがあったら授業が終わった後でも、なんなら学校が終わった後でも大丈夫だから遠慮せず聞いてね」
やっぱりこの人はいい先生だ。自分の時間よりも教え子の理解を優先するとは。
真「はい!ありがとうございます!」
燕「さてと、みんな席についてね。HRを始めるわ」
先生の一言でみんなが席に座る。
燕「今日から本格的に学園祭の準備に入るわね。私たちのクラスはお化け屋敷。全学年で3個しかないうちの1つを担当するから、全力でお客さんを怖がらせに行きましょうね!」
めっちゃやる気だ。こういう行事を全力で楽しむ先生っていいよな。多分大人の力を使って全力で制作に取り組んでくれるに違いない。
燕「でも授業もちゃんとやるからね。授業も準備もどっちもやってこそよ。ということで授業の準備をしておいてね。ということで終わります」
HRを終え、先生が教室を出た。俺は授業の準備を始めた。といっても教科書を取りに行っただけだが。
そして授業が始まった。久々の授業だ。1限は算数だ。だが今の俺にとっては全くもって難しくはない。なんせ四則演算や時計の読み方などだ。前の世界で社会人までいった俺からしたらイージーだ。
今日の授業に能力も地理もないため、知っていることを学ぶことが多かった。そんな感じで授業が4限まで進み、給食の時間になった。給食当番なので白衣を着て準備を始めた。
準備を終え、給食を食べる寸前まで来た。掛け声は俺と結夢がやることになっている。
結夢「久しぶりに真くんと2人でやるかも」
真「そっか。俺がいなかったから結夢が一人で?」
結夢「うん」
不安でしかない。前は結構えぐいこと言ってたしな…。先生も酷だな。
真「じゃあ結夢に先に言ってもらってもいい?少し忘れててさ」
結夢「いいよ任せて!私もたくさんやってるからね!簡単簡単。手を合わせてください!」
結夢が手を合わせる。それに続いて俺も手を合わせた。みんなも手を合わせている。
結夢「いたただきます!」
真「いたただきます!?」
思わず声が出ちゃったよ。明らかに多い。もうこれ一種のコントだろまじで。わざとじゃないのか?そのレベルだ。
燕「はいもういっか~い」
結夢「え?間違って…」
真「るからやり直すんだよ」
結夢「え?うっそ」
真「いやまじ」
結夢「……え?」
いやそんな顔をされましても。俺もツッコんじゃったし、多分これ俺がいなかった1週間は先生がやってたな。そうじゃなければミスはしないだろうし、言い間違えることもおそらくない。
真「…手を合わせてください」
クラスメイトたち「合わせました!」
真「いただきます」
クラスメイトたち「いただきます!」
俺がやると毎回すんなり行くんだけどな…結夢は向いてないよな。わからんけど。
給食を食べた。久しぶりの給食はやっぱり美味しい。まあ給食が美味しくないなんてことはそうそうないだろうがな。
美味しい給食を食べ終え、片付けも済ませた。そして挨拶をするのだが…
結夢「今度は失敗しないから!」
結夢がそう言ってはいるが…不安でしかないんだよな…。
真「いや、久しぶりだし今日は俺がやるよ」
結夢「まあ久しぶりだもんね。失敗しても知らないよ~」
多分大丈夫だ。わからんけど。俺は前に立った。
真「手を合わせてください」
クラスメイトたち「合わせました!」
真「ごちそうさまでした」
クラスメイトたち「ごちそうさまでした!」
言い終えた俺は結夢の方を見たのだが…めっちゃ頬を膨らませてた。そんな顔をせんでもええやん…。
給食を食べ終え、休み時間を過ごし再び授業が始まった。教科は美術。はっきり言って絵のセンスは全くない。というか絵が下手すぎるんだ。授業中絵を描くことになったんだが…
真「……」
結夢「…真くん、なに?これ」
真「…くま」
結夢「なんで腕が3本もあるの?それに耳もないし…」
真「…下手なんだもん」
結夢「やっぱり真くんも人間だった」
いやそんなフォローをされてもなぁ…。ただ辛いだけなんだが…。
そんな地獄の美術の授業も終わり、学園祭の準備に取り組んだ。お化け屋敷…今までの人生でやったことのない仕事だ。それにこの世界におけるお化けとは?
真「俺…あんまり参加できてないからな…どんなお化けなの?」
結夢「うーんと…あ、これこれ」
結夢が取り出したのは白い布に小さな穴2つと赤色に塗られた口だ。ザ・お化けみたいな感じだ。
真「これをどうするの?」
結夢「これを被ってお客さんを怖がらせるの。わ!みたいに」
…ちょっと今のでビビった。突然大きな声を出すもんだからな。
結夢「真くんもこんな感じのを作るの。どんなのがいい?」
真「どんなお化けがいるんだろ?」
結夢「フランケンシュタインとかミイラ男とかドラキュラとかかな?」
知ってる名前ばっかだ。フランケンシュタインという名前が出てくるとは思いもしなかった。俺は…もう少し日本っぽいお化けがいいな。妖怪とかはいいんじゃないか?
真「妖怪…」
結夢「妖怪…あ、唐傘お化けとかは?」
俺一本しか足ありませんけど?
真「うーん…あ、鬼とかは?」
結夢「鬼ってどんなのだっけ?」
真「こう…角が生えててこん棒持ってて…」
結夢「あ、あれか。いいんじゃない?」
真「一応先生に聞いてみよ。先生~」
俺の声に先生が振り返る…のだが…
燕「ん~?」
めっちゃ低い声でゆっくりと振り向いた先生は…赤い服を着て…口が耳まで裂けているような容姿をしていた…。もしかすると先生は…口裂け女か!
そんな先生がこっちに向かって大きな段ボール製のハサミを持ちながらこっちに来た。めっちゃ怖い。再現度高すぎだろ!
燕「どうしたの~?真くん」
真「えっと…まだ残ってるお化けってありますか?」
燕「残ってる…?別になんでも大丈夫よ?どんなお化けでも妖怪でも」
真「じゃあ鬼って…」
燕「もちろん大丈夫。というか私も鬼をやろうか迷ってたしね。真くんならできると思うわ。恰好の制作手伝うわよ?」
真「いや、自分だけで一回やってみます!」
燕「そっか。まあ難しいことがあったら遠慮なく言ってね」
真「はい!ありがとうございます」
先生が元々いた場所に戻った。…というか先生は鬼か口裂け女か…。この二択なのはどうなんだろうか?まあお化け屋敷だしわけわからん怖いやつが襲ってくるだけでも十分に怖いだろう。しかも先生はやるからには全力と言っていたし全力で怖がらせに行くに違いない。
俺は鬼の製作に取り掛かった。と言っても今日はどんな鬼にするかのイメージ程度でいいだろう。準備も1時間2時間あるわけではない、30分くらいだ。俺は鬼のイメージを絵にかいた。え?お前は絵が下手だろ?多分大丈夫だ!!
鬼のイメージは…角、こん棒、トラ柄のパンツ…くらいか。…書いたのはいいんだが…これ作れるかな?やっぱり先生に…いやだめだ。自分で作るって言ったんだ。やってみせる。
できるかわからないという不安になっていると準備の時間の終わりを告げるチャイムが鳴り、先生は準備を終わらせるようにみんなに言い、みんなが片づけに取り掛かる。俺も取り掛かり、ものの数分で終わった。移動させた椅子や机も元に戻して席に着いた。
燕「みんなお疲れ様。この調子で頑張っていきましょう。終わります」
やっぱり先生のHRが速すぎる。この感じも久々だ。
俺と結夢は一緒に昇降口を出た。そして校門にはすでに日菜子さんが待っていた。
真「お待たせしました」
日菜子「よし、帰ろうか」
結夢「うん」
俺と結夢と日菜子さんは一緒に帰った。嵐紗さんと約束したんだ。今日は2人も一緒に鍛錬をすると。
翠花姉の屋敷に到着し、玄関を開けた。
真「ちょっとだけ待っててください」
日菜子「おっけ~」
2人を玄関に入れ、嵐紗さんがいるであろうリビングに向かった。リビングの扉を開けると…
「すー…すー…」
寝息が聞こえた。その音の主は…
嵐紗「もうちょっとだけ…」
…嵐紗さんだった。ノートによだれをたらし、落書きのような線が入っていた。
真「えっと…嵐紗さん?」
その声に嵐紗さんが体をビクッとして目を覚ました。
嵐紗「あ…真くん、おかえり~」
真「ノート…大丈夫ですか?」
嵐紗「え?ノート…あ!!やばいやばいやばい!これ絶対優人に怒られる!大事なノートだったのに!」
真「…」
嵐紗さんもこういうところがあるんだな。ちゃんと人間をしていた。というか優人という名前が聞こえたが…嵐紗さんの国の人かな?
嵐紗「はあ…まあいっか。ちゃんと書類で渡せよって文句言っとこ。あ、結夢ちゃん日菜子ちゃんいる?」
真「はい。玄関にいます」
嵐紗「お~しじゃあ行こうか。2人を道場に連れてって」
真「わかりました」
俺は玄関で待つ2人を道場に来るように伝えた。俺についてきている。そして道場に入った。すでに嵐紗さんは待っていた。
嵐紗「来たね。鍛錬、やっていこうか~」
日菜子「はい!お願いします!」
俺以上にやる気を感じるな…日菜子さん。そんなに嵐紗さんとの鍛錬が嬉しいんだろうか?いや、嵐紗さんは普通は出会うことすらできないかもしれない虹帝達の一人なんだもんな。そんな人と鍛錬できることが嬉しいんだろう。
嵐紗「真くんと結夢ちゃんも荷物を置いてこっちに来な~」
真「はい」
結夢「はい!」
嵐紗さんとの鍛錬が始まる。結夢と日菜子さんがいる状態での鍛錬は一体どんなものになるのだろうか…。




