第49話 神気の授業
俺たちは神気について翠花姉に教えてもらうべく道場に向かった。結夢と日菜子さんも一緒だ。
翠花姉がホワイトボードの前に立ち、俺と結夢、そしてなぜか日菜子さんも椅子に座って受けることになった。しかもノートとペンを持って。というのも…
翠花「日菜子はノートにしっかりとまとめる練習。そのノートを後で結夢ちゃんが見ても分かるように」
って言ってたんだ。日菜子さんの顔はもうそれは口をとんがらせてた。
翠花姉が口を開いた。
翠花「それで、真くんと結夢ちゃんは授業で先生に何について言われたんだっけ?」
真「神気の練度についてを聞いてたんだけど、聞こうと思ったら授業が終わっちゃって」
翠花「なるほど。そこでさっき真くんが言ってた神気を使ってジャンプをってやつか。確かに身体能力の上昇には神気の練度も必要だし、神気量が上回ってるから絶対に勝てるというわけではないしね」
俺は神気量が結夢よりも多かったから結夢よりも飛べたが、同じ量なら越されたんだ。神気はもしかすると…思う以上に奥が深いのかもしれない…。
真「神気量が多ければいいっていうものじゃないんだ?」
翠花「そりゃあね。神気の練度に関することで私がやったことなんだけど聞きたい?」
結夢「はい!聞きたいです!」
翠花「よっしゃ任せろ。まず、当時の私は100億くらいだったんだよ。その時に相手が出した量は100兆。2人ならどうする?」
真「…」
結夢「えっと…逃げます」
翠花「まあそうだよね。私もそんな神気が多い相手なら逃げるよ。私は一度逃げたんだけど、そいつが打ってきた能力球は全然脅威じゃなくて、建物一つも壊せないくらいの。だから私は思ったんだよ。こいつなら勝てるって。私は剣技と能力、神気を使った結果、ほぼ無傷で勝てたの。だから神気で越されてても、そいつが練度が低くて、神気が多いだけなら勝てる。だからしっかりと練度も鍛錬しようねっていうこと」
すげえな…。100兆を出す相手もなかなかだが、それに立ち向かい、勝ってみせた翠花姉が一番すごいんだよな。神気の練度に関することならこれ以上にない伝説だ。
真「なるほど…すごいね。翠花姉。僕なら絶対に逃げてるよ」
結夢「私も翠花さんの立場なら逃げてますよ…」
翠花「まあ逃げるのも戦術。けど、神気の練度が勝てそうな感じなら、立ち向かうことも選択の一つだよ。っとそれは置いといて、神気の練度の話に戻るけど神気は何回も言ってるけど練度がある。1神気でも練度を上げれば、10、100、1000と上げることが出来る。例えば練度が100でその人が出す神気量が10万なら、100倍して実質的に神気は1000万になる。数字以上の神気があるってこと」
そこまで上げることが出来るのか…!なら…!
真「なら翠花姉。神気を増やすんじゃなくて、神気の練度を上げた方が効率がよかったりする?」
翠花「理論上は、ね。それに真くんはまだまだ成長段階。練度を上げるよりも神気そのものを増やした方が早いよ。絶対に。体を鍛える、肺活量を増やす、今の段階でも2個はあるんだから考えなくていいよ」
真「翠花姉がそういうならいっか」
翠花「うん。任せてくれたまえ」
結夢「私はどうなんでしょうか」
翠花「結夢ちゃんも神気そのものを増やせばいいと思うよ。どんな風に増やしてるのかはわからないけど、いつも通り体を鍛えて、神気を増やす鍛練もこなせば多分大丈夫だと思う。そこは日菜子の言うことをしっかりと聞くんだよ~」
結夢「はい!わかりました!」
翠花「よし、じゃあ2人共。何か質問はある?なんでも受け付けるよ」
特に質問は…ないな。俺は首を横に振った。結夢もないようで、首を横に振っていた。
翠花「ないっぽいね。じゃあ終わろうか。さてと…」
翠花姉が日菜子さんのところに向かって歩いた。
翠花「どれくらいまとめれた?日菜子」
日菜子「大体これくらい…」
翠花「どれどれ?」
翠花姉が日菜子さんのノートを読み返している。ところどころ眉間にしわが寄ってるような気がするな。大丈夫なのだろうか。
日菜子「どう?私のノートは」
翠花「まあまとめれてるしいいか。でもさ、私は言ったよね。結夢ちゃんが読んでもわかるようにって」
日菜子「あ」
翠花「結夢ちゃんが読めるならいいんだよ。けどこれとか読める?継続でしょ?これ」
日菜子「うん…」
翠花「字間違えてるじゃん。断つに読むじゃん。しかもわからないようにぐちゃぐちゃってなってる。結夢ちゃんがわからなかったら毎回答えないといけないよ?それならしっかりとまとめようよ」
日菜子「はーい…」
結構厳しい評価だ…俺や結夢ではこんな言い方はしないだろうに…。
翠花「まあそこまで濃い内容ではないし結夢ちゃんがしっかりと覚えてくれればいいから今回は許そうじゃないか。じゃあ、終わるよ」
真・結夢「はーい」
俺たちは道場を出た。
翠花「2人は帰る?」
結夢「宿題を一緒にやろうと思っただけですし…」
日菜子「なら帰ろっか。お邪魔するのもあれだし」
翠花「そう?別にいてもいいのに」
日菜子「ううん。大丈夫。じゃあまた明日」
結夢「またね。真くん!」
真「うん。気を付けて」
2人が玄関を出た。俺たちはしっかりと2人が出ていくまで動かなかった。
翠花「さてと、今日も鍛錬していこうか」
真「うん。…あ、翠花姉、さっきの神気の練度に関して今思ったことがあるんだけどいい?」
翠花「ならあっちで答えるよ。行こうか」
真「うん」
俺たちは一緒に道場まで歩いた。そこまで距離もないので会話はなかった。
道場に到着し、俺は翠花姉に疑問をぶつけた。
翠花「それで思ったことってのは?」
真「神気の練度ってそもそもどうやって上げるの?」
翠花「…確かに言ってないね。結夢ちゃんがいるときに思いつけばよかったね~」
真「ごめん…」
翠花「あはは。まあこれは私と真くんだけの秘密ってことにしようか?」
真「秘密…!うん!」
大体男ってのは秘密とかそういう言葉にも敏感なんだよ。なんかスパイっぽくない?そんなことないか。
翠花「まず例えから入った方がわかりやすいかな。んー…あ、じゃあ水が入ったバケツと高圧洗浄機で例えてみようか」
真「どういうことだろ?」
翠花「体感してもらった方が早いね。真くん神気出して。私も出すから」
真「え?わ、わかった」
俺は神気を出した。翠花姉も出していた。俺と同じ量を出していた。
翠花「じゃあ、昨日割った鉄棒をそこに立てるから、真くんも私も10万くらい使ってあれに向かって神気をぶつけてみようか」
真「うん」
そう言い翠花姉が鉄棒を立てた。
俺と翠花姉は棒に向かって神気を放った。
「カラン」
俺が神気を放った棒は俺の神気に触れるとそのまま倒れた。俺は翠花姉の方を見たんだが…
真「え!?」
同じ量の神気のはずなのに…鉄棒に丸い穴が開いていた…。
翠花「これが練度の違い。同じ10万でも鉄棒を倒すくらいなのか、それともこんな風に鉄棒に穴をあけるくらい強いかってこと。大体わかった?」
真「うん…。翠花姉はどれくらい練度が高いの?」
翠花「正直どれくらい高いかって言われたらわからないんだよね。けど、さっき言ったのを考えると私なら5000くらいはあるのかな?だから今私が出せる神気量が5兆くらいだから…」
真「え!?」
ということは…5兆の…5000倍!?えぐい数字にならないか…?
翠花「数字にすると結構な数字だけど、実際にはそんなにないと思う。だけど、練度を上げることが出来ればだいぶ世界が変わるよ。ほんとに」
真「それのやり方教えて!」
翠花「いいよ~。でも結構きついっちゃきついよ」
真「それでもいいから!」
翠花「しょうがないな~。ならしっかりと教えてあげようじゃないか」
真「やった!」
どんなのだろうか。正直想像がつかないからこそ楽しみなんだ。
翠花「今神気を出してるよね。出してる神気の内の100万くらいを指先にまとめてみて。第一関節くらいだけに」
膨大な量の神気を…俺の指の、しかも第一関節にまとめるのか…
俺は神気を指に集めようとしたんだが…
真「指に…うわあ!」
一瞬だけ指に集めることはできたが…ほんとに一瞬集まっただけなのに、集めた神気が離散してしまったんだ…。
翠花「指に集めようとしたけど、神気がまだまだ統制できてないから離れちゃったね。けど、それの繰り返し。体がまだ神気が一点に集まってるのに慣れてないんだね。どんどん慣れていけば神気の扱い方も上手になる」
上手になるとは言うが…一点に集めるとどんな風に神気の扱い方が上手くなるのだろうか…
真「ねえ。翠花姉。今指に集めるってのやってるけど…これって練度どんな感じに上がるの?」
翠花「どんな感じ?っていうと?」
真「なんていうか…指に集めてるだけで練度が上がるとは思えないんだけど…」
翠花「そういうことか。なら心配はいらないよ。なんでかっていうと、指が一番神気を集めるのに難しいと言われてる。それは指には血管や神経が集中してるから。もちろん他の部位でもできるけど、指の第一関節くらいに集めることが出来れば理論上どこでもできるんだよ」
…確かに理論的にはいいんだろうが…それがどうなのかを聞きたいんだが…
真「なるほど。でもそれは…」
翠花「まあ焦らない焦らない。早く言えとかそれは関係ないって思ってるだろうけど、しっかりと過程を追うことも大事。今の理論を言ったうえで練度の話になるけど、さっきも言った通り指は小さい。そこに本来なら全身で纏うものを集中ってことはその指に神気が凝縮される。その神気を完全に離散しないようにできれば、それは体が凝縮された神気に耐え、順応したってこと。それで初めて神気の練度が上がったと言える。けど、一回できたからおしまいじゃなくて、それをいつでもできるように練習はしっかりとしないとだよ」
結構難しいことを言ってきたな…。
真「えっと…」
翠花「まあわからないよね。まあ要約すると、集まった神気に体が耐えれば練度が上がるって思えばいいよ」
真「な、なるほど?」
翠花「これは数あるのみ。けど無茶はしちゃだめ。しっかりと段階を踏んでやること。そして練度を上げる修行の時は絶対に私がいるところでやること。これだけは守って」
真「わかった」
翠花「何か質問はある?」
あ、一個ある。聞いてみるか。
真「一ついいかな?」
翠花「ん、なにかな?」
真「練度を上げるって何回も言ってるけど、何を基準にして上がったって言えるかだけお願い」
翠花「言ってなかったね。そこは大事だ。それは最大神気量に対する集めた神気量の比率とそこで出た数字の計算で出た数字が練度になる。今真くんどれくらい出せる?」
真「確か5億くらい」
翠花「なら、さっき100万を指に集めてたよね。もし成功してたら、5億:100万の比率だから…500:1か。なら計算すると…48か。1神気の練度は48になるね」
真「どういう計算?」
翠花「…」
めっちゃ翠花姉が難しそうな顔をしてる…そんなに難しい計算なのだろうか?
真「や、やっぱりいいや。大丈夫だよ。翠花姉」
翠花「まあそうだね。やめとこ。またどれくらいなのか気になったら私がやってあげるよ」
真「うん!お願い!」
翠花「よし、じゃあ今日はこれで終わろう。どんどんいろんな鍛練してこうね」
真「うん!お願い!」
挨拶を交わし、道場を出た。窓を見ると、すでに空は暗くなっていて、時計は6時を指していた。
俺たちは蓮乃さんのいるリビングに向かった。すでにご飯ができていて、今日は魚のようだ。いい感じの焼き目でとてもおいしそうだ。
俺たちは椅子に座り、ご飯を食べ始めた。
3人「いただきます」
蓮乃「結夢ちゃんたちがいなくなってから2人はなにをされてたんです?」
真「神気の練度の鍛錬だよ」
翠花「鍛錬というか座学だけども」
蓮乃「練度は難しいですよ。私もそこまでできるわけじゃありませんし」
真「蓮乃さんはどれくらいなの?」
蓮乃「私はどれくらいだったかな…。6500とかだったような?」
真「は?」
思わず出てしまった…。翠花姉でさえ5000くらいって言ってたのに…蓮乃さんは…6500?もう訳が分からない…。
蓮乃「あら、真くーん?どこを見てるんですか~?」
真「あ、ごめん。でも6500ってどんだけ頑張ったらそうなれるんだろう…」
蓮乃「真くんは想像できないかもしれませんが、私全盛期のころの最大神気量700兆あったんです」
あかん…衝撃の情報がさらっと出てくる…。俺の口は意思とは関係なく空いていた…。
翠花「いや真くん。蓮乃全盛期めっちゃ強いって言ったことなかったっけ?」
真「どこかで聞いたような…」
蓮乃「教えられたのですね。まあそれはそれとして、練度に戻りますが、元々持ってる神気が多ければその分練度の鍛錬はしやすくなります。練度の鍛錬なら私も翠花さまも得意ですし、気軽に聞いてくださいね」
真「は、はーい」
鍛練に関しては本当に2人が上すぎてあんまり参考にはならないんだよな…。まあそこはしっかりと教えてくれるんだし吸収しよう。
俺たちはご飯を食べ終えた。
3人「ごちそうさまでした」
翠花「じゃあお風呂行ってくるね」
蓮乃「ごゆっくり」
「ぎゅ」
…翠花姉が俺の手を握った。まあ…そういうことだ。
「カポーン」
流れるようにお風呂に連れてくんだな。この人は。
翠花「やっぱりいい湯だね」
真「だね」
それくらいの会話をしたんだが、翠花姉が俺に向けて質問をしてきた。
翠花「学校はどう?楽しい?」
真「うん。楽しいよ。けどね…」
翠花「どうしたの?」
真「体力テストで僕さ、一応は生き残ったじゃん?」
翠花「だね」
真「先生が言ってたんだけどみんな僕と結夢の神気量に驚いてみんな誘ってくれないんだ…。どうすればいいかな…」
翠花「うーん…なら真くんから一緒に組まない?って誘ってみるのがいいのかな?私はそんな状況になったことないから想像できないからそれくらいしか言えないけど」
真「なら次からそうしてみるよ!」
そんな会話をしながら、翠花姉に体を洗ってもらったりして俺たちは風呂を堪能した。
翠花「ふう。じゃあ出ようか」
真「うん」
俺は翠花姉に体を拭いてもらい、浴室から出た。そのままリビングにいる蓮乃さんに報告をし、そのまま翠花姉の部屋に向かった。
「バフ」
俺はベッドに沈むように倒れた。
翠花「疲れた?」
真「いや、今日は覚えることが多くて…」
翠花「今日は練度のことで結構やったし、剣術、ランニングに加えて練度も何とかしないといけない。やることは山積みだ~」
他人事だからそんな気楽に言えるんだろうな…ほんとうらやましい限りだ。
真「…眠い」
翠花「じゃあ寝るか。歯磨きとかしてこようか」
真「うん…」
俺たちは歯磨きをして、そのままベッドに入った。眠いこともあって俺の意識は早々になくなった。




