第52話 微かな違和感
明日から授業が始まる。俺は翠花姉と一緒に屋敷に戻り、提出書類などを渡した。明日の授業の教科書を鞄に詰め、明日に備えた。
今日、俺はあのシャッター音が耳から離れることがなかった。学校にいるとき、クラス内レクでみんなと遊んでいるときは聞こえなかった。だが、俺が翠花姉と一緒にいるときにだけ聞こえた。これが不思議に思わないわけがないだろう。だが結夢や翠花姉、周辺にいた人たちでさえその音が聞こえてないようだ…俺だけが聞こえた…ということだ。不思議に思いつつも屋敷で1日を過ごした。
「ぶわっはっはっはっは!」
完全に人間の笑い声が…もうこれは笑うしかなかった。
真「っふ…」
朱雀「お!やっとわらわのモーニングコールが刺さったようじゃの!」
真「ちげえわ。逆にそんな声で鳴く鳥がどこにいるんだって話だ。最近はもう鳥の要素ゼロだったし…」
朱雀「それでもやってのけたわらわは偉いぞ!褒めよ!わらわをほめたたえよ!」
真「こ・と・わ・る」
朱雀「NO~~~!!!」
そんな会話をして俺はリビングに向かった。すでに2人は起きていて、ご飯の準備もできていた。
真「おはよ~2人共」
翠花「おはよ、真くん」
蓮乃「おはようございます。準備、できてますよ」
真「うん」
俺は椅子に座った。2人も椅子に座って俺たちは朝ごはんを食べた。
全員食べ終わり、俺と翠花姉は学校への準備を始めた。俺の準備が終わり、翠花姉をリビングで待っていた。少し時間が経過し、リビングのドアが開いた。
翠花「終わったよ~」
制服に着替えた翠花姉だった。そして俺のもとに近づいてきて…
翠花「じゃあ真くん」
真「もしかして…」
翠花「うん。今日もお願いね」
そう言い、昨日と一緒の位置に座った…。つまり…三つ編みをしろってことかよ…。俺はあの時蓮乃さんがやってくれたからできただけで…。俺は蓮乃さんの方を見ると…
「ズズ…」
コーヒー飲んでるし…こ、これは…一人で頑張るしかない…。
俺は翠花姉の髪を昨日蓮乃さんに見せてもらったように、同じやり方でやった。だが…手本がない俺の三つ編みは…昨日の何倍も汚い三つ編みだった…。
真「うう…」
翠花「お?どうしたの?真くん」
真「三つ編み…」
翠花「あ、できたのかな?」
真「うん…でも…」
翠花「蓮乃、鏡頂戴」
蓮乃「はい」
蓮乃さんが鏡を翠花姉に渡した。それを見た翠花姉が言った…。
翠花「え?結構よくない?」
真「え?」
翠花「ところどころでふんわりしてるのとか、ふんわりしてると思ったらめっちゃ上手なところもあるし、なにも言うところないよ」
真「え…」
翠花「ありがとう!真くん!」
そう言い翠花姉は俺のことを抱きしめてくれた…!それが嬉しくて俺も嬉しくなった。
真「えへへ」
翠花「これはまたクラスのみんなに自慢できるぞ~!」
真「そ、それは…」
翠花「やっちゃうもんね~」
その言葉を言い終えたと同時、翠花姉が少しベロを出しながら玄関に向かった。追いかけるように俺も鞄を持って玄関に向かった。そして靴に履き替え、玄関を出た。
真・翠花「行ってきまーす」
俺たちは学校に向かう途中で結夢と日菜子さんに会った。
翠花「結夢ちゃん、日菜子、おはよう~」
日菜子「お、今日も三つ編みだ~。真くんにやってもらったの?」
翠花「そうなの~。無茶ぶりでも聞いてくれる真くんに感謝だ~」
結夢「真くんそんなことできるの!?私にもやってよ!」
真「え、あ、そ、それは…」
結夢「やってくれないの?」
めっちゃ悲しそうな顔をするじゃん…今にも泣きそうな顔…これは断れない…。
真「あ…そういうわけじゃ…」
日菜子「結夢が悲しんでるぞ~」
真「が、学校でやるから!」
結夢「ほんと!?ありがとう真くん!」
笑顔な結夢と翠花姉と一緒に俺たちは学校に向かった。そして学校に到着し、翠花姉、日菜子さんと分かれるとなったその時…
「パシャ…」
まただ。このシャッター音が俺の耳に入った。結夢の方を見ても、周りにいる生徒を見ても誰も気づいたような素振りを見せていなかった…。俺は明らかにおかしい挙動をとっているらしく、結夢に声をかけられた。
結夢「真くん?どうしたの?そんな何かあったみたいな動きして…」
真「あ、ごめん…けどさ、昨日俺が言った話覚えてる?」
結夢「えっと…シャッター音のやつ?」
真「うん。それがまた聞こえたんだ」
結夢「うそ。本当に?」
真「うん。確かに聞こえた。間違いない」
結夢「私には全く…」
やはり聞こえていないのか…俺だけなんてことあるのか?
真「そっか…。一旦教室に行こうよ」
結夢「う、うん」
俺たちはそのシャッター音のことを気にしながら教室に向かった。
真と結夢が教室に向かって歩き始め、少し時間がたった時、茂みの中から何かが動き出す…。
「チュウチュウ」
そこにいたのは、なんとネズミだった。
だがそのネズミが姿を現す…
「やはりあの少年…このカメラのシャッター音に気付いているな…」
それは翠花のクラスにいる不審な3人組のうちの1人だった…。その男がポツリと言う…。
「少年は…いい餌になりそうだ…ふふ…」
怪しく笑うその男が持っていたのは…先ほど真と結夢が翠花たちと分かれた瞬間をとった写真だった…。その写真を見てさらに男が笑う…。
「それにこの女児も…ああ…!これほどまでに…駒が揃う!盤面が完成してゆく…!待っていろ…源翠花!!我らからの告白を蹴ったお前を…地獄のどん底に突き落としてやるよ!!偉大なる…悪魔様の…マルバス様の力でな!!」
その男がそう言い、右腕に紋様とその中心に数字が浮かび上がる…!その数字は…5番を表していた…!
「おっと…あまりの興奮に神気を出しかけた…危ないな。ここは強者が多いからな。さてと…教室に行くとしようか」
腕の紋様を抑え、カードを差し込んだ男が中等部の門まで移動した…。
真と結夢は教室に到着し、真は先生が来るまでの間に結夢の髪を三つ編みにしていた。
真「ここをこうして…こう!ど、どうかな?」
結夢の髪質が結構三つ編みをしやすい感じだったからか、翠花姉の時よりもうまくいった。結夢は先生の机の上にある鏡で自身の姿を見た。
結夢「すごいよ真くん!めっちゃうまいじゃん!」
真「そ、そう?」
結夢「うん!ありがとう!」
その声を聞いたクラスのみんなから声が聞こえた。
女子1「え!三つ編みじゃん!真くんがやったっぽい!」
男子1「器用だなー」
女子2「私もやってもらいたいな!」
そんな声が聞こえてきた。そしてそのうちの一部の女子が…
女子1「ねえ真くん!私にもやって!」
女子2「先に私に!」
女子3「いや、ここは私が!」
俺のもとに来てそう言ったのだ…。結夢の髪で三つ編みするのに5分かかったし…もうそろそろ先生が来る時間だし…
真「え、えっと…」
女子3「やってよー!」
俺が戸惑っていたその時…
燕「あら、何かあったの?」
先生が教室に入ってきた。先生が来たということは、それなりの時間になったということだ。
女子2「あ!先生聞いてよー!真くんが結夢ちゃんの髪を三つ編みしてたから、私らもやってもらいたかったのに、やってくれないのー!」
燕「結夢ちゃんだけ特別というわけではないでしょう?真くん?」
真「もちろんです。登校の時間が被って、三つ編みの話題になってやってと言われたからやったんです。約束ですね」
燕「ならしょうがないわね。時には我慢も大事よ」
女子たち「はーい…」
真「ま、まあ時間があるときになれそうだったらやるよ。頑張るから、任せてほしい」
女子たち「ほんと?やった!」
燕「じゃあ決定ね。にしても結夢ちゃんの三つ編み似合ってるわね。私もお願いしちゃおうかしら?」
真「そ、それは…」
燕「ふふ、冗談よ。さ、みんな、席に座って」
「はーい!」
先生がみんなを席に座らせ、朝のHRを始めた。
燕「今日から授業ですね。気分が乗らないと思いますが大丈夫。今日は内容に踏み込むのではなく、今までの知識でできる復習のクイズ大会をしますから」
この人最高かよ…!最初の授業が一番だるいのに、その授業をクイズ大会にしてくれるとか俺らの気持ちわかりすぎだろ…!
燕「ということで1時間目の国語の準備をしておいてね。あ、ちなみに各教科で順位が高い3名には景品がある…かも?楽しみにしててね。ではHRを終わります」
景品までついてくるとは!もうやる気しかないぞこれは!!
先生が教室を出て、俺たちは盛り上がった。
結夢「クイズ大会だって!絶対に負けない!」
真「景品ってなにもらえるんだろうね」
結夢「ん~…わかんないや」
真「勝てばわかる。俺が勝つ!」
今日の授業を楽しみにしながら俺たちはチャイムが鳴るのを待った。
少し時間は立ち、場所は変わって中等部の校舎にて…
翔「…ってわけだから、ここはこうなるってわけだ。ここまとめとけよー」
翠花と日菜子は翔の授業を受けている。
日菜子「ふふふ」
日菜子はノートにまとめる動きをする傍ら、ノートに落書きをしていた。結構モフモフな毛並びの犬を書いていた。いまにも吠えそうな犬を。
翠花はノートにわかりやすくまとめていた。教科書にマークだったり付箋などが貼ってある。
翠花{この授業はしっかりと予習してるし…先生もそこまで深堀りをするわけでもないし…暇だな…}
退屈な授業と思いながらも翠花がノートにまとめていた時…
「フォン…」
翠花{ん?神気?いったいどこから…}
翠花はその神気の発生源の方を見た。
翠花{神気…エアコンから?ん?なんだあれ…}
それは翠花が見たこともない形のカメラだった。
翠花{カメラ?しかも…私を見ている?いや…誰に焦点を当てているかわからないけど…この辺りの誰かを撮っているのは変わりないか…あとで取っておかなきゃ}
カメラに違和感を覚えながらも翠花は授業を受けた。
その教室でマスク越しに笑みを浮かべる人間が2人いた…。
「いいね~気づいたね~。君からのカメラ目線、さんきゅーで~す」
「これも計画の一つ…ふふふ」
カメラの存在を知る2人も授業を受けている。全く違和感がない。だが…
翔「ん?翠花、なにかあったか?」
翔が翠花の動きに反応して翠花を呼んだのだ。
翠花「あ、いや…エアコンから視線を感じるなって思って」
翔「エアコンだと?どれどれ?」
そう言い翔はエアコンの近くまで能力を使用して浮いた。それを見た2人がカメラを動かす…。
「ち…。先生にバレるのは面倒だ…。場所を変えるぞ」
「了解」
そのカメラは…翔が見る前にただのカメラから蚊に姿を変えた…。そして翔から逃げるように本棚の本の隙間に入り込んだ…。
翔「なんもないぞ?人がいたような形跡もない。気のせいじゃないのか?」
翔は…気づけなかった。だが翠花は神気を感じ取っている。それを説明する。
翠花「いや、神気を私は感じ取りました。なにかが神気を間違いなく…」
翔「ん~…一旦は授業を続ける。まだ何かあれば業後に俺のところに来てくれ」
翠花「はい…。わかりました…」
翔は黒板の前に立ち授業を続けた。翠花は神気を感じ取ったこと、カメラを見たことを授業中に考えていた。
その光景を見た2人がそれぞれに言う…
「先生ですら気づかない神気精度…さすがですね」
「先生が気づけないのなら誰も信じやしない…翠花…お前だけだ。気づいてるのはな」
翠花{私の気のせいならいいけど…エアコンにカメラ機能なんて今の技術じゃ無理だろうし…なんだったんだろ…}
そんな考えごとをしていたら授業はどんどん進み、翠花はノートをまとめた。
授業が終わり、日菜子が翠花に近づいてきた。
日菜子「さっきの授業、なにかあったの?」
翠花「あのエアコンにカメラがあった。誰かがこのクラスの誰かを撮っている…って考えるのはだめかな?」
日菜子「だめではないだろうけど…少し考えすぎな気がする」
翠花「だよね…。まあいいや。気にしないことにするよ」
日菜子「でも私、さっき翠花が言ってた神気を感じ取れなかったんだよね。本当に出してたの?」
翠花「間違いない。日菜子とは席が離れてるからあれだけど、とても微量だった。けど私が感じたんだもん。間違いないよ」
日菜子「翠花は神気の精度に関しては私より上だから多分間違いないんだろうね。そうなると…結構怖いね」
翠花「なにもなければいいんだけどね。真くんもああ言ってたし…」
日菜子「真くんが何か言ってたの?」
翠花「真くん曰く、私たちが真くん結夢ちゃんと接触した時にシャッター音が聞こえたらしいの」
日菜子「まじ?私聞こえなかったよ…」
翠花「私もだよ。真くんにしか聞こえてないらしいし…話を盗み聞きした感じ、結夢ちゃんでも聞き取れてないから…」
日菜子「真くんを否定するわけじゃないけど…本当なのかな…?」
翠花「真くんの言うシャッター音、そして今回のカメラ、不自然ではない…今日の授業は終わったし、この後真くんたちと一緒に帰るから、その時に真くんがそう言ってたら間違いないと思っていいね…」
日菜子「だね…真くん次第だけどね」
翠花「だね」
そんな会話をしている傍らで…
「では今日はやめておきましょうか」
「あの少年は気づく。間違いなくな」
「こうすればあいつは何を信じればいいかわからなくなりますからね」
翠花を苦悩させる3人組の計画は動く…。
少し時が経ち翔が教室に戻ってきて、帰りのHRを始めた。
翔「今日は特になし!解散!」
武「はや!」
翔「だってねえもん!じゃあみんな気をつけてな!」
そう言い翔はすぐに教室を出た。翠花のクラスメイトがどんどんと教室を出ていく。翠花と日菜子も一緒に教室を出た。
場所は変わり小学生棟…
真たちの教室でも帰りのHRが開かれていた。
燕「今日は復習にはちょうどいいくらいのクイズ大会ばっかだったけど…どうだったかな?」
クラスメイト「楽しかった!」
燕「それならよかったわ。では帰りましょう。明日も気を付けて登校してくださいね。ではさようなら!」
クラスメイト「さようなら!」
俺たちは教室を出た。靴を履き替え、校門に近づくと翠花姉と日菜子さんがすでに待っていた。
俺は少し警戒をしながら門に、翠花姉に近づいた。だが…例のシャッター音は聞こえなかった…。
真{そんなことあるか?前は聞こえていたのに…}
朱雀{今日はカメラもない。シャッター音が鳴るはずもないのじゃ}
真{そうか…}
翠花姉に近づいても音は聞こえない…。本当に動いてないんだな…。
翠花「来たね。じゃあ帰ろっか」
真「うん」
俺たちは下校をした。下校をしている最中にも音が聞こえることはなく、それが逆に怪しく感じた。
結夢と日菜子さんは家に着き、そこで分かれ、俺と翠花姉が一緒に帰る…。
翠花「ねえ真くん」
真「なに?」
翠花「今日はシャッター音聞こえた?」
真「ううん。今日は聞こえなかった。けど…」
翠花「けど…なに?」
真「僕らが登校して翠花姉と分かれるくらいのタイミングでシャッター音が聞こえたんだ。下校の時は聞こえなくて、登校の時は聞こえたんだ。あとね、僕が学校にいるときもシャッター音は聞こえなかった」
それを聞いた翠花姉は…眉間にしわを寄せ、指をかじるようなジェスチャーをとった。
翠花{どういうこと?おそらく真くんが言っていることは間違ってない…だってこんなに具体的に説明してくれるんだ。もしかして…私…狙われてる?今日のカメラの件を知ったそいつが今日はやめておこう…と考えるのも授業中の私の動きを見ていたとしたら不思議ではない…それに真くんの話を聞く限り…標的は…私、もしくは日菜子の可能性が高い…}
真「大丈夫?翠花姉…」
翠花「え?あ、うん、大丈夫だよ。帰ろうか」
俺と翠花姉は手を繋ぎ家に帰った。俺は前の世界で車を運転していたこともあってミラーがあったら見る癖がついていた。
だが…その癖を俺は恨んだ…。ミラーに入る…黒いフードを被った人間が後ろにいることに気が付いた…。俺は思わず振り向いた…。
黒いフードを被った人間は…俺が振り向いたと同時…姿を消した…。
真「気の…せいか?」
翠花「どうかした?」
真「いや…なんか怪しい人がいるなって…」
翠花「…なんか怖いね…」
真「うん…早く家に帰ろ?」
翠花「だね。私の背中に乗って」
真「え?うん」
翠花姉は俺を背に乗せ、神気を使って、大きくジャンプをして家に向かった。ものの数秒で家に着いた。
家に着き、夜ご飯を食べたり、翠花姉と一緒に風呂に入ったりした。そして俺と翠花姉はベッドに入り、眠ることになった。
あれはなんだったんだろう…それにシャッター音が今日だけ聞こえないのも不思議だ…俺はそんなことを考えながらゆっくりと眠りに落ちた。




