第46話 覇王流の稽古
翠花姉と一緒に道場に向かった。
翠花「今日は覇王流の中の「王羅の構え」をメインにやってこうか。構えは覚えてるかな?」
期間も開いてたし少し怪しいぞ…
真「ちょ、ちょっと微妙かな?」
翠花「そっか。なら復習でもう一回教えてあげるね」
真「ありがとう!翠花姉!」
翠花「いいよ~。じゃあ木刀を。はい」
俺は翠花姉から木刀を受け取った。
翠花「いい?王羅の構えは__」
そこから俺は改めて王羅の構えを教えてもらった。しっかりと覚えることができた。構え自体はそこまで難しくない。翠花姉が使うから難しそうに見えるだけだ。
翠花「この構えは完全に攻めの構えなの。どんなことをするかっていうと…あ、じゃああの鉄棒を少し離れたところに置いてくれる?」
真「え?あ、うん」
俺は言われた通り離れた位置にある鉄棒を置いた。
翠花「置いてくれたね。じゃあ…ふう…」
翠花姉が息を吐いたその瞬間…翠花姉が神気を開放した…!
翠花「この流派は神気を出すことを前提にしてるから神気を開放することを忘れちゃだめね」
真「うん!」
翠花「じゃあそこから見ててね」
真「うん!」
翠花姉が王羅の構えをとり、右足が地面に刺さらんばかりの力で踏み込んだ…!そして…
翠花「覇王流…『龍閃』!!」
翠花姉が腰の回転を使い、神気を纏った刀を鉄棒目掛けて振った…!その斬撃は文字通り飛ぶ斬撃だった…!
「バキイイン!!」
鉄棒が斬撃を受け、真っ二つに分かれた…!あんなに距離が離れているのに…!しかも木刀で…!
俺はその光景を見て唖然していた…。
翠花「ね?攻撃に特化してるのも納得でしょ?」
真「うん…これが覇王流…!僕も使えるようになるかな?」
翠花「それを私が教えるの。任せて。私がしっかりと教えてあげるから」
真「うん!お願い!」
翠花「任された」
翠花姉のあの技…!俺もいつか使えるようになれば…!
翠花「この技は神気を体と刀に纏わせれる技術さえあれば誰でもできるんだ。神気による身体能力の上昇で腕を早く触れるから飛ぶ斬撃ができるの。今の真くんでも私レベルではないけれど可能。さっそくやってみようか」
真「うん」
翠花「ならまずは…あ、このボールとかで試してみようか」
翠花姉が出したのは…バランスボールか?結構大きめのゴムのようなボールだ。
真「でも…ボールが破けちゃったりしない?いくら僕の神気量でも…」
翠花「それは大丈夫。私がボールに神気を纏わせるから、真くんの斬撃でも多分大丈夫」
それは大丈夫なのか?もしも翠花姉でも庇いきれないレベルができたらどうするのか…。
いや、その心配は不要だ。俺は翠花姉を信頼している。仮にそれが起きても彼女なら大丈夫だ。
真「ならやってみるね」
翠花「あ、コツとかいる?より速くスピードが出る振り方」
真「教えてほしいな」
翠花「まず、足は一瞬左足だけになる。その時右足を強く振りながら前に出す。それと同時に腰をしっかりと回すとスピードが出ると思う。一回やってみよう」
真「わかった」
俺は神気を開放し、王羅の構えをとり、ボールに向きあった。
コツは右足を強く振って、同時にしっかりと腰を回す…
真「いくよ!」
翠花「かも~ん」
真「ふ!!」
俺は刀をボール目掛けて振った。その斬撃は飛んでいる…!十分なスピードでボールに当たった…!
「ボヨーン…」
斬撃がボールにはじかれてそのまま消えた…
真「え~…」
翠花「ボールの弾力の方が上だったね」
真「翠花姉が神気を纏わせすぎたとかじゃなくて?」
翠花「それもあるかもしれないね。あはは。でもこれでも十分攻撃にはなってるんだよ。遅いけど」
真「遅かったの?結構スピード出てなかった?」
翠花「逆に聞くけどあの斬撃を真くんは避けれないの?」
避けれるが…そんな言い方をしなくてもいいじゃないか…
真「いや避けれるけど…」
翠花「そういうことだよ。今の真くんで避けれるなら今後強い人たちとぶつかったときに絶対に避けてくる。しかもこの構えは攻撃に特化してると言ったじゃん?だから防御なんて間に合わないんだ。だからこの構えをとるときはほぼノーリスクの時にやらないといけない。相手から反撃をもらう可能性があるときは打ってはいけないの」
なるほど…確かに今の俺でも避けれるなら間違いなく俺よりも上の強さを持つ相手なら避けてくる。ならこの技も使うのはまだ駄目なんだな…
真「じゃあこの技は使えないの?」
翠花「ふっふっふ。私がそんなハイリスクノーリターンな技を教えると思う?」
真「それはない…と信じたいけど…」
翠花「ちょっとだけ信じてないような?まあいいか。この技は神気を使うことによる身体能力の向上を体験してもらうためにやったんだ」
真「翠花姉…いじわる」
翠花「ごめんごめん。けどこれをやったことにも意味はあるんだよ」
真「意味?」
翠花「そ。というのもこの技を最初にやったのは神気による身体能力の上昇を体験してもらうためなんだ。実際、神気があるときとないときじゃあ今の真くんでも天と地の差があると思うよ」
確かに神気を纏って刀を振ったときのスピードはとても速かったように思えた。これが神気の力か?
真「そういうものなのかな?」
翠花「そうだよ。神気を纏う量が増えれば増えるほど、どんどん振るスピードも速くなる。すると斬撃も速くなる。つまり?」
真「え?つ、つまり?」
神気を纏うと刀を振るスピードが速くなる。これはわかった。そして斬撃も速くなる。これも振るスピードが速いんだしそりゃあそうだろう。だが…つまり?への回答は…わからない…。
真「えっと…強くなる?」
翠花「解答的には間違ってないから何とも言えないけど具体的には?なんで強くなるの?」
真「…」
翠花「まあこれは体験した方が速いね。真くん。木刀構えて」
真「え?うん…」
翠花「今から君に、いや君が持ってる木刀に向かって私は木刀を25発ぶつける。神気を纏ってる時と纏ってないときの比較をしてほしいの」
翠花姉の斬撃を…俺が受けるのか…。普段守ってもらってる人から攻撃を受けるのは…嫌だな…。けどやるしかないな…。
翠花「まずは神気を纏ってない状態。神気を解除して」
真「うん」
俺は言われた通り神気を解除した。それを確認した翠花姉が俺のもとに寄ってきた。
翠花「絶対に君に攻撃はしないから安心して」
真「わかった…」
翠花「じゃあいくよ」
翠花姉がそう言った直後…
「バキ!バキ!バキバキ!」
木刀が音を立てた…。聞こえたのは4回くらいだ。あと21発か…結構重たい斬撃だったしきついぞ…。
翠花「どうだった?私の神気を纏ってない状態の25発は」
真「え?」
翠花「ん?なにかわからないことあった?」
おいおいおい!まさか…
真「もう…25発終わったの?」
翠花「え?うん。木刀に25発ちゃんと全部当てたよ。音もしっかりしてたし」
そんな馬鹿な…俺には4回くらいしか聞こえなかったぞ…何が起きてるんだ…?
真「ごめん翠花姉。もう一回25回打ってもらってもいい?さっきのスピードの半分くらいで」
翠花「さっきの半分?わ、わかった…。いくよ?」
翠花姉が再び俺の木刀に向かって打ってくれるようだ…。俺はその光景をしっかりと見るぞ…!俺は目を見開き翠花姉の木刀を凝視した…。
俺は…目に追うことができた…。
「バキバキバキバキバキ…」
翠花姉に半分とお願いして見えた…翠花姉はちゃんと25発全て木刀に向かって木刀をぶつけていた…。だがそのスピードが速すぎて…さっきは聞こえなかったし見えもしなかったんだ…。だから俺の耳には4発に聞こえたのに実際は既に終わっていた…。翠花姉の剣は…速すぎたんだ…。
翠花「半分くらいのスピードにしたけど…これでよかった?」
真「うん…ありがとう…」
翠花「うーん…なにかわかってないことがありそうだね?言ってみなよ。別に怒らないからさ」
真「えっとね…一回目の木刀をぶつけたやつ…全然見えなかったんだ…。音も4回くらいしか聞こえなかったし…」
翠花「ええ…そんなに速かったかな」
翠花姉は自身のしたことがとてもやばいことに気づいてないんだろうな。けれど、それだけ剣に向き合い、鍛錬をしたからこそのスピードなんだろうな…。
真「うん。めっちゃ速くて…」
翠花「そっか…なら神気を使ったらもっと見えなくなるね」
真「だよね…」
翠花「うん。どうしようか」
朱雀「なら翠花よ。スピードを鍛えるのはどうじゃ?」
翠花「え?」
朱雀が俺の肩にいた。スピードを鍛えるって…
真「どういうことだ?朱雀」
朱雀「簡単な話じゃ。おそらくじゃがこの流派は神気も必要じゃがそれ以上にスピードがいるじゃろう?今までだって翠花が振るう剣技はまさにスピードが重視されているように見えたからのう。どうなんじゃ?」
翠花「もちろんスピードはあるに越したことはないですが…神気があればさっきよりも速くすることは可能です」
朱雀「神気依存ではいかんのじゃ。今のこいつには。真は確かにわらわを使えば神気も増やせる。そしてわらわが能力としていることによる恩恵でスピードも速くなる。じゃが神気がない状態でもスピードは必要じゃ。そこのところどうなのじゃ?」
翠花「確かに競り合いになればスピードが速い方がより早く相手を削れるし…今後多分真くんは神気が増える…そうすればパワーもつくし…そうですね。スピードが今の一番の課題かもしれませんね」
朱雀「真。前わらわとやったときはそれなりにスピードが出ておった。自信を持て。わらわに勝ったお主は間違いなく剣術、そして戦闘の才能はある。なにも不安になる必要はないからの」
真「う、うん。けどあの時の朱雀って1000万の状態だったろ?」
朱雀「じゃのう」
真「今やったら僕負けないか?」
朱雀「それはやってみんとわからんがおそらくわらわがまた負けるじゃろうな。こう言うのもなんじゃが戦闘に関してはわらわはそれなりの戦術がある。しかしお主はその場で思いつき、それを実現してくるじゃろ?自身の戦術が崩されると流れが一気に相手に向いてしまう。そのまま負ける。まあわらわは負けたくないのでやめとくかのう」
…負けたくないだけじゃね?まあ朱雀としても神の威厳はあるんだろうしな。
翠花「なら真くんは神気ありの状態ならスピードはそれなりにあると思っていいですか?」
朱雀「ああ。神気を纏う状態なら翠花とも少しは渡り合えるかもしれんのう」
翠花「ふーん…」
真「す、翠花姉?どうしたの?そんな顔をして…」
にやけ全開で翠花姉が俺のことを見てるんだ…ちょっと嫌な予感が…
翠花「よし、真くん。ちょっと神気を開放して」
真「もしかして…」
翠花「や・ろ・う・か」
はい終わりました。俺の人生ありがとうございました。おそらく俺はこの後死ぬでしょう。短い人生だった。けど充実したものだったよ。うん。
真「逃れる術は…」
翠花「なし!」
真「はい」
まあやるしかないか…俺は翠花姉と向き合った。
翠花「真剣は危ないから木刀にするよ」
朱雀「いや、翠花。お主は木刀、真はわらわが出す剣でやってもらいたい」
真「え!?さすがに危ないんじゃ…」
翠花「私は別に構いませんが…」
真「大丈夫なの…?」
朱雀「真。お主は翠花を信用しておらんのか?翠花はわらわから見ても相当な剣術がある。そして神気量も技術も申し分なし。気を抜けば袋叩きにあうのはお主じゃ。それくらいには翠花は強い。今の真なら心配は不要じゃ」
真「それはわかってるけど…」
翠花「持ち上げてくれるのは嬉しいけど…私は戦闘になったら真くんでも加減はしないよ?だって真くんのためにならないもん」
ちょっとしてほしい俺がいるけれど…まあいいか。
朱雀「早速やってみるのじゃ!」
翠花「ルールを先に決めとこうか。場所はこの道場ならどこでも。で、真くんは朱雀様が出す剣、私は木刀だったね。あとはなにかありますか?」
朱雀「最大神気量はどちらも1億としよう。翠花が本気で剣を振るうとさすがに建物が怪しい気がするんじゃ」
翠花「ではそういうことにしようか。じゃあ始めようか」
真「う、うん」
俺は翠花姉の前で朱雀の剣を構えた。翠花姉も木刀を構えた…
「ピリピリ…」
俺は感じた。翠花姉の圧を。それはもうすごいものだった…。木刀を構えるだけでこんな圧…俺…耐えられる自信がないな…。
朱雀「では始めるとするかの。互いに神気を出せ。1億じゃぞ」
真・翠花「了解」
俺は神気を開放した。朱雀の力で1億まで上げた。翠花姉も神気を開放したが…
「ドオン!」
俺が出す1億とは…まるで厚さが違った…。俺が一枚のプリントなら…翠花姉は辞書くらいの差があるんじゃないかと思った…。それくらい同じ神気量でも…差があるんだ…。
俺が持つ剣は…意思に反して…ガタガタと震えてしまっている…。
朱雀{同じ1億でもこれほどの差…流石翠花じゃのう…。真も剣が震えてしまっておるが…無理はない…}
翠花「じゃあ始めようか。準備はいい?真くん」
真「う、うん。いつでも」
翠花「じゃあ鉄棒を私が落とすから、それが地面に着いたら始めるね」
真「わかった…」
翠花姉がさっき真っ二つに割った鉄棒のうちの片方を持ってきた。
翠花「じゃあ始めようか。落とすよ」
そう言い翠花姉は離れたところに向かって棒を投げた…。
「カラン」
乾いた音が鳴ったその瞬間…
「ダン!!」
とてつもない音と共に…翠花姉がこちらに向かってきている…!俺は守りの構えをとった。
「ガキイイン!!」
俺が持っている剣に衝撃が…
真「く…」
翠花「受けれるんじゃん?まあこれで満足しちゃ…だめだよ!」
翠花姉がえぐいスピードで…俺の足に向かって木刀を振った…。俺は思わずジャンプをした。
朱雀{馬鹿!空中など…!}
真{え?}
翠花「避けるためでも…格上相手にそれくらいのジャンプはだめだね」
「ブオン!!」
今翠花姉は…木刀を…何本振った?俺には…7本振っているように見えた…。そしてそのすべてが…
「バキバキ!!」
俺の…守りを容易に抜け…全身に衝撃が走った…。
「ドサ…」
とてつもない衝撃が…痛みが俺を襲い…そして俺の意識は…完全に闇に落ちた…。




